女性用風俗を題材に描かれる、現代女性の性と愛
デビュー15年を迎えた35歳の小説家・青葉よもぎは、人気を失い、崖っぷちに立たされていた。女性の担当編集者から「女性用風俗をテーマに次回作を書かないか」と提案されるが、よもぎは気が進まない。見ず知らずの男性とセックスするなんて考えられなかったのだ。そんなある日、大学生の頃から男女の関係にある東雲稜から「結婚するから会うのも最後」と告げられ、よもぎは激しく動揺する。その翌日、家政夫の美青年・金城凛に抱かれる野良猫のことを羨ましいと思ったよもぎは「誰かに抱かれたい」「満たされたい」という気持ちを強めていく。そして思い余ったよもぎは、初めて女性用風俗を利用するが、ホテルに現れたのは家政夫の金城だった。
女性用風俗を利用する小説家×二つの顔を持つミステリアスな美青年
よもぎは、アラフォーで独身、子どももいない一人暮らしの女性。出版社勤務の東雲とは大学生の時に出会い、一瞬だけ恋人同士だったこともある。彼はよき相談相手で、安全なセックスパートナーだった。長い間、東雲としか関係を持っていなかったよもぎは、彼に別れを告げられ、寂しさを埋める相手を求めるようになる。一方金城は、家政夫と女性用風俗のセラピストという二つの顔を持つミステリアスな美青年。高校生の時、ある事情から家に帰らなくなり、街やSNSで出会った年上の女性のところを転々としていた。そんな経験からか、女性の扱いが丁寧でとても優しい。そんな二人は、女性用風俗の利用客とセラピストとして出会い、次第に心を通わせていく。
満たされたい小説家、セラピスト、元恋人の編集者の三角関係
結婚予定を理由に去っていった東雲だったが、ある日突然よもぎの家を訪れる。辞令によって営業部から編集部に異動となり、来月から彼女の担当編集になったという。あっさりと別れを告げ、「最後だしもう一回する?」というひどい言葉を残して去った東雲に、よもぎは怒りを覚えていた。しかし東雲は、別れた日のことを謝り、「離れるのが辛いのは自分だけだと思っていた」と思わせぶりな態度をとる。腹を立てていたはずなのに、いつもと変わらない東雲の顔を見て、よもぎはどこかホッとしてしまう。一方東雲は、家政夫の美青年・金城とよもぎの関係に疑いを持ち始める。本作は、そんなよもぎ、東雲、金城の危険な三角関係を描いていく。
登場人物・キャラクター
青葉 よもぎ (あおば よもぎ)
35歳の女性作家。大学生の時、父が多額の借金を背負ってしまい、自分が頑張らなければいけないと思い込み、小説を書き始める。いろいろな出版社に何作も応募した結果、そのうちの一つが新人賞を受賞し、在学中の20歳でデビューした。学生同士の恋愛や若者のモラトリアムをテーマにした作品で注目されるが、年々売れ行きが落ちて仕事は激減。デビュー15周年を迎え、崖っぷちに立たされる。担当編集から「女性用風俗」というテーマを提案されるが当初は拒否する。その後、諸事情から女性用風俗を初めて利用した際、自分が雇っている家政夫の金城凛と偶然関係を持つことになり、その経験から女性用風俗を題材に小説を書き始める。
金城 凛 (かねしろ りん)
21歳の家政夫の男性。誰もが認める美青年で、ミルクのような甘い匂いがする。ぎっくり腰になった女性に代わり、青葉よもぎ宅の家政夫になった。また、「シロ」という源氏名で、女性用風俗のセラピストとして働いている。小学生の時に母を亡くしてから、家にやって来た叔母の世話になり、家事もその時仕込まれた。しかし、高校生の時に父と叔母が再婚したことで、家に居づらくなり、女性の家を転々とするようになる。その後、友人に誘われて女性用風俗で働き始めた。よもぎが初めて女性用風俗を利用した際、偶然彼女の相手を務め、小説のモデルにもなる。
東雲 稜 (しののめ りょう)
出版社に勤務する男性。青葉よもぎの、大学の先輩にあたる。よもぎが小説家デビューを果たした後は、作家と編集者として一緒に仕事をする。短い期間恋人同士だったこともあるが、うまくいかずに別れてしまう。しかしその後も男女の関係は続き、東雲が営業部に異動してからも、よもぎのよき相談相手になる。ある日、年内に別の相手と結婚することになり、よもぎに別れを告げた。
書誌情報
やさしいミルク 4巻 秋田書店〈A.L.C.DX〉
第1巻
(2023-04-14発行、 978-4253163798)
第2巻
(2023-10-16発行、 978-4253163804)
第3巻
(2024-04-16発行、 978-4253163811)
第4巻
(2024-11-15発行、 978-4253163828)