都合のいい果て

夫から日々ひどい暴言を受け、さらに彼の浮気を知った専業主婦の透子は、心の渇きを癒すために女性用風俗店を利用する。そこで出会った祥示に心を奪われるが、彼は透子をただの客としてしか見ておらず、何も告げずにあっさりと店を辞めてしまう。後日、偶然のきっかけで二人は再び顔を合わせるが、それは透子にとってこれまで縁のなかった裏社会への入り口でもあった。

女性用風俗店を利用し始めた頃の透子は、祥示に対してほかの客のもとへ行かないでほしいと感情的になり、彼にとって厄介な存在となっていた。そのため、最後に指名を受けた際には透子を強い言葉で拒絶したものの、再会してからは徐々に態度を軟化させていく。そんな中、祥示は住んでいるシェアハウスの住民からの依頼で、誤って透子の夫を襲撃してしまう。祥示を犯罪者にしたくない透子は、咄嗟（とっさ）に自宅の浴室にケガをした夫を隠す。一方、依頼に失敗した祥示は裏社会の人間から追われる立場となり、身を潜めるために透子と過ごす時間が増えていく。共犯関係で結ばれた二人は、少しずつ心を通わせていく。

透子と同じマンションに住む、噂好きで図々しい性格の典江や、夫の浮気相手で透子を挑発する高城など、厄介な人物との複雑な関係性が本作の見どころとなっている。祥示のシェアハウスには裏社会とつながりのある大槻が住んでおり、彼は巧妙な言葉を駆使して同居人たちを犯罪に巻き込んでいく。さらに、祥示に対して一方的な思いを拗（こじ）らせているストーカーのイナは、透子に恨みを抱き、大槻に彼女を襲撃してほしいと依頼する。