地下アイドルの現実と再結成を目指す少女の復活劇
本作は、一度解散したアイドルグループの再結成を目指す少女の奮闘と、その道のりに立ちはだかる数々の困難を描いている。華やかに見える地下アイドルの世界だが、その裏側ではつねに集客や売上のプレッシャーに追われ、心を休めるヒマもない。メンバーの生活問題や人気の低迷により、志半ばで解散するグループはあとを絶たず、平均活動期間は約2年とも言われている。あんじゅが所属していた「愛す♡ビバレッジ」も、その過酷な現実の前に2年4か月の活動に幕を下ろした。しかし、あんじゅだけは「愛す♡ビバレッジ」こそが最高のアイドルグループだと信じ、孤独な再結成への挑戦を始める。
天才ボカロP「ブラックカメリア」との出会い
アイドルグループ「愛す♡ビバレッジ」の解散後も夢をあきらめきれなかったあんじゅは、生計を立てるために女性客限定のメイド喫茶「わんにゃん」でアルバイトをしていた。あんじゅがこの店で働いていることは一部のファンのあいだで知られており、店は常連客で賑わっていた。そんなある日、一人の女子中学生、黒川椿が店を訪れる。あんじゅがいつもどおり明るく接客する中で、椿がネットで天才ともてはやされているボカロP「ブラックカメリア」本人であることを知る。椿は「愛す♡ビバレッジ」の熱烈なファンであり、あんじゅの再起を心から願っていた。そしてその思いを伝えると共に、「私の曲を使ってください」と驚きの提案を持ちかけるのだった。
アイドルグループ「アイドルビーバック」誕生
椿という優秀なプロデューサーを迎え、あんじゅはグループ再興に向けて早速動き出した。椿が手がけた楽曲は、「愛す♡ビバレッジ」の元メンバーである水沢慈雨と紅谷朝子を加えた三人で歌うことを想定して作られていた。しかし、二人はすでにアイドルの道を離れ、新たな人生を歩もうとしていた。彼女たちが引退を決意したのは、ほかでもないあんじゅのことを思ってのことであった。人気が低迷する「愛す♡ビバレッジ」の中で、リーダーのあんじゅが義務感に押しつぶされそうになっている姿を見て、二人はその苦しみから解放するために身を引いたのだ。しかし、あんじゅは前向きな姿勢を崩さず、「もう一度、二人といっしょにアイドルをやりたい」と強く願っていた。その真摯な覚悟に心を動かされた慈雨と朝子は、再びステージに立つ決意を固める。こうして三人は新ユニット「アイドルビーバック」を結成し、失われた栄光を取り戻すための挑戦を始めた。
登場人物・キャラクター
桜井 あんじゅ (さくらい あんじゅ)
アイドルグループ「アイドルビーバック」のリーダーを務める女性。年齢は18歳。かつては地下アイドルグループ「愛す♡ビバレッジ」のメンバーだったが、グループ解散を機にアイドル活動を一時断念し、メイド喫茶で働いていた。そんな中、ポカロP「ブラックカメリア」として活動する椿や、元メンバーの慈雨、朝子と再会し、新たなアイドルグループ「アイドルビーバック」を結成した。非常にポジティブで人当たりがよく、朝子からは「あんじゅと揉めることは不可能」と言われるほど。高いコミュニケーション能力を持ち、初対面の相手ともまるで旧知の仲のように打ち解けることができる。一方で、直感的に行動し、時に暴走して周囲に止められることもある。また、身体能力は高いものの、歌やダンスの創作力には乏しく、ステージでは他者が作ったものを完璧に再現することに専念している。
黒川 椿 (くろかわ つばき)
ポカロP「ブラックカメリア」として活動する中学1年生の女子。年齢は13歳。かつて適応障害に悩まされていたが、「頭の中で鳴り響く音を吐き出す」感覚で作曲を始め、その作品がネット上で大きな支持を得ることで、徐々に症状も改善していく。ある日、SNSで地下アイドル「愛す♡ビバレッジ」の桜井あんじゅが自分の曲のファンであることを知り、椿自身も彼女のファンになる。しかし間もなく、グループの解散を知ってショックを受ける。そんな中、あんじゅがメイド喫茶で働いていることを知った椿は、自らその店を訪れ、「自分の曲を使ってほしい」と申し出る。その熱意に心を動かされたあんじゅや元メンバーの慈雨、朝子が再び集まり、「アイドルビーバック」が結成される。椿はグループの専属プロデューサーに就任する。椿はあんじゅとは対照的に悲観的で、人と話すことが苦手だったが、あんじゅたちと共に活動を続ける中で自己肯定感が芽生え、少しずつ本来の明るさを取り戻していく。
書誌情報
アイドルビーバック! 2巻 芳文社〈まんがタイムKRコミックス〉
第1巻
(2024-02-27発行、978-4832295285)
第2巻
(2025-02-27発行、978-4832296169)







