世界観
本作『アナグルモール』では地球空洞説が取り入れられており、地底奥深くにもう1つの世界であるアナグランドが存在している。この世界では間人という、人間をはるかに上回る身体能力と、マジナグラムと呼ばれる特殊能力を持つ種族が暮らしているが、地上に暮らす人間が間人より圧倒的に強いと勘違いされている。この勘違いに翻弄されるルチルの空回りが、物語にユーモアを与えることに成功している。
あらすじ
地上編(第1間~第12間)
アナグランドに住む間人の少年、ルチルは、地上に住む人間の弱点を探し当てるスパイ活動のため、相棒のバハムートとともに地上の世界へと降り立つ。アナグランドでは、「人間は間人より圧倒的に強く、残虐である」という勘違いが蔓延しているため、2人は毎日が命がけ。しかし、ホームステイという名目で潜伏した先の草薙家の人々と触れ合うことで徐々に心を開いていき、やがてスパイ活動を続ける自分に疑問を抱くようになる。
アナグランド編(第13間~第32間)
クワトロールの意を受けたファルコの手によって、草薙千羽はアナグランドへと連れ去られてしまう。責任を感じたルチルは草薙家の家族たちに自らの素性を明かし、千羽救出のため、草薙京介とともにアナグランドへと突入する。反逆者として追われながらも、京介と力を合わせることで追手を突破していくルチル。一方、ファルコのミスによって単身アナグランドに落とされた千羽も、地上世界への脱出を目指し行動を始める。
休載期間
作者である福地翼の体調不良のため、「週刊少年サンデー」2012年33号から、長期の休載が挟まれた。1年以上に及ぶ休載により未完のまま終わる可能性も危惧されたが、2013年45号より連載が再開され、無事完結している。
単行本の装丁
単行本だけのおまけ要素として、左側のカバー折り返しに4コマ漫画が描かれている。内容は基本的に、その巻で発生した出来事に即したものとなっており、なかには原作では描かれていなかった設定などが掲載されていることもある。また、カバー裏には、登場人物たちの意外な日常が描かれており、キャラクターたちへの理解や愛着を深める一役を担っている。なお、4巻のカバーは煽情的なアルルの姿がでかでかと描かれているが、福地翼は、これを小中学生に臆さず購入する勇気を与えるためであると語っている。
登場人物・キャラクター
ルチル
地上派遣組として、アナグランドから地上にやって来た、13歳の間人。隆起と陥没のマジナグラムを持つ。明るく前向きな性格だが、落ちこぼれと蔑まれており、時折コンプレックスの片鱗を覗かせることがある。アナグランドで蔓延している「人間は間人よりはるかに強く残忍である」という勘違いのために、スパイ任務を開始した当初は人間のことを非常に恐れていた。 しかし、潜伏先で草薙家の暖かさに触れることによって、人間が持つ強さと優しさを理解し、アナグランドでは存在しない「家族」という概念に、憧れと共感を抱くようになる。
バハムート
アナグランドに住む間獣。ルチルの良き理解者で、彼のスパイ行動をサポートするため、ともに地上にやって来た。人間の世界で言うところのコアラに近い形状をしており、体色はトラを彷彿とさせるものとなっている。なお、実際は人間の言葉を話せるが、地上では人間たちに怪しまれないよう暗号変換機を身につけており、草薙家の面々からは「プガ」という鳴き声を放つと思われていた。
草薙 千羽 (くさなぎ ちわ)
草薙家の長女で、16歳の高校生。髪の毛がきれいだとお兄ちゃんに褒められたことがきっかけで、ロングヘアの髪形を常に保っている。料理上手で、特製の卵焼きは、草薙家の面々から好評を得ている。面倒見が良く心優しい性格で、家族を何より大事に思っており、ルチルのことも家族の一員として常に気にかけている。しかし、クワトロールの小型化を受けたところをファルコに捕獲され、アナグランドへと連れ去られてしまう。
草薙 京介 (くさなぎ きょうすけ)
草薙家の次男で、14歳の中学生。強面かつ素直になれない性格のため、不良と勘違いされることもある。しかし実際は悪行を見過ごすことが大嫌いで、特にいじめなどを見かけた時にはなりふり構わず助けに向かう正義漢。ルチルとは、出会った当初こそそりが合わなかったが、互いの真っ直ぐな性格を理解し合うことで無二の友人となる。 草薙千羽がさらわれた際に、救出のためルチルとともにアナグランドに向かい、その冒険の最中で地中潜入のマジナグラムを会得した。なお、アナグランドでは正体を隠すため、アルルによって付けられた「モグル」の名を使っている。
お兄ちゃん (おにいちゃん)
草薙家の長男。現在は仕事で外国に滞在している。草薙千羽からは「お兄ちゃん」、草薙京介からは「兄貴」と呼ばれているが、本名は明らかになっていない。飄々とした性格をしている一方、千羽、京介に劣らない家族思いの青年。弟妹に対して「アナグルモールになれ」と教え、彼らの生き方に大きな影響を与えている。
草薙 十羽子 (くさなぎ とわこ)
草薙家の兄弟たちの母親。現在、第5子を妊娠中。豪快な性格で、そのパワフルな振る舞いから、人間を恐れていたルチルを委縮させてしまうこともあった。バハムートに新しい首輪を買ってあげようと考えており、現在の首輪に擬態した暗号変換機を破壊してしまい、ルチルがスパイであることを露見する切っ掛けとしてしまう。 しかし、スパイだと知ってからも変わらずに接し、さらわれた草薙千羽を連れ帰ることを信じ続けた。
草薙 誠 (くさなぎ まこと)
草薙家の3男で、9歳の小学生。「正義仮面ライドオン」というヒーローに憧れており、変身ベルトを使ったなりきり遊びを毎日のように行っている。ホームステイのために訪れたルチルに対し、突然敵役の怪人と見なしとびかかったため、ルチルは早速、自分がスパイであることがばれたのかと勘違いしてしまった。
草薙 誠十郎 (くさなぎ せいじゅうろう)
草薙十羽子の父親。優れた体格をしており、その豪快な性格も相俟って初対面のルチルを恐れさせてしまう。実際は気のいい好々爺で、特に草薙誠に対しては、よくヒーローごっこに付き合ってあげている。バハムートが喋れることを知った際に、ルチルが間人のスパイであることを知るが、バハムートの説得からルチルの想いを理解し、草薙千羽を救出したら必ず戻ってくるよう求めた。
ストーカー
画家の青年。速筆なうえにクオリティが高く、画家としては極めて有能なのだが、影の薄さが災いして、滅多に声をかけられない。そんななか、草薙千羽に似顔絵を描くことを依頼され、一目惚れ。自らストーカーになると決意してしまう。しかし、ストーカー行為が草薙京介の知るところとなり、ルチルとともに一度は手ひどくやられてしまう。 しかしそれでも生き方を曲げることをせず、千羽がアナグランドにさらわれた際には、ルチルたちに強引について行った。到着早々ルチルたちとはぐれてしまうが、影の薄さや、ストーカー術と称する数々の特技を生かし、確実に千羽の足跡を追い続ける。さらには、間人から恐れられているサイコドールすら手懐けてしまう。
のり子 (のりこ)
ルチルが通うことになった中学校におけるクラスメイト。おっとりした引っ込み思案の女の子だが、内心目立つチャンスを窺っており、ルチルが転校してきた際には、隣の席に座ってほしいと担任の先生に告げようとした。しかし藍澤に先を越されてしまい、落胆してしまう。
藍澤 (あいざわ)
ルチルが通うことになった中学校におけるクラスメイト。明るく活発な男の子で、転校生のルチルに対しても真っ先に話しかける積極性を見せる。また、草薙千羽が作ったルチルのお弁当がほぼ卵焼きで占められていたところを見た際は、その一つを自分のおかずと交換しようか持ち掛けるなど、気遣いができる一面もある。
グーグルス
アナグランドに住む、間人の少年。拘束のマジナグラムを持つ。悪趣味かつ卑劣な性格で、ルチルのことを強く見下すあまり、彼が地上で生きるか死ぬかという賭博行為を主催した。また、アルルに対しても恨みを抱いているが、彼女の方が圧倒的に強いため、手を出せずにいる。
アルル
アナグランドに住む、間人の少女。蹴りの達人で、並の間人は蹴りの一撃で倒せるため、『アナグルモール』の作中でマジナグラムを使ったことはない。ルチルとは幼なじみで、彼の持つ底力を理解している。地上の世界に憧れを抱いており、本来はアルル自身がスパイとして赴きたかったが、ルチルが任されてしまったため、再会した当時は若干ふてくされていた。 しかし、店長との対決を見てルチルの成長を確信すると、草薙千羽救出のため、同行する。
ジェル
アナグランドに住む、間人の少年。アルルとはピシャクリフでともに学び合う仲で、気まぐれ同士で気が合う様子。グーグルスが主催する、ルチルが生き残るかの賭博で、アルルと同じく生き残る方に全財産を賭ける。また、草薙千羽を奪還し、逃げ出すルチルたちに、マジナグラムを使った抜け穴でサポートを行った。
クワトロール
ルチルと同じように地上に派遣された、間人の少年。小型化のマジナグラムを持つ。コンパクトにまとめることが大好きで、能力を使うことで多数の道具を隠し持っている。人間は間人より弱いという事実にいち早く気づき、ルチルの役割が終わったと認識。正体を隠すためと称し、始末しようと襲い掛かる。結果、草薙京介のサポートを受けたルチルに返り討ちに遭うが、あらかじめ忍ばせていた相棒のファルコを使い、草薙千羽をアナグランドに連れ去らせてしまう。
ファルコ
アナグランドに住む鳥型の間獣で、クワトロールの相棒的存在。「ピポール」と鳴くが、これはバハムートと異なり、暗号変換機を通さない、素の鳴き声である。小型化のマジナグラムを受けた草薙千羽を掴み、アナグランドへと連れ去るが、本来ともに連れて行くはずのクワトロールを、ルチルの横やりによって奪われてしまったため、小型化が切れた千羽にも逃げられてしまう。
リポリポの2人組 (りぽりぽのふたりぐみ)
2人組で、アナグランドで流行しているファッションブランド「リポリポ」のデザイナーを務めている間人の男性たち。ファルコから逃れた草薙千羽を発見し、ミガルドを付けていないことで人間だと認識する。しかし、人間を恐れているものの嫌ってはいないようで、ハッタリを見せる千羽を「姐さん」と慕い、ココの街を案内する。
ルイード・タイタン (るいーどたいたん)
イシェターン・ココ支店の店長を務める、大柄な間人の男性。分解のマジナグラムを持つ。イシェターンを訪れたリポリポの2人組に因縁をつけることで、彼らが強いと信じて疑わない草薙千羽と決闘をする羽目になってしまう。しかし、アナグランドには存在しないスマートフォンを活かすことで、生命のマジナグラムを演出されたことで隙を作ってしまい、敗れた。 その後、介抱してくれた千羽に恩を感じ、ともに行動することとなる。
ルーク
アナグランドと地上の境で番人をしている、間人の男性。軟化のマジナグラムを持つ。地上派遣組から、キオク草の種を受け取る役割と同時に、失敗したスパイを処刑する任を負っている。番人としての仕事に誇りを持っている反面、地上派遣組のルチルを見下している。その慢心が仇となってルチルに倒されるが、彼の通報によって、ルチルと草薙京介の潜入がアナグランドに知られてしまう。
クルミエル
ココの街に住む間人の少女。草薙千羽とルイード・タイタンの決闘を見物しており、自分より強い女性がいることに驚きと苛立ちを覚える。通りがかったストーカーから半ば無理やり道案内を頼まれ、嫌々ながらもキタの街まで案内することになる。しかしそのお礼としてクルミエルの似顔絵をプレゼントされたことで好意を抱き、彼の行動を見届けようとする。
ジル
アナグランドで車を売っていた、老年の間人。ココの街で新築された車屋が繁盛し、そのあおりで車が売れなくなったため、飲み屋へ転向しようとしている。そのため車を買おうとするルチルに当初は取り合わなかったが、デンシャ号が返品されたことで、それを賭けてギリギリドーンで勝負をすることになる。
デンシャ号 (でんしゃごう)
ジルの店で売られていた車。性能は確かなのだが、ブレーキが苦手なため、扱いが非常に難しい。そのため、売り出されては返品を繰り返してきた。しかし、止まれないことは欠点ではなく個性だとルチルに教えられたことで自信を取り戻し、長らくルチルたちの愛車として活躍することになる。なお、他の所有者たちには「ディケル・ラル・ピエール」や「ミハイル・シュー・マフィン」、「ウサイン・ザ・ボルトフ」などの名前を付けられていたが、一番のお気に入りはルチルが名付けた「デンシャ号」である模様。
ドルチェ
治癒の泉に向かうルチルたちの前に、カモミールとともに立ちはだかった間人。模倣能力者という特殊なマジナグラム使いで、戦う相手のマジナグラムを使うことができる。しかし、裏を返せば敵のマジナグラムしか使えないため応用力が磨けず、その弱点を突かれてルチルに敗北してしまう。
カモミール
治癒の泉に向かうルチルたちの前に、ドルチェとともに立ちはだかった間人。操作のマジナグラムを持つ。ドルチェとは対称的な策士タイプで、さまざまな応用手段を会得している。それらを駆使することで、ドルチェとの戦いで消耗したルチルを追い込むが、治癒の泉の効果で地中潜入のマジナグラムを獲得した草薙京介に阻まれ、敗北した。
バザール
歌舞伎のような化粧を施した、間人の男性。切断のマジナグラムを持っており、仲間内では「切断のバザール」と呼び慕われている。賞金首となったルチルと草薙京介を仕留めるために現れ、戦いを挑むが、乱入してきたアルルによってあっさりと倒される。
店長 (てんちょう)
アルルがバイトをしている洋服店の店長を務めている、老年の間人。少年と話す際には、語尾に「ぼーい」と付ける口癖がある。筋骨隆々の大男で、その外見に見合った怪力を持っているが、打たれ弱いという欠点がある。アルルの提案により、ルチルとドルザ・グリュードで対決をした。
ノエル
アナグランドのトップに立つ、間人の少年。部下たちからはキングと呼ばれている。ドルチェ同様、他者のマジナグラムを使うことができるが、元の使用者が傍にいなくても使えるため模倣能力というわけではない。冷静かつ無表情だが、自分の部屋に土足で踏み入ったという理由で部下の首を手刀で斬り落としたり、かと思えば治癒の泉を使って蘇生させ、攻撃したことを謝るなどつかみどころがない性格をしている。 落ちこぼれであるはずのルチルを「特別」と語っている。
オルガ
能力検定試験に参加した、間人の少年。伸身のマジナグラムを持つ。思い切りのいい性格で、光度10の検定試験を受ける。試験内容はマジナグラムを使って100キロの鉄塊を高いところに運ぶというもので、伸ばすことで高所に届かせることはできたが、解除する際に失敗してしまい、不合格となった。
ネル
光度30の能力検定試験に参加した、間人の少年。小柄な体格をしており、羽毛化のマジナグラムを持つ。いつも眠そうな顔をしており、隙があれば実際に眠ってしまうこともある。しかし光度30に挑戦するだけあって実力は本物で、草薙千羽を助けようとするルチルを大いに苦戦させている。
メタル
光度30の能力検定試験に参加した、間人の少女。ネルに負けず劣らずの小柄な体格で、鉄化のマジナグラムを持つ。おっとりした雰囲気とは裏腹に格闘能力に秀でており、拳を鉄に変えることで破壊力をさらに向上させることができる。角のような形状のミガルドをつけているが、これは今年の夏に流行ったとされる「ミガホーン」というタイプのものである。
シルクド・Q
光度30の能力検定試験に参加した、間人の男性。全身をスーツで覆っており、顔には複数の穴が開いた仮面を身に着けている。薄化のマジナグラムを持っているが、実際に使用した際の光景は非常に不気味で、目の当たりにした草薙千羽をドン引きさせている。仮面を付けている理由は恥ずかしがりやであるためで、食事をする時も仮面を外さない。
アルベール
光度30の能力検定試験に参加した、間人の青年。左目に眼帯をつけており、これを外すことで透視化のマジナグラムを発動させられる。軽薄な性格をしており、草薙千羽に出会うや否や一目惚れをしてしまったため、ルイード・タイタンやストーカーににらまれている。
イカレル
光度30の能力検定試験に参加した、間人の男性。大柄かつ凶暴な性格をしており、ことあるごとに草薙千羽に挑発をするため、恐れられている。釘化のマジナグラムを持ち、この能力を用いることで千羽を傷つけてしまったため、ルチルたちの怒りを買う。
ゴルドフ
アナグランドにおける軍事の総司令官を務める、間人の男性。丸化のマジナグラムを持つ。ルチルを地上に派遣した張本人でもある。強欲な性格で上昇志向が強いが、自分自身に力がないことを自覚しており、知恵のみでのし上がるしかないと豪語している。
サイコドール
アナグランドを騒がせている巨大な身体を持つ間人。ゴルドフからは最終兵器と呼ばれている。その外見から化け物扱いされてしまい、幾度となく虐待を受け続けており、暴れているのも敵から身を守るという認識でしかない。しかし、そこをゴルドフに利用され、彼にとって邪魔な存在を「敵」だと吹き込まれてしまっている。ルチルたちを始末するためにゴルドフが解き放ったが、ストーカーと意気投合したため、失敗に終わっている。
集団・組織
草薙家 (くさなぎけ)
地上に派遣されたルチルのホームステイ先。現在は祖父、母親、子供3人の5人家族で、間もなくもう1人の子供が産まれることになっている。賑やかなパワフル一家で、人間が恐ろしい存在だと思い込んでいた当初のルチルにとって、草薙家での生活は恐怖の連続だった。しかし、ともに過ごすにつれて彼らの持つ優しさを理解すると、自分も草薙家の家族になりたいと言うほどに愛着を抱くようになる。
地上派遣組 (ちじょうはけんぐみ)
地上の内情を探るために差し向けられた間人たち。ルチルやクワトロールが該当する。人間を恐ろしい存在だと思い込んでいる間人にとっては過酷な任務であり、いつ命を落としてもおかしくないものとされている。そのため、地上派遣組に選出される間人は、基本的に捨て駒と見なされている。
場所
アナグランド
地底の奥深くに存在する、間人が暮らす世界。通行手段は極めて希少で、空がないため太陽の光が届かず、独自の生態系が確立されている。なお、地上に住む人間たちはアナグランドが存在を知らないが、アナグランドに住む間人たちは、人間が間人を遥かに凌駕する身体能力と残虐性を持っていると勘違いしている。
ピシャクリフ
キタの街に存在する、アナグランドにおける教育機関。アルルやジェル、グーグルスなどが通っている。マジナグラムの研究機関や、能力検定試験の会場でもあり、アナグランドにおける最重要施設として認識されている。その重要性を示すかの如く、高層ビルのような外観を持つ。
イシェターン
アナグランド最大手のショッピングセンター。構造は日本の百貨店と似ており、草薙千羽がリポリポの2人組に案内してもらった「イシェターン・ココ支店」では、1階がコスメ、2階がレディース、3階がメンズ、そして地下が食品売り場となっている。なお、ルイード・タイタンはこの店の店長を務めているが、阿漕な商売をしているという噂もある。
ココの街 (ここのまち)
アナグランドに存在する街。ルイード・タイタンやリポリポの2人組、クルミエルなどが暮らしている。観光スポットとしては大手ショッピングセンターであるイシェターンが有名で、ファルコから逃れた草薙千羽はこの街でリポリポの2人組と出会い、イシェターンを案内してもらうことになる。
治癒の泉 (るおーなのいずみ)
アナグランドの各所に沸いている泉。ノエルによって管理されており、基本的には無断で使用することを禁じられている。女神の恩寵を受けているとされており、この泉に浸かれば、どんな傷もたちどころに癒すことができる。クワトロールとの戦いで傷を負った草薙京介を癒すために使用され、その結果、京介は人間でありながらマジナグラムを使えるようになった。
キタの街 (きたのまち)
ココの街から北に向かった地点に位置する街。中心部にはピシャクリフが存在し、多くの間人が能力検定試験を受けるためにこの街を訪れる。ルチルは、地上に戻るための手段として草薙千羽がキタの街に向かっていると推測しており、事実千羽はルイード・タイタンの案内によってこの街を訪れている。
イベント・出来事
能力検定試験 (まじなぐらむけんていしけん)
間人がどれだけマジナグラムを上手に扱えるかを検定する試験。キタの街のピシャクリフで毎日行われている。間人の光度はこの試験によって決定され、高い光度の検定試験ほど、難しい内容になっている。光度は間人にとって重要な意味を持つため、毎日多数の間人が、試験を受けるためピシャクリフを訪れている。
その他キーワード
キオク草 (きおくそう)
アナグランドに自生している植物。植物でありながら高い記憶能力を持っており、種を飛ばし動物の身体に侵入することで、その動物の遺伝情報を完全に記憶した種を排出させるという特性を持つ。この能力はスパイ活動において極めて有用で、人間の身体にキオク草の種を植え付け、弱点を記憶することがルチルの任務となっている。
暗号変換機 (ぷがりんがる)
スパイ活動を円滑にするため開発された、言語を変換するための首輪。これを付けられると何を発言しても他者の耳には「プガ」としか聞こえなくなる。しかし、訓練をすることで何を言っているのかある程度理解できるようになるため、ルチルは訓練を積むことで、バハムートと秘密の会話を行うことができるようになっている。
ミガルド
間人の耳に取り付けられている、耳あての形状をした道具。間人はミガルドを身に着けていないと意識を保つことができず、これを外されることは極めて危険である。そのため、他人からは決して外すことができないように作られているが、人間は他の間人のミガルドを外すことができる。草薙千羽や草薙京介は、身体能力が圧倒的に劣っていながらも、この特徴を利用することで勝利を収めている。
巻蔓ブーツ (まきづるぶーつ)
アルルが身に着けているブーツ。その名の通り巻蔓を伸ばす機能が内蔵されている。優れた足技を持つアルルは、この蔓を伸ばすことで相手の身体を絡め取り、引き寄せたところで蹴りを食らわせるという戦法を得意としている。ただし、伸ばせる距離には限度がある。
間人 (まじん)
アナグランドの住人たちの総称。人間とほぼ同じ外見をしているが、身体能力は人間をはるかに上回る。また、マジナグラムと呼ばれる固有の特殊能力を持つ。人間は間人の存在を知らないが、間人の間では、人間は間人よりはるかに強く野蛮であるため、近づいてはならないという勘違いが蔓延している。
間獣 (まじゅう)
アナグランドに生息している獣たちの総称。バハムートやファルコ、デンシャ号などが該当する。その形状は、地上に住む獣に近い外見をしている者から無機物に近いものまでさまざまで、なかにはバハムートのように、間人や人間の言葉を話せる間獣も存在する。
マジナグラム
間人が使用できる特殊能力。「能力」と書いてマジナグラムと読む場合もある。マジナグラムの間に強弱の差はないと言われており、間人の強さはマジナグラムの効果ではなく、その効果をどう役立てられるかで決まってくるとされる。なお、マジナグラムは基本的に1人につき1つしか使えないが、ルチルのような2つのマジナグラムを所有する間人や、ノエルのような他者のマジナグラムを使いこなす間人も稀に存在する。
車 (くるま)
アナグランドの移動手段として広く用いられている間獣の総称。車と呼ばれているが、実際は液体を内包している馬のような外見をしている。人や荷物を持って走るという点も馬にそっくりで、走り方やスピードも個体ごとにまちまちである。
ギリギリドーン
車を求めるルチルが、ジルとデンシャ号を賭けて行ったゲーム。崖に向かって全速力で走り、崖の手前でストップ。その位置がより崖に近い方が勝者となる。地上世界における「チキンレース」に近いゲームとされているが、アナグランドではジルが考えたゲームとなっており、「ギリギリドーン」という呼び名もジルが付けたものである。
アナグルモール
お兄ちゃんが提唱した、草薙千羽、および草薙京介が目指している生き様。他者に迎合せず、自分の意志を貫き通す姿勢のことを指す。自分の場所を探し求め、危険を顧みず穴を掘り続ける土竜に喩えたことから「探る土竜」と呼ばれている。この言葉に強い感銘を受けたルチルもまた、アナグルモールを目指すようになる。
ドルザ・グリュード (どるざぐりゅーど)
店長が得意とする決闘。アナグランドにおいては禁断の格闘技として恐れられている。「ドルザ」と叫びながら2本の指を相手の腕にたたきつけ、その痛みに耐え切れず「グリュード」と叫んでしまうと負けになる。我慢しきった場合は攻防が入れ替わり、受けていた側が相手に「ドルザ」を行い、どちらかが「グリュード」宣言をするまで続けられる。
光度 (れべる)
アナグランドにおける、間人の強さを表すバロメーターの1つ。主に、自らの持つマジナグラムの使い方から判定され、能力検定試験を通過することによって光度を上げることができる。光度が15以上ある場合「宝石(レア)」と呼ばれ、一目置かれるようになるが、逆に光度が5未満の場合「石ころ」と蔑まれることになる。
シュバババゲーム
草薙千羽が受けた能力検定試験における、第1の試練。2つの壁の隙間に数字の書かれたボールを5つ飛ばし、その数字を当てるという内容。普通に考えると到底クリア不可能なものだが、マジナグラムを使って壁を破壊したり、ボールを引き寄せたりという行為は認められている。
ゲコゲコゲーム
草薙千羽が受けた能力検定試験における、第5の試練。早口ガエルと呼ばれるカエルが何回鳴いたか当てるという内容。シュバババゲーム同様、マジナグラムを利用することは許されており、千羽は録音を使うことでこの試練をクリアした。
8カード (えいとかーど)
草薙千羽が受けた能力検定試験における、第6の試練。裏返しに並べられた8枚のカードに書かれた数字を当てるという内容。手や道具で直接触れて裏返すことは禁止されているが、カードが置かれている台は衝撃を与えると発光する物質でできており、1度だけ、台に衝撃を与えることでカードの数字を透けさせることが許される。無論、マジナグラムの利用も可能。
隆起 (でこす)
ルチルが使用するマジナグラム。触れた物質を高く盛り上がらせ、使用者の望む方向に伸ばすことができる。地面を盛り上がらせることでつまづかせたり、盛り上がらせた物体をぶつけることで攻撃に利用したりなど、さまざまな用途に利用することができる。
陥没 (ぼこへる)
ルチルが使用するマジナグラム。隆起とは逆に、触れた物質をへこませたり、穴を開けたりすることができる。人体に向けて使用することもできるが、受けても内臓の損傷などは一切起こらない。それを利用し、自らの身体をへこませることで攻撃を回避するといったことも可能。
生命 (らいふ)
草薙千羽が、マジナグラムと偽って見せた技能。袋の中にスマートフォンを忍ばせ、あらかじめ録音しておいた動物の鳴き声を再生することで、あたかも袋の中に命を作り出したように錯覚させる。アナグランドではスマートフォンが存在しないため、ルイード・タイタンを始め多くの間人を欺くことに成功している。
録画 (れっく)
草薙千羽が、マジナグラムと偽って見せた技能。アナグランドに存在しないスマートフォンの録画機能を使い、マジナグラムと錯覚させたものである。千羽がシュバババゲームに挑んだ際に利用され、壁の隙間をボールが飛んだ瞬間を録画しコマ送りにすることで、難なくこの試練を突破している。
録音 (ぼいす)
草薙千羽が、マジナグラムと偽って見せた技能。アナグランドに存在しないスマートフォンの録音機能を使い、マジナグラムと錯覚させたものである。この機能で早口ガエルの鳴き声を録音し、この試練も余裕で突破する。しかしこの試練を最後にスマートフォンの電池が尽きてしまい、千羽は一転して窮地に陥ることになる。
反転 (りばーす)
草薙千羽が、マジナグラムと偽って見せた技能。8カードにおいて使用された。千羽はスマートフォンが電池切れによって使えなくなってしまいピンチに陥るが、草薙誠十郎から教わったメンコを思い出し、スマートフォンと数字の書かれたカードをメンコに見立て、そのすべてを裏返すことに成功した。
地中潜入 (ちちゅうせんにゅう)
草薙京介が、治癒の泉に浸かったことで会得したマジナグラム。地面や物体などの中に潜入し、泳ぐことができるようになる。また、京介が触れた人や物も、ともに潜入させることが可能。ただし、潜っている最中は息が継げないので、長時間潜り続けていることはできない。また、潜っている最中に手を離した場合、離された物はその中に埋まり、出られなくなってしまう。
気配消し (いんびじぶる)
ストーカーの用いる能力。気配を断つことで、誰にも見つからないようになる。本人いわく、心清らかなストーカーが神より与えられる能力。ストーカーはこの能力を使うことで間人に一切見つからず、草薙千羽を探すための大きな助けとなった。
隠れ反復横跳び (くらぶすらいだー)
ストーカーの用いる能力。草薙千羽を付け回すために修得したもので、靴に仕込んであるローラーを使うことで素早い横移動を行う。ストーカーはこの能力を用いることでサイコドールの攻撃をすべて回避しており、そのあまりに速い移動速度から、能力を目の当たりにしたゴルドフにマジナグラムと誤解させている。
小型化 (こると)
クワトロールが使用するマジナグラム。触れたものや自分自身を縮小させることができる。縮小させられる対象は有機物でも無機物でも可能で、クワトロールはこの能力を使い、フォード・マスタングや、富士ゼロックスの複合機、カーネルサンダースの人形などを収集し、持ち歩いている。ただしクワトロールからあまりにも離れてしまうと、小型化は解除されてしまう。
分解 (ばらす)
ルイード・タイタンが使用するマジナグラム。物質の分子結合を分離させることができる。分離された物体はその場から切り離され、足場に使用した場合は裂けてしまうため、落とし穴として機能させることができる。ただし、生物に対しては使用できないため、敵本体や自分自身を分解することは不可能である。
拘束 (ろっく)
グーグルスが使用するマジナグラム。対象の手足に錠前を発生させ、動きを封じることができる。手足を封じられた者は身動きが取れず、グーグルスの攻撃になすがままになってしまう。しかし、拘束を上回る力を発揮すれば砕くことが可能で、事実アルルは手足に施された錠前を破壊することができた。
軟化 (ぷりま)
ルークが使用するマジナグラム。触れた物質を柔らかくすることができる。マジナグラムによって変形させた地形なども柔らかくできるなど、優れた防御手段として機能している。さらに、柔らかくした岩を飛ばして壁などでバウンドさせ、背後からぶつける瞬間に解除することで大きなダメージを与えることも可能となっている。
操作 (まりお)
カモミールが使用するマジナグラム。意識を持たないものを自在にコントロールすることができる。身に着けている服を飛行させることで自らも飛行したり、気絶した人間や間人を操ったりと、非常に応用の効くマジナグラム。ただし、同時に2つ以上の物質を操ることはできず、新たに何かを操作するには、現在操っている物質へのマジナグラムを解除する必要がある。
切断 (きるど)
バザールが使用するマジナグラム。物質を切断する衝撃波を発生させるという、純粋な攻撃のためのマジナグラムである。シンプルな分、強力な破壊力を持つが、アルルとの対決ではあっさりと避けられてしまい、第2撃を放つ前に巻蔓ブーツで封じられてしまう。
伸身 (のびる)
オルガが使用するマジナグラム。触った物質を大きく伸ばすことができる。また、能力を解除することで、伸びた先に向けて縮めることができるので、重い物体を移動させる用途にも活用できる。オルガはこの能力を使い能力検定試験に臨んだ。
羽毛化 (ふぁーふぁ)
ネルが使用するマジナグラム。触った物質を羽毛に変化させることができる。巨大な壁を1枚の羽毛にしてめくったり、鉄を複数の羽に変えて投げつけ、ぶつける際に解除することでダメージを与えるなど、攻防に優れた汎用性の高いマジナグラムとなっている。
鉄化 (めたる)
メタルが使用するマジナグラム。使用者自らの身体を鉄に変えることができる、攻防一体のマジナグラムである。メタルはもともと力が強く、拳を鉄に変えることで、壁や床を容易に粉砕するほどの威力を持つパンチである「粉砕クレーター」を放つことができる。
薄化 (ぺらん)
シルクド・Qが使用するマジナグラム。自分自身を含めた、あらゆる物体を紙のように薄くすることができる。この能力を使うことにより、どのような狭い隙間でも簡単に通り抜けることができる。ただし、全身をスーツと仮面に覆っているシルクド・Qが使用した場合、とてつもなく不気味な姿となり、見た者にトラウマを与える場合もある。
透視化 (みはえる)
アルベールが使用するマジナグラム。眼帯を外すことにより、壁や障害物などを透視することができる。隠れてもすぐに見つけ出せるようになるため、草薙京介の地中潜行には特に相性の悪い能力。ただし、両手が塞がると眼帯を外すことができなくなるため、透視ができなくなるという弱点がある。
釘化 (とがる)
イカレルが使用するマジナグラム。物質を釘状に尖らせることができる。尖らせた物質はイカレルの思うがままに伸ばすことができ、誘導する刺突攻撃として機能する。隆起と似たタイプの能力とされるが、尖っている分破壊力が増している。反面、高速で動いている相手に対しては、十分な効果が見込めない。
丸化 (まるくす)
ゴルドフが使用するマジナグラム。物質を分離させ、ボール状に変化させることができる。作成できるボールの大きさは掌以下のサイズに限定され、投げつける以外の用途が乏しいため、使い勝手のいいマジナグラムとは言えない。さらにゴルドフ自身が能力の研鑽を怠っていたため、活躍の場面に恵まれなかった。