概要・あらすじ
叔父の家に預けられた14歳の中学生である東雲あづまは、叔父一家の全員から凄惨な虐待を受けていた。そんな中、彼女は鏡から出てきた謎の手により突然連れ去られ、すべてが左右反転した異世界ワンダーランドに召喚されてしまう。そこにいたのは自分と同じように、鏡の中の世界に幻覚を見てしまう奇病鏡の国のアリス症候群に罹患している若者たちだった。
あづまを連れ去ったチェシャ鬼と名乗る生き物は、鏡の国のアリス症候群にかかった者は世界鬼と呼ばれる怪物を殺すために選ばれた戦士「アリス」であると告げて姿を消す。そこに突如出現した、見上げるほどの巨躯の怪物。怪物は大きな腕を振り上げ、襲いかってくるのだった。集められた7人の戦士たちは、世界鬼を倒して6つの夜を乗り越える、残酷で絶望の日々に挑む。
登場人物・キャラクター
東雲 あづま (しののめ あづま)
白いシャツの上から黒いワンピースを着ており、前に伸びた髪で片目を隠している少女。14歳の中学生であるが警察に小学生と見間違われるほど身長が低く、心もかなり幼めで内気な性格。父親とは死別、母親は失踪中で叔父家族に預けられている。叔父家族からは虐待を受けており、その生活は非常に悲惨なものである。ペットショップの店員から譲り受けた文鳥ちゃんを大切に心の支えとしていたが、それもうるさいという理由で長男の浩樹に殺されてしまう。 「ワンダーランド」での戦いにおいては最初は役に立たなかったが、第3夜以降に知ったあることがきっかけで、壮絶な変化を遂げることとなる。
足立 輝 (あだち てるき)
大学浪人中の19歳の青年で、髪を金髪に染めている。鏡の国のアリス症候群に罹患したうちの1人。チェシャ鬼に文句を言ったり、冷静に分析する宇藤耕太郎に当たったりと威勢がいいように見えるが、実際はかなりのヘタレで、東雲あづまに気をつかう心の優しい一面も見られる。ワンダーランドでの第1夜では、世界鬼に掴みかかられた際にバラの花をイメージし、それを実体化させて突破のきっかけを作った。
宇藤 耕太郎 (うとう こうたろう)
鏡の国のアリス症候群に罹患したうちの1人。レンズに星マークの意匠を施した眼鏡をかけジャージを着ている。漫画家になりたいという夢を親や教師から反対され編集者になったが、漫画の内容にうるさく口出しするため担当する多くの漫画家から嫌われている。ワンダーランドで世界鬼と戦うことをゲーム感覚で楽しんでおり、ヒロイックな自分でありたいと思っている。 第2夜の世界鬼を倒す際には作戦を考えたが、それによって佐伯沙希が怪我を負ってしまったことに関し、責任を感じている。
大倉 快人 (おおくら かいと)
鏡の国のアリス症候群に罹患したうちの1人。禿げ頭で大男の元自衛隊隊員で現在は都内の刑務所で服役中。元自衛官であるだけに火器の知識は豊富で、ワンダーランドでは、装甲車やロケットランチャー、戦車までも実体化させた。見た目は狂気を感じさせるが、実はかなりの善人で周りに気を使う人物。同性愛者で自衛官時代から付き合いのある看守の山口さんとは実は恋愛関係にある。
黒江 稔 (くろえ みのり)
黒髪ロングストレートの女子高校生。鏡の国のアリス症候群に罹患したうちの1人。鏡の中に見えてしまう幻覚と幼い頃の経験からセックス依存症に陥り、援助交際等をくり返している。結果的に恋人との間に望まない子供ができてしまうが、そのことを知った恋人には逃げられてしまう。子供を産むつもりはなかったが、チェシャ鬼との出会いでその考えを改める。
佐伯 沙希 (さえき さき)
短めの髪にボーイッシュな服装の女子高校生。鏡の国のアリス症候群に罹患したうちの1人。恐ろしい幻覚に襲われるため誰かに依存する性格で、親友の美香と一緒にルームシェアをして生活している。美香は鏡を見ることのできない佐伯沙希のメイクなどを手伝っているが、世界鬼との戦いの中で彼女たちを悲劇が襲う。
瀬木 ひじり (せき ひじり)
「アリス」たちの中で唯一素性のはっきりしない赤髪の青年。世界鬼やチェシャ鬼に対しては容赦ない態度を取るが、東雲あづまに関してのみ優しく接する。戦いの最中でも常にあづまのことを気にかけ、あづまへの危険は全力で排除しようと行動する。しかし、その行動の理由は謎である。
チェシャ鬼 (ちぇしゃおに)
東雲あづまたち「アリス」をワンダーランドに送り込んだ生き物。大きな顔と離れた両腕のぬいぐるみのような姿。ただしこれは仮の姿で、本体はどこかに隠れている。ワンダーランドや世界鬼についての知識をあづまたちに授けるが、必要以上に多くを語ろうとはしない。世界鬼と敵対関係にあるが、なぜ敵対しているのかは不明。
文鳥ちゃん (ぶんちょうちゃん)
東雲あづまが大切にしている鳥。ペットショップで間違って孵化してしまったものをあづまが譲り受けた。譲った人物が鳥に詳しくなかったため文鳥と勘違いしたようだが、見た目はセキセイインコ。つらい現実の支えとしてあづまは何よりも大切にしている。あづまの叔父の長男、弘樹にうるさいという理由で殺されてしまう。その時、あづまは普段は見せないほど強い感情を爆発させた。 その後もあづまは死体となった文鳥ちゃんを大切に持ち歩いている。
あづまの叔父 (あづまのおじ)
東雲あづまの叔父、匡樹。家族は妻の彩香、長男の弘樹、弟のかずやで構成され、家族揃ってあづまに対して非常に残忍な虐待行為をくり返している。本人は暴力を振るうことなく優しい態度を装っているが、勉強を教えるという理由であづまの部屋に入りあづまを犯している。
奇怪鬼 (きかいおに)
第1夜で東雲あづまたちが戦った世界鬼。寄り目の大きな瞳に大きな口の、人形のようなシンプルな体で、顔からは上と左右の3方向にアンテナのようなものが突き出ている。10メートルを超すほどの巨体で、これほどの大きさは世界鬼でも珍しいらしい。大きな両腕を振りかざして叩き潰したり、握りつぶして攻撃する。足立輝によってとどめを刺される。
自戒鬼 (じかいおに)
第2夜で東雲あづまたちが戦った世界鬼。大きなシルクハットにスカートを履いた魔女のような見た目。右手に持っているボールに電撃を貯めて上空の魔法陣に向けて発射し、そこから雷に似た電撃を落とす。電撃を貯めている間は左手の剣を使って防御や攻撃を行う。多数の浮遊する目を持ち、あらゆる方向からの攻撃に対応できる。実は右手に持ったボールが本体で、体の方は偽物である。
境鬼 (さかいおに)
第3夜で東雲あづまたちが戦った世界鬼。両腕、背中に大きな砲塔を持ち、腰から生えたアフターバーナーで高速移動する。砲塔は境鬼の武器であると同時に、実は自身の本体でもあり、胴体の部分は見せかけの付属品。ある理由から覚醒したあづまに、一瞬にして葬られる。
老獪鬼 (ろうかいおに)
第4夜で東雲あづまたちが戦った世界鬼。これまでに登場した世界鬼に比べると体が小さく、タコのような見た目をしている。浮遊した状態で非常に素早く移動し、その速度はあづまでも追い付けないほど。強酸性の墨を吐き出すことで攻撃する他、人間に寄生することで本当の力を発揮する。ある理由から錯乱状態にあった黒江稔に寄生し、あづまたちを追い詰めた。
場所
ワンダーランド
チェシャ鬼が東雲あづまを連れて召喚した異世界。鏡に映したようにすべて左右が反転している。世界鬼とあづまたち「アリス」が戦う場所であり、アリスたちは精神エネルギーの状態で召喚されているため体が強化された状態となっている。ここでは、鏡の国のアリス症候群の人間は頭で想像したモノを実体化、さらに現実から持ち込んだものを「顕在化」して強力な力とすることができるため、強力な世界鬼に対抗できる唯一の場所であると言える。
その他キーワード
鏡の国のアリス症候群 (かがみのくにのありすしょうこうぐん)
鏡やガラス、水面など反射する鏡面上に、本来映るはずのない幻覚が見える奇病。原因は精神的な不安からくるものだといわれており、患者は思春期の人間に多い。個々によって見るものが違う。鏡に映ったものが話しかけてくることもあり、人によっては会話もできる。幻覚の原因、治療法は解明されておらず、発症している本人のみが知覚できる。医者の中には、彼らは鏡の向こうに実在するものを本当に知覚しているのではないかという者までいる。 チェシャ鬼によれば、これは世界鬼と戦うための「剣」であるという。
世界鬼 (せかいおに)
チェシャ鬼が世界鬼と呼ぶ化け物。正体不明でなぜ地球に現れて破壊行動をするのか、どうしてチェシャ鬼と対立しているのか多くのことが不明である。巨大な体を持つものから砲塔を体に備えるものまで姿は多種多様。チェシャ鬼によれば、人間と人間世界に対して、溢れんばかりの敵意を示す異世界の住民であるという。