アナスタシア倶楽部

アナスタシア倶楽部

祖父の残した骨董店を守る椿カムイと、彼女のもとに客として訪れた、ロマノフ家の生き残りであると名乗る瀬名卓斗。卓斗の出生の秘密や彼の持つインペリアル・イースターエッグを巡って、事件に巻き込まれていく2人の姿を描くサスペンスアクション。「プチフラワー」に2001年5月号から2002年5月号、「flowers」2002年6月号から2003年11月号、「flowers増刊凛花」2007年初号から2008年第3号にかけて連載された作品。

正式名称
アナスタシア倶楽部
ふりがな
あなすたしあくらぶ
作者
ジャンル
家族
レーベル
コミック文庫(女性)(小学館)
巻数
既刊3巻
関連商品
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あらすじ

インペリアル・イースターエッグ編(第1巻~第2巻)

亡くなった祖父、椿十五郎の残した「骨董屋椿」を守っていた椿カムイのもとに、瀬名卓斗から、持参した遺骨と自分自身との血縁関係を調べて欲しいという依頼が持ち込まれた。遺骨はロシア革命によって銃殺されたと言われている4番目の皇女、アナスタシアのものであり、鑑定の結果、卓斗との血縁関係も立証される。さらに卓斗は、ロマノフ家の財宝であるインペリアル・イースターエッグも所持していた。 卓斗がアナスタシアの子孫であることが新聞沙汰になって世間を賑わせるようになると、墨雷介と名乗る男性がカムイの前に現れる。雷介もまたインペリアル・イースターエッグの持ち主で、自分こそがロマノフ家の子孫であると主張する。カムイの鑑定によると、2つのインペリアル・イースターエッグはマトリョーシカのような構造になっており、もとは1つだったのではないかと推察されたが、それを裏付ける証拠はない。新たなインペリアル・イースターエッグを探し出して、自分たちの持つ物が本物だと証明しようと考えた卓斗は、カムイの協力を得て、ほかのインペリアル・イースターエッグを探そうと決意するのだった。その途中で彼らは、中でも特別な6つのインペリアル・イースターエッグを集めた者は、ロマノフ家の財産を受け継ぐ権利を得ると知る。星羅・レオーノワイリア・ミハイロビッチとの争奪戦を経て、2人は、最後の1つを求めてロシアに渡り、そこでロマノフ王家の生き残りであるミハイロビッチ皇女と出会う。そして6つの特別なインペリアル・イースターエッグをそろえ、ロマノフ家との血縁関係も正式に証明された卓斗は、ミハイロビッチ皇女と共に世界一周の旅に出る。こうして卓斗とカムイはしばし別れることとなった。

チャイコフスキー編(第2巻)

瀬名卓斗から招待状を受け取った椿カムイ星羅・レオーノワ墨雷介の3人は、ロシアから来たバレエ団のステージを見に行く。そこで3人は久々に卓斗と再会。その後、公演の成功を祝ってミハイロビッチ皇女の船でパーティーが行われた。そこでカムイは、バレエ団のトップバレエダンサーであるウラジミール・ダビドフから、彼の祖先であるチャイコフスキーが残した「くるみ割り人形」が、価値のあるものなのかどうか、鑑定を依頼される。その結果、人形自体には価値はなかったものの、いっしょに残されていたクルミの中に、チャイコフスキーが当時のロシア皇帝からもらった指輪が隠されていたことが判明する。この一件により、ウラジミールはカムイの鑑定の腕が本物であると認め、改めてチャイコフスキーによる幻の未発表作品の鑑定を依頼。そしてこの楽譜が、本物のチャイコフスキーの曲だと証明される。カムイはチャイコフスキーが家族たちに残したかったメッセージをひもとき、ウラジミールに伝えるのだった。 後日、息子であるイリア・ミハイロビッチを亡くしたミハイロビッチ皇女は、ロマノフ家の血を引く卓斗を正式に養子にしたいと望むが、それを聞いたウラジミールは激しい嫉妬にかられる。そんな中、ウラジミールが舞台上で怪我をしてしまい、かつて共にバレエをしていた経歴を持つ卓斗が代役を務めることとなった。だが、卓斗がミハイロビッチ皇女にウラジミールを養子にするように勧めていたと知ったウラジミールは、心のわだかまりを解いて代役の卓斗と交代。足の怪我をおして、最後まで舞台で踊り切るのだった。

ラスプーチンの遺物編(第2巻~第3巻)

ある日、瀬名卓斗椿カムイに、「聖なる悪魔」と言い伝えられている「ラスプーチン」の物であるという、「呪いのクロス」の鑑定を依頼する。これはミハイロビッチ皇女が所有していたものだが、気味が悪いのでオークションで売るのだという。鑑定したカムイは、クロス自体はラスプーチンのものであるが、中央に宝石ではないただの石が埋め込まれていることに気づく。結局、オークションにかけられた「呪いのクロス」は、ある男性が買い取ったが、その人物は直後に謎の死を遂げてしまう。カムイは遺族から返された「呪いのクロス」をもう一度詳しく調べ、中央の石の正体が隕石であり、その石には高濃度の放射線を出すウランが含まれていることに気づく。カムイはこの事実をロシアにいる卓斗に伝えるが、その直後に通信が途絶え、卓斗は音信不通になってしまう。後日カムイは、来日したウラジミール・ダビドフから、ミハイロビッチ皇女が亡くなり、彼女の親族から、その死が卓斗によるものだと責められた、と知らされる。 卓斗を探しにロシアに飛んだカムイと墨雷介星羅・レオーノワは、卓斗と合流することに成功。彼はマフィアに拉致されたと見せかけ、自ら姿をくらましていたのだった。卓斗は手元にある「聖母子のイコン」という宝物の残り半分を探しており、彼に頼まれてカムイ達は捜索を開始する。ラスプーチンの生まれ故郷である村にやって来たカムイたちは、そこの教会で残り半分のイコンを発見。2つのイコンを組み合わせた時、カムイたちは白昼夢で、ラスプーチンの最期の姿を見届けるのだった。

瀬名卓斗の過去編(第3巻)

日本に戻って来た椿カムイは、高校を卒業して瀬名卓斗と同じ世華大学に進学。しかし、卓斗は仕事でヨーロッパ中を飛び回っており、なかなか会えない日々が続いていた。そんなある日、桜尉葉一郎という男性がカムイのもとを訪ねて来る。彼は亡くなったロシア人の父親が母親に贈ったという、宝物のティアラを取り返したいと、カムイに相談してきたのだった。そこへ卓斗が現れ、葉一郎の探しているティアラが、かつて自分の母親が持っていたものに酷似していることに気づく。そして、これまで伏せていた自分自身の過去について、カムイに打ち明けるのだった。ティアラの本当の持ち主を知るため、残された証拠をもとにティアラを探し求めたカムイは、実は葉一郎と卓斗が腹違いの兄弟であることを突き止める。卓斗はその事実を受け入れず、カムイに謎の箱を残したまま姿をくらましてしまう。 そんな中、カムイの前に卓斗を訪ねてマリーヤ・マレンコフと名乗る女性が現れ、宝石を返してほしいと懇願する。彼女はドミトリー・ザハロフの手の者で、実際に求めていたのは宝石ではなく、それが入っていた謎の箱の方だった。実は箱には仕掛けがあり、密かに闇で行っている、少年売春クラブの顧客リストが隠されていたのである。真実を知ったカムイは、ドミトリーに捕らわれた卓斗を助けるため、箱を持ってドミトリーとの取引現場へと向かう。

登場人物・キャラクター

椿 カムイ (つばき かむい)

世華大学附属の高等部に通う女子高校生。亡き祖父の残した骨董店「骨董屋椿」の店主でもある。鑑定士として、祖父譲りの高い能力の持ち主で、推理力やひらめきにも優れる。背が低くて小柄なため、小学生に間違えられることが多い。少々浮世離れしたところがあるが、一途な性格。客として現れた瀬名卓斗とかかわっていくうちに、想いを寄せるようになる。

瀬名 卓斗 (せな たくと)

世華大学に通う男子大学生。ロシアの皇族であるロマノフ家の皇女、アナスタシアの曾孫で、その証拠となるインペリアル・イースターエッグの1つを持っている。これが本物かどうか、鑑定を依頼して椿カムイと知り合う。すらりとした筋肉質な体格に美しい顔立ちで、瞳はインディゴブルー。ミステリアスなところがあり、他人になかなか心を開かない。 両親を早くに亡くしたせいで幼少期には苦労しており、その過去から逃れられないでいる。

墨 雷介 (すみ らいすけ)

世華大学に通う男子大学生。ロシアの皇族であるロマノフ家の皇女、アナスタシアの曾孫だと教えられてきたが、のちにそれは噓だったとわかる。自身が持っていたインペリアル・イースターエッグの鑑定を依頼して椿カムイと知り合い、彼女に想いを寄せるようになる。しかし、カムイが瀬名卓斗を想っているのを知っているため、自分の気持ちは明かしていない。 すぐに感情的になるところがあるが、根は真面目で、優しい性格。

星羅・レオーノワ (せいられおーのわ)

世華大学に通う女子大学生。ロシア人の血を引いている。ミステリアスな美女で、自分の素性は明かさない。実はイリア・ミハイロビッチの命令でインペリアル・イースターエッグを狙っており、瀬名卓斗に近づくために、身体の関係を持つ。以後、卓斗にベタベタして椿カムイを刺激するが、基本的にはあっけらかんとした性格で、根は悪い人物ではない。

大日向 (おおひなた)

世華大学の構内にある、私的鑑定機関「アナスタシア倶楽部」で働いている男性教授。いつも髪はぼさぼさのままで、白衣をまとっている。一見すると変わり者だが、実はDNA鑑定なども手掛ける本格的な研究者。椿カムイの鑑定の実力を高く評価している。

桜尉 葉一郎 (さくらい よういちろう)

椿カムイと同時期に世華大学に進学した男子大学生。実は父親はミハイル・ステファノビッチ・マレンコフで、瀬名卓斗とは異母兄弟の関係。母親の実家が金持ちで、父親に認知されないまま早くに死に別れたあとも、金に不自由しない生活を送ってきた。星羅・レオーノワと付き合っている。星羅に頼まれ、金を作るために母親の大切な宝石を質屋に預けてしまうような、向こう見ずなところがある。

ミハイロビッチ皇女 (みはいろびっちこうじょ)

ロシア皇族であるロマノフ家の血を引く老女。足が不自由で、いつも車いすを使っている。息子であるイリア・ミハイロビッチが亡くなったあと、ロマノフ家の血を引く瀬名卓斗を自分の養子にしようと考える。アナスタシアとは生前懇意にしており、彼女の境遇を救えなかったことを悔やんでいる。

イリア・ミハイロビッチ (いりあみはいろびっち)

ロシア皇族であるロマノフ家の血を引く男性。ミハイロビッチ皇女の息子。ロマノフ家が残した財宝を探すため、インペリアル・イースターエッグを集めていたが、無理な捜索が祟り、バイカル湖で事故に遭って亡くなってしまう。

ドミトリー・ザハロフ (どみとりーざはろふ)

生前のミハイル・ステファノビッチ・マレンコフの旧友。父親を失った瀬名卓斗が天涯孤独の身になり、ロシアでストリートチルドレンとして生活していた時に、彼に自分とベッドを共にするよう強要した。少年だった卓斗の心に、大きなトラウマを残した張本人。

ミハイル・ステファノビッチ・マレンコフ (みはいるすてふぁのびっちまれんこふ)

瀬名卓斗や桜尉葉一郎の父親のロシア人男性。すでに亡くなっている。ロマノフ家の生き残りと言われるアナスタシアの孫。ロシアの外交官として働いており、正妻であるマリーヤ・マコンレフがいながらも、日本滞在中に現地の日本人女性と関係を持ち、卓斗や葉一郎を遺した。

マリーヤ・マコンレフ (まりーやまこんれふ)

ミハイル・ステファノビッチ・マレンコフの正妻。ミハイル亡きあとは彼の遺産で生活していたが、現在は困窮しており、日本の卓斗を訪ねて、彼がかつて持ち出した宝石の返却を求めた。強欲な性格で、金のためならどんなことでも平気でする。

ウラジミール・ダビドフ (うらじみーるだびどふ)

ロシア人の男性バレエダンサー。チャイコフスキーの子孫という血統の持ち主。弱冠20歳の若さでありながら、世界中のバレエ団からひっぱりだこのスーパースター。瀬名卓斗と同じ小学校に通っていたことがあり、卓斗の後輩にあたる。

椿 十五郎 (つばき じゅうごろう)

椿カムイの祖父。カムイに鑑定技術を教えた師匠でもある。自らが開業した「骨董屋椿」の店主をしていたが、瀬名卓斗が店を訪ねて来る3週間前に病気で亡くなった。困っている人を見過ごせないお人好しで、表に出せないような秘密の品物の鑑定なども引き受けていた。

アナスタシア

ロシアの最後の皇帝であるニコライ2世の4番目の皇女。ロシア革命後に銃殺されたが、奇跡的に一命を取り留めて生き延びていた。その後は人知れず亡命し、やがて戦後の落ち着いた時期に名乗り出た。しかし、財産を狙う偽物が絶えなかったこともあり、正式に認められずに失意のまま亡くなった。ちなみに「アナスタシア」という名前には、ロシア語で「蘇生」という意味がある。 実在の人物、アナスタシア・ニコラエヴナがモデル。

場所

世華大学 (せいかだいがく)

瀬名卓斗、墨雷介、星羅・レオーノワらが通う大学。レンガ造りの瀟洒な外観が特徴。椿カムイは附属の高等部に在籍していたが、のちにそのまま大学部に進学する。同年、桜尉葉一郎も大学部に入学する。

アナスタシア倶楽部 (あなすたしあくらぶ)

世華大学の私的鑑定機関である研究所。もともとは「大日向研究所」という名前だったのだが、ここでアナスタシアの骨を鑑定し、瀬名卓斗との血縁を立証するという世紀的な発見をしたことを記念して、「アナスタシア倶楽部」と改名した。

骨董屋椿 (こっとうやつばき)

椿カムイの祖父である椿十五郎が経営していた骨董品店。十五郎亡きあとは、彼の遺言によりカムイが店を相続し、守ってきた。骨董を仕入れて売るだけでなく、その鑑定も行う。

その他キーワード

インペリアル・イースターエッグ (いんぺりあるいーすたーえっぐ)

ロシア帝国最後の皇帝であるロマノフ家のニコライ2世が、家族たちのために毎年作らせたという、世界に50個しかない特別な宝物。通称「エッグ」。高価な宝石がちりばめられており、きらびやかなだけでなく、すべてのものに何がしかのサプライズが仕掛けられている。50個のうちいくつかが行方不明になっているが、中でも特別な王妃と5人の子供たちに贈られた6つのインペリアル・イースターエッグを集めた者は、ロマノフ王家の巨額の隠し財産を相続できるという噂がある。

ロマノフ家 (ろまのふけ)

ロシア帝国において皇帝を輩出してきた家柄。言わば帝室。最後の皇帝であるニコライ2世は世界一の金持ちだったが、ロシア革命によって皇帝一家全員が銃殺された。第4皇女であるアナスタシアは奇跡的に一命を取り留めて亡命したが、その後は自分がロマノフ家の一員であると証明できずに亡くなった。ちなみに皇帝の親戚は生き残り、現在もその血筋は続いている。

書誌情報

アナスタシア倶楽部 3巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉

第1巻

(2010-08-12発行、 978-4091911087)

第2巻

(2010-08-12発行、 978-4091911094)

第3巻

(2010-09-15発行、 978-4091911100)

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