概要・あらすじ
十四歳の夏、ドイツ南部シュワーベンにある生まれ故郷の村キップハルトで学校の友人たちと夏休みを過ごすことになったルカス・キップハルト。彼は物心ついた頃から、生まれてすぐに死んでしまった双子の兄弟、アロイスの意識を持っていた。幼馴染のリースベルトへの恋心を自覚すると共に、アロイスの意識が強くなり、ついにアロイスは自立を望むようになる。
登場人物・キャラクター
ルカス・キップハルト
十四歳の少年。物心ついた頃から自分の中に、死んでしまった双子の弟アロイスの意識を共存させており、声帯を貸して喋らせている。幼馴染のリースベルトへ恋心を持っているが、それをなかなか表に出せないでいた。彼が二重人格を患っているのか、本当にアロイスの魂や意識や存在しているのかは不明。
アロイス・キップハルト
ルカス・キップハルトの双子の弟。早産が原因で、生まれてすぐ死んでしまった。ルカスの中に意識のみ存在し、ルカスの声帯を借りて喋る。ルカスよりも声が低く、抑揚のない喋り方。人見知りで勝気な性格をしており、頭がいい。建築学に興味がある。
フェローネ・キップハルト
ルカス・キップハルトとアロイス・キップハルトの母親。妊娠して七ヵ月半の時、庭で転んだショックで早産となり、アロイスを亡くしてしまう。ルカスがアロイスとして喋る「一人遊び」を止めずに育ててしまったことを悔やんでいる。いとこから紹介された元医師ハーゲン・ハインツにルカスの精神状態を探ってほしいと頼む。
ハーゲン・ハインツ
元医師で、現在は小説家をしている男性。フェローネ・キップハルトのいとこの知り合いで、フェローネにキップハルトの村へ休養に来るよう招待された。フェローネから息子のルカス・キップハルトが亡くなった兄弟のアロイスとして喋る「一人遊び」をしていることについて相談を持ちかけられる。
リースベルト
ルカス・キップハルトのまたいとこにあたる、幼馴染の少女。現在はミュンヘンに住んでいるが、夏季休暇のためキップハルトの村へ弟のミケールと共にやってきた。ルカスに恋心を抱いている。
ミケール
リースベルトの弟。心臓手術の経験がある病弱な少年。新しいところに泊まった一日目は、必ず寝ぼけてしまう癖がある。
ベン
ルカス・キップハルトの学校の友人。アラビア系の少年。夏休みの間、ライダーと共にルカスの故郷であるキップハルト村へ遊びに来ている。ルカスの中のアロイスの実在を信じている。リースベルトに好意を抱き、何かと構いたがる。
ライダー
ルカス・キップハルトの学校の友人。めがねをかけた少年。夏休みの間、ベンと共にルカスの故郷であるキップハルト村へあそびに来ている。
場所
キップハルト
ドイツ南部のシュワーベンにある村。ルカス・キップハルトの先祖が植えたねむの森がある。