謎の巨人「アヴァルト」が支配する世界
本作の舞台となるのは、西暦12094年の地球。かつての文明は消え去り、中世ヨーロッパに似た世界が広がっている。そこには無数の目と触手を持つ「スパゲッティ」や、目鼻がない巨大な「砂喰い」といったグロテスクなモンスターが存在し、人類の脅威となっている。人々はモンスターと戦う術をもっていないが、ある程度人間が殺されると、「アヴァルト」という、銀や青一色の巨人たちが降臨しモンスターを殲滅(せんめつ)する。人々は全知全能の「神」であるアヴァルトを信仰しているが、彼らは気分次第で簡単に人間を殺してしまう恐ろしい存在でもある。少年のタギは、他愛のない理由で母を殺した「マーシュ」というアヴァルトに復讐を誓う。
現実と化したゲーム世界の謎を追う
宇宙飛行士のロイドは地球の静止軌道上の宇宙船で、コールドスリープから目覚める。自分が眠ったときからすでに1万年が経過しており、地球からはかつての文明が消え去っていた。また、ミイラ化していたクルーがプレイしていたオンラインゲームが稼働し続けていて、地球の風景はそのゲーム世界とそっくりになっていた。ゲームを遊び尽くしていたロイドは、自分のアカウント「ネッド」でゲームにログインしてみる。すると、カエルのアバターが瞬時に生成され、現実世界の地球上に降り立つことができた。タギの母を殺したマーシュというアヴァルトと対面したロイドは、アヴァルトらがゲームのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)で、いつの間にか強大な力を得ていることを知る。ロイドは、何らかの理由で現実と化したゲーム世界の謎を追うことになる。
ファンタジー世界の群集劇
「講談社コミックプラス」掲載の作者インタビュー(2016年5月9日)によれば、「かねてから群集劇のファンタジーものをやれたらいいな」と考えており、「シリウス10周年記念企画で描いてみないか」と担当編集者に言われたのが本作誕生のきっかけだった。また、突飛な設定なので、まずはシンプルで感情移入しやすい少年とカエルをストーリーの軸にしたという。その言葉通り、少年のタギとカエルのネッド(ロイド)の物語から始まり、ストーリー中盤からはロイド同様、外からログインしているアバターが登場。ロイド以外のアバターの描写を交えてストーリーが展開することになる。
登場人物・キャラクター
タギ
銀髪と赤い目が特徴の少年。母とともに訪れた街で、神を名乗る巨人「アヴァルト」たちに遭遇する。「神と同じ銀髪が不快」という理不尽な理由で、「マーシュ」という名のアヴァルトに母を殺されてしまう。マーシュに歯向かったため、自身の命も危なかったが、カエルの剣士、ネッドに救われた。マーシュに異を唱え、人間サイズになったアヴァルトのシノア、恩人のネッドとともに復讐の旅に出る。
ロイド・コスギ
太陽系外探査のミッションで宇宙に出た、21世紀の宇宙飛行士の金髪の青年。何者かにコールドスリープから蘇生(そせい)され、1万年後の宇宙船で目覚める。1万年間稼働していたオンラインゲームと現実世界が同調しており、ゲームにログインすることで、カエルのアバターで地球上に存在できる。アバター名は「ネッド」。ゲームを遊び尽くしていたためレベルは高く、神を名乗る巨人「アヴァルト」とも戦える。
シノア
神を名乗る巨人「アヴァルト」の女性。銀色のロングヘアーが特徴。人間を皆殺しにしようとした、アヴァルトのマーシュに異を唱えたため、アヴァルトから追放される。人間と同じサイズになり、身体の再生能力を失うが、依然として高い攻撃力を持っている。少年のタギ、カエルの剣士ネッドに同行する。
書誌情報
アヴァルト 6巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2016-05-09発行、 978-4063906288)
第2巻
(2016-08-09発行、 978-4063906455)
第3巻
(2016-12-09発行、 978-4063906684)
第4巻
(2017-03-09発行、 978-4063906868)
第5巻
(2017-06-09発行、 978-4063907179)
第6巻
(2017-11-09発行、 978-4065103364)