ベルセルク

ベルセルク

世界観

全体的な世界設定

本作の舞台は機械的な文明がそれほど発達していない中世ヨーロッパのような世界観がモデルとなっており、石造りの建物や深く広大な新緑の森、切り立った山々などが頻繁に描写されている。人々は貧富の差のはっきりした階級社会の中で生活しており。横暴な貴族が登場することも珍しくない。また、ある一神教の宗教が民衆から絶大な支持を得ているようで、そこの教会組織である法王庁が、この世界において絶大な権力を保有。物語が展開されているのはミッドランド王国がある広大な大陸が主となっているが、その周囲には外洋も広がっており、「幻造世界(ファンタジア)篇 妖精島の章」では登場人物たちが軍艦に乗り、海上を冒険する姿が描かれている。

「現世」と「幽界」

作品世界には人間たちが住む現世(うつしよ)と、幽霊や異形の者たちが存在するいわゆるあの世に相当し、いくつかの層に分かれた幽界(かくりょ)、そして、幽界の深層のさらなる深みにあるという、すべての存在の根源である魂の世界・本質(イデア)の世界が存在。肉体を持つ人間は基本的に幽界に踏み入ることは不可能だが、幽界の比較的浅い層である狭間の領域は現世と重なっており、烙印を刻まれて使徒の生け贄にされた者や、幽界の精霊たちから力を借りて絶大な力を発揮する魔法使いなど、何らかの形で幽界に干渉した者はこの領域の住人となる。また、現世にまみれておらず信じる力が強い子供なども幽界に干渉しやすく、人に危害を加えない幽界の住人エルフなどが目撃される例も稀に発生しているようだ。

幽界のさらなる深層部には邪悪な怪物、獣鬼(トロール)や巨鬼(オーグル)などが無限に生み出される闇の領域や、現世で魔に関わった者たちが死んだ後に行き着く深淵などが存在。なお、ゴッドハンドはこの深淵を棲み家としている。詳しいことは未だに判明していないが、深淵のさらに深い場所にも何かが存在するようだ。

物語が進むと、ゴッドハンドとなったグリフィスが受肉して現世に転生し、クシャーン帝国の王・ガニシュカとの戦いに髑髏の騎士が干渉。このあまりにも非現実的な三つ巴の状況を経て、現世と幽界が融合し、ドラゴンやユニコーンなど、従前は想像上の生き物としか認識されていなかった生物が普通に闊歩する幻造世界(ファンタジア)と呼ばれる新たな世界が誕生した。

「ミッドランド王国」と「チューダー帝国」の「百年戦争」とその後

物語の主な舞台となるのは城塞都市ウィンダムを首都とするミッドランド王国である。ミッドランド王国はその東に位置するチューダー帝国と百年戦争と呼ばれる領土争いを繰り広げていた。また、ミッドランド王国の東に広がる山脈を遙か越えた先にはクシャーン帝国が存在。物語の序盤からそこの出身であるバーキラカと呼ばれる一族が登場し、暗躍している様が描かれるが、クシャーン帝国が台頭してくるのは千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 聖魔戦記の章以降だ。

長く戦争が続くと必要になるのが兵士であり、それを生業とする傭兵たちが重宝される。主人公のガッツも傭兵として戦争に参戦。その傭兵集団のなかでも、伝説的存在になるのがのちにガッツが加わることになる鷹の団である。自分の国を持つことを夢見るグリフィスの下に集まった若者たちにより組織され、グリフィスの天才的な統率力と軍才により、各地で連戦連勝を続けている鷹の団。ミッドランド王国の重要要塞拠点であったドルドレイ城塞が奪われたことで、ミッドランド王国は劣勢を強いられていたが、ここに鷹の団が介入したことで、ドルドレイ城塞の奪還に成功する。これにより一気に形勢が逆転し、両国の間で休戦協定が結ばれ、百年戦争と呼ばれる戦いは終結するに至った。

だがその後、鷹の団は国家の敵となり、ミッドランドの国王は乱心したかのように逃げたグリフィスの捜索に固執。これによって国家の政情が不安定化し、心身ともに疲弊した王はやがて崩御してしまう。その混乱を突いてクシャーン帝国がミッドランド王国の侵略を開始。魔の軍団を率いるクシャーン帝国に為すがまま蹂躙されていたが、そこへ現れたのがグリフィスであった。組織内に使徒を編成した人魔混成の新生鷹の団がクシャーン帝国に戦いを挑み、巨大な使徒として降臨したクシャーン帝国の国王・ガニシュカを打倒。国を追われていたグリフィスは再び英雄となるのだった。

「ベヘリット」と「使徒」

人の顔が刻まれた卵のような物体・ベヘリットは物語のキーアイテムのひとつ。ある条件によりその力を発動させると、人知を超えた力を持つ異形の魔物使徒を統べる者ゴッド・ハンドが呼び出される。そして、使用者が自身の半身とも言える大切なものを生贄として捧げることで、降魔の儀という儀式が始まり、使用者を新たな使徒として転生させる。ベヘリットの中でも真紅の色を持つものは、別名覇王の卵と呼ばれ、蝕と呼ばれる降魔の儀により、新たなゴッドハンドが誕生する。劇中ではグリフィスが蝕を実行し、ガッツキャスカ鷹の団の団員たちを生け贄として捧げることで5人目のゴッド・ハンド・フェムトへと転生した。また、ゴッド・ハンドに仇なす者として、骸骨のような形状の鎧を纏った髑髏の騎士が存在し、この髑髏の騎士の助力により、ガッツは蝕を生き延び、この因縁に決着をつけるために黒い剣士となりグリフィスの行方を求めることに。

作品構成

物語をひとつの大きなエピソードで区切っており、序章にあたる黒い剣士ではガッツが魔の者と戦う姿を、黄金時代では時間を過去に遡り、なぜそうなるに至ったのかが描かれている。その次の断罪篇 ロスト・チルドレンの章より、大エピソードを「~篇」、その中の小エピソードを「~章」と題してより細かく区切ることになり、2015年10月現在は幻造世界(ファンタジア)篇 妖精島の章が連載中。単行本第15巻には、黄金時代の完結を記念して、1988年に三浦建太郎が本作のひな形として執筆した投稿作品『BERSERK THE PROTOTYPE』が収録された。また、第83話の「神との対話 深淵の神②」のみ、物語の根幹的なことが描かれていたためか、単行本では未収録となっている。

あらすじ

黒い剣士(1~3巻)

黒ずくめの甲冑を纏い、身の丈を超す鉄塊のような大剣を背負った隻腕隻眼の戦士ガッツ。彼の首筋に刻まれた烙印が疼き血を流すとき、異形の化け物たちが現れ、人々を喰らい殺す地獄絵図が繰り広げられる。狂気の笑みを浮かべながらその光景を見るガッツは、嵐を巻き起こすような動きで大剣を振り回し、化け物たちを次々と撃滅していくのだった。

あるとき、盗賊に捕らわれていたところをガッツの気まぐれによって助けられたエルフのパックは、ガッツの心の内に潜む、怒りとも悲しみともつかないどす黒い心を感じとり、ガッツと行動をともにすることを決める。そしてふたりはある町にたどり着くが、そこでは伯爵と呼ばれる領主の指示で、異端審問委員会による悲惨極まりない魔女狩りが繰り広げられていた。そして、ガッツは村の中で伯爵により凄惨な目に遭わされたある医者と出会い、自分の仇を討ってもらうよう頼まれると同時に、ひとつの世界の扉を開く鍵・ベヘリットを見せられる。ガッツと伯爵が壮絶な戦いを繰り広げる中、偶然にも血を浴びたベヘリットが悲鳴を上げ、同時に開く異世界の扉。そして、魔を統べる5人のゴッド・ハンドが降臨する。そのなかのひとり、漆黒の鷹を象った鎧を纏ったような姿をした者に向かい、ガッツは悲痛な声で叫んだ。「グリフィス!」と。

黄金時代(3~14巻)

物語はガッツ誕生まで遡る。とある戦場の跡地、母親の骸の下で血と羊水の中にて産声を上げたガッツは、ある傭兵団の団員ガンビーノに拾われ、戦士として鍛え上げられ成長していった。だが、育ての親であるガンビーノが戦いで片足を失って乱心し、ガッツに剣を向ける。追いつめられたガッツは、怒りとも悲しみともつかぬ表情のままガンビーノの喉に剣を突き立て、傭兵団から逃走するのだった。

それから4年の月日が流れ、ガッツはとある戦場にいた。身の丈に合わぬ剣を豪快に振り回し、砦を守る巨漢の騎士の頭を叩き割るガッツ。そんなガッツの姿を敵方の砦から見ていたのが、傭兵団鷹の団グリフィスであった。ガッツのことを気に入ったグリフィスは、鷹の団入団をかけて1対1の勝負を挑み、ガッツを打ち負かす。こうして半ば無理矢理な形で鷹の団に入団することになったガッツだったが、最初は同世代の若者たちと馴染めず、ギスギスとした関係のまま戦いに赴くこととなる。だが、ひとつの勝利を経たのちに、覇王の卵と呼ばれる深紅のベヘリットを見せながら、自分の国を持つという夢を少年のような眼差しで語るグリフィスに心動かされ、ガッツ鷹の団を自分の居場所にすることを決めるのだった。

それからさらに3年の月日が流れる。切り込み隊長の肩書きを得たガッツは、鷹の団の中核を担う男になっていた。そして、グリフィス鷹の団をミッドランド王国の一軍とする。その後、不吉な予言めいたことを語る異形の戦士・不死のゾッドとの死闘を生き延び、権謀術数渦巻く宮中を潜り抜け、順調にその地位を盤石なものとしていくグリフィスガッツもまた数々の戦場で武功を重ねていき、グリフィスを挟んで言い争うことの多かった鷹の団紅一点、千人隊長のキャスカとも戦いを通じて心を通じ合わせ、さらにキャスカを救うため、百人斬りという偉業を達成する。そして、重要攻略対象のドルドレイ要塞を鷹の団が陥落させた後、ガッツは心に決めていたことを実行に移すのだった。ある晩餐会の夜、グリフィスが王女シャルロットに語っていた「自分にとっての友とは、自分自身の夢に向けて生きる者」という言葉。それを聞き、グリフィスの夢に埋もれるのではなく、彼の横に並びたいと願っていたことに気が付いたガッツは、鷹の団を出奔する。止めようとするグリフィスと、出会ったあの日のように一騎討ちを行って打ち勝ち、ガッツは自分自身の道を歩み出すのだった。

ガッツを失った喪失感か、それともガッツに敗北した事への屈辱か、放心状態となったグリフィスは、王女シャルロットの寝室に潜り込んで彼女を姦淫。それが国王に発覚し、グリフィスは囚われの身となり、鷹の団は逆賊の汚名を着せられミッドランド王国を追われてしまう。

それから1年の時が経過。キャスカ鷹の団の臨時の団長となり、グリフィス救出を試みようとするものの、迫る追っ手と戦うだけで精一杯の状況が続いていた。その状況を知り、鷹の団のもとに駆けつけたガッツ。疲れ切ったキャスカの心の叫びを聞き、彼女を支えようとするガッツにとってキャスカもまた大切な人だと気が付く。そして結ばれようとするふたりだったが、その瞬間、ガッツの脳裏によぎったのは自身が父親と慕っていたガンビーノを殺害した過去。キャスカもまたそんなガッツの心の慟哭を知り、まるで傷を舐め合うようにようやくふたりは結ばれるのだった。

シャルロットの協力を得て、なんとかグリフィスの救出に成功するが、1年にわたる凄惨極まりない拷問により、グリフィスは廃人同然の姿と化していた。それでも再起を信じ、国王が差し向けた異形の姿の追っ手と戦う鷹の団。そして、ついにその時が訪れる。すべてを失い絶望するグリフィスが自害しようとしたその手には、拷問中に失ったと思われた覇王の卵が握られていた。そこにグリフィスの血が注がれ、死の狂宴・蝕が始まる。

断罪篇 ロスト・チルドレンの章(14~16巻)

蝕より2年の月日が流れ、ガッツパックは森で盗賊に拐かされたジルという少女を救う。だが、パックの姿を見たジルは「霧の谷のエルフ」とつぶやき、恐怖の顔を浮かべるのだった。そして、ジルを村まで連れ帰ったふたりだったが、パックの姿を見た村人たちはジルと同様に怯え、霧の谷のエルフを殺せと囃し立て、ガッツに襲いかかってくる。これを退けてガッツが村はずれの風車小屋で休んでいると、霧の谷のエルフと思わしき手のひら程の大きさの光の集団が村を襲っていた。急ぎ村へと向かったガッツがこれを大剣で叩きつぶし撃破するが、そのエルフと思わしきものの正体は、人間の子供が魔物に変化した姿だと判明。そして、ひとりだけ人間の子供程度の大きさを持つその集団の首領とおぼしきエルフは、ジルが過去に姉と慕っていたが数年前に村を出て行った少女ロシーヌであった。ロシーヌに霧の谷に来て自分たちの仲間になるよう誘われ悩むジル。そこへパックが駆けつけ、思いとどまるよう説得するが、ジルの脳裏に浮かぶのは暴力をふるう父、野盗や戦争に怯える日々。エルフたちが善良な妖精ではなく魔物であり、残虐なことを平気で行うことを見ているに関わらず、村に戻っても何の希望も見えないジルは、恐怖に震えながらもエルフの孵化場で繭に包まれようとしていた。だが、そこへ鬼の形相のガッツが出現。孵化場に火を放ち、ロシーヌに剣を向けるのだった。

断罪篇 縛鎖の章(16~17巻)

エルフとの死闘に精根尽き果てたガッツは、黒い剣士の行方を捜索していた法王庁の聖鉄鎖騎士団に遭遇し、捕縛されてしまう。団長のファルネーゼの尋問に対し、神を嘲る言葉で返すガッツ。憤るファルネーゼはガッツを力の限り鞭打った上で牢に入れて放置するが、そこへガッツを狙う魔物たちが襲来してきた。パックが牢の鍵を盗んだことでその場を切り抜けたガッツは、自責の念に捕らわれて自らを鞭打つファルネーゼを拉致し逃亡。だが、道中にも魔物たちの襲撃は続き、その光景を見たファルネーゼは自身の立場を忘れて恐怖に震える。そして長い夜が明け、疲れ切ったガッツの元へと近寄るファルネーゼ。低級の魔物に心を支配された彼女は、心の奥底に眠る淫らな姿を見せ、自らをガッツの剣で引き裂こうとする。パックが魔物を撃退したことで我に返ったファルネーゼは、羞恥心と自身の名誉を傷つけられたことに泣き叫び、ようやくひとり追いついた聖鉄鎖騎士団の紋章官セルピコに「ガッツを殺せ」と命令。どこか飄々としたセルピコはそれは無理だと断るが、隙を突いて剣を抜きガッツに向けて一閃させ、ただ者ではないところをかいま見せるのであった。

断罪篇 生誕祭の章(17~21巻)

ともに蝕を生き延びたものの衝撃のあまり心を失ったキャスカ。自身と同じ烙印が刻まれたキャスカガッツは知り合いの鍛冶師・ゴドーに預けていた。しかしガッツが久しぶりにゴドーのもとを訪れると、キャスカが行方不明だということを知らされる。ガッツは、彼女を捜すために少ない手がかりを頼りにアルビオン寺院へ。その道中、クシャーンの斥候部隊に襲われていた泥棒の少年イシドロを救ったガッツ。すると、剣士として身を立てたいという野望を胸に秘めたイシドロは、人間離れしたガッツの強さに憧れを抱き、勝手にあとをついてくるようになる。同じ頃、聖鉄鎖騎士団も黒い剣士捜索の任務を外され、アルビオン寺院へと赴いていた。盲目的に神を信じ、邪教徒と見なした者や禁を破った者に過酷な罰を与える異端審問官のモズグスを、ファルネーゼは畏怖とも敬愛ともつかぬ眼差しで見つめ、異教徒狩りの任を全うしていた。

一方、心を失ったキャスカは貧民窟の娼婦たちのまとめ役であるルカが保護。だが、邪教徒たちのシンボル的存在として担ぎ上げられ、儀式を行っている洞窟に拉致されてしまう。異様な空間の中、キャスカに刻まれた烙印が疼き、魔物たちが集結。そこへ聖鉄鎖騎士団が乱入し大混乱となるが、ガッツも洞窟に到着し、キャスカイシドロに預けて剣を振るう。任されたイシドロも奮戦し、キャスカを安全な場所へ連れて行こうとするが、洞窟の出口にいた聖鉄鎖騎士団に見つかり、キャスカは捕らえられてしまう。断罪の塔にてモズグスの取り調べを受けるキャスカ。拷問器具の中に入れられ、彼女の命に危険が迫ったその瞬間、魔物たちがキャスカの周囲に大量に押し寄せ、モズグスとその配下の拷問執行人に取り憑く。そしてガッツがようやく断罪の塔へとたどり着くと、異形の姿へと変化したモズグスキャスカを魔女と断定し、神の名の下の正義を実行すべく、火炙りにしようとしていた。

千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 聖魔戦記の章(22~27巻)

キャスカを無事に救出し、ゴドーの仕事場に戻ったガッツを待っていたのは自分たち鷹の団を生け贄に捧げたグリフィスその人。ゾッドを従え、昔と変わらぬ夢を語るグリフィスに対し、ガッツは怒りの刃を向ける。この激戦のなかでゴドーの仕事場が破壊され、キャスカが安心して生きられる場所が失われてしまう。そこでパックの提案によりガッツパックの故郷であるエルフヘルムに行くことを決定。そんなガッツのもとに旅の同行を請うために現れたのが、断罪の塔の一件により世の中の真実を知りたいと願うようになったファルネーゼとその従者セルピコ、そしてガッツの技を盗みたいイシドロだった。キャスカの世話をしてもらうため同行を了承し、新たな仲間を加えたガッツの次なる旅が始まる。一方、ゾッドとともに飛び去ったグリフィスの元には、神託により導かれたという異形の戦士たちが終結しつつあった。

ガッツ一行は、ある森の中で獣鬼に襲われている村を救うため、魔女を捜している老人に出会う。老人とともに行動していると、彼らの眼前に大木でできた館・霊樹の館が出現。そこの主である魔術師・フローラはすべての事情を察しており、村を救うために一番弟子のシールケガッツたちとともに村に向かわせる。その後、獣鬼との壮絶な戦いを終わらせて森に戻ったガッツたちだったが、グリフィス配下の使徒・グルンベルトの襲撃により霊樹の館は炎に包まれていた。そしてグルンベルトが発した鷹の団という言葉に激昂したガッツは、グルンベルトに剣を向ける。だが、その絶大な力の前にまるで歯が立たない。自分の居場所を失いつつあるシールケも混乱していたが、愛に満ちたフローラの最後の言葉を聞き平静さを取り戻し、ガッツ狂戦士の甲冑を与える。それを装備したガッツは、その名の通り我を忘れて戦い続ける狂戦士のように、傷ついた身体も一切顧みずに剣を振るうのだった。

千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 鷹都(ファルコニア)の章(27~35巻)

幼き魔女・シールケとその友人であるエルフのイバレラを新たに仲間に加え、旅を再開したガッツは、エルフヘルムへの行路の起点となる海岸へたどり着く。その夜、決意を固めたファルネーゼは、魔道こそこの世の理の手掛かりがあるのだろうとシールケに弟子入りを願い、魔術師の道を歩もうとしていた。そして、エルフヘルムへの海路を確保するため、一行は貿易都市ヴリタニスへ。そこで船の調達に苦戦するが、ファルネーゼの手引きにより彼女の兄マニフィコの親友であるロデリックの助力を得て、軍船・シーホース号に乗船できることとなる。だが、街に入り込んだクシャーン帝国の妖獣兵団、そして使徒でありながらグリフィスにあらがうクシャーン帝国の王・ガニシュカまでもが降臨し、ガッツたちの行く手を阻む。巨大な霞のような身体に加え、強烈な電撃を放つガニシュカには狂戦士の甲冑を纏ったガッツさえも苦戦を強いられ、危機的状況に追い込まれるが、そこへゾッドが飛来。一時共闘することにしたガッツゾッドの背に乗ると、猛スピードで宙を舞い、ガニシュカの霞の身体を切り裂いた。こうして危機を乗り切った一行はシーホース号に乗り、大海原へと漕ぎ出す。

それから時を置かずして、すでにヴリタニスを包囲していたクシャーン帝国の大軍団の侵攻が始まった。集結していた法王庁教圏の混成軍がこれにあたるが、一方的に蹂躙され為す術がない。そこへ現れたのがグリフィス率いる新生鷹の団グリフィスの元に集結した使徒たちの力でクシャーン軍の勢いを削ぎ、グリフィスガニシュカの前に立つ。使徒の習性なのか、ガニシュカゴッド・ハンドのひとりであったグリフィスに膝を屈し、両者は決戦の舞台をミッドランド王都と決め軍を引いた。そしてグリフィスは、法王庁教圏の混成軍の有力者たちを前に、保護していた王女シャルロット、さらには法王を紹介し、鷹の団が名実ともにミッドランドの正規軍であることを認めさせる。

決戦を控えガニシュカは、グリフィスに膝を屈した屈辱に身を焦がしていた。そして、自身を使徒であるという軛から解き放つべく、外法に手を出し再転生を行う。そこに誕生したのは、天を突かんばかりの巨大な魔獣。魔界そのものともいえるその異様な存在は、敵味方問わず蹂躙しながら突き進み、グリフィスの元へと向かう。

幻造世界(ファンタジア)篇 妖精島の章(35巻~)

グリフィスガニシュカの戦いに髑髏の騎士が介入し、喚び水の剣が振り下ろされたことで異次元の扉は開かれ、新世界・幻造世界(ファンタジア)が始まった。それは海上を旅するガッツたちにも影響を与え、魔物を乗せた幽霊船と遭遇。激しい海戦となり、傷ついたシーホース号はとある島に立ち寄る。そこでイシドロが出会ったのは、村八分にされながらも腐らずに生きる少女・イスマ。そして、ガッツたちが島を探索するうちに、やがてそこが海上で遭遇した海の魔物の根源である海神の本拠地であることが発覚する。海神との激しい戦いへと発展し、混乱の最中イシドロが海に落下してしまう。イスマがそれを救うために海に飛び込むと海からの声が彼女に届き、人魚としての真の姿を覚醒させるのだった。

メディアミックス

TVアニメ

1997年10月7日から1998年3月31日まで『剣風伝奇ベルセルク』というタイトルで放送された。原作の黒い剣士の一部と黄金時代のエピソードをアニメ化している。

TVゲーム

ドリームキャスト用ソフトとして『ベルセルク 千年帝国の鷹(ミレニアム・ ファルコン)篇 喪失花の章』(1999年)とプレイステーション2用ソフトとして『ベルセルク 千年帝国の鷹(ミレニアム・ ファルコン)篇 聖魔戦記の章』(2004年)が発売されている。ドリームキャスト版は原作者の三浦建太郎がシナリオを担当。ボイスを担当した声優はいずれもテレビアニメ版に準拠としている。

トレーディングカードゲーム

2004年から2005年にかけて第4弾まで展開された。販売元は株式会社コナミ。

劇場版

『ベルセルク・サーガプロジェクト』として「黄金時代」を以下の3部作に分けて公開された。スタッフ、キャストはテレビアニメ版から一新されている。

映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵』(2012年2月4日公開)

映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略』(2012年6月23日公開)

映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨』(2013年2月1日公開)

ソーシャルゲーム

2013年に株式会社フィールズがGREEにて『ベルセルク~快進撃!怒涛の傭兵団~』を提供。現在はサービス終了している。

評価・受賞歴

緻密な絵と密度の濃い深みのある物語から、日本におけるダークファンタジーの代表作と言える作品となっており、後述のテレビアニメ版が放送されたことで、海外での知名度も非常に高い。絶大な人気を得ているが、不定期連載という形を取っているために休載が非常に多く、なかなか物語が進まない。アンケートで「完結を見たい漫画」という題材になると、必ずと言ってよいほど上位に入り、ファンだけでなく作者自身も完結できるのか不安のコメントを残しているほどである。

初期は月刊誌・アニマルハウスにて連載していたが、リニューアル創刊された隔週誌・ヤングアニマルに移動。その時期に連載されていた若者たちの夢を描きながらも、彼らが残酷な未来へと向かっていく黄金時代が評判となり、1997年よりその黄金時代が『剣風伝奇ベルセルク』としてTVアニメ化。残酷描写は多少マイルドになっているものの、原作をほぼ忠実に再現した野心的な作品で、放送時間が深夜だったにも関わらず大きな話題となり、その人気を不動のものにした。

作家情報

少年時代から少女漫画を愛読しており、それが本作に多大な影響を及ぼしているという。また、栗本薫の大長編ファンタジー『グイン・サーガ』の熱狂的なファンであり、2009年に逝去した栗本薫の遺志を引き継ぐ形で制作された『グイン・サーガ・ワールド8』の表紙イラストを担当している。

拳闘暗黒伝セスタス』および『拳奴死闘伝セスタス』の作者・技来静也は高校時代の同級生であり、三浦建太郎のアシスタントを経験している。また、『ホーリーランド』・『自殺島』の作者・森恒二三浦建太郎の高校時代の同級生。

登場人物・キャラクター

主人公

長身で筋骨隆々とした隻眼隻腕の剣士。失った右腕には大砲の仕掛けがある義手とボウガンを装備。武器として自身の身長ほどの鉄塊としか表現しようのない大剣・ドラゴンころしを使用し、膂力に任せた一撃で眼前の敵を... 関連ページ:ガッツ

傭兵集団・鷹の団の団長。幼き日に夢見た自身の国を得るという夢を叶えるために鷹の団を結成した。大国・ミッドランド王国に肩入れし、隣国のチューダー帝国との百年戦争で休戦協定を結ばせるほどに活躍。貴族となり... 関連ページ:グリフィス

傭兵集団・鷹の団の団員。グリフィスを敬愛しており、グリフィスが何かと気にかけるガッツに対して敵意を剥き出しにしていた。しかしある戦場でガッツに助けられたことで、互いの背を預けられるほどの関係となり、や... 関連ページ:キャスカ

『ベルセルク』に登場する妖精。人の手のひらに乗れるほどの大きさの背に羽根を生やした少年型の妖精。軽い性格のお調子者で、その場を拍子抜けさせるような言動が多い。鱗粉には傷を癒やす力があり、さらには全身を... 関連ページ:パック

莫大な財力を持ち、作品中で広く信仰されている宗教の教会組織・法王庁に対して大きな影響力を持つヴァンディミオン家の女性。黒い剣士ことガッツの捕縛を命じられた法王庁直属の聖鉄鎖騎士団の団長でもある。盲目的... 関連ページ:ファルネーゼ・ド・ヴァンディミオン

黒い剣士ことガッツの捕縛を命じられた、法王庁直属の聖鉄鎖騎士団の紋章官。幼い頃に雪の中に倒れていたところをファルネーゼ・ド・ヴァンディミオンに拾われ、彼女の小間使いとして仕えるようになる。自分と同じ歪... 関連ページ:セルピコ

法王庁直属の聖鉄鎖騎士団の副団長。両端に複数のスパイクがついた長い棍棒を振り回して戦う。騎士道精神に溢れた高潔な人物で、数々の武名を轟かせている豪傑。ガッツも刃を交えた際に、鉄棍鬼アザンとしてその名に... 関連ページ:アザン

クシャーンの斥候部隊に襲われていたところをガッツに助けられた少年。剣一本での成り上がりを夢見ており、技を盗むためにガッツを追った。剣技はまだ未熟だが投石の腕前は一流で、百発百中の技の冴えを見せる。断罪... 関連ページ:イシドロ

ある森の結界内に存在する霊樹の館に住む魔女・フローラの弟子。ゆったりとしたローブを纏いつばの広いとんがり帽子を被った、まさに絵本の中から抜け出た魔法使いのような姿をした少女で、ある小さな村を荒らす獣鬼... 関連ページ:シールケ

『ベルセルク』に登場する妖精。人の手のひらに乗れるほどの大きさの背に羽根を生やした少女型の妖精。パックとは同族で、その羽根が鱗粉には傷を癒す効果がある。お目付け役的な立場としてシールケに懐いており、彼... 関連ページ:イバレラ

法王庁教圏に属するイース国の王族。イース海軍の艦長でもあり、外洋の世界を制する者こそ勝利者になれるという考えを持つ勇敢な男。ヴリタニスの街を訪れた際に友人のマニフィコから紹介される形で、マニフィコの妹... 関連ページ:ロデリック・オブ・シュタウフェン

ガッツ一行と行動をともにするファルネーゼの兄。ガッツたちが必要としている船を調達する代わりに、友人で王族のロデリックの許嫁になるようファルネーゼに指示した。権威欲は強いが父親から軽んじられており、ロデ... 関連ページ:マニフィコ

ガッツ一行が乗ったロデリックの船・シーホース号が立ち寄った小島に住んでいる少女。本人は信じていなかったが、人間と人魚(メロウ)のハーフと言い伝えられていたために漁村の人々から忌み嫌われ、村から離れた場... 関連ページ:イスマ

傭兵集団・鷹の団の団員。投げナイフの達人で、百発百中の腕前を誇る。入団直後の刺々しいガッツにも気さくに話しかけるなど、かなりの良識人。1番になることができないために2番手に甘んじ、誰かの夢をサポートす... 関連ページ:ジュドー

傭兵集団・鷹の団の団員。団員一の巨漢で、先端にスパイクの付いたメイスを振り回して戦う。あまり表情を崩さない寡黙な男だが、他人のことを思いやる優しさを持ち、仲間の危機に対しては声を荒らげることもあった。... 関連ページ:ピピン

傭兵集団・鷹の団の団員。まだ幼さを残す小柄な少年で、戦場で雄々しい姿を見せるガッツを尊敬していた。負傷して戦列を離れていたために蝕から逃れ、鷹の団の中では、ガッツとキャスカ以外で唯一の生き残りとなった... 関連ページ:リッケルト

傭兵集団・鷹の団の団員。ある戦いでガッツが得た報奨金を奪おうと襲撃し、結果的にガッツが鷹の団に入団するきっかけを作った。団長のグリフィスを特別視していたため、横に並ぼうとするガッツを快く思わず何かとき... 関連ページ:コルカス

人里離れた鉱道で鍛冶職人を営んでいる老人。鷹の団を抜けたガッツを世話していた。偏屈だが気骨にあふれており、若い頃にはドラゴンを撃ち殺せるような剣を献上しろという国王からの布令に対して、様式美にこだわる... 関連ページ:ゴドー

鍛冶職人・ゴドーの娘。実の子ではなく戦災孤児を拾って娘として育てられた。天真爛漫な少女で、ゴドーの仕事を見学するのが好き。蝕を生き延びたガッツ、キャスカ、そして蝕に巻き込まれなかったリッケルトを匿い、... 関連ページ:エリカ

世間知らずの箱入り娘として育った大国ミッドランドの王女にして第1王位継承者。鷹の団の団長であるグリフィスを慕っており、夜這いをかけられた際に受け入れる。だが、それが露見して嫉妬する父親から歪んだ愛情を... 関連ページ:シャルロット・ベアトリックス・マリー・ルホディ・ウインダム

人骨を象った鎧を身に纏った剣士。騎乗する馬も同様に骸骨をあしらった馬具を身につけており、威風堂々かつ不気味な佇まいを見せる。1000年にわたってゴッド・ハンドに仇なしてきた者で、体内に収めた複数のベヘ... 関連ページ:髑髏の騎士

『ベルセルク』に登場する魔物。人間がベヘリットを発動させて降魔の儀を行うことで、神話や英雄譚に出てくるような怪物に転生した姿。異常な怪力を持つ戦士や浮遊能力を持つ者、口から炎の息を吐くものなど、その姿... 関連ページ:使徒

『ベルセルク』に登場する魔物。人の世ではない幽界(かくりよ)の深き底にある深淵の底の方に住まう、すべての使徒を統べる者たちで、使徒たちは彼らのことを守護天使と呼ぶ。長と思わしき黒いマント姿のボイド、妖... 関連ページ:ゴッド・ハンド

『ベルセルク』に登場する魔物。不死のゾッドの異名を持つ斬馬刀を操る巨漢の剣士で、殺戮の場に現れるとして傭兵たちの間では有名人であった。その正体は使徒で、巨大な2本の角を持つ翼の生えた雄牛のような、悪魔... 関連ページ:ゾッド

暗殺集団・バーキラカの王子。はるか昔に権力闘争に敗れたため、奴隷にまで身を落としている。異形の武術の使い手で、刃のついた円形の投擲武器・チャクラムや、手甲型の刀といった奇妙な武器を扱う。一族の復興を悲... 関連ページ:シラット

断罪の塔にて魔女や邪教徒を狩り裁判に掛ける、法王庁の異端審問官。信仰の名のもとに500人を悠に超える人々を凄惨な拷問に掛けて殺害しているため、多くの恨みを買っており、命を狙われることも珍しくない。普段... 関連ページ:モズグス

『ベルセルク』に登場する魔物。法王庁管轄の断罪の塔の下にあるゴミ溜めで育った、誰にも知られず何者でもなかった者。ベヘリットを拾い、自身を囲む世界と引き換えに完全なる世界の孵化を望み、使徒となった。ベヘ... 関連ページ:完璧な世界の卵

霊樹の館に住む魔女。かなりの高齢で、自分の死期が近いのを悟り静かに暮らしている。近隣の村にすむ老人の頼みにより獣鬼(トロル)退治に弟子のシールケを派遣する。ガッツたちを霊樹の館に導き、人の世ではない幽... 関連ページ:フローラ

広大な土地を有するクシャーン帝国を恐怖で支配する王。ミッドランド王国の王が崩御した時を狙い、侵攻を開始。瞬く間にミッドランド王国の首都・ウィンダムを制圧した。その正体は使徒であり、霧のような姿になり、... 関連ページ:ガニシュカ

集団・組織

鷹の団

『ベルセルク』に登場する組織。物語の序盤から登場する傭兵団・鷹の団と、それが壊滅したのちに新たに編成された、ミッドランド王家直属の正規軍の新生鷹の団のふたつが存在する。前者はまだ人であった頃のグリフィ... 関連ページ:鷹の団

その他キーワード

ドラゴンころし

『ベルセルク』に登場する武器。ガッツが使用する刃の全長が身の丈ほどもある鉄塊のような大剣。ガッツとは旧知の鍛冶職人のゴドーが若い頃に打ち上げた。あまりにも巨大な武器のため、ガッツは背に袈裟懸けに背負っ... 関連ページ:ドラゴンころし

狂戦士の甲冑

『ベルセルク』に登場する防具。鉱精(ドワーフ)が作ったとされる禍々しい気を感じさせる漆黒の鎧兜。霊樹の館に保管してあり、魔女・フローラよりガッツに託された。荒ぶる気の流れに同調することで、甲冑を纏った... 関連ページ:狂戦士の甲冑

ベヘリット

人の顔が乱雑に配置された卵のような物体で、ある条件によりその力を発動させると使徒を統べる魔物・ゴッド・ハンドを呼び出す。そして、使用者が自身の半身とも言える大切なものを生贄として捧げることで、降魔の儀... 関連ページ:ベヘリット

アニメ

剣風伝奇べルセルク

主人公の剣士ガッツはミッドランド王国で名を馳せた傭兵団「鷹の団」の切り込み隊長として、王国が長く戦い続けた百年戦争にて多大な戦功を挙げ、団長のグリフィスや女性剣士のキャスカなど大切な仲間を得て、名声を... 関連ページ:剣風伝奇べルセルク

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