あらすじ
第1巻
古代ギリシアの小さな村、トリトニアで壺絵師をしている青年のデメトリオスは、村と近隣の町との争いに巻き込まれ、陸上競技の勝負に挑ませられる事になった。性格的に争い事が苦手なデメトリオスが苦悩していると、そこに雷が落ち、デメトリオスは遠い未来の東京に転移してしまう。そこで日本の「運動会」に遭遇したデメトリオスは、卵運び競争のアイデアをギリシアに持ち帰り、見事その競技で勝利を収めるのだった。以後幾度か往復を繰り返したのち、デメトリオスは東京オリンピックの男子マラソンが開催されている現場に偶然タイムスリップしてしまう。そこでデメトリオスは、日本代表のマラソン選手、円谷幸吉と運命的な出会いを果たし、幸吉の生き様を見て大いに感銘を受ける事になる。
第2巻
壺絵師としての画業に苦悩するデメトリオスは、仕事の内容について村長のテオフィロスに厳しく叱責されたあと、また東京へとタイムスリップしてしまう。そこで出会ったのは、手塚と呼ばれる人気漫画家であった。手塚に仕事のアシスタントを頼まれたデメトリオスは、筆でカケアミをするという玄人はだしの芸当を見せて手塚を感心させ、同時に手塚から漫画に関する多くの教えを受けて、ギリシアへと戻っていく。その後、また日本にやって来たデメトリオスは、偶然に円谷幸吉と再会し、共にジョギングをする事になる。だが、次に東京へやって来た時、デメトリオスは巌谷浅吉から幸吉の自死を知らされる。幸吉の死の顛末について深く慟哭したデメトリオスは、陸上選手として大成するために、アテネへと旅立つ事を決意する。
登場人物・キャラクター
デメトリオス
トリトニアという小さな村で暮らす壺絵師の青年。天性の運動神経の持ち主で、陸上競技に関しては天才的な能力を誇る。いわゆる「草食系オタク」で、争い事の嫌いな優しい性格で、競争も好まない。アポロニアに思いを寄せているが、高嶺の花とあきらめている。雷を浴びると、何故か遠い未来である昭和の日本にタイムスリップしてしまう。
アポロニア
トリトニアの村長であるテオフィロスの娘。デメトリオスの評するところによれば非常に美女で、デメトリオスの親友の婚約者でもある。父親に似て苛烈すぎる性格で、草食系オタクのデメトリオスが煮え切れない態度でいると、説教をする事もある。
師匠
トリトニアで暮らす壺絵師の老人。デメトリオスの師匠にあたり、彼の性格に手を焼かされている。弟子のデメトリオスの陸上競技に対する才能についても素直に認めており、壺絵師を辞めて陸上選手になる事を勧める時もある。テオフィロスとは昔なじみ。
テオフィロス
トリトニアの村長を務めている老人。アポロニアの父親。滅亡の危機に瀕したトリトニアを何とか再興するべく、あの手この手を考えている。デメトリオスを利用しようとしているため、頻繁にデメトリオスのところにやって来ては絵師を辞めて陸上選手になれと迫っている。
巌谷 浅吉 (いわや あさきち)
昭和の東京で暮らす老人。古代ギリシアの文化や言語に精通しており、古代ギリシア語でデメトリオスと会話を交わしたり、通訳を務めている。デメトリオスが初めてタイムスリップした時にひょんな事から出会って親しくなり、以後なにくれとなくデメトリオスの世話を焼いている。彼が本物の古代ギリシア人だという事実は知らない。
円谷 幸吉 (つぶらや こうきち)
東京オリンピックで男子フルマラソンの日本代表を務めた若き選手。東京オリンピックで銅メダルを受賞したのち、全国民から次のオリンピックでもメダル獲得を期待されていたが、そのプレッシャーに心潰(つい)えて自死の道を選んだ。実在の人物、円谷幸吉がモデル。
手塚 (てづか)
東京で暮らしている漫画家。仕事が忙しい事からつねに修羅場を抱えており、たまたま絵に関係のある仕事をしているというだけで、素性の知れないデメトリオスにアシスタントを依頼し、同時に漫画についての持論を教え込む。デメトリオスは手塚の事を「テヅカセンセイ」と呼んでいる。実在の人物、手塚治虫がモデル。
場所
トリトニア
デメトリオス達が暮らす村。どこにでもあるような小さな寒村で、特に近年は戦争が続いた事による荒廃で村を出ていく若者達も多く、廃村の危機が取り沙汰される状況にある。そのため村長のテオフィロスは競技会の開催による村おこしを画策し、デメトリオスをそれに利用しようとする。
トーキョーポリス
古代ギリシア人であるデメトリオスから見た、高度経済成長期にある日本の東京。自分がタイムスリップしている自覚のないデメトリオスは、自分が転移した先の世界を「トーキョー」という名の異民族の都市、すなわち「ポリス」だと認識しており、「トーキョーポリス」と呼称している。