あらすじ
1000年後に目覚めて聖剣学院に入学
聖神暦447年、神々と精霊と魔術が地上を支配していた神話の時代に、不死者の魔王(アンデッド・キング)として君臨していたレオニス・マグナスは、魔王軍を率いて人間や神々と戦っていた。魔王軍の拠点は次々に陥落し、追い込まれたレオニスは恩人のロゼリア・イシュタリスとの約束を果たすため、転生の秘術を自分に使って魂を封印して眠りにつく。1000年後の人類統合暦64年、人類の敵、ヴォイドの調査で遺跡を訪れていたリーセリア・レイ・クリスタリアは、地下深くで眠るレオニスを発見する。目覚めたレオニスは、転生の秘術が失敗したことで魔王の禍々(まがまが)しい姿から10歳の人間の少年と変化していた。予想外のことに戸惑うレオニスの前にヴォイドが現れ、レオニスをかばってリーセリアは命を落としてしまう。ヴォイドをあっという間に倒したレオニスは、魔術でリーセリアをアンデッドとして蘇(よみがえ)らせ、リーセリアと別行動していたレギーナ・メルセデスと合流して彼女たちの活動拠点である第〇七戦術都市に向かう。これまでに得た情報で、世界情勢が1000年前から大きく変わっていると確信したレオニスは、今の世界のことを把握するため、リーセリアの勧めもあって第〇七戦術都市にある聖剣学院への入学を決めるのだった。
第〇七戦術都市を襲撃する大量のヴォイド
聖剣学院に入学したレオニス・マグナスは、リーセリア・レイ・クリスタリアと同じ第十八小隊に所属し、仲間たちと寮生活をしながら信頼関係を築いていく。そんな中、この世界のことを把握するため、1000年前から影の中で眠っていた友人のブラッカス・シャドウプリンスや、メイドのシャーリといっしょにさまざまなことを調べていた。ある日、ヴォイドを率いるヴォイド・ロードによって引き起こされるスタンピードが発生し、数百のヴォイドが第〇七戦術都市を強襲。聖剣学院を中心に住民の避難やヴォイド討伐が行われる中、リーセリアがアラキール・デグラジオスに攫(さら)われてしまう。エルフィーネ・フィレットのサポートもあってリーセリアの位置を特定したレオニスは、第〇七戦術都市の動力源がある区画でリーセリアを取り込んだアラキールを発見する。レオニスは動力源から膨大な魔力を吸っているアラキールとの長期戦は不利と判断し、リーセリアを救出するために一つの賭けに出る。
第四王女の拉致と最新鋭戦闘艦の占拠
第〇七戦術都市は先日のスタンピードによる被害から復興中のある日、総合帝国の第四王女であるアルティリア・レイ・オルティリーゼの慰問を受ける。アルティリアは最新鋭の戦闘艦「ハイペリオン」に乗って入港し、帝国と第〇七戦術都市も万全の態勢を敷いていたが、アルティリアが姿を現した直後にヴォイドに襲われてしまう。スタンピードの影響で第〇七戦術都市のシェルターが満足に機能していないことを知ったアルティリアは、集まった住民をハイペリオンに避難させることを指示する。現場が混乱する中、帝国に恨みを抱く一部の亜人のテロリストたちはひそかにハイペリオンに侵入し、アルティリアを拘束してハイペリオンを掌握するのだった。準備が整った亜人たちはハイペリオンを出港させ、人質にしたアルティリアや搭乗者たちを使って帝国に捕まった仲間の釈放を要求。一方、アルティリアを襲ったヴォイドを討伐した功績で、夜会に招待されハイペリオンに乗っていたレオニス・マグナスは、単独で行動していたレギーナ・メルセデスと合流して事態を収拾するために動き出す。
第十八小隊vs第十一小隊
第四王女の拉致と最新鋭戦闘艦「ハイペリオン」の占拠事件が解決後、第〇七戦術都市に平和が訪れていた。レオニス・マグナスたち第十八小隊のメンバーも穏やかな日々を満喫しつつ、ヴォイドとの戦闘に備えて訓練を繰り返す。そんな中、第十八小隊は聖剣学院のカリキュラムにより、格上の第十一小隊と試合形式での合同演習に臨むこととなった。大方の予想では第十八小隊の惨敗だったが、レオニスが加入し、リーセリア・レイ・クリスタリアの聖剣の力と、これまでの戦いの経験によって、第十八小隊は互角以上の戦いを見せるのだった。
関連作品
小説
本作『聖剣学院の魔剣使い』は、志瑞祐の小説『聖剣学院の魔剣使い』を原作としている。原作小説版は、KADOKAWA「MF文庫J」から刊行され、コミックスと同じく決戦に備えて自分に転生の秘術を使ったレオニス・マグナスが10歳の少年の姿で目覚め、聖剣学院に入学して多くの人たちと交流したり、さまざまな敵と戦う姿が描かれている。イラストは遠坂あさぎが担当している。
登場人物・キャラクター
レオニス・マグナス
聖剣学院に通う少年。第十八小隊に所属し、周囲からは「レオ」と呼ばれている。もともとは1000年以上前に人間の「レオニス・シェアルト」として生まれ、類まれな能力で何度も人類を救っている。10歳の若さで「勇者」とも評されたが、守っていたはずの人間の貴族たちに裏切られて殺されてしまう。ロゼリア・イシュタリスによって魔王「レオニス・デス・マグナス」として蘇り、ロゼリアの考えに賛同して魔族を率い、人間や人間を庇護(ひご)する神々との戦いを始めた。その後、追い詰められた際に再起を誓って転生の秘術を使って自らを封印し、1000年後にリーセリア・レイ・クリスタリアによって目覚める。しかし秘術の失敗により、魔王ではなく10歳の少年の身体で目覚めてしまったことで、リーセリアに保護されることとなった。全盛期の3分の1くらいの力しか発揮できないが、それでも周囲の人間より遥(はる)かに高い戦闘能力を誇る。1000年前にロゼリアとした再会の約束を果たし、魔王軍を再興することを目標に活動している。頼り甲斐(がい)のある仲間思いな性格ながら、敵対するものには容赦しない。母性本能をくすぐるかわいい外見なため、聖剣学院に通う女生徒から人気がある。
リーセリア・レイ・クリスタリア
聖剣学院に通う少女。第十八小隊に所属している。年齢は15歳で、周囲からは「セリア」と呼ばれている。クールな優しい性格で、正義感が非常に強い。偶然発見したレオニス・マグナスを保護し、ヴォイドから襲われるレオニスを身を挺(てい)して守って命を落とす。その後、レオニスの魔術によって最高位の不死者「吸血鬼の女王(ヴァンパイア・クイーン)」として蘇り、レオニスの眷属となる。吸血鬼となったことで激しい吸血衝動に駆られ、そのたびにレオニスの血を吸っている。聖剣学院の寮でもレオニスと同室で暮らしており、レオニスに対して過剰に世話をするため、周囲から過保護すぎると注意されることが多い。聖剣を顕現できていなかったことから落ちこぼれと蔑まれていたが、吸血鬼になったことが影響して戦いの中で聖剣を目覚めさせる。
レギーナ・メルセデス
聖剣学院に通う女性。第十八小隊に所属している。年齢は15歳。リーセリア・レイ・クリスタリアに仕えるメイドとしてリーセリアをあらゆる面でサポートしている。多種多様な銃火器に変化させられる聖剣「猛竜の咆哮(ドラグ・ハウル)」の使い手で、戦闘では後方から援護射撃や高火力を活かした大型の敵にトドメを刺す役を担っている。明るい性格でノリがよく、レオニス・マグナスをからかうことが多い。本当の名前は「レギーナ・レイ・オルティリーゼ」で、アルティリア・レイ・オルティリーゼの姉。統合帝国を統括する三王家の一つであるオルティリーゼ家の第四王女として生まれたが、生まれた日に不吉な星が現れたため掟(おきて)に従って殺されるか、山の修道院に生涯監禁されるところだった。掟に憤慨したリーセリアの祖父によって、引き取られてリーセリアのメイドとなる。王家の血を引くため、精霊を使役することができる。
ブラッカス・シャドウプリンス
影の王国の王子。1000年前からレオニス・マグナスの友人。大きな黒い狼のような見た目をしており、影の中を自由に出入りしたり、影を通じて遠くの場所に移動することもできる。影の中で1000年間眠り続けていたがレオニスの要請を受けて目覚め、レオニスのために今の世界の情報を集めている。聖剣学院を歩いていた時に野良犬とカンちがいされて咲耶・ジークリンデに保護され、飼い主が見つかるまでの仮の名前として咲耶から「黒鉄モフモフ丸」と名づけられてしまう。
シャーリ
1000年前からレオニス・マグナスに仕える女性。自由に影の中を出入りしたり、影を通じて遠くの場所に移動することもできる。影の中で1000年間眠り続けていたが、レオニスの要請を受けて目覚め、レオニスのために今の世界の情報を集めている。1000年後の世界の食べ物に興味を示し、レオニスへの報告も食べ物に関することが多い。特にドーナッツがお気に入りでよく食べている。複数のヴォイドを瞬殺できるほど、戦闘能力が非常に高い。
エルフィーネ・フィレット
聖剣学院に通う女性。第十八小隊に所属している。周囲からは「フィーネ」と呼ばれている。半年前までは第七小隊に所属していたが、任務中にヴォイドに襲われて小隊は壊滅。仲間を失って自分だけが生き残った罪悪感で部屋に閉じこもっていたが、リーセリア・レイ・クリスタリアの助力のおかげで気力を取り戻し、第十八小隊で活動するようになる。第七小隊では前衛アタッカーとして戦っていたが、聖剣「天眼の宝珠(アイ・オヴ・ザ・ウィッチ)」の本来の力を失ってしまったため、今は通信士として情報収集や戦況報告、仲間の体調管理などを担っている。優しい性格で気配りもでき、多くの人から慕われている。
咲耶・ジークリンデ (さくや じーくりんで)
聖剣学院に通う女性。第十八小隊に所属している。リーセリア・レイ・クリスタリア、レギーナ・メルセデス、エルフィーネ・フィレットより年下で、単独でヴォイドを討伐した実績のある実力者。日本刀のような聖剣「雷切丸」を使う凄腕(すごうで)の剣客で、前衛アタッカーを担っている。桜蘭という国の出身で、国と一族を滅ぼしたヴォイドを強く恨んでおり、桜蘭侵攻時にヴォイドを率いてヴォイド・ロードを探し続けている。聖剣学院では特別に許可をもらい、制服ではなく姉の形見である伝統服を着ている。聖剣以外にも魔剣、千鳥も顕現させることができるが、魔剣のことは周囲に秘密にしている。ふだんは無邪気に振る舞っているが、博打(ばくち)をしては金欠状態となっている。
ロゼリア・イシュタリス
1000年前に存在していた女神。世界の在り方に疑問を持ち、世界に叛逆したため「叛逆の女神」とも呼ばれている。人間のために働きながら人間に殺された勇者の「レオニス・シェアルト」を、魔王として蘇らせた人物でもある。1000年前に消滅する際に、ロゼリア・イシュタリスは1000年後の世界に転生することをレオニス・マグナスに告げ、転生後の再会を約束する。
アラキール・デグラジオス
多くのヴォイドを率いてスタンピードを起こし、第〇七戦術都市を強襲したヴォイド・ロード。もともとは1000年前に、「大賢者」という異名で呼ばれた人類最高の知識を持つ人物で、神々の使徒として神聖樹と融合してレオニス・マグナスの魔王軍と戦っていた。戦闘で力尽きて海底で朽ち果てていたが、姿を変えてヴォイドとして蘇る。
アルティリア・レイ・オルティリーゼ
統合帝国を統括する三王家の一つであるオルティリーゼ家の第四王女。年齢は12歳。穏やかな性格ながら悪には屈しない強い精神力の持ち主。国民のことを第一に考えているため、非常に人気が高い。王家の血を引くため精霊を使役することができる。ヴォイドに強襲された第〇七戦術都市を慰問のために訪れる。第〇七戦術都市には、アルティリア・レイ・オルティリーゼが生まれる前に別れ別れになった、名前も顔も知らない姉がいることを聞いており、今回の訪問で会えるかもしれないと期待している。
ミュゼル・ローデス
聖剣学院に通う男性。聖剣「絶対支配の杖(ドミニオン)」によって多くの女性と契約し、手駒のように扱っている。リーセリア・レイ・クリスタリアを性奴隷にしようと声をかけたが、レオニス・マグナスの逆鱗(げきりん)に触れてしまう。
シャルナーク
亜人のテロリストに協力する振りをしながら、独自の計画を進めるダークエルフの女性。「常闇の森」という異名を持つ魔女。非常に冷酷な性格で、亜人が反抗すると躊躇(ちゅうちょ)なく殺害する。
場所
第〇七戦術都市 (せゔんす あさると がーでん)
統合帝国主導の戦術都市計画で作られた都市。発電や食糧など生活に必要なものはすべて都市内部で賄っている。人工の海上都市で、海上を移動しながら、ヴォイドについての調査や逃げ遅れた人たちの保護などを行っている。都市は居住区画と商業区画に分かれており、中央には都市を統括する管理局がある。軍事は聖剣学院が担っている。
聖剣学院 (せいけんがくいん)
第〇七戦術都市の軍事を担う学院。正式名称は「聖騎士養成学院」。聖剣を顕現できる人間は聖剣学院に通う義務があり、今は顕現できなくても将来的に可能性がある場合は通うこともできる。学院内には大講堂、屋外訓練場、食堂、大図書館、研究所、レジャー施設、寮など数多くの建物がある。
その他キーワード
聖剣 (せいけん)
ヴォイドに対抗するために人類が授かった力。多くが武器の形をしていたことから「聖剣」と呼ばれるようになった。形や能力は人によって千差万別で、魂が具現化されたものと思われている。聖剣を授かれるのは人間のみで、亜人は使うことができない。
ヴォイド
異世界から出現して人類を襲う異形の怪物。64年前に突如現れて以降、各地で現れ続けているが目的や発生源は未だ不明。聖剣を顕現させた人間でないと、まともに戦えないほど高い戦闘能力を持つ。
クレジット
- 原作
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志瑞 祐
- キャラクター原案
-
遠坂 あさぎ
書誌情報
聖剣学院の魔剣使い 9巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2020-05-26発行、 978-4041094440)
第2巻
(2020-10-26発行、 978-4041094457)
第3巻
(2021-05-26発行、 978-4041113707)
第4巻
(2021-10-26発行、 978-4041119303)
第5巻
(2022-06-24発行、 978-4041126318)
第6巻
(2023-03-25発行、 978-4041133613)
第7巻
(2023-09-26発行、 978-4041141151)
第8巻
(2023-12-26発行、 978-4041144350)
第9巻
(2024-09-25発行、 978-4041152911)