概要・あらすじ
前作『トワイライト -大禍刻-』で下級邪神オトゥールの復活を阻止し、クトゥルーの邪神たちの野望は潰(つい)えたかに思えた。しかし根拠地に戻ったナイアルラトテップ神は、配下の執事から、ブラジルでの儀式用ピラミッドの建設が、いまだに続いていることを知らされる。背後に未知の存在がいることを察したナイアルラトテップは、自分の直系の子孫で、「邪眼」の力を持つ少年・朝野昼馬のもとを訪れる。
登場人物・キャラクター
朝野 昼馬 (あさの ひるま)
私立帝王高校の男子高校生。普通の人間には見えない妖怪や異次元の存在を見ることができる「邪眼」の持ち主。半ば保護者となっている帝王高校の理事長・玄田鉄舟のことは、「ゲンさん」と呼んで慕っている。高位の邪神ナイアルラトテップの直系子孫。人類や地球のみならず、宇宙を防衛する切り札として、クトゥルーの邪神たちとの戦いに挑むことになる。 邪眼の能力は純潔性と大きなかかわりを持つため、邪神に操られた女性たちに貞操を狙われてしまう。
玄田 鉄舟 (げんだ てっしゅう)
私立帝王高校の理事長。左目に傷のある老人。若いころ、タイムスリップした朝野昼馬と出会い、彼から未来のことを教えてもらって巨万の富を得た。その富をもとに、朝野に再び会うために私立帝王高校を設立し、その理事長となった。朝野のことを「朝っち」と呼んで可愛がっている。バイセクシャルで、朝野に気がある。昔付き合いのあった女性が独りで育てていた娘・かすみを、女性が亡くなった後に引き取って養女にしている。
ナイアルラトテップ
クトゥルーの邪神たちの中でも、超一級の真性邪神。人間に興味を持つ唯一の邪神。他の邪神たちが辺土界に封印されている中、独りだけ自由を得ており、人間に姿を変えて様々な時代に現れている。1000年前に下級邪神オトゥームの復活を防ぐために活動を始め、人間の女性と子を生(な)し、自らの直系として「邪眼」の力を持つ朝野昼馬を作り出した。 現在は私立帝王高校の事務局長に姿を変えて活動している。封印されているクトゥルーの邪神たちの復活を防ぐため、朝野を導きつつ戦う。魔法のような能力をいくつも持っているが、いずれも科学的に説明のつくものであるらしい。
執事 (ばとらー)
ナイアルラトテップ神に仕える魔物。人間とゴブリンの間に生まれた魔物で、小柄な老人の姿をしている。ナイアルラトテップが活動中は、拠点であるヨーロッパの「幻惑の城」の留守を守っていた。主の命令で、朝野昼馬を守るため私立帝王高校の新しい事務局長として就任。また朝野と体をシンクロさせているため、朝野の身に何か起きれば、それを察知することができる。
玄田 かすみ (げんだ かすみ)
玄田鉄舟の養女。13歳。母一人娘一人で暮らしていたが、母が亡くなると、母と付き合いのあった鉄舟に引き取られた。クトゥルーの邪神たちに操られ、朝野昼馬を襲う。
恩田 剛造 (おんだ ごうぞう)
外見は穏やかな老人だが、日本の裏社会で絶大な権力を持つ右翼の大立て者。クトゥルーの邪神たちが人間界で動くにあたっての資金源の一人。顧問弁護士の板尾を愛人にしている。
板尾 (いたお)
右翼の大立て者恩田剛造の顧問弁護士である女性。恩田の愛人。クトゥルーの邪神たちに操られており、調査のために訪ねてきた朝野昼馬の純潔を奪おうとする。
吉田 (よしだ)
右翼の大立て者恩田剛造の顧問弁護士板尾の部下。ガタイのいい男性。気絶した朝野昼馬の身を国税局の査察から隠そうとしたが、ナイアルラトテップに殴られて気絶してしまう。
黒木 (くろき)
右翼の大立て者恩田剛造の右腕の男性。別の場所にいたため国税局の査察を逃れる。取材に来た朝野昼馬を怪しみ、日本中に何万人といる配下に命じて彼を捕えるよう手配させる。
竹中 (たけなか)
元私立帝王高校の生徒で、朝野昼馬の友人だったザリンギ族の宇宙人。初登場は『クレプスキュール -逢魔が刻-』。故郷に帰り、大長老と共に朝野にお礼を言うため、宇宙船で地球へやってきた。かつてザリンギ族とも戦ったナイアルラトテップ神と朝野が行動を共にし、クトゥルーの邪神たちと戦おうとしていることを知り、朝野に協力を申し出る。
大長老 (だいちょうろう)
ザリンギ族の大長老。竹中たちを故郷に帰した恩人である朝野昼馬に、一族を代表してお礼を言うため、竹中と共に宇宙船に乗って地球へやってきた。朝野がクトゥルーの邪神たちと戦おうとしていることを知り、一族の技術の粋を集めた武器を与えようと申し出る。
クトゥルーの邪神たち (くとぅるーのじゃしんたち)
宇宙の深淵、次元のひずみ、あるいは死の沈殿の底から生まれ出た邪悪な神々の総称。すべてが腐敗し堕落しきっているがゆえに強力な力を持つ存在。銀河系宇宙の支配を望み、オリオン座ベテルギウスに住む「旧神」と戦うが撤退を余儀なくされ、地球に漂着。さまざまな怪異を生み出したが、それを察知した旧神の一体である天帝が地球に降臨し、天使や人間を創造して彼らを駆逐、辺土界に封印されるに至った。 だがその押さえ込まれた力を結集させて人間を操り、復活を目論んでいる。
アザトース
クトゥルーの邪神たちの一体。盲目にして痴愚の神。数万年ほど前、ザリンギ族と戦っていたが、ナイアルラトテップ神がそこを訪れると、彼に後を任せて戦いを放り出し、去ってしまった。
天帝 (てんてい)
オリオン座ベテルギウスに住む「旧神」の中の一体。クトゥルーの邪神たちが地球に漂着したことを知り、ベテルギウスでの戦いを他の神々に任せて地球に降臨。天使や人間を創造し、邪神たちを駆逐すると、彼らを地獄や辺土と呼ばれる空間に閉じ込め、眠りにつかせた。20年後に地球を襲う恐怖の大王に対抗するため、すべての運命を操って、朝野昼馬を切り札として作り出した。
集団・組織
ザリンギ族 (ざりんぎぞく)
アルデバランのあたりに母星を持つ宇宙人。三足歩行の亜人間で、超科学文明を持つ種族。約2万年前、アザトース、ナイアルラトテップと戦い、壊滅的な打撃を蒙った。しかしその経験から、クトゥルーの邪神たちが魔力ではなく、四次元を介した超科学の技術を持っていることを解明。彼らに対抗する技術の粋を集めた武器を造り上げた。 一族そろって冗談が大好き。
その他キーワード
恐怖の大王 (きょうふのだいおう)
20年後に地球を襲う強大な存在。クトゥルーの邪神たちですらまるで比較にならず、天帝でさえも勝てるかどうかはわからないほどの力を持つ。天帝の眷属(けんぞく)である旧神たちも、大王によって足止めをされている。天帝によれば、朝野昼馬であれば、大王に打ち勝つ可能性がわずかなりとも存在しているという。
邪眼 (じゃがん)
この世にひしめきあって存在する様々な怪奇なもの、邪悪なもの、霊的なものを見通す瞳。邪眼を失った場合、ただの眼球移植では能力が戻らない。しかし運命的に結びついた相手の眼球の場合は、能力が復活する。