概要・あらすじ
昭和40年代、高度経済成長期の日本。かつて自然に存在していた河童は少なくなり、ペットとして飼育されることがブームとなっていた。奥吉野から上京して一人暮らしをしていた「私」も、都会で立派に暮らしている証明にとペットショップで赤ちゃんカッパを購入し、「かぁたん」と名付けた。我儘で思うようにしつけられないかぁたんに手を焼きつつも、憧れのペットショップ店員坂本さんなど仲間達と協力しながら育てていく。
登場人物・キャラクター
私 (わたし)
30歳を目前にした、ごく平凡な身なりの青年。顔は描かれていない。奈良県奥吉野の山奥で生まれ育った。8歳の頃、今は亡き父が拾ってきた河童・カータンと共に育った。高度経済成長期の中、上京して働いていたが、ある日都会で立派に暮らしている証明にとペットショップで河童を買いかぁたんと名付け共に暮らす。 我儘で思うようにしつけられないかぁたんに手を焼きつつも、「カッパの飼い方」を参照したり、坂本さん達の手を借りたりしながら育てている。坂本さんには好意を抱いている。
かぁたん
上京した「私」が、都会で立派に暮らしている証明にとペットショップで購入したカッパ。値札は78000円だった。引き取られた当初は我侭な面が目立っていた。不慣れな躾のせいか、個体特有のものか不明だが妙な癖がついており、行動はかなり個性的。そのため、河童好きのペットショップ店員・坂本さんからあれこれ実験されたこともある。 刺激物を食べたり恐怖を感じたりすると、体中の穴という穴から煙が出る。
坂本 (さかもと)
セミロングで毛先にウェーブのかかった髪の若い女性。顔は描かれていない。「私」が河童のかぁたんを飼ったペットショップの店員。「私」はかぁたん購入後も度々ペットショップを訪れ、彼女と親しくなる。河童が大好きでペットショップの店員になった変り種で、個性的なかぁたんに興味を示してあれこれ実験を施したりする。次第に「私」とはお互い想い合うようになる。
母さん (かあさん)
「私」の母。関西弁で話す老年の女性。顔は描かれていない。夫は既に亡く、一人っ子の「私」が上京した後は河童のカータンと共に奥吉野に住んでいる。
カータン
「私」の母と実家の奥吉野で暮らす老いた河童。「私」が8歳の頃、実家の裏山で拾われてきた貴重な天然河童。家族に良く懐き皆に愛され成長した。「私」がかぁたんを飼い始めた後は、区別するために「カーさん」と呼ばれるようになる。酒が好き。
キューちゃん
ペットショップでかぁたんと共に売られていた河童。背中の甲羅に傷があり、これが客に嫌われたため売れ残っていたが、店員の坂本さんに飼われることとなった。かぁたんとは友達だが、かぁたんが坂本さんにいたずらをすると激しく怒る。
ヘラクレス
鋭い目つきで左頬に傷がある河童。逞しい身体は全身チョコレート色をしている。「私」はかぁたんの河童友達を作るため訪れた公園で初めて出会った。いつも同じ時間に同じベンチでじっとして周囲から恐れられ「ヘラクレス」と呼ばれている。実際は幼稚園児の美代ちゃんに飼われているメスの河童で、本名は「チーちゃん」だった。
ココア
河童のヘラクレス(本名チーちゃん)が産んだ仔河童。親譲りの鋭い眼光を持ち、「私」が飼う河童のかぁたんから恐れられている。普通の河童よりも成長が早い。
美代 (みよ)
お下げ髪の女の子。顔は描かれていない。幼稚園児で、河童のチーちゃん(公園に来る人々はヘラクレスと呼ぶ)の飼い主。鋭い目つきで他人を寄せ付けないヘラクレスも、美代ちゃんには従順で甘えている。
田所 (たどころ)
やや太めの男性。顔は描かれていない。「私」の河童飼育仲間でマアちゃんという河童を飼っている。鉄工所を経営する社長で、妻と娘を交通事故で亡くしているためマアちゃんが唯一の家族。
マアちゃん
田所さんに飼われている河童。「私」と田所さんは河童仲間のため、よく「私」の飼っているかぁたんと一緒になる。落ち着きのないかぁたんとは対照的に大人しいが人見知りする。マアたんという名前は、田所さんが事故で亡くした娘(マアコ)に因んでいる。
玉田 恵子 (たまだ けいこ)
やや太めの女性。セミロングの髪で顔は描かれていない。「私」の河童飼育仲間でかっくんという河童を飼っている。結婚したが子宝に恵まれず、あきらめていたところ家の前に捨てられていたかっくんを拾い、我が子のように溺愛している。
かっくん
玉田さんが飼っている河童。初登場時3歳で、二足歩行できる。性別はまだ未分化だが、キャップ型の帽子にオーバーオールのズボンと男の子のような恰好をしている。「私」が飼っているかぁたんはじめ、幼い河童たちのお兄さん的存在で面倒見が良い。
ポール
フランス人の少年。顔は描かれていない。「私」が河童のかぁたんを連れてよく訪れる公園に現れた。河童のピエールの飼い主で、コテコテの大阪弁を話す。行動も粗暴で、河童たちを怖がらせている。後にピエールを捨てて夜逃げした。
ピエール
「私」が河童のかぁたんを連れてよく訪れる公園に現れた河童。とがった頭の皿、ほりの深いおでこ、長いくちばし、白い肌と日本の河童とは風貌が異なる。外国人の少年ピエールに飼われていたが、後に彼が夜逃げしたため「私」に飼われることになった。躾の良くできた河童で知能も高く、自分の立場を理解して「私」に気をつかっている。 料理が得意で、後にフランス料理店で月給300円という破格の給料で働く。(ただし法律で禁じられているためお客に出す料理は作れない)。
小泉 (こいずみ)
七三分けの男性。顔は描かれていない。「私」が河童のかぁたんを連れてよく訪れる小泉動物病院の獣医。河童飼育初心者の「私」に、必要な知識をいろいろ教えてくれる。一方ちょっとした治療でも高額な費用を請求する。
その他キーワード
カッパの飼い方 (かっぱのかいかた)
本編中、度々引用される架空の書籍のタイトル。本作品のタイトルでもある。南方熊納著、川流書院発行とされている。仔河童に与えてよいもの・いけないもの、などが記されている。
河童 (かっぱ)
本作品中は、ごく普通にペットの一種として日常生活で飼育されている。飼育用の河童については、水かきが短い、尻子玉を抜く能力がない、ほぼ犬と同様のしつけをする、など詳細に特徴が設定されている。「私」はこうした事をペットショップの坂本さんや実家の母達に一つ一つ教えてもらいながらかぁたんを飼育している。
パコ
「私」が飼っているかぁたんなどの河童達が嘴で鳴らす音。河童の重要なコミュニケーションの一つで、仲間同士の挨拶、他の動物が現れた時に仲間に警戒を伝えるなど様々な場面で使われる。
日本カッパ連盟 (にほんかっぱれんめい)
河童に関する団体。河童に関する基準などを決めている。「私」の飼っている河童のかぁたんは、坂本さんの依頼によってこの連盟が主催するカッパコンテストに出場することになる。