あらすじ
第1巻
この春から女子高校生となる桜ヶ池ヒメは、同じ高校に入学する幼なじみの男の子、米沢アキラに恋している。心は女の子であるアキラは、高校入学を機にセーラー服を着て女子として学園生活を始める。だが、アキラの父親はそんな息子を未だに受け入れられず、アキラに学ランを用意していた。幼い頃からアキラを守ってきたヒメは、アキラに対する周囲の偏見と戦うため、アキラの学ランを着て通学を始めるのだった。だが、ヒメもアキラを男性として恋していることを自覚しており、女の子として振る舞うアキラを応援したいという気持ちとの矛盾に苦しんでいた。そんな二人に、種野あんずと石山ユッカという友達ができる。ちょっと変り者でグイグイくるあんずを警戒するヒメだったが、あんずとユッカはアキラを女の子として受け入れ、四人は親しくなっていく。そんな中、アキラはサッカー部に所属する先輩の長谷川に一目惚れし、サッカー部のマネージャーをしたいという気持ちが芽生える。ヒメはそんなアキラを応援すると言いつつも、複雑な感情を抱いていた。
第2巻
桜ヶ池ヒメの米沢アキラに対する気持ちに気づいていた石山ユッカは、ヒメの気持ちはアキラの女の子を否定するようなものではないと励ます。そんなユッカは、中学時代に陸上部に所属する女子に告白し、それを周囲にバラされて深く傷ついた過去を持っていた。一方のアキラは晴れてサッカー部のマネージャーになったものの、同じ女子マネージャーからは男子として扱われ、あこがれの先輩、長谷川からもあくまで女装した男子と思われているようだった。女子として扱われるためには、髪を伸ばしてもっと女の子らしくしないとダメだと痛感したアキラだったが、父親との約束で髪を伸ばすことは禁じられていた。そんな中、学ランで通学していることが親にバレたヒメは、家族会議が開かれることになるが、理由を知ったヒメの両親は理解を示す。しかし、学ランを選んだのは自分にこだわっていただけであったことを悟ったヒメは、学ランを脱いでセーラー服での通学に戻る。だがセーラー服姿のヒメを見て「可愛い」といった長谷川の一言が、アキラを傷つけてしまう。はからずも自分が原因でアキラを傷つけてしまい泣き崩れるヒメを、見知らぬ先輩の葉室ヒロが校舎の屋上に誘い出して慰める。その先輩は、ヒメたちがよく利用するカフェの美人店員だった。
登場人物・キャラクター
桜ヶ池 ヒメ (さくらがいけ ひめ)
高校1年生の女子。幼なじみの米沢アキラに恋している。気の強い性格で、目つきが鋭くケンカっ早い。12歳の時にアキラから心は「女の子」であることを告げられ、女の子として生きたいというアキラを応援している。しかし、心ではアキラのことを男性として好意を寄せており、アキラを尊重したいという気持ちとの矛盾を感じ、アキラに気持ちを伝えられずにいる。女装したアキラに奇異の目を向けるクラスメートや、理解のない発言をする教師たちに対しては、毅然とした態度で立ち向かう。外見で判断する周囲の人々に抗議するため、アキラの父親がアキラのために用意した学ランを入学2日目から着て、しばらく通学していた。アキラのことが好きだが、アキラに男の子になって欲しいわけではないという気持ちが、別に矛盾ではなく、おかしいわけでもないと石山ユッカに諭され、いったんは気持ちに整理をつけた。
米沢 アキラ (よねざわ あきら)
桜ヶ池ヒメと同じ高校に通う1年生の男子。長身だが気の弱い性格で、泣き虫。幼い頃から心は女の子で、高校入学を機に「女の子として」生きていくことを決意し、セーラー服で登校している。幼なじみのヒメとは大のなかよしだが、ヒメが米沢アキラ自身に恋していることには気づいていない。父親はアキラの心が女の子であることを未だに受け入れておらず、高校入学の際にも学ランを用意していた。さらに、いつでも男に戻れるようにとの父親の意向によって、髪を伸ばすことを禁じられている。サッカー部に所属する先輩の長谷川に一目惚れし、サッカー部のマネージャーとなった。しかし、ほかの女子マネージャーからは力仕事ばかり任され、長谷川からも男子扱いされている。
種野 あんず (たねの あんず)
桜ヶ池ヒメと同じ高校に通う1年生の女子。やたらと元気でテンションが高く、周囲の女子からは変り者として敬遠されている。しかし、種野あんず本人はそんなものを笑い飛ばすほど明るく、ポジティブな性格の持ち主。パンダの小さなポーチを首から下げ、一人称は「あんず」。米沢アキラに興味を持ち接近したが、アキラの女装がファッションではなく、心は女子だという告白を受け入れ、親しい友達となる。
石山 ユッカ (いしやま ゆっか)
高校1年生の女子。種野あんずの親友。金髪で耳にピアスをしており、見た目はヤンキーそのものだが、友達思いで洞察力に優れ、桜ヶ池ヒメのよき相談相手となる。中学時代は黒髪のまじめな性格で、陸上部で選手として活躍していた。同じ部の女の子に告白したことが学校内に知れ渡って孤立し、深く傷ついた過去がある。その時に髪を染め、高校でも部活動はしていない。中学時代のことは親友のあんずにも話しておらず、ヒメにだけ伝えている。携帯電話の着信音を、銃撃音に設定している変り者。
佐々木 (ささき)
桜ヶ池ヒメたちが通う高校の数学教師を務める男性。つねにポーカーフェイスで不愛想だが、外見で生徒を判断するようなことはしない。米沢アキラへの偏見に怒りを露にするヒメに対しても、主張するだけでなく、差別する相手に受け入れる時間を与えることも必要だと諭した。以降もヒメの頼れる相談相手として助言を与える。生徒たちからの人気も高く、種野あんずからはひそかに「ササキング」の愛称で呼ばれている。机の引き出しには、お菓子のうまき棒コンポタ味がぎっしり詰まっている。
長谷川 (はせがわ)
桜ヶ池ヒメと同じ高校に通う2年生の男子。サッカー部に所属している。つねに笑顔で人当たりがよく、一見優しそうに見えるイケメン。ぶつかった勢いで飲んでいたジュースを米沢アキラにかけてしまったが、その際にアキラに一目惚れされた。
葉室 ヒロ (はむら ひろ)
桜ヶ池ヒメと同じ高校に通う2年生の男子。校内で泣いていたヒメを目撃して、校舎の屋上に誘い出して慰めた。ヒメたちがよく女子会などで利用しているカフェでアルバイトをしている。アイドルのような容姿のかわいい妹が不登校の引きこもりになっており、その妹を元気づけるために女装をしている。女装をするのはアルバイトの時だけで、学校ではふつうの男子として学園生活を送っている。