カミヤドリ

カミヤドリ

普通の人間にはない特殊能力を右腕に備えた「右腕」と呼ばれる戦士たちと、人を異形化させ凶暴化させる病「カミヤドリ」の発症者との戦いを描くバトル漫画。「月刊少年エース」2003年9月号から2006年3月号にかけて連載された作品。

正式名称
カミヤドリ
ふりがな
かみやどり
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

正体不明の奇病「カミヤドリ」が蔓延する時代。シティで、異形化し凶暴化する発症者を屠(ほふ)る特殊な能力者「右腕」の青年・ジラルドと、その相棒の少女・ヴィヴィの戦いを描く。「右腕」とは、自身の右腕に「カミヤドリ」を共生させた者で、その力によってそれぞれが特殊な技能を持つ。戦闘においては多くの権限を与えられ、独自の判断で動くことを許されていた。

しかしジラルドは、ある事件をきっかけに、自身の右腕に秘められた高い戦闘能力を封じ、「左手」だけで「カミヤドリ」にとどめを刺すことに拘るようになる。そんな危険な現場で日々を送るジラルドたちをサポートする、ジラルドの幼なじみで公安特捜勤務のアリサは、現場の危険を少しでも減らすことを望んでいる。

そのためアリサは、カミヤドリの研究をより深いものにしたい軍医・ウルベルと利害が一致する時は手を組み、管制局が現場に公開していない、カミヤドリにまつわる機密を現場のためにと探り始める。アリサの指示を受け、ジラルドは管制局が秘匿しているカミヤドリの研究の核心へと、クレボルトキスミの助力を得ながら近づいていく。

登場人物・キャラクター

ジラルド

「右腕」の青年で、公安特捜の一班に所属している。年齢は27歳。かつての通り名は「狂気の右腕」で、多数の「カミヤドリ」発症者を、幼なじみのキャロスとともに容赦なく殺していた。だが「カミヤドリ」を発症した妹のベニを手にかけた時から、「カミヤドリ」に対して反射的に攻撃を仕掛ける右腕を使うのを止め、自らの意志で動く左手のみで武器を操ることを選んだ。 左手しか使わないため、今はかつての通り名でなく「左きき」と呼ばれている。かつて「狂気の右腕」の通り名で呼ばれていた際は、「カミヤドリ」を敵としか見ていなかったが、現在は「カミヤドリ」だけでなく「人」をも殺してしまうということを自覚して引き金を引き、奪った命の重みを背負うことを自らに課している。 そのため、重度発症者でも可能性のある限り助けようと、危険を冒してまで振る舞うようになり、アリサやキスミからは、能力を活かしきれていない危うさを案じられている。

ベニ

ジラルドの妹。正体不明の奇病「カミヤドリ」を発症した際、凶暴化する前に、少しでも人気のないところに向かおうとした、他者を気遣う優しい女性。最終的に、「狂気の右腕」と呼ばれていた頃のジラルドに殺されることとなった。

ヴィヴィ

ジラルドの相棒。色の濃い肌を持つロジェク王国出身の少女。口数は少なく、単語でしゃべるので、意思疎通が困難。ジラルドが個人的に雇っていることもあり、「左ききの小道具」の通り名を持つ。日常生活でも下着を身に着けたがらないほどに束縛を嫌う。街の暮らしに染まらず、野良犬と一緒に残飯を漁るなど、マイペースを貫いている。 一度聞いただけの曲を、触れたばかりの楽器を使って弾けるほどの器用さを持つ。

アリサ

かつて口寄せの任務についていた巨乳美女。年齢は26歳。ジラルドとキャロスとは幼なじみで、ともに公安特捜に入った。管制局にいる口寄せからの指示を、現場に伝える指揮官的な役割を担う。かつてはアリサ自身も口寄せをしていたが。しかし、期間が短かったため、他の口寄せの少女たちのように疲弊せず、死に至る病を発病することもなく、成人しても一般人と同じように過ごせている。 当時の名残か、独特の鋭い勘を持っている。

ガトー

棘のように髪を逆立て、マスクを付けた厳つい青年。年齢は23歳。適性検査に通らず、「右腕」に選ばれなかった。銃の腕前に自信があり、当初は自分よりも射撃訓練の成績の低いジラルドを侮っていた。だが、戦場で、まるで別人のような貫禄と銃の腕前を披露したジラルドに、密かに一目置くようになる。

レドナ

軽薄な雰囲気の「右腕」の青年。誰に対しても気さくに振る舞うが、一度激高すると豹変。一般人でも容赦なく殺すなど、残虐に振る舞う。その性格の裏表の激しさから、公安特捜の仲間内では「役者」の通称で呼ばれている。

キャロス

ジラルドの元相棒。少年の頃からともに過ごした親友だが、故人。幼い頃に喧嘩の仲裁に入った母親を殺されており、以来争う際には、相手を徹底的に叩きのめすことに拘っている。ジラルドとともに「右腕」になり、「カミヤドリ」発症者に止めを刺す際には、母親との記憶の中で唯一覚えている子守歌を歌い聞かせている。その滅茶苦茶な暴れぶりから、「狂犬」の通り名を持つ。

クラマ

ガトーとよく一緒にいる、小柄なモヒカン頭の青年。博識で情報通な面があり、ガトーへの説明役を任されることが多い。しかし、もったいをつけたしゃべり方をするため、ガトーを苛立たせては殴られている。

ラディ

警官の青年。重度隔離寺院の巡回当直日に、ジラルドからヴィヴィのお守りを命じられた。テロ組織の襲撃に遭い、命を落としてしまう。

アゾート

クレボルトがいた駐屯地の隣の隔離施設にいた男の子。物覚えの良い、人懐っこい性格の少年。クレボルトを「父さん」と呼ぶほどに親しく懐いていたが、のちに実験場に連れて行かれた。事前に、実験場に連れて行かれることになったら殺して欲しい、とクレボルトに頼んでいた。

クレボルト

元陸軍大尉の男性。37歳だが、年齢以上の落ち着きを感じさせる人物。濃い色の肌をしたロジュク人で、豊かなひげを蓄えている。北ビトリー郡の実験場(ラボ)を襲い、警備兵、研究者、発症患者60人を殺した。その経歴から「60人殺しのクレボルト」の異名を持つ。

神の花 (だいあんさす)

ロジェク王国の山中の小さな村に、80年前に現れた若く美しい娘。言葉を解さず、口も利かなかったという。血を分け与えて怪我人や病人をたちまち全快させる能力を持つ。身体が治って喜ぶ人に美しい笑顔を見せたため、村人たちには「神の花」と呼ばれていた。噂を聞きつけた王に召し抱えられ、最初に治療のために血を与えた王子が、「カミヤドリ」の最初の発症者となった。 それ以降、神の花の消息は不明となっている。

ウルベル

「カミヤドリ」を研究している公安特捜の軍医の男性。年齢は38歳。丸眼鏡をかけている。研究熱心で、それ以外には興味や関心が薄く、かつて軍に所属していた頃には、「外的苦痛による自白時下の被験者の心理」をテーマにした論文を発表していた。そのような性質から、「右腕」の検診に使用する機械には被験者への配慮などはなく、酷い痛みを伴う。

キスミ

「右腕」の女性で20歳。二つ括りにした髪型に、ハートの耳飾りを付けている。表情豊かでよくしゃべる、明るく社交的な性格。娼婦に育てられた孤児ということもあり、「傷物」の異名を持つ。この異名の本当の由来は、「引っかいて殺す」ことからきており、また首に大きな傷を持つことにもよっている。

巫女 (さーちゃー)

「カミヤドリ」発症者の所在を特定する役割を担っているもの。それ以外の情報は一切公開されていない。一般の人々の間では、管制局が聖堂だった頃に呼び出された「神」であるとも噂されている。

口寄せ (とーかー)

6歳から15歳くらいまでの黒髪の少女たち。巫女からの情報を外に伝える役割を持つ。そのために必要な能力を人為的に植え付けられた「カミヤドリ」感染者で、4人が交代して任務に当たっている。「カミヤドリ」の能力を使い、巫女と交信している時は精神的に発症状態にあるため、任務に長く就いていた者は消耗が激しい。身体が変化する初潮を迎えると、宿主の少女は変化について行けず、寄生している「カミヤドリ」ごと死亡してしまう。

集団・組織

公安特捜 (こうあんとくそう)

事件や犯罪全般に関わる公安の中でも、「カミヤドリ」対策を専門にする組織。正式名称は「公安特殊捜攻隊」で、通称は「スカッドラ」。各班には指揮権を持つ「隊長(コマンダー)」の他に、最低1名の「右腕」が配属される。事件現場では、「右腕」は隊長の指揮下を離れ、遊撃手として行動する権限を持つ。

右腕 (らいとあーむず)

戦闘専門のエージェントたちの総称。自身の右腕に「カミヤドリ」を共生させて特殊能力を得ている。普通の人間では太刀打ちできない、成体化した「カミヤドリ」と戦うことができる。右腕の「カミヤドリ」の発症を制御するため、抑制剤の携帯は必須。加えて、定期的に軍医のウルベルから検査を受ける必要がある。適性検査に受かった者だけが「右腕」になれるが、検査を通るものはたったの5%しかいない。 その稀少性から、適性さえあれば、性格に多少難があっても見逃されている。

偽物 (ふぇいくす)

テロリスト集団。公安調査部が3人の存在を確認している。未確認の「カミヤドリ」感染者であり、「右腕」と同じく「カミヤドリ」の共生により、何らかの能力を保有している可能性がある。重度隔離寺院を襲撃し、抑制剤精製装置の設計図を奪おうとしたが、ジラルドとヴィヴィに殺された。

場所

シティ

ロジェク王国人や孤児など、さまざまな人が暮らしている都市。ジラルドらが在籍する公安の本部や管制局もシティにある。独自の祝祭の概念が伝わっており、王族による豊穣祈願が起源の「万聖節(ホーリー)」と呼ばれる期間があり、それに対する神からの見返りが、「降聖節(スコール)」と呼ばれる期間にあたる。そしてホーリーの時期には、「カミヤドリ」は活性化する傾向にある。

管制局 (かてどらる)

公安特捜が籍を置いている建物。内政・経済から軍部・公安まですべてを統括する。国として機能している外国の存在が未確認なため、外交部署はない。巫女と口寄せもここにいる。

重度隔離寺院 (でぃーぷあいそれーしょんてんぷる)

「カミヤドリ」発症者の隔離施設。2000人ほどの「カミヤドリ」感染者が収容されている。抑制剤なしでは生きられない人々を収容していて、製薬機関も兼ねている。複数の建物が寄り集まった複合施設で、中央棟の地下には、強固な扉に守られた謎の実験場がある。

ロジェク王国 (ろじぇくおうこく)

かつてシティに隣り合って存在していた王国。「カミヤドリ」が初めて確認されたといわれている国で、65年程前に滅亡している。ここの国民は「ロジェクス」と言うロジェク人の証のアンクレットを身につける。シティの住人の一部はロジェク人を侵略者扱いし、蔑称のロジーという呼び名を使う層もいる。そのため身分を隠すものも多く、アンクレットをつけたままのヴィヴィは珍しい存在。

その他キーワード

カミヤドリ

80年前、シティの隣国・ロジェク王国で初めて発見されたとされている奇病。元来は高い治癒能力を持つ美しい娘である神の花を指していた。娘が血を分け与えたものは、病や怪我がたちまち癒えると噂になり、それを聞きつけたロジェクの王が、娘を自分のものとした。王のものとなった娘が血を分け与えた王子が、初めて病としての「カミヤドリ」を発症する。 シティの実験場(ラボ)の目的は「カミヤドリを最初の状態に戻す・無害化すること」で、そのためにあらゆるタイプの「カミヤドリ」患者から病原体(ヴァイラス)を集め、改良を加えている。実験の成果により「カミヤドリ」を殺すことができるようになったのは、発症確認から15年後。その頃ロジェク王国は滅亡している。 抑制できるようになるまで更に40年かかり、現在は「共生」している状態にある。

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