概要・あらすじ
江戸時代の寛文年間、非人とされる部落民から忍者となったカムイは非情な宿命に反逆して抜け忍となり、追っ手の追忍たちに狙われては打ち倒していく。逃亡の旅の中で同じ抜け忍や盗賊一味の小頭など、様々な困難を背負った人々とカムイは出会い、そのつど新たなドラマが展開。カムイとの関わりによって人々やカムイ自身にもたらされる明暗が、重厚に描かれていく。
登場人物・キャラクター
夙のカムイ (しゅくのかむい)
夙谷の非人部落出身の天才忍者。自由を求めて忍者になったが、その非情な掟に反逆して抜け忍となり、同郷の追忍たちから追われる身となった。変移抜刀霞斬りや飯綱落とし、十文字霞崩しなどの必殺技を持つ。旅先では身を隠すため「夙の三郎」「サブ」などの偽名を使い、追忍たちとの戦い以外にも、様々な人々を助けるために忍びの術を使っている。 第二部前半においては柳生新陰流の秘太刀も会得した追忍ウツセに狙われ、対決において一度敗れることになった。また第二部後半ではカムイの技も及ばぬ怪僧阿多棒心によって翻弄されている。
赤目のスガル (あかめのすがる)
奇ケ島(くしきがしま)で漁師の半兵衛と世帯を持ち、サヤカ、ゲンタ、ツグミの三人の子供を育てていた女。お鹿と名乗っていたが、正体は10年間逃げ続けていた伊賀の抜け忍スガルだった。長針による千本打ちを得意とし、カムイの変移抜刀霞斬りを白刃砕きで破っている。 渡し船が嵐で難破して溺れたカムイを半兵衛と共に助けたが、追忍と思い込んで命を狙った。しかし津城五万石領主の愛馬を傷つけた半兵衛が捕らえられ、処刑されかけたところをカムイと共に救うことになる。また娘のサヤカはカムイに恋していた。後に追忍の手を逃れるため瀬戸内の幸島に移り住むが、渡り衆の頭不動によって一家全員毒殺されている。
不動 (ふどう)
鮫殺しを生業とする瀬戸内の渡り衆の頭。かつてケガをした時にお鹿ことスガルの亭主の半兵衛に助けられ、互いに漂泊民の山窩の出であることを知った。渡り衆たちはみな抜け忍で、カムイに正体を明かし仲間となったが、実は国元から大頭の放った追忍だった不動によって皆殺しにされてしまう。 だが大頭に化けたカムイに正体を暴かれ、以前不動に変移抜刀霞斬りを破られたカムイが新たに編み出した十文字霞崩しを受けて敗北。スガルや渡り衆の恨みを晴らすため、鮫に食わされて惨殺された。
三輪 三左 (みつわ さんざ)
気の触れた娘クニと山奥の炭焼き小屋で暮らす、五十路前の焼物師。小屋に忍んでいたカムイに炭焼きを任せ、焼き物を教えた。元は生藩家士だったが妻を亡くし、幼いクニが熱病で気が触れてから禄を捨てたと語るが、実は里入り忍の伊賀喰代(ほおじろ)サの二番だった。クニと近親相姦する三左の父親としての思いをカムイは理解したが、カムイを狙っていた三左はクニを手にかけたうえでカムイを襲い、逆に倒されている。
黒塚のお蝶 (くろづかのおちょう)
倉石藩新州で密かに人々に嫌がらせを繰り返す夜鷹。かつて男に捨てられた妹が自殺した後、母親と医者だった父親も亡くなり、自暴自棄になり夜鷹となった。押し込み強盗をカムイの仕業と誤解して通報し、捕らえさせたが、カムイは役人の手を逃れてお蝶の小屋に居座り、真犯人の盗賊たちを燻り出した。 カムイは去るが、お蝶は自分の金を盗まれたと思って付け狙い、桑名で出会った旅の少年モモカと親しくなる。百姓の両親を亡くしたモモカは女衒に売られた姉を見つけ、その後、女衒の手を逃れた姉と再会したモモカをかばって、お蝶は追って来た女衒一味を相手に死に物狂いの戦いを演じた。 その勢いに女衒たちは引き下がったがモモカと姉は命が尽き、二人の骨を持って姉弟の故郷の石積村にお蝶がたどり着くと、そこは飢饉によって廃村になっていた。
百日のウツセ (ももかのうつせ)
生まれてから100日もたたぬうちに捨てられ、伊賀の下忍不動に拾われ育てられた下柘植の下忍。優れた剣の才能を見込まれ、尾州柳生の道場に下働きとして預けられた。そこから不動を倒したカムイの追忍となって旅立った一方、柳生新陰流の秘太刀を密かに会得したため、尾州柳生から狙われることになる。 岩津藩でカムイと戦ったウツセは技で圧倒するが、油断したため崖から落とされ倒せなかった。後に旅の少年小兵太と道連れになり、尾州柳生との決戦の後でカムイと再対決するも敗れ去ったが、亡くなる前に小兵太の父馬来十蔵をかつて殺したのが自分であることを小兵太に明かしている。
柳生 厳包 (やぎゅう げんぽう)
後に号した柳生連也斎の名で知られる、柳生新陰流正統五世を相伝した尾張藩剣法指南役。鍛えさせた刀を、死体斬りによって仕込んで使う剣豪。土雲(どうん)の小頭から下男として預けられた下忍のウツセが新陰流の秘太刀を会得していることを知り、師範代の島出雲にその始末を命じた。 さらにウツセとの対決を望むカムイを使ってウツセを倒そうとしたが、兄の柳生茂左衛門利方と組んでカムイ、ウツセと戦うも敗れ、敵を暗殺によって葬ってきた尾張柳生の非を父の弟子筋に当たる阿多棒心から責められ、諭されている。
島 出雲 (しま いずも)
柳生厳包に仕える尾州柳生の師範代。元抜け忍で柳生厳包の父の柳生利厳に救われ、柳生厳包の相弟子として育てられた。柳生厳包から尾州柳生の秘太刀を密かに会得した下忍のウツセを討つよう命じられ、小頭の土雲(どうん)率いる伊賀忍者たちも歯がたたない強さを見せるが、火攻めによって全身に大火傷を負ってしまう。 しかし反撃して土雲(どうん)を絶命させる寸前、ウツセを倒す代わりにカムイを倒すよう頼まれ、受け入れた。だがカムイからウツセと間違われ、その攻撃を受けて果てることになった。
貴田 源心 (きだ げんしん)
塚原卜伝の高弟松岡兵庫之助から新当流免許皆伝を授かった、元播州三木家五万石の剣法指南役の老人。藩主の御前試合で旅の武芸者に三度破れ、三年間修行の旅を重ねた末に柳生厳包に野試合を挑むも敗北。型にはまった剣技は古いと諭される。その後、人夫となって荒地の開梱に加わっていた時にカムイと出会い、追忍と戦って倒された。
森 忠成 (もり ただなり)
隠居して磐山と号する岩津藩の前藩主で、傲慢不遜な65歳。動物を狩るだけの犬追物に飽きたらず、武芸試合に集めた侍や捕らえた男女を弓で射る人間狩りを楽しんでいた。だがたまたま捕らえたカムイとウツセによって部下たちを殺され、虐待した者たちからさんざんに虐げられる。
舞様 (まいさま)
人に頭痛と目眩をもたらすオソロシの滝が流れる岩津領鳴神の村に、人柱として買われた娘。十数年に一度、川が異常増水するこの一帯では、流された橋の再建にあたって鳴神村が人柱の娘を差し出すようになり、そのかわり年貢を免れていた。「舞様」とは人柱の娘を指す呼び名。追っ手と戦って傷ついたカムイを助けたこの舞様は、元は城主の娘だったが戦に敗れて父は死に、母娘共々苦界に落とされた。 オソロシの滝が止まって岩津領が大洪水に見舞われた時、新しい橋の人柱となりカムイに見守られて川の中に消えた。
阿多棒 心 (あたぼう しん)
熊野の山中で柳生利厳に新刀流を学び、印可相伝を承けられた阿多棒庵を兄に持つ老僧。武芸全般に通じ、カムイさえもあしらうほどの達人。10年前に雪崩に呑まれたところを馬来十蔵に救われたかわりに、請われて剣術を教え、草薙の太刀を授けている。後にカムイとウツセの両方に興味を持って関わり、カムイに水月の心と、天狗に化けて柳生流秘太刀の数々を教えた。 さらにウツセからは彼が鍛えていた小兵太をさらうことで、尾州柳生の地におけるカムイとウツセの対決を導いている。その際、自身は柳生厳包の客人となって立ち会い、二人と戦って敗れた柳生厳包を厳しく諭した。
柳生 茂左衛門 利方 (やぎゅう しげざえもん としかた)
尾張藩剣法指南役を柳生厳包に譲り、柳生家を相続したその兄。尾州柳生の秘密を守るため弟と共にカムイ、ウツセと戦ったが、敗れて絶命した。後に息子の柳生厳延が、柳生厳包から柳生新陰流正統第八世を継いでいる。
馬来 十蔵 (まらい じゅうぞう)
丹波の山中に暮らす実直な土侍だったが、阿多棒心に草薙の太刀を教わったことから剣の道を志し、諸国修行の旅に出た。やがて将軍家剣法指南役柳生飛騨守宗冬から江戸柳生にも勝るその腕を見込まれ、密書を尾州柳生の柳生厳包に届けるよう頼まれる。だがそれは馬来十蔵と、将軍との御前試合で自分が敗れた柳生厳包とを共倒れにしようとした柳生飛騨守宗冬の罠で、そのことを事前に察知した柳生厳包が師範代の島出雲に命じて放った刺客不動とウツセに襲われ、馬来十蔵は暗殺されてしまう。 それから時を経て、父親を探す子供の小兵太と道連れになったウツセは、その父親がかつて手にかけた馬来十蔵であることを知り、そのことは告げず小兵太に剣を修行させた。
馬来 小兵太 (まらい こへいた)
馬来十蔵の幼い息子。父の仇を捜して一人旅をしている時、ウツセがその仇とは知らず知り合い、一緒に旅をするようになって剣を教えられた。後に尾州柳生の地でカムイ、ウツセと立ち会った柳生厳包が父を殺させたことを知るが、敗北した柳生厳包を仇討のため斬ろうとして果たせず、立ち会った阿多棒心からそれでいいと諭された。
アキ
記憶喪失のためみずからをアキと名付け、下女や乞食をしながら中山道の馬目の宿に流れてきた少女。狂女のふりをして人目を引き、自分を知る人に見つけられることを願っていた。カムイの助けで信濃・塩の平の的屋が行方不明の娘を探していることを知り、上州屋が霜降りの飛造に頼んだ荷運びにカムイと共に同行。 だが実は御禁制品を運ぶ抜け荷だったため、雪山でカムイは狼たちの生贄にされ、崖から落ちたアキは的屋から逃げた遊女だったことを思い出し、結局は的屋に連れ戻されることとなった。その後、生還したカムイから金を託された竜神の安兵衛によって身請けされ、解放されている。
鬼火の五郎造 (おにびのごろぞう)
越後、信州、上州一帯を荒らした盗賊団の首領で、竜神の安兵衛海坊主の松造飯盛の吉次の三人の小頭以下、総勢30数名の手下を抱える。「金のない奴からは盗らねえ」「女は盗らねえ」「生命は盗らねえ」を信条としており、手下からの信頼も厚い。夜烏の六臓の密告により上田藩の奉行所に捕らえられ、手下たちを守るため自害して果てた。 享年50歳。
竜神の安兵衛 (りゅうじんのやすべえ)
盗賊鬼火の五郎造一味の小頭で、江戸の薬種問屋辻屋の番頭と偽る初老の男。カムイを尊敬し、その名のとおり竜神の刺青がある。カムイに頼まれて遊女のアキを身請けした後、子分の仁助が孫娘のおけいと共に山宿の番人を勤める湯治場で、雪山で熊に抱えられたまま死にかけていたカムイを救った。 その後、馴染みの船宿辻平の女将に頼んでカムイを船頭として雇わせ、密告によって捕らえられた鬼火の五郎造一味が自害した時は、カムイの協力で子分の夜烏の六臓の裏切りを突き止め、横取りされた強奪金も取り戻した。そして海坊主の松造を二代目の頭に推したうえで足を洗うが、瀕死の夜烏の六臓からカムイが追われていると告げられ、追忍たちに立ち向かうも、仲間共々全滅させられてしまう。
夜烏の六臓 (よがらすのろくぞう)
大店の両替商遠州屋の跡取りとして生まれたが、幼い時に盗賊一味に店の身代を奪われ、両親が自殺。預けられた親類の家を飛び出して裏街道に足を踏み入れた後、ある盗賊一味に拾われ、育てられた男。だが盗賊への恨みが甦り、預かった強奪金を奪って仲間を密告。同様にして盗賊に加わっては、裏切って潰すことを生きがいとしていた。 だが竜神の安兵衛の片腕となって首領の鬼火の五郎造を奉行所に密告した後、カムイの計略によって裏切りが暴かれてしまう。しかしカムイによって報復から逃れたために恩義を感じ、追忍たちを始末しようとしたが深手を負わされ、カムイが狙われていると竜神の安兵衛に告げて絶命した。
清次 (せいじ)
隠居後も川で魚の掛け取りを続ける一人暮らしの老人。「抱き取りの清次」の異名を取るほどの漁師だったが、近くに住む大工の息子清吉の嫁や孫に冷たくされ、心臓病で倒れたところを救ってくれたカムイを小屋に同居させる。得意とする抱き取りと掛け取りをなんなく会得したカムイに驚嘆し、魚取りの技を伝えた後で持病により亡くなった。
遠州 (えんしゅう)
江戸の泥ガメ長屋に身を置き、開墾の場で働くカムイに擦り寄った日雇い人足。実は遠江の祝浜の漁師半兵ヱの息子一太郎で、10年前、沈没した御用船から父と共に千両箱を引き揚げた隣家の漁師重兵ヱに父を殺され、金を奪われている。その後、母親が病没して一家は離散し、江戸で口入れ屋稲葉屋の元締めとなった重兵ヱへの復讐の機会を狙っていた。 稲葉屋の縄張りを狙う同業の岩戸屋の手下たちを懲らしめたことでカムイ共々身内に取り立てられ、復讐を実行するもカムイによって阻止されるが、殺されかけたところをさらにカムイに助けられた。その後、重兵ヱの幼い娘、妙を誘拐して恨みを晴らそうとするが、許しを請う重兵ヱの前で父を思う妙は、優しくしてくれた遠州を刺殺。 だが二人の気持ちを汲み取った遠州は、納得して死んでいった。
稲葉屋 重兵ヱ (いなばや じゅうべえ)
江戸の口入れ屋稲葉屋の元締め。盛り場などの利権も手広く持つ一方、同心の青木と内通し、縄張りを狙う同じ口入れ屋の元締め岩戸屋釜五郎と対立している。根岸の別荘で暮らす一人娘の妙に対しては、別人のように優しい。貧しい漁師だった時に隣家の漁師半兵ヱを殺して奪った御用金で稲葉屋を起こしたが、半兵ヱの息子の遠州こと一太郎に妙をさらわれ、自分の罪を深く悔いることになった。 その後稲葉屋をカムイに任せ、妙と共に巡礼の旅に出ている。
闇鬼 (あんき)
曲射の手裏剣術卍を使う不敗の三兄弟を、カムイ討伐に差し向けた中忍。だが三兄弟の一人は川底からの攻撃でカムイに倒され、残る二人も卍の通用しないカムイを恐れて追撃できなくなり、日雇い稼業に身を落としているところを闇鬼に見つけられた。闇鬼はカムイが兄弟にかけた言霊の暗示を解いて再対決を挑ませたが、すでに卍の技を知るカムイには通用せず、二人共手にかけられてしまった。
韋駄天の吉次 (いだてんのきちじ)
口入れ屋稲葉屋の若衆頭となったカムイを狙って、同じ口入れ屋の岩戸屋が放った刺客橘左近から、依頼金を擦りとった小悪党。俊足が自慢だったがカムイにあっさり追いつかれて金を取り戻され、そのままカムイに従う形で稲葉屋の一員となっている。
橘 左近 (たちばなさこん)
同郷の幼なじみの藩士に仕官を頼み、仕官に必要な金を殺し屋稼業で集めている凄腕の浪人。だが口入れ屋稲葉屋の若衆頭となったカムイを商売敵の岩戸屋から頼まれて狙うも敗れ、そのため岩戸屋からも命を狙われて行き場を失ってしまう。カムイは橘左近を訪ねて上京した彼の妻子と話をつけ、苦手な犬をけしかけて橘左近を追い詰めることで殺し屋から足を洗わせた。 剃髪して妻子共に稲葉屋の一員となった橘左近は、若菜の佐平次と改名してカムイに従っている。
飛天の酉蔵 (ひてんのとりぞう)
凄腕の仕掛け人(殺し屋)で美男子だが、実は酉子という名の女性で、男を装っている。父の飛天要助は江戸の一刀流結城道場の師範であり、道場の跡目を継ぐことになったが、道場を牛耳ろうとした旗本の跡取りらの手で、闇討ちを受けこれを返り討ちにする。この事を逆恨みされ、最終的に飛天要助は惨殺され、陵辱された酉子の母も自害した。 残された娘の酉子は父の幼なじみだった無限流の伊吹兵馬に引き取られ、剣を教えられて道場一の使い手となった後、無頼者たちを切り倒して仕掛け人となった。仕掛け人の元締め極楽堂から頼まれてカムイを襲った酉蔵は得意の居合いを破られてしまう。 伊吹兵馬から酉蔵の過去を聞いたカムイは、酉蔵に代わって飛天要助を殺した旗本を仇討ちしている。女としてカムイを愛してしまったことを自覚しつつ、それでも再対決を挑んだ酉蔵だが、自分に加勢した仕掛け人や賞金稼ぎを逆に倒し、極楽堂も殺害。そして追忍たちと戦うカムイの味方となって乱入し、命を落とした。
伊児奈 (いこな)
亭主に捨てられ、幼子と共に橋から身投げしようとしたところを旅のカムイに救われた飯屋働きの女。恩返しにカムイの身の回りの世話をしようとして諭され、帰郷するはずが岩倉の宿の飯盛女となってカムイと再会する。だが身の上話はすべて偽りで、その正体は「カムイ命」の刺青を腕に入れた伊賀の幼なじみのくの一、伊児奈だった。 抜け忍となっていた伊児奈はつかのまの再会の後、再びカムイと別れている。
神子 サエ
押方五万石の郡代神子重左ヱ門の次女で、不見流隠月の太刀(かげりのたち)の使い手。追忍との戦いで傷ついたカムイを救い、カムイは下男となって神子家に仕えることに。押方藩を食い物にする悪徳商人井筒屋と組んだ筆頭家老の島津玄藩は、領主の対馬守も抱き込んで倹約令と年貢の過酷な取り立てを推し進め、対立する神子重左ヱ門が対馬守の遊興を避難したことを理由に蟄居閉門を申し付ける。 さらに神子重左ヱ門の長女の婿で目付の坂本右京も上意を理由に殺され、神子重左ヱ門は御役御免、家名断絶とされたばかりか、息子たちと共に切腹を申し付けられ、立ち向かうも三人共に斬殺されてしまう。 だが神子サエはカムイの助けで、父と共に家老一派と井筒屋のつながりを調べていた戸沢村の大庄屋義平ヱが書いた書状を入手。江戸への直訴を決意した神子サエは不正の証拠が記されたその書状を持って老中阿部豊後守に訴えるが、長く留置された末に対馬守死去によるお家断絶と改易を知らされる。 だが対馬守は死んだのではなくカムイに拉致され、乞食に身を落としていた。
早川 数馬 (はやかわ かずま)
筑前藩主の家来加藤九郎兵ヱに使えていた家士。浪人となり、妻と二人の幼子を伴って海良藩の大番頭迫間軍兵ヱの元へ仕官に訪れるが、不在のためその妻から時を待つよう伝えられる。そのため荒れ寺で同藩を訪れていたカムイや浪人と同宿するも、遊女殺しの疑いをかけられて共に捕まるが、迫間軍兵ヱの妻に身元を保証され釈放。 待つ間、藩の新田開発のための開墾の人夫となり、妻子と百姓の物置小屋を借りて暮らし始める。仕官のチャンスを与えようとした迫間軍兵ヱから吸血鬼討伐を頼まれ、小仏峠で吸血鬼の濡れ衣を着せられたカムイに挑むが、面識のあるカムイから諭されて戦いはせず、その後仕官の願いがかなえられた。
長内 要助 (おさない ようすけ)
海良藩剣法指南役にして無限流道場主の老人。自分の同門であり親友の伊吹兵馬の紹介状を持って訪れたカムイが遊女殺しの嫌疑で捕らえられた時に、身元を引き受けて家に留まらせた。宿敵だった石州岩戸の住人京極流の荒瀬孤竜との真剣対決においてからくも勝利するが、その息子の荒瀬隼人から新たな対決を挑まれる。 だが老いたうえに長患いで伏せることもたびたびとなっていた長内要助は、城下で若い女を斬り殺しては血を吸う行為を密かに繰り返しており、その現場をカムイに見つかり討たれてしまう。息子の長内十兵ヱはカムイが吸血鬼で、父が殺されたと藩の大番頭迫間軍兵ヱに知らせて追っ手を出させるが、藩の者でない早川数馬以外は追忍共々カムイに倒されてしまった。 この後、長内十兵ヱは自決している。
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カムイ伝 第二部 (かむいでん だいにぶ)
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