あらすじ
第1巻
二人の子持ちのワーキングママ、河東カンナは、娘の河東エリザベスを預けている保育園で知り合った、秋川ひとみ達と親交を深める。自身も母子家庭で育ったひとみは、貧乏を嫌っており、定職を持つしっかりした相手と結婚するため、結婚相談所に入所していた。ひとみは、そこでいい相手と知り合ったと語っていたが、最近顔色が優れない。相手の臼井達哉は、お金がないという感覚が理解できないボンボン育ちだったのだ。そこでカンナがお節介を焼き、達哉はひとみの切ない過去を知る。達哉は、軽い気持ちでひとみの過去を「気にしない」と発言した自分が許せなくなり、彼女の苦労を知るため、親の家を出て会社も辞める決意を固めるのだった。(第1話。ほか、4エピソード収録)
第2巻
河東麗音は念願のS学園に入学した。だが、担任である石田莞爾の英語の授業は、クラスのボス、日下部の妨害により崩壊していた。まともに英語を勉強する事ができない麗音は、河東カンナに家庭教師をつけてほしいと頼み込む。だが、話を聞きにいったカンナに対し、石田はクラスには何の問題ないと告げ、麗音の方が噓をついていると言い放つ。石田に不信感を持ったカンナは、調査を進めるうちに、石田やほかの生徒の親達が、トラブルを嫌い、内部進学させる事をなにより優先させている事を知る。さらにその頃、カンナは森えみりから、麗音がクラスでいじめられていると知らされる。S学園の闇を垣間見たカンナは学校に直談判するが、石田は責任転嫁して過ちを認めない。そんな中、えみりが麗音をいじめた日下部達にライフル銃で殴りかかるという事件を起こす。その後の聞き取り調査で、日下部は自分の行動はいい人ぶっている石田を苦しめようと思ってやったものだと語る。そして、そんな自分の行為も正しいとは思わないとカンナに正直に打ち明けるのだった。石田だけは最後まで非を認めなかったが、日下部の態度に溜飲を下げたカンナは、学校側の謝罪を受け入れる。(第8話~第10話。ほか、2エピソード収録)
第3巻
河東カンナの親友の藤井清香は、高校時代にカンナに勉強を教えてくれた恩人だった。そんな清香が35年間思い続けた瀬川龍が久々に上京した事を機に、カンナの家に友人達が集合する事となった。だが、清香は夫の山幡の家を出るために引っ越しの真っ最中で、その集まりに出席できなかった。そんな中、瀬川が昔から清香に思いを寄せている事を知ったカンナは、二人を強引に引き合わせる。瀬川は自分の弱さから清香に思いを伝えられなかった過去を詫び、これからは清香と生きて行きたいと意思表示する。一方でカンナは、清香に両親の介護を押しつけていた山幡が許せず、損害賠償を請求すると脅しをかけ始める。(第11話~第12話。ほか、3エピソード収録)
登場人物・キャラクター
河東 カンナ (かわとう かんな)
非正規雇用のデザイナーを務めている、独身バツイチの女性。初登場時の年齢は40歳。河東麗音と河東エリザベスの母親で、前夫は礼。デブでブスだが、おしゃれが大好きな人物。実質的に2回結婚に失敗しており、前夫が養育費を払わないため、つねに貧乏暮らし。しかし優しい性格の麗音、自分に似て気が強いエリザベスに囲まれ、幸せを感じて暮らしている。 おせっかいで、困っている人を放っておけない性格。時に、自己中心的で図々しいと思われがちだが、明るく前向きで非常にパワフルであり、いつも周囲を笑顔にする。そのため周囲の男性から、真剣にアプローチを受ける事が多い。
河東 麗音 (かわとう れおん)
河東カンナと礼の息子。ゆるいウェーブがかかったショートヘアの優し気な男子。カンナの義母の勧めで中学受験する事になる。カンナと礼が離婚した際はチック症になり、カンナの仕事でロンドンに住んでいる時はいじめに遭ったという過去がある。心の中では両親の復縁を望んでいるが、現実には無理だと感じており、忙しいカンナをいつも気遣っている。 そのため、自分が悪くない時でも謝るという、優しさがある。礼の出身校であるS学園に無事入学するが、森えみりと仲がいい事から、日下部に目をつけられ、クラス内でいじめに遭ってしまう。
河東 エリザベス (かわとう えりざべす)
河東カンナの娘。愛称は「エリ」。初登場時は「さくらまち保育園」の2歳児クラスに通っていた。ボサボサのワイルドなヘアスタイルで、吊り目のへちゃむくれ顔。保育園ではお友達を叩いて泣かせたり、注意されると逆切れする乱暴者。だが根は優しく、性格はカンナに似ている。麗音が悩んでいると食べ物を差し出すなど可愛げのある一面もあり、となりに住む後藤夫妻に非常に懐いている。
カンナの父 (かんなのちち)
河東カンナと五月、弥生の父親。カンナの母の夫。髪型はオールバックで、黒縁メガネをかけている。家長の威厳を振りかざすきらいがあり、カンナとまったく波長が合わない。そのため、カンナにだけに暴力を振るっていたので、カンナからはDV野郎だと思われている。しかしカンナの母には、根は悪くない人だと思われている。
カンナの母 (かんなのはは)
河東カンナと五月、弥生の母親。カンナの父の妻。丸いフォルムのショートボブヘアをした、やさしそうな雰囲気の女性。働き者でいつも夫より早く起き、夫にいっさい逆らわずにいつもにこやかに過ごしている。
五月 (さつき)
河東カンナの姉で河東家の長女。ウェーブのかかったショートヘアで、少しぽっちゃりしている子持ちの既婚女性。大型犬を3匹飼っている愛犬家で、飼い犬を「うちの子」と呼ぶ。
弥生 (やよい)
河東カンナの姉で、河東家の次女。前髪を横分けにした少し長めのボブヘアの独身女性。まじめで、少し堅い性格の持ち主。以前から河東麗音の世話を引き受ける事が多く、カンナが学費のために仕事を増やすのは、麗音のためによくないと考えている。レオの学費を払わない礼にお金を渡し、礼が麗音のために作ったお金にしてほしいと懇願した。
カンナの義父 (かんなのぎふ)
河東カンナの元夫である礼の父親。優しい性格で、以前からカンナと折り合いがいい。友人を通して、親が別れた子供は、一生どこかで両親の復縁を願っているという事を知り、孫である河東麗音をいつも案じている。息子の礼を非常にふがいなく思っており、その点でもカンナと気が合う。
カンナの義母 (かんなのぎぼ)
河東カンナの元夫、礼の母親。カンナの義父の妻。ボブヘアのおしゃれな女性で、カンナの元敵だが、孫の河東麗音についてはカンナの味方についている。麗音の中学受験を心配し、礼の母校であるS学園を受験するよう勧める。
礼 (れい)
河東カンナの元夫で、河東麗音の父親。海外からの受注が多い売れっ子のCGデザイナー。ドレッド風のヘアスタイルにメガネをかけたチャラそうな外見で、非常に若く見える。悪気のない、純粋な自己中心的な性格をしている。仕事は順調で稼ぎはいいものの、お金にルーズなところがあり、養育費や塾代をなかなか払わない。麗音の学費は払うと約束した矢先、結婚しようと思っていた相手にも子供がいる事を知り、学費を出せないと言い出すなど、麗音の親としての責任感に欠ける。 だが、自分の子供でない河東エリザベスも同等にかわいがっており、どこか憎めないところがある。
森 えみり (もり えみり)
河東麗音と同じ塾に通う女の子。森の娘。強気で頭のいい美少女で、クールな雰囲気を漂わせている。麗音が困っている時には、塾の校長をもいい負かすなど、麗音の事をつねに気にしている。入試日にトラブルがあったものの、無事麗音と同じS学園に入学。S学園で麗音をいじめていた日下部達を殺さないと気が済まないと言い放つ強者。 両親が海外赴任中のため叔母と暮らしていると学校に報告しているが、実は一人暮らしをしている。父親がイギリス人で小学6年生で離婚し、子煩悩だった父親が自分を捨てたと思い込んでいる。そのため、母親がいると暴れ出すようになり、必然的に一人暮らしをするしかなくなったという経緯がある。
後藤 (ごとう)
河東カンナのとなりに住む夫婦。妻はショートカットで、夫は軽いウェーブがかかった少し長めのヘアスタイルで、口ヒゲと顎ヒゲを生やしている。夫婦共に美容師として働いている。マンション内では飼育禁止の犬を飼っていながら、河東家がうるさくて眠れないと苦情を言いに訪れる。子供がいない事から、保護犬を引き取って「太郎」と名付け、子供のように育てている。 その太郎が河東エリザベスを嚙んでしまい、無駄にけじめをつけたがる夫が太郎を処分すると言い張り、ちょっとした騒動を巻き起こす。エリザベスと太郎が和解して以降は、カンナとも親交を深め、エリザベスの面倒を見たり、カンナのよき相談相手となった。1年前まで戸建に住んでいたが、放火されて借金を背負ったという過去がある。
宇野 (うの)
さくらまち保育園の2歳児クラスに子供を預けているシングルファザー。息子の名前は「拓」。医師を務めており、妻とは死別している。短髪に顎ヒゲを生やし、黒縁のメガネをかけている。子育てをシッター任せにしていたために子供が懐かず、非常勤となった経緯があり、そのため現在ではお見合い話も来なくなった。河東カンナや御法川とはシングル同士という事で、定期的に交流を持つ仲になる。 カンナといっしょにいる時には笑顔が多く、どうでもいい話ができるような、ゆるく幸せな家庭にあこがれている。カンナからは「宇野っち」と呼ばれている。
御法川 (みのりかわ)
さくらまち保育園の2歳児クラスに子供を預けているシングルファザー。ロングヘアを一つにまとめたイケメン。いかにも自由人然とした雰囲気を漂わせており、娘といっしょに歩いているとよく職務質問をされる。実家の喫茶店を手伝っており、サンドイッチを作るのが得意。河東カンナや宇野とはシングル同士という事で、定期的に交流を持つ仲になる。 カンナ達から「ミノくん」と呼ばれている。
秋川 ひとみ (あきかわ ひとみ)
さくらまち保育園の2歳児クラスに子供を預けているシングルマザーで、年齢は30歳。ボブヘアをセンター分けにした美人。アルバイトだけでは暮らせないので、結婚相談所に入会し、臼井達哉と出会った。母子家庭で貧乏したために、子供には苦労をさせたくない思いが強く、定職のある人と結婚してきちんと子育てしたいという願望がある。母親に負担をかけるのが嫌で、誕生日にプレゼントを貰うと、万引きしてお返しをしていた切ない過去がある。
臼井 達哉 (うすい たつや)
父親が経営する宅配弁当などの会社を手伝っている男性。結婚相談所で秋川ひとみと知り合った初婚の35歳。黒髪のラフなショートヘアをしており、どこか頼りなさげな人物。金持ちのボンボンなために、お金がないという感覚がまったく理解できない。ひとみが貧乏で切実な思いをしてきた事に対して、気にしていないと発言する。苦労知らずのために、図らずも上から目線でひとみを見ていた事を反省し、実家を出て親の会社を辞めたりと、純真で向こう見ずなところがある。
新井 真理 (あらい まり)
「さくらまち保育園」に子供を預けている女性。琢磨の母親で、新井準の妻。河東カンナからは「琢ママ」と呼ばれている。穏やかで優しい性格の持ち主。当初は働いていたが、琢磨の体が弱いため退社。最近、仕事で苛立っている準の態度に怯えており、人知れず悩んでいる。
新井 準 (あらい じゅん)
新井真理の夫で、琢磨の父親。年収800万円のサラリーマンで、おしゃれな短髪のキリッとした男性。性格がきついため、穏やかな性格の真理を人間的に尊敬している。しかし仕事ができると自負していた自分が、開発チームから外された事から、敗北感を感じて真理に当たり散らすようになる。
薬師 (やくし)
河東カンナの専門学校時代の男友達。おしゃれ風な七三ヘアをしている。薬師京子と薬師純の息子で、1年前に離婚した。アパレルブランド「YAKUSHI」の御曹司だが、父親がこだわっていたパリから撤退し、会社を黒字にしたやり手でもある。最近は中国、ベトナム、ミャンマーにも工場を建てた。昔から、カンナを自分の結婚相手に推していた母親がアルツハイマーになり、カンナにヘルパーのアルバイトを頼む。 アルバイト終了後にカンナに求婚するが、キスの感触を確かめたカンナから、友達のままが合っていると断られてしまう。
薬師 京子 (やくし きょうこ)
薬師の母親で、デザイナーを務める女性。亡き夫はアパレルブランド「YAKUSHI」を立ち上げた薬師純。料理がうまく、スタイリッシュでかっこいい女性だったが、現在はアルツハイマーになっている。神経質な性格のためヘルパーとは合わず、息子の嫁にしたいと言うほど気に入っていた河東カンナが、週に1回付き添う事になった。
石田 莞爾 (いしだ かんじ)
私立S学園で1年C組の担任を務める男性教師。担当教科は英語。河東麗音の担任でもある。「子供は愛されてほしい」をモットーとする優しげな人物だが、責任転嫁の常習者で、自分の非を絶対に認めない。その人間性を見抜いた日下部に露骨に嫌がらせをされるようになる。陰湿だが、それを表に出さない完璧な偽善者。河東カンナが保護者会で授業崩壊している事実を発言すると、麗音を噓つき呼ばわりし、ほかの生徒にもわかるように麗音を貧乏人扱いし始める。
日下部 (くさかべ)
私立S学園の1年C組に在籍する男子中学生。河東麗音と同じクラスで、メガネをかけたハンサムな人気者。S学園小学校出身。クラスのボス的な存在で、担任の石田莞爾の胡散臭さを一目で見抜き、石田の授業を仲間と共に妨害するようになる。森えみりが気になるようで、えみりと仲がいい麗音をいじめの標的にする。だが、石田に嫌がらせをする自分を正しいと思っていないと発言するなど、素直な一面もある。
葉山 (はやま)
私立S学園の1年C組の保護者会で、河東カンナに声を掛けて来た女性。黒髪のワンレンヘアの上品なお母さん。子供をS学園の幼稚園から通わせている事情通で、石田莞爾が出世のために、日下部に手を焼いている事を隠している。親達は内部進学を狙っているため、問題に目を伏せている事情をカンナに教える。
校長 (こうちょう)
私立S学園の校長を務める女性。前髪を横に流した丸みのあるボブヘアにしている。麗音がいじめに遭っていると直談判しに来た河東カンナの話に耳を傾け、さらに、森えみりが日下部達に殴りかかった事件を受け、学園が抱える問題を理解するに至る。不祥事があれば教員一人の失点と査定していたと、学校の非を全面的に認めた。罰則的な処分は誰にも下さないと約束した誠実な人物。
藤井 清香 (ふじい さやか)
河東カンナの親友で、優しそうな雰囲気を漂わせた女性。セミロングヘアの髪型をしている。高校3年生の時にカンナに勉強を教えてくれた恩人。学年で10番の優等生だが、両親とも中卒。勉強が全然できなかった小学校の時、両親が自分といっしょに勉強してくれたおかげで実力をつけた経験から、基礎のないカンナにも勉強を教える技術を持っていた。 瀬川龍と小中学校がいっしょで、35年間ずっと瀬川を思い続けている。しかし瀬川が早くに結婚したため、母校の教師となり、山幡と結婚。10年間、夫の両親の介護を押しつけられていた。
瀬川 龍 (せがわ りゅう)
かつて河東カンナと同じ高校に通っていた既婚男性。少しウェーブがかった髪を後ろに流している。高校時代は学年2番の成績で、学費免除を受けていた秀才。だが、幼い頃から母子家庭で貧乏のみじめさが身に染みており、早く稼ぎたい気持ちが強く、高校卒業後に北海道の建設会社に入社。24年振りに上京した際には、カンナにずっと藤井清香が好きだったと打ち明ける。 小学生の頃に清香から100円をもらったという事実が仇となり、清香に対して堂々とできなくなったという切ない後悔がある。
山幡 (やまはた)
かつて河東カンナが高校3年生だった時に、担任だった男性教師。当時27歳で独身。高校中退は人生の終わりだと厳しく生徒に指導する人物で、一部では面倒見はいいとの噂もあった。カンナとは波長が合わず、クラスの緊張感をぶち壊すカンナをガン呼ばわりするなどデリカシーがない。藤井清香と結婚したが、すぐに本性を現し、自分の両親の介護を押しつけて、最終的には清香との会話も嫌がるようになった。 その事実を虐待であるとカンナに脅され、清香との離婚に応じる。
森 (もり)
森えみりの母親で、教員を務めている。メガネをかけて横分けのボブヘアにしている知的な女性。イギリス人の夫とはイギリス留学中に知り合って結婚したが、夫の開いた英語学校が失敗し、夫が帰国すると言い出したため、離婚したという経緯がある。子煩悩の夫にえみりが懐いていたせいで、自分がいるとえみりの家庭内暴力がひどくなる事を知り、家を出て行ってしまう。
本郷 (ほんごう)
森の彼氏で、教員仲間でもある。無造作に伸びたヘアスタイルで、朴訥で優しそうな雰囲気の持ち主。森の家庭を心配していたが、森が娘の森えみりと暮らすようになり、一旦は別れた。のちに、えみりから河東カンナ主宰のバーベキューに誘われ、森と復縁する。
千ヶ崎 (ちがさき)
モダンバレエ「Cモダンカンパニー」の主催者を務める男性。スキンヘッドに縦縞のスーツを身につけている。これまで舞台衣装を担当していた妻と別れる事になり、デザイナーを募集してた際、河東カンナのSNSを見て、是非参加してほしいと声を掛けた。妻と復縁し、カンナへの発注は見送られたが、カンナが作った帽子の試作品を気に入り、カンナの衣装を高額で買い上げる事を決めた。
前作
カンナさーん! (かんなさーん)
『マリーゴールド』の続編で、本作『カンナさーん!』からさらに物語は『カンナさーん!アラフォー編』へと続く。ママになったパワフルで派手好きな河東カンナが、持前の根性と明るさで崖っぷち人生をひた走るハート... 関連ページ:カンナさーん!