ガンダルヴァ

ガンダルヴァ

理想の匂いを追い求める不思議な男・香田尋が織り成す「嗅覚」をテーマとしたミステリアスな連作集。ちなみにタイトルの「ガンダルヴァ」とは、インドの神話に出てくる、匂いを食べて生きると言われる精霊のこと。2000年に「モーニング」、2001年に「新マグナム増刊」での掲載を経て、「イブニング」に2001年から2002年に連載された作品。コミックス刊行にあたり、未発表エピソード「SOMA」と「SHAKER」を新たに収録している。

正式名称
ガンダルヴァ
ふりがな
がんだるゔぁ
作者
ジャンル
異能力・超能力
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概要・あらすじ

歯科医のみづきは仕事柄、患者の口臭に敏感になり過ぎるのを恐れ、自分の嗅覚に蓋をし、消臭剤で匂いを消すという日常を送っていた。ある日、みづきは偶然入ったレストランのウェイター・香田尋に、自分の匂いを嗅がれているような気がした。しかし、運ばれてきた料理の香りの良さに我を忘れ、あっという間に料理を平らげてしまう。

レストランでは尋のジプシーバイオリンが始まり、みづきは音色の匂いが自分にまとわりつき、感性が刺激されてゆく心地良さを感じるのだった。(エピソード「DENTIST」)

登場人物・キャラクター

香田 尋 (こうだ じん)

西洋料理レストラン「アピキウス」のウェイターの男性。脅威的な嗅覚を持ち、匂いからその人物の体調や体質、居場所など、さまざまなことを知ることができる。ジプシーバイオリンの弾き手で、聴覚に訴えかけて嗅覚を刺激し、演奏を聞いた人物の感性を揺さぶってしまう。また、自らも人を陶酔のアイレ(空気)に誘う力を秘めた香りを放っている。 現代のガンダルヴァ(匂いと音楽をこよなく愛するインド神話の精霊)である。

みづき

29歳独身の歯科医の女性。患者の口臭に敏感になり過ぎるのを恐れ、自分が日常生活においても「嗅ぐ」行為を避けてきた。そのことに、香田尋と出会ったことで気づく。尋に会うことで、自分の中の扉が開きそうな予感を覚えながらも、翌日、尋の店へ行くことを自制するなど、極度に慎重な性格。

吉田 一夫 (よしだ かずお)

歯科医に出入りする冴えない風貌の営業マン。緊張による汗と、歯の治療をしていないような匂いを感じさせ、みづきは気になって仕方がない。昔はチョコレートの匂いをさせていた気の弱い少年だった。

轟 美加 (とどろき みか)

小学校教師の独身女性。フラメンコ教室に通っている。代議士の彼氏に、足の匂いが我慢できないと言われ、帰りのタクシーから左足の靴を投げ捨てた。それがきっかけとなり、香田尋に興味を持たれることになる。自分の中の情熱を封印しがちで、足が臭くなるからと、好きなフラメンコをやめてしまう。

城ノ内 博 (じょうのうち ひろし)

カスタムバイク屋のオーナー。フラメンコ・ギターの名手でもある男性。「排気の匂いが変わった」と言ってやってきた香田尋の残り香に刺激され、無意識のうちにフラメンコ・ギターを弾いてしまう。ギター片手に5年間、スペインに暮らしていた過去がある。尋には「サビカス(フラメンコギターの名手)の右手」と呼ばれている。

チョムスキー

パグ犬。夜明け前に飼い主の家を抜け出し、街を散歩することを日課にしている。街の匂いを嗅ぎ、そこで何が起こったか、匂いを視覚化し理解することができる。散歩の途中で轟美加に出会い、足の匂いに異常に反応する。

日野 めぐみ (ひの めぐみ)

25歳の独身女性。新聞社の地方支局で働いている。抜群のスタイルの持ち主。汗かきなので、夏はいつも水着を身に着けている。スパイシーでアシッドなワキの匂いを武器に、相手をトリップさせて情報を引き出すなど、記者としての能力は優秀。局内では「阿修羅の化身」と呼ばれている。男のような乱暴な口調で喋る。

浮津 エリ (うきつ えり)

新聞社の地方支局に入社して1年目の女性。日野めぐみのもとで記者の研修中であり、めぐみにパシリのように扱われている。めぐみと海開きの取材に訪れ、ひょんなことから香田尋、城ノ内博のチームとビーチバレーの試合をすることになる。白熱した試合中に、尋とめぐみの背後に、護法神(仏教の守護神)の乾闥婆(けんだつば)と阿修羅が闘う姿を見てしまう。 ちなみに乾闥婆は、インド神話では「ガンダルヴァ」として登場する。

山本 福寿 (やまもと ふくじゅ)

海開きが行われた土地の最長老で92歳の女性。年はとっても嗅覚だけは衰えていない。日課である早朝の散歩中、嗅覚が刺激されて岩穴に入り、そこで千手観音を目撃する。以後その場所は、お年寄りたちの拝みのスポットとなる。

カスミ

記憶喪失の女性。記憶をなくす前は、迷子動物を探すアルバイトをしていたようで、チョムスキーの写真を持っている。香田尋と偶然出会った際、尋はかつてカスミと会ったことがあることを思い出し、その時の匂いは今より大人だったことに気づく。ストーカーに手をあげるなど、気性の荒いところがある。

ストーカー

24歳の男性。記憶喪失のカスミをつけまわし追い払われるも、彼女の泊まるホテルの部屋に現れる。香田尋が彼の匂いを嗅いで得た情報から、一般の勤め人よりストレスは軽く、子供に囲まれた職場環境であることを知る。これをきっかけに、彼が温厚で、神経質で気が弱い、という記憶を、カスミは断片的に思い出していく。

ユーリ

バーでバーテンを務める女性。日野めぐみと付き合っている。「匂い」に特異な才能を持つ香田尋とも付き合っていることをめぐみから聞き、尋の部屋に潜り込んで、その匂いを体感する。Mっ気が高く、めぐみに対しては健気。

シゲ

叔父が経営する葬儀屋に勤める中年男性。口臭やおならなど、悪臭のもとになるメチルメルカプタンに敏感すぎる体質。酒がなければその匂いに耐えられないことから、自堕落な生活を送っている。自らは、シロップのような匂いを身体から漂わせている。香田尋の体臭に触れたことで、無意識に何かを変えようという気になる。

(おんな)

シゲの彼女的な存在で家事手伝い。シゲを「シゲきゅん」と呼ぶ。シゲが他人の匂いに敏感なため、いつも自分が臭いのではないかと気にしている。人を人とも思っていないようなシゲの態度にぶち切れて傷つくが、最終的にはシゲを放っておけない心優しい性格。

蟹江 正三 (かにえ しょうぞう)

桃花源酒造株式会社の社長。蟹江透子の夫で婿養子。生真面目な性格で、社長としての自らの立場にプレッシャーを感じ、自分の代で自慢の商品を作り出すことに必死になっている。そのため、妻の透子に気が向かず、そのことに自分では気づいていない。時に、古典に出てくるような古風な言葉遣いをすることがある。

蟹江 透子 (かにえ とうこ)

蟹江正三の妻で、蟹江あおいの母親。上品で柔らかな雰囲気で、色気のある女性。書を嗜んでおり、香田尋が家に訪ねてきたことにより才能が刺激される。尋にだけ見える「酒の精」を探して蟹江家を訪れた尋は、「酒の精」は蟹江透子から出てきたのではないかと感じ、透子に近づく。

蟹江 あおい (かにえ あおい)

蟹江正三と蟹江透子の娘。中学2年生。その環境からか既に酒好き。父親と母親の仲が今ひとつ上手くいってないのではないか、と陰ながら心配しており、「赤ちゃんが欲しい」と言い出す。香田尋が透子と頻繁に出かけている様子を度々目撃しているが、騒ぎたてずに成り行きを見守っている。

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