文豪ストレイドッグス BEAST

本編である春河35の『文豪ストレイドッグス』は、角川書店(現KADOKAWA)「ヤングエース」で連載された異能力バトルアクション。2016年4月からテレビアニメ化をはじめ、舞台や劇場版など多くのメディア化が展開される人気作で、そのスピンオフとなる本作では本編とは異なり、芥川龍之介が主人公として登場する。異能力者がさまざまな組織で暗躍する横浜を舞台に、さらわれた妹を取り戻すことや謎の男への復讐に燃える龍之介の戦いが、バトルアクションやサスペンスを交えて描かれる。

本編の主人公で「武装探偵社」の新人でもある中島敦は、本作では当初から犯罪組織「ポートマフィア」に所属している設定に変更されている。一方の芥川龍之介は本編ではポートマフィアに所属していたが、本作では序盤に武装探偵社に入社することとなる。このように「もしも龍之介が武装探偵社に入っていたら」「もしも敦がポートマフィアに入っていたら」という、本編では決して見られないパラレルワールドを用いたIfストーリーが展開される。ただし、キャラクターの性格やそれぞれが持つ異能力は本編から大きな変更はない。

本作では本編の主要人物の立場が逆転することでストーリーも大きく変わり、中島敦と芥川龍之介以外のキャラクターも立場や組織が変わっている者がいる。龍之介はポートマフィアではなく、武装探偵社に入ったことで本編とは真逆といえる立場になり、例えば宮沢賢治の計らいで田植えに励んだ龍之介は賢治からあることを学んでほほ笑むなど、貴重な表情を見ることができる。またIf設定だからこそ生まれる珍しい関係性や、コメディチックなやり取りなど、本編ではなかなか見られないキャラクターの意外な一面を楽しめる。