声が出せない少女×心が読める少女
とある高校に転校してきた失声症の真白音は、自分とはまったく違うタイプの心崎菊乃と出会い、菊乃の優しい気遣いがきっかけで、二人は親しくなる。実は菊乃は人の心が読めるために人の悪意まで聞こえてしまい、いつしか一人で過ごすことが多くなっていた。そのため、なにかとぶっきらぼうな口調や態度でクラスメイトと接しがちな菊乃だったが、真白のネガティブな心の声を聞き、見るに見かねて手を差し伸べる。そして、音に思いがけず真っ直ぐな気持ちを向けられ、菊乃が照れるというのが基本パターンとなっている。
二人だけの優しい世界
本作はまじめな性格ながら不器用な真白音と、心優しいが素直になれない心崎菊乃が、お互い自分にないものを補い合い、いつしか揺るぎない関係性を築いていく心温まるハートフルコメディ。音と菊乃は気配り上手で、二人はお互いのことを「優しすぎる」と思っており、自分をさておき相手の考えを優先する優しい心の持ち主。そのため一見すると音だけがフォローされ、助けられているようだが、実際は彼女と共に過ごすことで菊乃の心も救われているのである。
類は友を呼ぶ
学生時代に嫌な教師と接したことで、いい先生になりたいと教職への道を決意し、真白音のために手話を覚えた担任教師や、常連客の音と友達になりたいコンビニエンスストア店員の習志野咲、友達となかよくなれないことに悩むクラスメイトの中村ミドリなど、音と菊乃の周囲には、彼女たちと同様に温かくて優しい人が自然と集まってくる。またそんな人物たちが、音と菊乃の関係を客観的に見るエピソードもあり、いいアクセントとなっている。真っ直ぐな音と菊乃の関係性に周囲も影響され、さまざまな変化と共に新しいつながりが生まれていく。
登場人物・キャラクター
真白 音 (ましろ おと)
心崎菊乃と同じ高校に通う2年生の女子。エメラルド色の髪をロングヘアにしている。身長153センチで、体重43キロと小柄な体型をしている。2月24日生まれで、血液型はAB型。失声症を患っており、声を出して話すことができず、ノートに自分の考えを書いて他人とコミュニケーションを取っている。2週間前に転校してきたばかりで、クラスメイトたちは優しく接してくれていたが、基本的に筆談で応じるしかなく、会話に手間がかかることを気に病んでいる。人付き合いがうまくいかないのは、自分のせいだとネガティブにとらえ、人とかかわることに臆病になっている。だが、転校をきっかけに知り合った心崎菊乃と共に過ごす時間が居心地よく感じるようになり、彼女のぶっきらぼうな優しさに助けられながら、周囲と良好な関係を築いていく。しかし、友達がいない期間が長かったため、何かと挙動不審になり、空回りしがち。また思い込みが激しく、なにごとにも鈍感で、心崎に心の声が聞こえているとは疑ってもいない。勉強は得意ながら、極度の方向音痴。好きな食べ物はカステラで、苦手なものはガム。
心崎 菊乃 (ここさき きくの)
真白音と同じ高校に通う2年生の女子。金髪をツインテールの髪型にしている。身長159センチで、体重48キロ。5月5日生まれで、血液型はA型。人とコミュニケーションを取ることが苦手な失声症の転校生、真白音を放っておけず、声をかけたことで真白と共に過ごす時間が多くなる。いつも険しい表情で人を寄せ付けないところがあり、見た目の怖さから誤解を受けることが多いが、基本的にぶっきらぼうなだけで心優しい性格をしている。真白からは、自分の考えていることを理解してくれる、勘がいい人だと思われているが、実は人の心の声を聞くことができる特殊能力の持ち主。そのため、人が抱く大小さまざまな悪意を耳にするため、いつしかそれが刃物のように自分の心に突き刺さるようになり、必要以上に他人とかかわりを持たないようになった。しかし、真白といっしょに過ごすうちに、まっすぐで実直な彼女の心に癒されていく。ハンバーガーが大好きで、めざしが苦手。学校では遅刻が多く、反省文を書かされることも少なくない。
書誌情報
声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている 全13巻 秋田書店〈少年チャンピオン・コミックス〉
第1巻
(2020-07-08発行、 978-4253229517)
第8巻
(2022-07-07発行、 978-4253229586)
第9巻
(2022-11-08発行、 978-4253229593)
第10巻
(2023-04-08発行、 978-4253229609)
第11巻
(2023-07-06発行、 978-4253294614)
第12巻
(2023-11-08発行、 978-4253294621)
第13巻
(2024-03-07発行、 978-4253294638)