世界観
現代、もしくは昭和中期から後期にかけてのレトロな世界設定で、「異能」と呼ばれる特殊能力を持った人間が多数存在し、その多くが犯罪者となっている。一部は合法的に組織化し、小規模ながら精鋭ぞろいの異能者探偵組織が構えられているが、危険視はされ続けている。そのため、異能者はその多くが内務省異能特務課によって統括および管理されている。
作品が描かれた背景
本作『文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人 VS. 京極夏彦』が製作されたきっかけは、同レーベルから発行されているスピンオフ元『文豪ストレイドッグス』のコミックの帯に書かれた推薦コメントにある。『文豪ストレイドッグス』第2巻でのコメントを綾辻行人が、第3巻でのコメントを京極夏彦が担当しており、その際、作画担当の春河35によってイラストが描かれていた。さらに『文豪ストレイドッグス』の販促用ポスターが、綾辻と京極両者の対決構図を描く漫画形式になっていたことから「この対決の続きを読みたい」という評判が高まり、製作された。
あらすじ
第1巻
探偵にして第一級危険異能者「殺人探偵」の異名を持つ綾辻行人は、自らの手を汚さないことで知られる犯罪者の京極夏彦を、滝の上に追い詰めることに成功していた。あまりにも多くの人間を死に誘ってきた京極に対して、綾辻は事故での落下死を予言するが、京極はその瞬間に笑いながら滝壺へ身を投げる。京極の死体が上がらずとも、事件はそこで終わったかのように思えた。しかしまた別の事件で、綾辻は京極の影を察知する。(エピソード「滝霊王の滝/夕刻/霧雨」。ほか、3エピソード収録)
登場人物
スピンオフ元である『文豪ストレイドッグス』と同じく、主要キャラクターはすべて実在の文豪がモデルとなっている。ただし、本作『文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人 VS. 京極夏彦』においては現役の小説家がモデルである。また、名前のあるサブキャラクターは、綾辻行人と京極夏彦の代表作に登場するキャラクターがモデルとなっている。
登場人物・キャラクター
綾辻 行人 (あやつじ ゆきと)
第一級危険異能者でもある、探偵の男性。ウエーブがかった短めの金髪にハーフリムタイプの薄色サングラスをかけ、キャスケット帽をかぶっている。能力の特性のため、「殺人探偵」とも呼ばれている。能力名は「Another」で、綾辻行人に罪を暴かれた犯人に対し、あらゆる物理的障壁を無視して偶然の死を与えるという、相手を事故死させる能力を持っている。また能力の標的となった場合、対象者の居場所および対象者が所持している異能にかかわらず、必ず死亡させることができる。実在の人物、綾辻行人がモデル。
京極 夏彦 (きょうごく なつひこ)
綾辻行人から狙われている犯罪者で初老の男性。左側が長いアシンメトリーな白髪に指ぬきグローブ、丸眼鏡を掛けており、破れた着物にマフラーを巻いている。能力の特性のため、「妖術師」とも呼ばれている。数百件の事件に関与しているが決して自らの手を汚さず、殺人教唆や脅迫などで実行犯たちをあやつっていた。そのため、存在とやり口が判明しているものの警察も手を出せずにいた。能力名は「憑き物落とし」で、任意の相手に「憑き物」を憑依させることで、対象者の精神を悪い方向へと変貌させる能力を持っている。実在の人物、京極夏彦がモデル。
辻村 深月 (つじむら みづき)
内務省異能特務課に所属している女性エージェント。長い金髪を後頭部で結い上げている。映画に登場するようなクールな女スパイにあこがれており、ミステリアスな女を演出していることから言動にも少々芝居がかっている点が見受けられる。綾辻行人の監視役を任されているものの、綾辻の前ではよく素の間抜けな一面を見せることから、綾辻には非常に舐められている。実在の人物、辻村深月がモデル。
鳥口 (とりぐち)
綾辻行人が目にした、カストリ雑誌の記事を書いた記者。瘦せ型で頰骨が浮いており、耳が常人よりも尖っている。罔象川の井戸について調べていたが、上司からの圧力に屈して取材途中で記事にしたと語っている。京極夏彦の著作である『百鬼夜行シリーズ』に登場する、カストリ雑誌の編集者兼カメラマンである鳥口守彦がモデルになっている。
飛鳥井 (あすかい)
軍警の特別上等捜査官を務めている男性。つねに捜査の最前線で指揮を執り、凶悪な犯罪を追うプロフェッショナルとして評価されている。かつて相棒だった由伊が、京極夏彦の手引きによってズタズタに引き裂かれて惨殺されたことから、長年にわたって京極に関係する事件を追っている。京極に関する捜査上の情報をほぼすべて把握しているため、綾辻行人の捜査に協力を依頼された。漬物マニアで、京都に立ち寄ることが多いために京漬物を所持していることが多い。綾辻行人の著作である『殺人方程式シリーズ』に登場する刑事、飛鳥井叶がモデルになっている。
場所
内務省異能特務課 (ないむしょういのうとくむか)
国内の異能者を統括し、管理を行っている政府機関。種田山頭火が長官を務めており、辻村深月が所属している。公的には存在を隠されている秘密組織であるため、捜査の際には軍警の特別捜査官という肩書きで聞き込みなどを行う。異能者による犯罪の対応のほか、特に危険な異能者に対する監視業務を担っている。
綾辻探偵事務所 (あやつじたんていじむしょ)
綾辻行人が営んでいる探偵事務所。一見して地味な建物の2階にあるが、上階や左右も含めてすべて政府が買い取って占有している。事務所内は豪奢な西洋家具が置かれており、数匹の猫が飼われている。地下室が存在し、綾辻が趣味で集めたというグロテスクな少女の人形が所狭しと飾られている。
罔象川の井戸 (みずはがわのいど)
鳥口がカストリ雑誌で記事にした井戸。「授けものの井戸」とも呼ばれている。小さな囲い屋根があり、井戸全体にしめ縄が巻かれている。「清め給え」と祈って拝むと、祈った本人を悪人にしてくれるという噂があることから、一部では祠ではないかともいわれている。
その他キーワード
囹圄島の17人虐殺 (れいごじまのじゅうななにんぎゃくさつ)
綾辻行人が第一級危険異能者に認定されるきっかけとなった事件。5年前に囹圄島という小さな島で起こった殺人事件で、偶然島に立ち寄っていた綾辻が解決した。ただし、殺人に関与していた島民17名が綾辻の能力によって凄惨な大量死を遂げている。飛鳥井もその現場に立ち会っており、辻村深月にとっても浅からぬ因縁がある事件とされている。
クレジット
ベース
文豪ストレイドッグス (ぶんごうすとれいどっぐす)
原作の朝霧カフカ、漫画の春河35両名のデビュー作。異能力者たちが揃う探偵集団武装探偵社に入社した中島敦が、犯罪組織ポートマフィアや海外の異能力者集団たちとの抗争に巻き込まれながら成長していく異能力バト... 関連ページ:文豪ストレイドッグス
関連
文豪ストレイドッグス わん! (ぶんごうすとれいどっぐす わん)
春河35の漫画『文豪ストレイドッグス』のスピンオフ作品。中島敦をはじめとする武装探偵社の面々や、敵対する犯罪組織ポートマフィアのメンバー達の日常生活を描くギャグ漫画。4コマ形式が中心だが、時に通常のコ... 関連ページ:文豪ストレイドッグス わん!
文豪ストレイドッグス BEAST (ぶんごうすとれいどっぐす びーすと)
春河35の『文豪ストレイドッグス』のスピンオフである朝霧カフカの小説『文豪ストレイドッグス BEAST』のコミカライズ作品。本作は『文豪ストレイドッグス』の主人公、中島敦を取り巻く主要キャラクターの一... 関連ページ:文豪ストレイドッグス BEAST
文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳 (ぶんごうすとれいどっぐす だざい ちゅうや じゅうごさい)
『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ、作画:春河35)のスピンオフ小説『文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳』(著者:朝霧カフカ、イラスト:春河35)のコミカライズ作品。作画は『文豪ストレイ... 関連ページ:文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳
文豪ストレイドッグス DEAD APPLE (ぶんごうすとれいどっぐす でっど あっぷる)
2018年3月3日に公開された、同名劇場アニメのコミカライズ。現代の日本、超常の力を持つ異能力者が潜むヨコハマが舞台。不可思議な霧が発生した後、異能力者が自らの異能で死ぬ事件が世界各地で続発。内務省異... 関連ページ:文豪ストレイドッグス DEAD APPLE
書誌情報
文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS.京極夏彦 2巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2018-12-04発行、 978-4041069400)
第2巻
(2022-03-04発行、 978-4041122709)