概要・あらすじ
10年前に起こったロスト・クリスマスと呼ばれるアポカリプス・ウィルスのパンデミックにより、日本はほぼ壊滅。実質支配者であるGHQに対するレジスタンスとして立ち上がった葬儀社に関わり、GHQの最高機密ヴォイドゲノムに触れてしまった主人公桜満集。彼は平凡な高校生だった日常を捨て、王の能力に目覚めてヴォイドと言われる超能力を駆使し、愛する少女のために戦うことになる。
登場人物・キャラクター
桜満 集 (おうま しゅう)
天王洲第一高校2年生で現代映像文化研究会に所属。父親は旧天王洲大学の教授でアポカリプスウィルス研究の第一人者だったが、10年前のロスト・クリスマスで亡くなっているため、集本人は余り覚えていない。ネットで人気沸騰中のバンドエゴイストのボーカリスト、いのりの大ファン。 クラスメイトたちとは微妙な距離を取って親しくなることもなく、自分一人きりの世界に閉じ籠っている。臆病であり、自分勝手でもあり、そんな自分に辟易しながら全てに目を反らして生きていた。本人が言う通り、文科系なので体力もなく、闘争心に欠け、そして年頃の少年らしく女の子相手にどぎまぎしてしまう。黒髪に頼りない体付きをした、全く目立たない平々凡々な高校生だったが、ヴォイドという超能力を得てからは、自信を持ち、挫折や狂気を乗り越え、成長して行く。
𣜿 いのり (ゆずりは いのり)
ネットで人気沸騰中のバンド「エゴイスト」、そのボーカリストであり、レジスタンス集団葬儀社の重要人物。葬儀社のリーダー恙神涯が組織を立ち上げて間もなく、侵入した研究所で発見した人造人間。人類最初のアポカリプスウィルス感染者であるマナに瓜二つで、マナと意思疎通を可能とするために作られたインターフェイス用インスタントボディ。 最初、人間らしさに著しく欠け、喜怒哀楽の感情が何たるかも知らなかった。それを、葬儀社のプロパガンダとして唄を歌うようになってから、少しずつ変化を見せ始める。主人公の集と関わるようになってから「これが好き、と言う感情なの?」という戸惑いを見せる。 まるで作られたCGのような美しさと、感情溢れる繊細な表情を持つ、と集に評されている。ピンク色の長い髪に瑞々しい体を持つ。その姿とは裏腹に、訓練された戦闘術はGHQの兵士たちを軽々と薙ぎ倒すほど。
恙神 涯 (つつがみ がい)
レジスタンス集団葬儀社の若きリーダー。GHQに捕らえられたいのりの代わりに、GHQから奪い取ったヴォイドウイルスを届けに来た主人公集と出会う。戦闘能力、統率力、カリスマ性、全てに優れた若者で、他人を駒のように使いこなし、仲間の命をも大儀の前に切り捨てる。 その冷徹とさえいえる決断力に集が反発心を覚えるほど。だが実は涯は、アポカリプスウィルスの実験台として集められた子供たちの一人で、その研究所から逃げて来た過去があった。その時の強迫観念やウィルスへの感染の恐怖から、彼を強い人間に見せかける衝動へと駆り立てていた。裏では独り罪悪感に打ち拉がれ、迷いに悩まされている。 薄い色の長髪と酷薄ともとれる強い眼差しを持つのも、弱い自分を隠すためだった。
校条 祭 (めんじょう はれ)
天王洲第一高校2年生で主人公集のクラスメイト。自分の中に閉じ籠りがちな集ではあったが、その本質である優しさや真面目さを感じ取って、仄かな恋心を抱いていた。集の周囲にいのりが付き纏うようになると打ち拉がれたようになるが、それでも友達として、また片想いの相手として誠意ある態度を貫こうとする。 集のヴォイドの能力で引き出されたのは「包帯」。何でも修復する能力がある。それは集に「ハレらしい」と言わしめた。セミロングの茶髪をリボンで2つに結っている。様々な面で控え目で押し付けがましくなく、それでいて人の為を思って行動できるし、人を信じられる性格。
寒川 谷尋 (さむかわ やひろ)
天王洲第一高校2年生で、主人公集のクラスメイトにして現代映像文化研究会のメンバーの1人でもある。親切で思い遣りがあり、人のために行動できるヤツだ、と集は自分とは大違いの谷尋に感心する一方、自己嫌悪を覚えていた。だが、谷尋は裏ではノーマジーンというドラッグを売りさばくバイヤー。 谷尋がバイヤーをしていた理由は、弟の寒川潤がアポカリプスウィルスに冒され、その莫大な治療費を支払わなければならなかったから。必要なこととはいえ、その裏表の生活が谷尋の心に歪みを生んだ。それは彼のヴォイドは何かを断ち切る「鋏」だったことからも伺える。茶髪に長身の優しげな物腰を持つ。
魂館 颯太 (たまだて そうた)
天王洲第一高校2年生で主人公集のクラスメイト。現代映像文化研究会のメンバーの1人。主人公の集と同じく、バンドエゴイストのボーカリストであるいのりの大ファン。そのいのりがクラスに転校して来たことで積極的にアタックするが、集の妨害にあって失敗する。直情的で明朗闊達。 それが集には、強引でデリカシーがなくて空気を読まないヤツに思えて仕方なかった。また颯太の方でも距離を置く集を苦手に感じていたが、はっきり言ってもらってスッキリした、と相手に言える竹を割ったような性格の持ち主。黒い短髪に子供っぽい言動と短パン半袖という服装が良く似合う少年。彼のヴォイドはどんな扉をも開く「カメラ」。
草間 花音 (くさま かのん)
天王洲第一高校2年生でクラスの学級委員長。一応現代映像文化研究会のメンバーの1人でもある。学級委員長らしく面倒見がよく、しっかり者。寒川谷尋に淡い恋心を抱いている。古風な黒髪のおかっぱにメガネという出で立ち。彼女のヴォイドもやはり「メガネ」で、壁の向こうをも見透かせる。
供奉院 亞里沙 (くほういん ありさ)
天王洲第一高校の生徒会長で、供奉院グループの総取締役を祖父に持つ。容姿端麗、成績優秀、その上性格もいい、と完璧な麗人。だが、供奉院グループをいずれ継ぐことのプレッシャーに押し潰されそうにもなっていた。明るい色の長髪に大人びた顔つきと表情を持つ。言葉遣いもご令嬢らしく丁寧。 そして、彼女のヴォイドは外圧から己の身を守るための「盾」だった。
篠宮 綾瀬 (しのみや あやせ)
葬儀社のメンバーの一人で車椅子使用者でありながら、人型ロボットエンドレイヴの優れたオペレーター。気の強い女性で、責任感も強い。葬儀社のリーダー涯に密かに恋している。仲間思いでもあるため、突然メンバーとして現れたいのりに警戒心を抱くも、音楽を通して親しくなる。 茶髪をポニーテールにして車椅子に納まる様は、一見大人しめのお嬢さん。だが、車椅子を駆使しての格闘に長け、新たにメンバーとして加わった集の訓練を任されるほど。
ツグミ
葬儀社のメンバーの一人でコンピュータを駆使した情報統括のオペレーター。漆黒の長髪に猫耳のようなカチューシャを付けている。その見た目と、口癖に「アイアイ」などと使うあたり、とても幼い印象を受ける。綾瀬が涯を気にしていることをしょっちゅうからかって楽しんだりもするが、彼女が無茶をし過ぎるのを心配もしている。 ムードメーカーであり、葬儀社全体の作戦の要でもある。
四分儀 (しぶんぎ)
葬儀社のメンバーの一人でリーダー涯の参謀を勤める。若い涯がそのカリスマ性で走りがちになるのに対し、冷静な視点から諫めることしばしば。天佑によって難局を乗り切って行く様を常にその傍らで見て来た。長くて薄い髪色に丸眼鏡の理知的な容姿を持つ。そして時に痛烈な皮肉を言い放つこともある。
月島 アルゴ (つきしま あるご)
葬儀社のメンバーの一人で龍泉高校2年。ケンカのプロでナイフ使いの名人。オールバックの前髪部分だけをメッシュにした一見してヤンキーそのものといった容姿。口調も目付きも悪いが、リーダー涯に対する忠誠心は紛れもないもの。彼のヴォイドは「暗闇ライト」、照らすと真っ暗になるものだ。
木戸 研二 (きど けんじ)
葬儀社のメンバーの一人でGHQ第四隔離施設に幽閉されていたのを、葬儀社のメンバーによって救出された。GHQ本部が置かれたスカイツリー爆破事件の犯人でもある。日本出国者を撃ち落とすルーカサイトという人工衛星を停止させるため、彼のヴォイド「重力制御」が必要だった。 明るい髪の色と薄い色素の釣り目という、まだ幼いとさえいえる容貌を持つ。戦いに臨む態度もごく軽いが、必要なことをしているという自負があり、物事を割り切った目で見るクールさもある。
ダリル・ヤン (だりるやん)
GHQのロボットエンドレイヴのオペレーター。同じくGHQの司令官であるヤン少将の息子で、階級は少尉。だが、実の息子かどうかを父親に疑われており、そのため情緒不安定。それどころか狂気にも似た潔癖さを見せ、他人に触れられることを極度に嫌い、汚い言葉を投げつけたり、果ては殴る蹴るの暴力を加えたりもする。 指揮官の立場を無視し、エンドレイヴを駆ることを至上の喜びとしている。また、任務にはほとんど興味がなく、葬儀社と涯や集などに対する敵愾心のみが行動原理となっている。薄い色の髪に薄い色素の瞳の神経質そうな容貌。彼のヴォイドは「万華鏡」。レーザーミサイルを鏡のように乱反射する。
虚界=ヴァルツ・誠 (せがい=ゔぁるつ・まこと)
GHQの特殊ウィルス災害対策局アンチボディズの葬儀社担当指揮官で、階級は少佐。クロスワードが趣味で、その空欄が許せない。携帯電話を常に弄っていて、何かと写真を撮っている。理詰めで主人公の集を追い詰め疑心暗鬼にさせるなど、ふざけた態度の裏で頭も切れる。 軍隊に忠誠を誓うというより、己の興味の赴くままに行動するきらいがある。集のヴォイドの能力についての情報を集めるために任務を二の次にするほど。薄い色の髪を部分的に長く伸ばし、顔には涙のような痣があり、左目が義眼になっている。
茎道 修一郎 (けいどう しゅういちろう)
GHQの特殊ウィルス災害対策局アンチボディズ局長。だが、GHQに対して忠誠であることよりもダァトなるものに唆され、新人類の進化とその始祖になるために、一番最初のアポカリプス感染者であるマナとの婚姻を結ぶのを目的として密かに動いていた。白髪混じりのオールバックに、口ひげを生やした容姿は紳士然としているが、その目的は狂気の沙汰といっていい。 自分が新人類の始祖となれるのであれば、全人類が滅んでもいい、と思いっているからだ。だが、結局ダァトに利用されていたことを知らないまま終わる。
桜満 春夏 (おうま はるか)
主人公集の義母。GHQ所属のヴォイドゲノムを研究するセフィラ・ゲノミクス主任研究員。その仕事がら、家に帰るのは週に1度程度。後妻なので未だ若く、年頃である集などは母があられもない姿で家の中をうろつくと落ち着かない。仕事では優秀な研究員だが、家に帰ると下着一枚でうろつくなど天真爛漫さもある。 また、いのりを守りたいという集を見てその成長を喜ぶ姿に、母親としての愛情を抱いていることが察せられる。ウェーブがかった黒髪の似合う、小柄な女性。
桜満 真名 (おうま まな)
主人公集の実の姉。隕石として地球に落下したアポカリプスウィルスの結晶石に触れて、人類で最初の感染者となった少女。そのウィルスの影響で精神に異常を来たし、実の弟の集に変質的な執着を見せたため、姉弟の仲に壊滅的な亀裂が入ると共に、ロスト・クリスマスという現象を引き起こした。 元は優しく頼りがいのある姉であり、男の子の危険な冒険や秘密基地設営に瞳を輝かせるお転婆な面も持ち合わせていた。母親を亡くした父が研究に没頭し、姉弟2人だけの生活の中でも笑顔を忘れなかったのは、彼女の快活な性格のおかげといえる。淡いピンク色の長髪、くるくる変わる表情、小さな花の髪飾りの似合う少女だった。
集団・組織
葬儀社 (そうぎしゃ)
『ギルティ・クラウン』に登場する組織。若きリーダー恙神涯のカリスマ性に惹かれて集まった青年たちのレジスタンス集団である。六本木にアジトを構え、日本を支配するGHQとその尖兵であるアンチボディズに叛旗を翻すべく活動している。だがリーダー涯の真の目的は、アンチボディズの局長であり、自分をウィルスの人体実験に使った茎道修一郎への復讐、そして、アポカリプスウィルスの第一感染者であるマナとの邂逅だった。
アンチボディズ
『ギルティ・クラウン』に登場する組織。GHQ配下の特殊ウィルス災害対策局であり、実質、アポカリプスウィルス感染者の駆除を目的とした特殊部隊である。葬儀社のリーダー恙神涯をして「GHQの治安維持の要、最凶最悪の牙」と評される。新人類進化の野望を抱く茎道修一郎によって統括されてはいるが、彼が二度目のロスト・クリスマスを起こそうとしていることから、それは結局は隠れ蓑に過ぎない。
イベント・出来事
ロスト・クリスマス (ろすとくりすます)
『ギルティ・クラウン』に登場する事件。物語の10年前に引き起こされたアポカリプスウィルスによるパンデミックを称してこう呼ばれる。そしてそれがクリスマス・イブ当日に起こったことからの命名である。実際は、ウィルスに精神を冒されたマナがその本能に突き動かされ、新人類を生み出す始祖となるため、伴侶として選んだ集を求めたにも関わらず、当の本人に拒否された。 その衝撃がマナを壊したためロスト・クリスマスは、東京を震源地として瞬く間に日本中にその感染が広がった。
クレジット
- 構成
-
宮城 陽亮