あらすじ
第1巻
3年連続抱かれたい男No.1で、実力・人気共に抜群のスター俳優である桜庭陸人には、誰にも知らせていない秘密の趣味があった。それはガンプラ作り。高級マンションの一室で、誰にも邪魔されずに一人で黙々とガンプラをヤスり、パテを盛り、自身が考える架空のガンダム戦記「ジャブローズ・スカイ」に登場するオリジナルのモビルスーツを作る事に至上の悦びを感じていた。オレ設定の機体「水中用ザク」の制作を進める陸人は、趣味のガンプラ用にSNS・ツイッテルに作った別アカウント「邪武郎」で作成中の水中用ザクの画像をアップしてつぶやく。陸人が尊敬するスーパーモデラーの一人、神作は、その水中用ザクを気に入り、リツイートしたうえ、邪武郎の事をフォロー。それを知った陸人は、天にも舞い上がるような気持ちで喜ぶのだった。そんな陸人の脳内では、彼の妄想するオリジナルガンダム戦記「ジャブローズ・スカイ」の物語が展開される。
宇宙世紀0079、独立を掲げて地球連邦軍と戦争中のジオン公国軍は、北米キャリフォルニア・ベースで新たなるモビルスーツ(MS)開発へ向けての実験が続いていた。技官として入隊したグレン・バシュロ上等兵は、日々自らMSに乗ってデータを取り、分析を行う。一方、南米にあるジャブロー地球連邦軍本部では、リモール・ラモンが初陣としてオデッサ作戦への参加を命じられていた。ある日、水中用ザクのテストと訓練を続けるグレンの前に、「オレンジの破壊神」と呼ばれるアレクサンドル・シバァが現れる。シバァは「暁のシバァ」との異名を持つ、ジオン公国軍のエースパイロットだった。階級を気にせず話し掛けてきたグレンを気に入ったシバァは、愛機であるシバァ専用高機動型ザクカスタム(MS-06R1A)をグレンに託すのだった。
第2巻
忙しい仕事の合間を縫って趣味のガンプラ作りを楽しむ桜庭陸人(邪武郎)。邪武郎がツイッテルにアップした写真に、「SAKURABA RIKUTO」のロゴの入ったボールペンを見つけた神作は、邪武郎が自分と同じ「りくとリアン(桜庭陸人のファン)」の女子だと解釈し、邪武郎が作った水中用ザクを生で見たいとメッセージを送るのだった。陸人は自分の正体をバラすわけにはいかないものの、尊敬する神作に直接会って、模型の話を聞きたいという衝動を抑えられず、ぜひ見てほしいと返信。翌週にアキバで会う事になる。尊敬する神作に会う事になり、陸人はダンスレッスンにも集中できないほど高揚する。また、神作に見せるための水中用ザクの完成を急ぐ必要があった。一方、ツイッテルの情報で限定版ガンプラの発売を知った陸人は、ほしくてたまらなくなり、変装してお台場へ向かい、悩んだすえに限定版ガンプラ「ゼータガンダム3号機」を3つ購入するのだった。
地球連邦軍の北米オーガスタ基地では、ニュータイプ研究所のオルドマンとスデコラが、リモール・ラモンのデータに注目していた。リモールが訓練で見せた高いデータから、二人は、彼が高い空間把握能力を持ち、ずば抜けた洞察力と認識力を兼ね揃えた新しい人類、いわゆる「ニュータイプ」の能力に目覚めつつあるとにらむ。宇宙世紀0079の11月、地球連邦軍はジオン公国軍のオデッサ鉱山地帯基地を急襲する「オデッサ作戦」を開始する。リモールは陸戦型ジムで参加し、ジオン公国軍のジェイド・ニール少尉が指揮をとるオデッサ鉱山地帯第04MS警備小隊との戦闘に突入。そこへジェイドの救援として、ジオン公国軍のエースパイロット、アレクサンドル・シバァが舞い降りる。
第3巻
桜庭陸人は、テレビ番組「番組対抗ザ・バトル クイズ春の陣」の生放送収録に出演する。陸人のコーナーは、急遽台本から変わり、台本なしのアドリブでの「プラモアイドルとのガンプラ対決」に。ガンプラ「HGUC量産型ザクⅡ」を制限時間60分以内にどれだけ仕上げられるかという勝負が始まる。対戦相手のプラモアイドル、香坂きのこは本格派で、順調にガンプラを仕上げていく。一方、陸人は取説を見なくても組み立てられるほど何度も作ってきたキットだったが、初心者のふりをして作成を進める。しかし、生放送をテレビで観ていた神作は、陸人がプラモ慣れしている人がやる「当て切り」というテクニックを一瞬使った事を見逃さなかった。収録を終えた陸人は、自宅で進めていた水中用ザクをなんとか完成させて、変装したモデラー「邪武郎」として念願の神作と秋葉原で待ち合わせする。邪武郎は神作が男性だと、神作は邪武郎が女の子だと思い込んでいたが、実際に会うと邪武郎は若い男性、神作は少女だった。邪武郎の事を少女目当ての変態だと疑う神作はその場を去ろうとするが、邪武郎は入手困難な陸人の演劇「天空の王」のチケットを譲るといって説得に成功。お互いのガンプラを見せ合い、邪武郎は神作が持ってきた「REVIVE RX-78-2ガンダム」の素晴らしさに感動と衝撃を受けるのだった。1週間後、邪武郎はマネージャーの西田に用意させたチケットを神作に手渡す。しかし、西田は気を利かせたつもりでVIP待遇の最前列の席を用意し、公演終了後は陸人と合わせるために別室に神作を案内してしまう。陸人として直接、神作と対面する事になるが、なんとか邪武郎とバレずにしのぐのだった。
オデッサで敵との交戦状態になったリモール・ラモンは、敵の援軍として現れたアレクサンドル・シバァの声を聞く。シバァの言葉はリモールの心に直接届いていた。シバァとの近接戦闘に入ったリモールは、テレパシーのように会話できる事と、シバァの高いMS操縦能力に圧倒される。それはニュータイプ同士による戦いだった。ジオンの敵部隊は撤退し、リモールは生き残る。自身の謎の能力に悩むリモールの前に、ニュータイプ研究所のオルドマンとスデコラが現れ、ニュータイプとしての訓練に加え、リモール専用機として陸戦型ジムキャノンΘを与えるのだった。一方ジオン公国軍も新型MSを次々と開発し、グレン・バシュロも新型水陸両用MSの開発を進めていた。
第4巻
「邪武郎」こと桜庭陸人が手配したチケットのおかげで、あこがれの「桜庭陸人」と会えた神作は、そのお礼に邪武郎を天神様モデラーズ展示会に誘う。それは、天神様と呼ばれる日本有数のトップモデラーの作品が揃う模型展示会で、モデラーが作品の横に立って解説をしてくれるという贅沢なイベントだった。数日前から楽しみにしており、イベント当日、神作といっしょに秋葉原にある会場入りした邪武郎だったが、マネージャーの西田のミスで、陸人が出演するイベントが明日ではなく今日であった事を知る。陸人は泣く泣くイベントを抜け出し、西田に指定されたビルの屋上へ急ぐ。そこにヘリコプターを手配した西田が現れ、なんとか収録を済ませるのだった。
後日、神作と再会した邪武郎は、うっかり陸人に会った事を友人に話した神作が、その事を信じない友人からウソつき呼ばわりされたうえ、暴力を振るわれた事を知る。陸人は西田に神作の身辺調査を頼み、数日後の夜、再び神作が友人達にイジメられているところに「桜庭陸人」として駆けつけ、神作を救うのだった。陸人はいきなり現れた事について、邪武郎から話を聞いたとして神作を説得。その後、邪武郎は神作から全日本模型ホビーフェスティバルに誘われるが、そのイベントには桜庭陸人としてトークイベントの仕事が入っており、バイトを理由に神作に行けないと返信する。トークイベントが始まるまでのあいだ、会場内を見ていた邪武郎は神作とバッタリ会ってしまう。そうこうしているうちにトークイベントの時間を迎え、邪武郎はトイレへ行くと神作に伝えて、急いで桜庭陸人に着替えて壇上へ。神作は、桜庭陸人と邪武郎のどちらかがいつもいなく、二人が同時にいる事がない点に気づくのだった。
地球連邦軍ニュータイプ研究所では、リモール・ラモンをニュータイプとして覚醒させるための過酷な訓練が続く。ジオン公国軍においても、グレン・バシュロが地球連邦軍ジャブロー本部襲撃作戦に向けて、強力な新型MSの開発に成功していた。南米ジャブローでは、地球連邦軍とジオン公国軍の小競り合いが始まり、リモールは陸戦型ジムキャノンΘで敵MSを次々と撃破していく。一方、自ら開発した水陸両用の新型MSズゴック0型で水中を進むグレン・バシュロは、交戦した敵の新型MSボール・ザ・ロブスターの鹵獲(ろかく)に成功する。
第5巻
桜庭陸人と邪武郎が同一人物である事が、ついに神作にバレてしまう。事実を知った神作は、今までありがとうと言い残すと、陸人の顔を見ずに去っていった。陸人は神作にウソをつき続けていた事を悔い、一方、身近なモデラー仲間が、じつはあこがれの大スターだったという事にショックを受けた神作は、もう邪武郎に会わない事に決めていた。そんな中、陸人と知り合いだった神作の事をねたむ神作のクラスメイト達は、腹いせに陸人と神作の情報をゴシップ誌に流す。情報を得た「週刊スクープ」編集部は、記者の岩田信悟に調査を命じる。岩田は神作を尾行後、直接神作に陸人との関係を尋ねる。岩田の質問をやり過ごした神作は、邪武郎に記者が嗅ぎまわっている事を警告する。神作の身を案じる陸人は、カラオケルームで神作と正体がバレて以来の再会を果たす。陸人は正体を偽っていた事を神作に詫び、今回のスクープを狙った騒動でこれ以上神作に迷惑をかけない事と、もう会わない事を告げて去る。陸人の所属する事務所からの圧力で出版社は手を引いたものの、桜庭陸人と邪武郎が同一人物である事をつかんでいた岩田は引き下がらず、神作を誘拐して陸人を脅迫し、マスコミを呼び寄せた秋葉原の広場に陸人を呼び出す。指示どおりに陸人が姿を見せ、神作は救出され、岩田は逮捕された。陸人に神作という隠し子がいたという事で騒ぎになるが、陸人は会見を開いてそれをきっぱりと否定し、神作は自分にガンプラの楽しさを教えてくれた、大切なガンプラ仲間だと宣言するのだった。
ついにジオン公国軍による地球連邦軍ジャブロー本部への一大強襲作戦が発動される。大量のジオン公国軍のMSがジャブロー本部に降り注ぎ、その中にはアレクサンドル・シバァの姿もあった。戦場でシバァは、同じくニュータイプである因縁の相手、リモール・ラモンと再び対決する。ニュータイプとして成長したリモールだったが、戦場での経験の差からシバァには及ばない。一時撤退したリモールは、密かに開発されていたニュータイプ専用機、フルアーマーガンダムグランドリミット(FA-78GL)を受領し、シバァとの最終決戦に臨むのだった。
登場人物・キャラクター
桜庭 陸人 (さくらば りくと)
日本の映画賞をいくつも受賞し、大河ドラマの主役も務め、ドラマやCMに引っ張りだこの人気俳優。3年連続抱かれたい男No.1で、ツイッテルのフォロワー数は560万人にのぼる。華麗な振る舞いのイケメンで、まさにスターとして認知されており、ファンへの対応もぬかりなく、タレントとしてのプロ意識も高い。愛車は、3600万円というランボルギーニーウラカン。 趣味はガンプラ作りだが、その事は誰にも教えておらず、プライベートでは一人暮らしの高級マンションに籠って、ひたすらガンプラを作る事に至上の悦びを感じている。その際はパーカーとエプロンに着替え、ヘアバンドをしてメガネにマスクという地味な出で立ちになり、その姿だと、マネージャーの西田以外は桜庭陸人だとは見抜けない。 ツイッテルでは趣味のガンプラ用として「邪武郎」というアカウントを利用しているが、そちらのフォロワーは20人にも満たない。売れっ子芸能人だが、派手な遊びはせず、仕事が終わったらすぐに帰宅し、ひたすらガンプラのパーツをヤスリがけしている。ガンプラをただ組むだけではなく、「ジャブローズ・スカイ」という架空のオリジナル戦記を頭の中で展開し、そこに登場するオリジナルのモビルスーツを作っている。
西田 (にしだ)
桜庭陸人のマネージャーを務める男性。栗のような髪型と頭をし、太って小柄。マネージャーとしては優秀で、陸人の仕事やスケジュールをしっかり管理、サポートする。俳優、タレントとしての陸人の才能も高く評価しており、陸人の仕事ぶりに感動して涙する事も多い、熱い一面もある。陸人の趣味がガンプラ作りである事は知らない。陸人の「邪武郎」への変装を見て、唯一「桜庭陸人」である事を見抜いた。
神作 (しんさく)
フォロワー数が1万人を超える、人気モデラーで引きこもりの女子中学生。桜庭陸人も尊敬するモデラーの一人で、ツイッテルでのやりとりをきっかけに直接会う事になる。本名は「榊ミオ」。うさミミのフードをかぶったかわいい女の子で、「りくとリアン」と呼ばれる、桜庭陸人の熱烈なファンでもある。同じガンプラ仲間として興味を持った「邪武郎」と交流を始めるが、邪武郎が「桜庭陸人」である事には気づいていない。
岩田 信悟 (いわた しんご)
「週刊スクープ」というゴシップ誌の記者の男性。目が細く、坊主頭に顎鬚を生やしている。スクープをつかんだら、なかなか離さないしつこさから「ワニガメ岩田」の異名を持つ。神作が桜庭陸人の隠し子ではないかと睨み、二人を付け回す。邪武郎が「桜庭陸人」である事をつかみ、スクープをモノにするために神作を誘拐して、陸人をおびき出す。
グレン・バシュロ (ぐれんばしゅろ)
ジオン公国軍の男性技官。キャリフォルニア・ベース開発大隊第8試験小隊に所属している。階級は上等兵。技官として自らモビルスーツ(MS)に乗って高度な実験を行い、そのデータ分析を行う。のちにアレクサンドル・シバァと出逢い、シバァからはグレン・バシュロの開発するMSは人馬一体だという高い評価を受ける。 そしてジオン公国軍が地球連邦軍ジャブロー本部への総攻撃を開始する事を知り、もっと汎用性のある機動力のあるMSを開発しなければという使命感を強めていく。ジャブローへの総攻撃に向けて、水陸両用の新型MS・スゴック0型を開発し、自ら搭乗して参戦する。
リモール・ラモン (りもーるらもん)
地球連邦軍の新米男性兵士。まだ規定である訓練が200時間に及んでいないが、モビルスーツを操縦する天賦の才があるとベジット・マモ軍曹に見込まれ、オデッサ作戦への参加を命じられる。初めて乗った機体にも素早く適応する能力を見せ、ニュータイプ研究所からニュータイプとしての素質があると見込まれる。 オデッサでの戦闘中、ジオン公国軍のニュータイプであるアレクサンドル・シバァから心の中に話し掛けられ、自分の秘められた力に動揺する。その後、ニュータイプ研究所での過酷な訓練を経てニュータイプとしての能力を覚醒させ、ジャブローでは陸戦型ジムキャノンΘで戦った。ジャブローでシバァと再び対決し、ニュータイプ専用機であるフルアーマーガンダムグランドリミット(FA-78GL)に搭乗して、最後の戦いを挑んだ。
アレクサンドル・シバァ (あれくさんどるしばぁ)
ジオン公国軍のエースパイロットで男性。階級は中尉、のちに大尉。いわゆるニュータイプで、様々な作戦で撃墜した艦隊の数は史上最高と言われるが、歴史の表舞台には現れていない。オレンジを愛機のパーソナルカラーとする事から、「オレンジの破壊神」や「暁のシバァ」との異名を持つ。 グフタクティカルに搭乗してのオデッサでの戦闘中、地球連邦軍のニュータイプ、リモール・ラモンの存在を感じ、初対決。その後、ジオン公国軍による地球連邦軍ジャブロー本部への総攻撃作戦において、再びリモールと戦う。
クレジット
- 原作
-
ゆきもり