作品の概要
基本情報
大童澄瞳のデビュー作にして代表作。
要旨と舞台設定
2050年代の芝浜高校を舞台に、アニメ制作を通じた女子高校生たちの成長と挑戦を描いた物語。人並み外れた空想力を持つ浅草みどり、金儲けが得意な金森さやか、カリスマ読者モデルでアニメーター志望の水崎ツバメという三者三様の個性を持つ少女たちが「映像研」を結成し、独自のアニメ作品制作に取り組む。
ストーリー展開
物語は、幼なじみである浅草と金森の再会から始まり、水崎との出会いを経て映像研の設立に至る。生徒会との交渉、予算獲得の苦労、アニメーション技術の習得など、さまざまな課題に直面しながら、三人はそれぞれの役割を担って作品制作を進めていく。監督として全体を統括する浅草、プロデューサーとして予算と制作進行を管理する金森、アニメーターとして作画を担当する水崎という分業体制が確立され、次第にチームとしての結束を強めていく。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、アニメーション制作技術を詳細に描写する「メタ創作」的要素と、個性的な登場人物たちの人間関係や成長を描いた青春ストーリーの要素を併せ持つ。制作工程の説明や用語解説が随所に挿入され、アニメ産業への理解を深めることができる。
作品固有の表現技法と特徴
作品の特徴的な表現技法として、浅草の創造する世界観を図解した「設定資料」の詳細な描写がある。キャラクターやメカニックのデザイン、世界観設定に至るまで、作中では緻密な設定画と解説が展開され、想像の世界を具体化する過程が可視化されている。また、吹き出しを傾けてパースを表現することにより、平面的な漫画に立体的な視点効果をもたらしている。
世界観の構築と設定
作品世界の特徴として、近未来を舞台にしながらも古典的な要素を取り入れている点が挙げられる。浅草が使う「オープンセサミ」や「あっと驚く為五郎」といった古い言い回し、芝浜高校や富久書店など落語を元ネタとした名称の使用、さらに古典映画からの引用など、過去と未来が融合した独自の世界観が構築されている。また、技術的な側面では、アニメーション制作におけるデジタル技術と手描き作画の融合など、伝統と革新の共存が描かれている。
連載状況
小学館「月刊!スピリッツ」2016年9月号から連載。
受賞歴
2017年「ブロスコミックアワード2017」大賞。
メディアミックス情報
テレビアニメ
2020年1月から3月までNHK総合にて放送。
テレビドラマ
2020年4月から6月までMBS・TBSほかにて放送。
実写映画
2020年9月25日公開。当初は同年5月15日に公開予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け延期となった。
あらすじ
第1巻
アニメ制作に興味がある浅草みどりと、その友人の金森さやかは、入学した芝浜高校のアニメ文化研究会に入部すべく、部活動説明会に参加していた。そこでカリスマ読者モデルの少女、水崎ツバメと出会う。ツバメは、アニメーターになることが夢だったが、人気俳優である両親に俳優になることを強制され、アニメ文化研究会への入部を禁止されていた。人物画が得意なツバメと背景が得意なみどりが試しに絵を合わせてみたところ、これならアニメが作れる話になる。入部がダメなら独自の同好会を作ればよいという話になって、映像研究同好会を結成する。当初はボロボロの部室の修理などに明け暮れる三人だったが、部活動の予算獲得のために数分間のアニメを完成させる。それを見た教師達や生徒会はその出来栄えに驚愕し、この三人にきちんとした予算を渡せば、凄いものが作れるのではないかと考え始める。
第2巻
最初に作った題名もないアニメで実力を認められた結果、映像研究同好会には予算が下りる事になった。一方でその条件として、次回作は内容も紐付きのものになる事となった。すなわち、文化祭向けにロボット研究部と合同で、ロボットが怪物と戦うという内容のアニメを作らされる事になったのである。ところがムラっ家の強い浅草みどりは、自分はロボットアニメを描きたくないと言い出す。そんな彼女に対し金森さやかは、自分の作品に満足がいかないなら、もっと自由に満足のいく作品に仕上げ直せ、と告げるのだった。そして迎えた文化祭。娘がアニメ制作に携わる事に反対していた水崎ツバメの両親は、ツバメがかかわった作品の出来を見て、彼女がアニメを作る事を肯定する態度を見せる。
登場人物・キャラクター
浅草 みどり (あさくさ みどり)
芝浜高校に通う1年生の女子。映像研究同好会のメンバーの一人。画力が非常に高く、アニメーターとして才能にあふれた少女だが、一人で行動するのを怖がったりと、ムラっ気が強い。きっかけや環境が整わないと何もできないが、逆にそれらが用意された環境においては無類の行動力を発揮する。
金森 さやか (かなもり さやか)
芝浜高校に通う1年生の女子。痩身で身長が高く、美脚の持ち主。映像研究同好会のメンバーの一人。頭の回転が速く、非常に能弁で、人を煙に巻いたり、根回しを図ったりするのがうまい。浅草みどりのよきサポート役および資金調達役として、映像研になくてはならない存在。音曲浴場の瓶牛乳が大好物。
水崎 ツバメ (みずさき つばめ)
芝浜高校に通う1年生の女子。映像研究同好会のメンバーの一人。大金持ちの家の令嬢であり、また読者モデルとしても、カリスマと評されている。映画俳優である両親から女優の道に進むように半ば強制されているが、本人は無類のアニメ好きで、アニメーターになるのが夢。人物画が得意。
集団・組織
映像研究同好会
浅草みどりが結成した新しい同好会。芝浜高校にはすでにアニメ文化研究会というアニメ制作を行っている部活があったが、水崎ツバメはそこに入部する事を親から禁じられていたため、彼女のためにみどりが立ち上げた。アニメ制作を活動の中軸に据えた同好会で、略称は「映像研」。
ロボット研究部
芝浜高校で100年以上も前から続いている伝統ある部活。「タロース」というロボット模型を創部以来改良し続けている。部員数が多い事もあって、それぞれ多少の温度差はあるが、基本的には部員のいずれも、ロボットに対する思い入れが強い。中でも小野という部員は重度のロボットオタクであり、映像研と協力して映像制作をするにあたり、多くの意見の食い違いを生じさせた。 略称は「ロボ研」。
場所
芝浜高校 (しばはまこうこう)
水上に校舎が建てられている高校。学校へ入るのに橋を渡る必要があったり、意味のわからない高低差が存在したり、度重なる増改築の結果として複雑怪奇な構造になっていたりと、その趣はまさに「公立ダンジョン」と呼ぶに相応しいと、浅草みどりは語っている。略称は「芝高」。
書誌情報
映像研には手を出すな! 9巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2017-01-12発行、978-4091892966)
第2巻
(2017-09-12発行、978-4091896360)
第3巻
(2018-06-12発行、978-4091898876)
第4巻
(2019-05-10発行、978-4098602414)
第5巻
(2020-01-30発行、978-4098605316)
第6巻
(2021-10-12発行、978-4098611560)
第7巻
(2022-07-12発行、978-4098613304)
第8巻
(2023-07-12発行、978-4098617395)
第9巻
(2024-12-12発行、978-4098630820)







