キノの旅 the Beautiful World

キノの旅 the Beautiful World

時雨沢恵一の小説『キノの旅 -the Beautiful World-』のコミカライズ作品。相棒のエルメスと共に世界中を巡るキノの旅と、さまざまな国での新たな出会いを描く。講談社「少年マガジンエッジ」2017年4月号から連載の作品。コミックス各巻の口絵には、時雨沢恵一による書き下ろし小説が収録されている。なお、KADOKAWA「月刊コミック電撃大王」でも、同じタイトルでコミカライズされている。作画担当は郷。

正式名称
キノの旅 the Beautiful World
ふりがな
きののたび ざ びゅーてぃふる わーるど
原作者
時雨沢 恵一
漫画
ジャンル
ファンタジー
レーベル
マガジンエッジKC(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

12歳になる直前に故郷を飛び出し、エルメスと共に旅立ったキノは、世界中のさまざまな国を訪れながら、旅を続けていた。ある日、キノとエルメスは、入国審査がすべて機械で行われる不思議な国を訪れる。そこは建物やシステムがしっかりしているものの大半の事を機械がこなし、国民達は誰もが自宅に閉じこもって暮らす国だった。不思議に思いつつも、いつも通り3日間のみ滞在する事にしたキノは、無人のホテルで一泊したのち、住人を探して町を散策し始める。あちこちに民家はあるものの、住人達は変わらず閉じこもったままだったが、キノは唯一外で過ごしている一人の男性を発見する。キノに話し掛けられたその男性は驚くものの、旅人を名乗るキノとエルメスに、国民達が閉じこもってしまった経緯を語り出す。この国は「人の痛みが分かる国」で、人々が閉じこもった経緯には、昔開発されたある薬が関係していた。

第2巻

キノエルメスは新たな国を訪れるが、大門の前で呼び掛けても返事がなく、人が一人として見当たらなかった。門が開いていたため、そのまま入国したキノだったが、道はしっかり整備されており、西洋風の立派な建物がいくつもあった。中に入ってから、キノは入国と滞在の許可を得るつもりだったが、周囲には誰もおらず、そのまま町中で野営をするはめになってしまう。後日、キノは無意味と思いつつも人探しを再開。ようやく国民らしき一人の革命家が現れ、キノは彼に人がいない理由を尋ねる。この国は「多数決の国」であり、昔は王がいたが悪政が続いたために革命が起こり、王は家族もろとも死刑になった。革命後は一人の王に従う事はやめ、問題が起こるたびに国民の多数決で決めるようになった。しかし、次第に危険分子が現れるようになり、容赦なく死刑を執行する事で、国民が次々と減ってしまう。事情を話し終えた革命家は、キノに新たな国民になってほしいと懇願する。

第3巻

キノエルメスは、前から行ってみたいと思っていた国を訪れた。その国は豊かですばらしいと聞いて期待していたキノだったが、国民達は仕事をせず堕落した毎日を送り、聞いていた話とは正反対だった。キノはがっかりしつつも入国審査所にいる男達に話を聞くと、豊かだったこの国は現在の王に代わって以来何もかも変わり、国民も王族も堕落した生活を続けているという。さらに中央には巨大なコロシアムがあり、そこでは定期的によそ者同士の戦いが行われていた。豊かで楽な生活を求めて、この国の市民権を得ようとするよそ者も多く、コロシアムでの戦いは市民権と命を懸けた、よそ者同士の戦いを見世物とする場所だった。コロシアムへの参加者は市民権目当てのならず者だけでなく、事情を知らずに入国した旅人も含まれており、知らずに入国したキノは半強制的に参加させられる事になる。エルメスに心配されながらもコロシアムに向かったキノは、対戦相手を次々と降参させていく。そしてキノは、最後の戦いで謎の青年シズと対峙する。

第4巻

泥道を抜けた先にある小さな国を訪れたキノエルメスは、国長から国賓待遇を受け食事を楽しんでいた。だが、キノ達が国長の退屈な自慢話を聞く中、大通りにある胴像をどかしてほしいと訴えるニーミャが、部屋に割り込んで来る。締め出されたニーミャに興味を持ったキノは、彼女に胴像をどかそうとする理由を聞く。飛行機作りを夢見るニーミャは、飛行機の広い滑走路を確保するのに、大通りに建っている胴像が邪魔になると困っていた。ニーミャの家を訪れ、飛行機の設計図を見たエルメスは「飛べる」と確信し、彼女と議論したり彼女にアドバイスをする。しかし肝心の滑走路を確保できないまま、国長達がニーミャの家を訪れ、明日には飛行機を解体すると告げる。それでもニーミャはあきらめず、キノとエルメスの助けを受けて、胴像をどかさずに飛行機の滑走路を確保する方法を発見する。次の日、ニーミャは飛行機を大通りに移動させ、飛行実験を開始。キノもニーミャと共に大通りに行き、彼女の夢を手伝うのだった。

登場人物・キャラクター

キノ

エルメスと共に世界中を旅する少女。一人称は「ボク」。黒髪のショートカットで少年のようだが、幼い頃はロングヘアでスカートを着用するなど、少女らしい格好をしていた。旅に出てからは白いシャツに黒いジャケットと、動きやすい服装を好んでいる。本名は不明で、キノ自身も覚えていない。11歳までは故郷の「大人の国」で両親と暮らしていたが、青年キノとの出会いをきっかけに、特殊なルールに縛られた大人の国に疑問を抱くようになり、両親に少しずつ反抗するようになる。 激怒した父親に刺されそうになったところを青年キノに救われたのち、エルメスと共に故郷から逃げ出した。その際に命を落とした青年キノの名前を取って自ら「キノ」と名乗るようになり、エルメスと共に旅を続けている。 また青年キノの影響で、訪れた国がどんな場所であれ、基本的に3日間のみ滞在する事をルールとしている。訪れる先には複雑な事情を抱えた国も多く、厄介事に巻き込まれたり、危険な目に遭う事も多い。パースエイダーの扱いが得意で、元は師匠の愛銃である大口径リボルバー「カノン」と、とある国で手に入れたオートマチック拳銃「森の人」をつねに持ち歩き、手入れも欠かさない。 銃以外にもナイフなどの扱いに長け、身体能力も高い。

エルメス

言葉を話せるモトラドで、キノの相棒。キノの乗り物兼話相手として、彼女を乗せて世界中を旅している。流暢に人語を話し博学だが、自分で自分を動かす事はできない。このため、どこかに放置されるのが苦手。人懐っこい性格で、キノよりも口数が多い。元は「大人の国」で捨てられていたスクラップだったが、青年キノの修理を受けて復活し、喋るモトラドとなった。 その際に付けられた「エルメス」とは、青年キノの友人から取った名前でもある。科学知識が特に豊富で、機械的な計算も得意とする。人間でも動物でもない機械であるが故の独特な哲学感を持ち、人の死にも動じないなどドライな面がある。また、キノと旅を続ける中で、人間の行動や心理に対し複雑な疑問を抱く事もある。

青年キノ (せいねんきの)

「大人の国」を訪れた旅人で、11歳のキノと出会い、のちに彼女が旅立つきっかけとなった男性。短髪で細身の青年で、茶色いロングコートを羽織っている。はっきりした目的もなく世界中の国を旅しながら、自由気ままに生きている。キノの両親からスクラップ状態だったエルメスを譲り受け、修理した。これといった仕事はしていないが、旅の中で見つけた薬草や珍しい物品を売ったりする事で収入を得ている。 訪れた国には基本的に3日間のみ滞在する事をマイルールとしており、これらのルールは旅立ったあとのキノにも引き継がれている。大人の国の特殊なルールや事情に疑問を抱き、その影響を受けたキノが両親に逆らった。そのために父親に殺されかけたキノをかばって、命を落とす。

シズ

「コロシアムの国」でキノと戦った青年。いつも深緑のハイネックセーターを着ており、腰には日本刀を帯びている。黒髪短髪の細身で身長が高い。犬のお供・陸を連れ、四輪バギーに乗って世界中を旅している。剣術に優れており、弾道を先読みして銃弾を日本刀で弾く事もできる。元はコロシアムの国の王子だったが、新たな国王となった父親に追い出される形で祖国を出る。 7年後、よそ者のふりをしてコロシアムでの戦いに参加し、対戦相手となったキノと出会う。当初は戦いに勝利したあとに国王を暗殺するつもりでいたが、戦いの最中にキノが国王を射殺したため、思わぬ形で目的を遂げると同時に故郷を失う事となった。その後はキノに感謝しつつ、新たな移住先を求めて再び旅立つ。 王子であった頃にさまざまな絵画を見てきたため、美術品に興味がある。

(りく)

言葉を話せる真っ白なサモエド犬。主人と崇めるシズの旅に同行し、自らを彼の忠実な僕と名乗っている。感情を問わず、つねに笑っているような顔をしている。シズの恩人であるキノには感謝しているが、エルメスとは仲が悪く、よくケンカしている。

師匠 (ししょう)

キノの師匠の女性。キノに戦闘や銃器の扱い、旅の心得などを教え込んだ。金銭欲が強い守銭奴で、儲け話があるとすぐに食いつく。キノが使用している大口径リボルバー「カノン」のもともとの持ち主。

革命家 (かくめいか)

かつて王によって統治されていた国で仲間と共に革命を起こし、悪政を終わらせた男性。革命後は一人の王ではなく多数決制によって国の方針を決めたり、問題を解決したりしていた。しかし、多数決に逆らう者や危険分子を死刑にしていくうちに国民が次々といなくなり、ついには最後の国民となってしまう。一人で国に残って孤独に暮らしてところでキノと出会い、彼女を新たな国民にしようとする。

館長 (かんちょう)

ヴェルデルヴァルにある歴史博物館の館長を務めている中年の女性。長年に渡る戦争で夫と息子を亡くし、家族を一気に亡くした事で名誉国民となった。名誉国民の地位を活用し、戦争の廃止と平和維持を訴えるようになるが戦争は終わらず、タタタ人襲撃を戦争の代わりとして提案した。平和には誰かの犠牲が必要であると同時に、そのための犠牲者は自分達の家族や友人であってはならないと考えている。

ニーミャ

飛行機の研究をしている強気な女性。ショートカットの髪型で、タンクトップとツナギを身につけている。飛行機作りを夢見ており、両親の遺した遺産をすべて研究と飛行機作りにつぎ込んでいる。しかし、飛行機の実験をするには大通りの胴像が邪魔になるため、なかなか夢を叶えられずにいる。国長に胴像をどけるよう頼んでいるものの聞き入れて貰えず、周囲に馬鹿にされ続けていた。 国を訪れたキノと出会い、キノのアイディアやエルメスのアドバイスを受けながら、飛行機を完成させる。

絵描き (えかき)

キノが旅の途中で出会った画家の男性。戦場を駆ける戦車が大好きで、戦車の絵を何枚も描き続けていた。画廊の主人に戦車の絵を高く買われるようになったのをきっかけに、反戦者達から高く評価されるようになり、順風満帆な人生を送っていた。しかし、人々が戦争を忘れかける頃には詐欺師扱いされるようになり、絵や画集を燃やされてしまう。 人々の反感を買った事で絵を描くのをやめ、荒野で一人意気消沈していたところでシズと出会う。

場所

大人の国 (おとなのくに)

キノの故郷で、城壁に囲まれた閉鎖的な国。子供は12歳を迎える頃に特殊な「大人になるための手術」を受ける事で大人になり、両親の職業を継ぐと教えられている。また、12歳になるまでに手術を受ける事が義務づけられており、それを子供が拒否した場合は、両親がその子供を殺す事も許されている。

ヴェルデルヴァル

キノが旅の途中で立ち寄った国で、大きな歴史博物館がある。キノを派手に歓迎するなど、一見平和で豊かな国に見えるが、かつては隣国レルスミアと戦争状態にあった。100年以上続いた戦争の末、お互いの国が疲弊した事で直接の殺し合いをやめる。15年前からは戦争の代わりとして、定期的にタタタ人を殺した数をスポーツ感覚で競い合っている。 これにより国民の競争心や敵愾心を発散させる事で、国内の平和を維持している。

その他キーワード

パースエイダー

拳銃をはじめとした銃器の総称。キノは師匠から譲り受けた「カノン」をはじめ、複数のパースエイダーを持ち歩いている。

モトラド

自動二輪車(バイク)の一種。エルメスのように空を飛ばない陸地専用二輪車を指す。

タタタ人 (たたたじん)

ヴェルデルヴァルの近隣に住む部族。定期的にヴェルデルヴァルと隣国レルスミアによって、二国の平和維持を名目にした理不尽な虐殺を受けている。虐殺によって犠牲になった遺体は、ヴェルデルヴァルの東部に棄てられている。何度も虐殺の被害に遭っているため、ヴェルデルヴァルとレルスミアを強く恨んでいる。

クレジット

原作

時雨沢 恵一

キャラクター原案

黒星 紅白

書誌情報

キノの旅 the Beautiful World 8巻 講談社〈マガジンエッジKC〉

第1巻

(2017-07-14発行、 978-4063910728)

第2巻

(2017-10-06発行、 978-4063910858)

第3巻

(2018-02-16発行、 978-4065109533)

第4巻

(2018-08-17発行、 978-4065127322)

第5巻

(2019-02-15発行、 978-4065147214)

第6巻

(2019-09-17発行、 978-4065170274)

第7巻

(2020-03-17発行、 978-4065188927)

第8巻

(2020-09-17発行、 978-4065207703)

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