概要・あらすじ
『キメラ』で描かれた「キマイラ6人の戦士」の聖戦から数か月、長きにわたって歴史を闇から支配してきたルドルフにより、新生ゲイヴォルグ軍が完成した。すべての生物を蹂躙するためだけに作られた人造の兵士マティサークの軍勢が、世界を恐怖に陥れる。人類はこれに対抗するため、史上初となるキマイラと人間の混成軍「聖十字軍(クルセイダーズ)」を組織し、ルドルフの住む城に決死の総攻撃を仕掛けるが、そこにリンの姿はなかった。
キマイラが一生のうちで使える力の量は限られており、その力を使い果たしたリンは、ただの人間となっていた。最後の力を捻り出すには自らの命と引き換えにするしかなく、リンは戦に出ることを諦める。そんななか、聖十字軍はリンを置いて戦いに出る。
圧倒的な数を誇る相手の軍勢に苦戦を強いられながらも、ついにルドルフに手の届く距離まで到達したエヴァンス。しかし、ルドルフによる遺伝子操作で作られたキマイラである彼は、書き込まれた本能によりルドルフに攻撃することができない。キマイラの戦力がルドルフに触れることもできないと分かり絶望する一行だが、この日のために己を鍛え続けた一人の人間、タキがルドルフに挑む。
登場人物・キャラクター
リン
すべての悲しみを終わらせ、すべての願いを成就させる白き光の騎士。『キメラ』での長い戦いの旅とその後の新生ゲイヴォルグ軍との戦でキマイラとしての力を使い果たしてしまい、次は自らの命と引き換えにしてしか力を使えない。周りからの反対の言葉と死への恐怖から、戦に出ることができずにいる。タキと恋愛関係にあり、戦が終わったら普通に家庭を築き幸せに暮らしたいと願っている。
タキ
リンに恋をして、自分より強い彼女を守るため、人間の限界を超える力を得た戦士。遥か東より伝わる秘術で圧倒的な脚力と腕力を誇り、両手両足に刀を持っている。リンの命を守るため、彼女にあえて厳しい言葉を投げかけて戦争から遠ざけ、自身は首都サラスでの最終決戦に出陣する。
マチルダ
キマイラでありながら人間の世界の大司教も務める、2つの種族が共存する新世界の象徴とも言うべき美女。水の都ファルシオンで民に寄り添うため戦闘には参加しておらず、ファルシオンの子供たちに紙芝居という形でリンの冒険を語る、語り部的な位置づけで登場する。
ガラハット
水の都ファルシオンでの聖戦で命を落としたと思われていたが、奇跡の復活を遂げた元円卓の騎士団最強の剣士。リンの実父であり、タキの師匠。復活後、機を待って身を潜めていたが、ルドルフと人類の最終決戦に満を持して登場した。厳しい修行に耐えきって大いなる力を得たタキを男として認めており、リンを守る使命を託した。
アイン
前作『キメラ』における最後の戦い「六人のキマイラとの聖戦」を主人公たちと共に戦った後、新ゲイヴォルグ軍との戦いに参加し、部隊の配置と編成など、軍師的な役割を担っている。大司教、マチルダと恋仲にあり、同じくマチルダに恋心を抱くエヴァンスからは数少ない信用に足る人間として評価されている。
グエン
ガラハットの円卓の騎士団時代の戦友で、ゲイヴォルグ軍蒼の騎士団の部隊長。クレイモアでのリンとの戦い以降行方をくらませていたが、ガラハットの死の噂を聞きつけて聖十字軍に参加した。アインの作った超大型の仕掛け鎧を身に纏い戦う。
ザイン
リンとの戦いで自らの生きる意味を見出し、新ゲイヴォルグとの戦争に参加した元円卓の騎士団の団員。愛馬グリンガレットに乗って戦う。決戦中に進化したマティサークに意表を突かれ右腕を失い、自身が戦う事は諦めるが、タキをルドルフの元へと送るため、グリンガレットを差し出した。
カレン
ファルシオン自衛部隊長として「六人のキマイラとの聖戦」を戦った後、聖十字軍に参加している女騎士。女性であることを感じさせない強さと高い指揮能力で活躍する。前作『キメラ』で抱いていたタキへの恋心も吹っ切れたようで、そろそろ結婚相手を探そうと考えており、傭兵仲間の間では話題になっている。
ガゼル
元キマイラ6人の戦士で、タキとの戦いで左腕を失った。この戦いにおいて同時に人間への復讐心も断ち切ることに成功し、キマイラと人間の共存のために新ゲイヴォルグ軍と戦っている。最終決戦でタキの道を作るためキマイラとしての最後の力を使い、命の炎を燃やして戦って自らの信念と共に死を迎えた。
エヴァンス
人間への信頼を完全に失っていた元キマイラ6人の戦士の一人。だが、ファルシオンでアインと戦い、これがきっかけでアイン一人だけは信用するようになり、彼の誘いによって最後の戦いに参加した。死神のような大きな鎌を使って戦い、高い戦闘力を誇る。作中で最初にルドルフに手が届きかけた。
ドリス
元キマイラ6人の戦士。愛する人が望んだ未来を実現するため、人間と共に戦うことを選んだ。キマイラ殺しの魔剣「クセルスー」を使い戦う。ルドルフ相手にはキマイラの力は使えないことを知り絶望するが、人間であるタキの勇敢な言葉を聞き、彼にすべてを任せることを決意し、全力でサポートする。
アガサ
元キマイラ6人の戦士。一度触れたものを自由自在に動かすことのできる念動力の持ち主(ウィッチクラフト)。最終決戦ではグエンの仕掛け鎧から放たれる無数の大剣を念力で操り敵を追尾させるという連携で大活躍を見せた。タキに恋心を抱いているが、リンのことばかり考えているタキにフラれている。
ルカ
旧ゲイヴォルグ軍の少年部隊こまどり隊に所属するキマイラの少女。決戦の3か月前まで全ての記憶を失くしキマイラの力も失っていたが、仲間の死ぬ間際に放った言葉により記憶を取り戻し、戦闘への参加を決めた。カイルにガキ扱いされたことを気にしており、彼に認められるような綺麗な女性になることを目標としている。
シャーリー
キマイラ100人の体を用いてルドルフによって作られた錬成人間。その正体は、太古の昔にルドルフに名前を付けて心を持たせた少女を、ルドルフが錬成の技術により生き返らせたものである。悠久の時の中で悪魔の心を持ってしまったルドルフの暴走を止めるため、死を間近にしながらタキとルドルフの一騎打ちに姿を現す。
ルドルフ
長きに渡り人類の歴史を裏から操って来た謎の人物。現在は新生ゲイヴォルグ軍を率いてまたしても人類を滅びの道へと導こうとしている。古の人間たちの知恵が記されている文書を唯一読むことができ、これを利用してさまざまな兵器や生物を作り出すことができる。血の刻印の操作によりキマイラを作り出したのもこの男であるため、キマイラは彼に殺意を持って近づくことすらできない。
シス
元キマイラ6人の戦士の一人で、すべてを謎に包んだまま姿を消していた。実はキマイラではなく、旧カイラード帝国の王家の血の刻印と、大量のキマイラの肉体を使って作られた複製人間であった。王のカリスマ性と最強の錬成人間の肉体を持っているため、その能力は他とは一線を画している。しかし、キマイラの筋肉をつぎはぎして作られた身体は長くは持たず、死期を悟ってタキとのリンを賭けた最後の戦いに臨んだ。
カイル
旧カイラード帝国の正統王位継承者。ルドルフ率いる新生ゲイヴォルグ軍との最終決戦中、聖十字軍の兵たちが疲弊し士気も下がっていたところに、大量のキマイラの戦士と共に駆け付けて兵を鼓舞した。戦争が終わり国を統一する王となった後は、自分は象徴として国のトップであればよく、詳細な国の運営は選挙で選んだ国民にやらせるようにしたい、など民主主義的思想を持っており、アインを感心させている。