ビッグオーダー

ビッグオーダー

自らの願いを叶えるために、世界を崩壊寸前に追いやってしまった男子高校生がいた。そんな彼が、義妹を守るために「能力者(オーダー)」同士の戦いに身を投じていく姿を描いた異能バトルアクション。「月刊少年エース」2011年11月号から2016年9月号まで連載された。

正式名称
ビッグオーダー
ふりがな
びっぐおーだー
作者
ジャンル
異能力・超能力
関連商品
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作品誕生のいきさつ

作者のえすのサカエは、インタビューで「今作『ビッグオーダー』は、その前に手がけた『未来日記』とは毛色を変え、少年漫画の王道である能力バトルを描きたかった」と語っている。また、「少年漫画らしさ」や「プロレスのような雰囲気」を意識し、「さまざまな能力を持ったキャラクターが多数登場してぶつかり合う、ガチャガチャとした面白さのある作品にしたい」とも語っている。

作品構成

本作『ビッグオーダー』は、大きく分けて2部構成となっている。第1部は星宮エイジ紅鈴らの所属する太宰府政庁の一員となり、クーデターを起こしながら、義妹星宮瀬奈の病気を治癒する方法を模索する。32話から始まる第2部では「大破壊」にまつわる真実を知ったエイジと、新たな敵との戦いが描かれる。

あらすじ

第1巻

10年前に発生した大災害「大破壊」により、日本は国家としての機能を失い、国連暫定統治機構の支配下に置かれる事となった。九州地区天草市に住む男子高校生、星宮エイジは、自分こそが「大破壊」を引き起こした張本人であり、また、自分が「能力者」と呼ばれる、願望を能力として行使できる特殊な存在であるという秘密を抱えたまま、義妹の星宮瀬奈を心の支えに暮らしていた。そんなある日、エイジは転校生の紅鈴に一目惚れする。しかし、その日の帰宅途中、エイジは鈴に襲撃され、拘束されてしまう。鈴は「大破壊」の被災者であり、「大破壊」によって亡くなった両親の仇を討つため、エイジのもとにやって来たのだという。二度と能力を使わないと決意しているエイジは、自分と同じ「能力者」である鈴に苦戦するが、戦闘中ついに能力を解禁し、勝利する。エイジの能力とは、自分の歩いた地点を自らの「領土」とし、領土内にいるすべての存在を支配する「拘束する支配者(バインド・ドミネーター)」という、とてつもない力を持ったものだったのである。エイジは、今後つねに鈴を領土内に置くという方法で無力化させ、仲間にする事に成功。しかしその直後、エイジは鈴の仲間であるアブラアン・ルイ・フランに瀬奈を人質に取られ、鈴らの本拠地である太宰府政庁に連れていかれてしまう。そこでエイジは柊義経から、難病により余命いくばくもない瀬奈の治療法を探す代わりに、能力者として太宰府政庁に協力するよう提案されるのだった。

第2巻

柊義経太宰府政庁の面々の目的は、星宮瀬奈を人質に取り、超強力な「能力者」である星宮エイジを、自分達が起こす世界規模のクーデターの首謀者に仕立て上げる事だった。絶望しかけるエイジだったが、面従腹背して太宰府政庁の人間として戦いながら、瀬奈の難病の治療法を見つけようと決意する。手始めに山口県を攻略する事になったエイジ達は、山口を統括する「能力者」の平景清と戦う事になる。その最前線に放り込まれたエイジ、紅鈴壱与の3人は、100%的中する壱与の占いの能力を駆使して、景清との接触を避けながら、山口における要人を確保する「山口攻略作戦」に挑む。その途中でただ一人分断された鈴は、そこで景清と出会い、寝返るように勧められる。そして、数時間後、山口にはエイジを殺すための核ミサイルが発射されるため、その前にエイジを殺さない限り、山口は滅んでしまうと知らされる。しかし鈴はそれを断り、エイジや壱与と合流。核が落とされると知ったエイジは、景清の能力で生み出された石神を自らの能力であやつり、核ミサイルを受け止める事に成功する。

第3巻

「山口攻略作戦」の真の狙いは、星宮エイジによる陽動作戦の裏で、山口にいた足玉ヒカリを保護する事だった。まずは一勝を収め、安堵するエイジだったが、今度は柊義経]に、紅鈴と共に広島県へ行き、ヒカリの祖父である足玉義雄から、島根県出雲にいるらしい「神魂命」と呼ばれる存在の情報を得るよう命じられてしまう。鈴と別行動中に、エイジは義雄との接触に成功するが、義雄は現地の極道「咬竜組」の組長であり、さらに義雄は、ヒカリを誘拐したのが敵対組織の「白獅子組」である、と思い込んでいた。その誤解により「咬竜組」と「白獅子組」の抗争が始まり、エイジと鈴は、それぞれの組織に雇われた用心棒として敵同士になってしまう。その過程でエイジは「咬竜組」の協力者としてやって来た国連暫定統治機構公安庁の葉鳥半蔵から、国連暫定統治機構にとっても保護対象となっている「神魂命」が現在行方不明であり、ヒカリが最後に「神魂命」と連絡を取った重要人物であると知らされる。抗争の中、エイジは半蔵を味方と思いかけるが、半蔵の真の目的は「神魂命」の保護ではなく、抹殺であった。半蔵は対象をあやつる能力を持つ「能力者」であり、鈴をあやつってエイジと戦わせ、彼に致命傷を負わせる事に成功。助けに入った義経のおかげでエイジは一命を取り留めるものの、鈴は半蔵にあやつられたまま連れ去られてしまう。

第4巻

星宮エイジは、葉鳥半蔵紅鈴を追い、壱与と共に「神魂命」がいるとされる島根県出雲へ向かう。「山口攻略作戦」以来エイジに想いを寄せる壱与は喜ぶが、当のエイジは壱与の思いを知らず、壱与を傷つけてしまう。そのまま「神魂命」がいる洞窟「猪目洞窟」へ向かった2人は、2人をカップルだと思い込んだ「神魂命」のいたずらに遭いつつも、どうにか「神魂命」の正体である白拍子黒子と対面する。黒子に「協力してほしければ、自分達とゲームをして勝って見せよ」と言われたエイジと壱与は、仲直りをし、心を通わせて勝利する。しかしその直後、黒子の命を狙う「能力者松平不昧が現れ、黒子は殺されてしまう。黒子は死に、鈴も奪還できていないという最悪の状態で、エイジは、出雲に到着した柊義経から撤退を命じられる。納得できないエイジに、義経は、真の黒幕が新たに「大破壊」を起こそうとしており、真の黒幕にエイジが奪われないためにも、撤退を受け入れろと説得する。その真の黒幕とは、なんと、10年前の「大破壊」で亡くなったはずのエイジの父親、星宮源内であった。義経の口から、エイジは、義経と源内がかつて「星宮エネルギー開発研究所」で働く上司と部下の関係であった事、源内は自らの研究で星宮瀬奈の病気を治そうとするあまり気が触れてしまった事、その結果DAISYを生み出した事、現在は国連暫定統治機構 公安庁の次長として2度目の「大破壊」を企てている事を知り、深いショックを受ける。さらにその直後、半蔵の能力から解放された鈴から連絡が入る。それは、源内が瀬奈を誘拐するため、刺客を太宰府政庁に送り込んだというものだった。

第5巻

星宮源内が放った刺客により、星宮瀬奈がさらわれてしまった。瀬奈は国連暫定統治機構公安庁の人間である葉鳥半蔵のもとに送られ、紅鈴と瀬奈は、奇妙な形で再会する。さらに瀬奈は、鈴とアブラアン・ルイ・フランから、10年前の「大破壊」の真犯人は星宮エイジではなく源内であり、現在エイジは瀬奈のために太宰府政庁に協力しているのだと知り、自分なりの方法でエイジを守ろうと決意する。一方公安庁の人間達が淡路島に向かっているという情報を入手したエイジは、寸断殺人を連れて淡路島へ向かう。しかし殺人は、エイジを崇拝するあまりエイジと自分を同一化しており、エイジはまるでコミュニケーションの取れない殺人に悩まされる。その頃瀬奈は、エイジを殺されたり、利用されたりしないよう、源内を説得しようと思いつく。しかしその真の目的は、瀬奈と源内の会話をマスコミに生中継させ、「大破壊の真犯人は、エイジではなく自分である」と白状させる事だった。だが源内はその状況を逆手に取り、自分達のたくらみである2度目の「大破壊」すら、エイジの目論見に仕立て上げようとするのだった。

第6巻

2度目の「大破壊」を防ぐため、柊義経太宰府政庁は、源内の根城である奈良平城京に総攻撃を仕掛ける。しかし、源内に狙われている星宮エイジには出撃許可が出ず、壱与の監視のもとに拘束されてしまう。そんな中、エイジは壱与の指摘により、自分は星宮源内に関して何か記憶違いをしているのではないか、と考えるようになるが、具体的にどのような記憶違いかは分からず苦しむ。一方その頃、源内によって奈良平城京の地下施設に閉じ込められた星宮瀬奈紅鈴は、協力して脱出を決意していた。鈴から時間を稼ぐように言われた瀬奈は、現れた源内と会話するが、そこで瀬奈は、源内が自分のために研究に没頭し、「大破壊」を引き起こした事を知る。さらに「大破壊」の際に「能力者」としてエイジと瀬奈が目覚めた事、その時すぐさまエイジが、対象の記憶と能力を奪う「記憶の盗掘者(イリーガル・ディガー)」を行使し、本来は瀬奈の能力であった「拘束する支配者(バインド・ドミネーター)」を奪い、「大破壊の犯人はエイジである」と2人の記憶を改ざんした事を思い出してしまう。責任を感じた瀬奈は、一転、源内に協力を決意。助けに現れたエイジと鈴を振り切って、源内の実験台になってしまう。

第7巻

星宮源内星宮瀬奈を用いた実験は未遂に終わり、源内は死亡した。しかし、それでも近畿の一部が消失する大災害が起きてしまった。3か月後、星宮エイジ紅鈴壱与の3人は、愛知県名古屋市の高校に現れた「腕盗り様」と呼ばれる「能力者」を追っていた。「腕盗り様」は、DAISY以外の存在から能力を付与されたイレギュラーな能力者であり、その犯人は国連暫定統治機構 公安庁の残党か、3か月前に姿を消した瀬奈である可能性が高いからである。応援に平景清も現れ、4人は無事に「腕盗り様」の正体を突き止め、倒したかに思えた。しかし、エイジを今でも「大破壊」の犯人であると誤解している景清はエイジを敵視しており、捕縛した「腕盗り様」を盗んで逃げ出す。そこで景清の仲間である亥川清志郎に、「腕盗り様」を取引材料に、瀬奈の目撃情報があった浜名湖まで来いと命令されたエイジは、鈴と壱与の3人で向かう。しかし、その途中に乗船した船が、突如現れた流氷に激突し、エイジら3人と、密かに3人を監視していた景清は、犯人と思われる能力者の作り出した氷の迷宮に閉じ込められてしまう。

第8巻

星宮エイジら3人が氷の迷宮に閉じ込められていたのと同時期に星宮瀬奈は、アブラアン・ルイ・フラン 、葉鳥半蔵といった手下達と共に、クーデターに成功していた。どうにか迷宮を脱出したエイジ達は、テレビの生中継によりその事実を知り、さらに、瀬奈が今から五時間後に、霊峰富士にて「大破壊」を起こそうとしている事を知る。すぐさま向かおうとするエイジ達だったが、そこに、敵であったはずの平景清と亥川清志郎が協力に現れ、一同はヘリコプターで現地へ向かう。しかし、移動中に敵のミサイルに狙われ、エイジ達は走行中の列車の中に墜落する。列車は瀬奈が何らかの目的に使用する10トン爆弾を運んでいると知ったエイジは、負傷した壱与と、その治療担当である紅鈴、そして景清を残して、清志郎と2人で列車の調査に向かう。その途中で、エイジは、列車には瀬奈と手下達も同乗しており、瀬奈の目的は、この列車ごと10トン爆弾として宝永山にぶつけて霊脈を活性化させ、願ったすべてがそのまま叶う夢の世界への「ゲート」を開かせる事であった。どうにか瀬奈と対面し説得しようとするエイジだが、2人の会話は生中継されており、「大破壊」を起こした人物が、エイジではなく実は瀬奈であった事が全世界に知られてしまう。もう瀬奈をかばえないとエイジが悟った瞬間、列車は宝永山にぶつかり、エイジ、鈴、壱与の3人は、少しだけ開いていた「ゲート」の中へ落ちていくのだった。

第9巻

星宮瀬奈が開けた「ゲート」の中にあったのは、人の、精神・過去の思い出・願いの3点が流れ込む「識」と呼ばれる精神世界の中心地であった。そこにはなんと神がおり、この神が「ゲート」から物理世界へ移動した場合、世界の崩壊は免れない。絶望的状況に 星宮エイジは一度は心が折れかけるが、紅鈴壱与、そして「ゲート」内で出会った、エイジの思い出の中に存在する幼い瀬奈の言葉により、自分の命に代えても現在の悪に落ちた瀬奈を倒す決意をする。そこに柊義経寸断殺人も応援に駆け付け、切り札として隠していたオリジナルのDAISYとエイジ達を会わせる。神は精神エネルギーの塊であるため、物理攻撃は一切通用しない。しかし、DAISYの力を借りれば、神を形作る精神エネルギーを物質エネルギーに変換し、物理攻撃が効く存在に変える事ができるのだという。神への攻撃手段として、国連軍が保有する核ミサイルを使おうと決めたエイジ達は、義経の命令で国連本部を制圧し、ハキム事務総長の持つ核ミサイル発射コードを奪取する戦いに挑む。しかし義経は相変わらずエイジを駒としか捉えておらず、即座にエイジを裏切る。エイジと星宮源内を重ね、源内への憎しみをエイジにぶつけている義経は、すでに冷静な判断ができなくなっていた。かつての源内がそうしたように、エイジに裏切られるくらいなら、先に自分が裏切ろうとしていたのである。そこに瀬奈の手下達が現れ、同時にやって来た平景清と亥川清志郎、そして鳴神弁慶太宰府政庁の十人衆の生き残りとの、総力戦が始まる。多数の死者を出しつつ、それでもどうにか神の物質化に成功し、核ミサイルを発射したエイジ達だったが、神はあっさりとミサイルを飲み込んでしまうのであった。

第10巻

神を倒す事に失敗し、唖然とする星宮エイジの前に、星宮瀬奈が現れた。瀬奈は世界崩壊の仕上げとして、もともとは自分の能力であったエイジの能力「拘束する支配者(バインド・ドミネーター)」を奪いに来たのだという。何とか瀬奈を説得しようとするエイジだったが、失敗に終わり、壱与が連れ去られてしまう。そして世界の崩壊が本格的に始まり、責任を感じたエイジは絶望する。しかし、紅鈴の言葉と、エイジが世界最後の希望と判断したハキム事務総長と柊義経の頼みにより、再度瀬奈と戦う決意をする。義経の分析によると、神と瀬奈は、瀬奈の持つ「伝送端末」により意思疎通を行っており「伝送端末」さえ破壊できれば、神は瀬奈と通信できなくなり、でくのぼうと化すのだという。国連軍の用意した原子力空母「エンタープライズ」と、仲間達の援護で瀬奈のもとへたどり着いたエイジと鈴だったが、瀬奈の罠にかかり、エイジは「拘束する支配者」を奪われてしまう。エイジは瀬奈に殺される事を覚悟するが、瀬奈の真の目的とは、自分をエイジに殺させる事であった。瀬奈は、10年前の「大破壊」から今日までずっと自分をかばい、悪人のふりをしてきたエイジを世界のヒーローにするために、自分を殺させようと考えていたのである。しかしエイジはそれを拒否し、DAISYの協力のもと、これまでずっと「拘束する支配者」にかかっていた能力の制限を解除し、神に「義兄妹2人一緒に生きていきたいという、自分達の願いを叶えろ」と命令するのであった。そして3年後。世界は平和を取り戻し、同時にすべての「能力者」からは能力が失われていた。エイジは世界を救った救世主としてあがめられていたが、瀬奈と共に「ゲート」の向こうへ消えてしまい、そのまま亡くなったとされていた。それでも2人を諦められない鈴達は、「ゲート」の向こう、つまり「識」の世界と自分達の住む「現世」の境界が弱まる日を利用して、エイジと瀬奈の奪還作戦を行うのだった。

モデルになった町

主に西日本が舞台。主人公星宮エイジが住む九州地方の熊本県天草市から物語がスタートし、そこから山口県、広島県、島根県に進み、第二部からは愛知県を訪れる……という形で東へ向かって進行していく。

単行本の装丁

単行本の本体表紙には、各巻のカバーに描かれているキャラクターの持つ「能力」が具現化した存在をフィーチャーした別絵柄が収録されている。また、どの巻も巻頭から4ページはフルカラーとなっている。

メディアミックス

OVA

2015年10月、コミックス8巻の限定版に付属される形でOVA版が制作された。内容は収録されている24種類のシーンのうち、いずれかが自動的に再生される「マルチアニメーションシステム」というもの。作中の名シーンや人気シーンを抜粋した構成になっており、再生を繰り返すと全シーンを視聴できる、という独自の仕組みをとっている。キャストは星宮エイジ役を森田成一、紅鈴役を三上枝織が演じた。

TVアニメ

2016年4月から、鎌仲史陽監督によるTVアニメ版が放送された。シリーズ構成・脚本を高山カツヒコ、キャラクターデザイン・総作画監督を小島智加が担当している。キャストは星宮エイジ役を森田成一、紅鈴役を三上枝織が演じた。

ラジオ

2016年4月から、TVアニメと連動してwebサイト「ランティスネットラジオ」にて、ラジオ番組「ビッグオーダー 後日談的オリジナルオーディオドラマ」が配信されている。脚本を高山カツヒコが担当し、その週にTV放送された回の後日談的エピソードが展開される。そのため出演者は流動的で、その回にメインで登場したキャラクターの担当声優が登場する仕組みとなっている。

作家情報

えすのサカエは、主に少年誌で活躍中の男性漫画家。2001年に『鉄道天使』が第11回エース&ネクスト新人漫画賞奨励賞を受賞。他の作品に『未来日記』『花子と寓話のテラー』などがある。

登場人物・キャラクター

星宮 エイジ (ほしみや えいじ)

九州地方の天草市に住む男子高校生。「支配領土の拡大」の力を持つ能力者。紫がかった黒髪をしている。一見普通の高校生だが、10年前自身が「世界の滅亡」を願ったことがきっかけで大破壊が発生したと考えている。以来「能力」の行使は控え、静かに暮らそうとしていたが、紅鈴の出現により生活が一変。世界規模のクーデターの首謀者にされてしまう。 精神的に図太いことと機知に富むことが強みで、危機的状況でも義妹の星宮瀬奈のため戦う。学校生活には消極的であまり通っておらず、出席日数も危うい状態にあった。

紅 鈴 (くれない りん)

星宮エイジの通う高校に転校してきた17歳の女子生徒。「再生」の力を持つ能力者で、武器は刀。太宰府政庁に所属し、階級は少尉。赤味の強いピンク色のロングヘアをツインテールにし、前髪は眉上で切っている。黄色い花の髪飾りが特徴。10年前の大破壊で両親を亡くしており、仇であるエイジを殺そうと近づいてくる。しかしエイジの「拘束する支配者」により撃退され、「領土から出てはいけない」「エイジと星宮瀬奈を傷つけてはいけない」「エイジの伴侶となる」という3つのオーダーで拘束されてしまう。 そのため、強制的に協力関係を結ばされた状態で、エイジの命を狙い続けることになった。平景清には「姉御」と呼ばれている。

壱与 (いよ)

太宰府政庁の十人衆「四の手」を務める19歳の女性。「占い」の力を持つ能力者で、階級は中尉。水色の髪をショートカットにし、赤いリボンカチューシャ、神宝(かんだから)の「蜂比礼(はちのひれ)」を付けている。巫女装束姿が特徴。霊力を維持することを最優先に生活しており、父親の言葉もあって男性との接触を避けていた。しかし、星宮エイジに偶然「蜂比礼」に触れられてしまったことがきっかけで、彼の妻を自称するようになる。 想像妊娠で実際にお腹が大きくなったりと、占いの力と相まって思い込みの激しいところがあるが、能力は本物。未来予知の力でエイジをサポートする。大破壊前は星宮エネルギー開発研究所に所属し、ある実験に参加していた。

星宮 瀬奈 (ほしみや せな)

星宮エイジの義妹。伯父の経営する星宮総合病院に入院している中学生。オレンジ色のロングヘアを胸のあたりまで伸ばし、車椅子で生活している。エイジとは10年前、再婚した両親の連れ子同士として出会い、非常に仲が良い。病弱な自らの境遇にめげず前向きで明るい性格で、精神的にタフ。極めて珍しいタイプの白血病が進行しており、余命半年以下と診断されているが、エイジは星宮瀬奈にそれを知らせていない。 髪を洗う時はシャンプーハットをかぶる。

柊 義経 (ひいらぎ よしつね)

太宰府政庁の十人衆「三の手」を務める若い男性。「否定」の力を持つ能力者で、階級は大佐。青みがかった灰色の髪の毛を腰のあたりまで伸ばしている。太宰府政庁における中心人物で、目的のためには手段を選ばない性格。そのため星宮瀬奈を救いたいという星宮エイジの願いを利用し、彼を従わせている。11年前は星宮エネルギー開発研究所に勤めており、所長である星宮源内を熱烈に慕っていた。 しかし彼の思惑を知り、現在は対立関係にある。幼い頃に事故で両親を亡くし、学を得ることで貧しい暮らしから成りあがった。非常に研究熱心で、当時は「研究の虫」と呼ばれていた。

不破雷同 (ふわらいどう)

太宰府政庁の十人衆「一の手」を務める男性。階級は中佐。スキンヘッド頭に布で顔を隠しており、布にはサイコロの「4」の目のような模様が入っている。丁寧な口調で話す。「平和」を望み能力者となり、戦闘行為を強制終了させる力を持っている。

鳴神弁慶 (なるかみべんけい)

太宰府政庁の十人衆「二の手」を務める男性。「破壊」の力を持つ能力者で、階級は中佐。太い眉に大きな鼻、頬と顎に蓄えたひげに、僧兵の格好をしている。一人称が「儂」の、古風で武士のような口調で話す。ある一件から星宮エイジに恩を感じており、十人衆の中でもエイジに好意的に接する。気の良い性格の人物。

根原大系 (ねはらたいけい)

太宰府政庁の十人衆「五の手」を務める中年の男性。階級は少佐。スキンヘッドの頭頂部左側に大きな傷があり、目にはゴーグルをつけている。オネエ言葉で話すのが特徴。医療部所属で、星宮瀬奈の身体の検査も担当した。「全てを救う」という願いで能力者となり、使用回数が一度きりのある強い能力を持っている。

ローリン・ライト (ろーりんらいと)

太宰府政庁の十人衆「六の手」を務める若い男性。「飛行」の力を持つ能力者で、階級は大尉。腰のあたりまで伸ばした金髪に、顔にゴーグル、首に赤いスカーフ、フライトスーツを着用している。「you」や「me」など、英単語の混じった口調で話すのが特徴。鳴神弁慶同様、ある一件から星宮エイジに恩を感じており、十人衆の中でもエイジに比較的好意的に接する。

草木国土 (そうもくこくど)

太宰府政庁の十人衆「七の手」を務める人物。植物の成長と動きを操作する力を持つ能力者で、階級は大尉。頭が木でできた四角柱の形をしており、体型からは男性と推測できるが身体の詳細は不明。「自然を再生したい」という願いから能力者となった。

源 寧々 (みなもと ねね)

太宰府政庁の十人衆「八の手」を務める少女。「夢の世界」を支配する力を持つ能力者で、階級は少佐。紫色の髪を、前髪は眉の高さで切りそろえ、一部の髪は低い位置で結んだ姫カット。「ずっと眠っていたい」という願いから能力者となった。

久能 マリ (くのう まり)

太宰府政庁の十人衆「九の手」を務める若い女性。「光」を操る能力者で、階級は中佐。オレンジがかった桃色の髪の毛を胸の下あたりまで伸ばし、眼鏡をかけている。戦術部所属で「戦術のプロ」を自負しており、星宮エイジを傀儡扱いし見下した態度をとる。弱視で、能力も「光がみたい」という願いを反映したものになっている。大破壊前は、柊義経同様星宮エネルギー開発研究所の研究員だった。

寸断 殺人 (すんだん あやひと)

太宰府政庁の十人衆「十の手」を務める若い男性。階級は少佐。「空間移動」の力を持つ能力者。肩より下まで伸ばした黒髪にぎょろぎょろとした大きな三白眼をしている。顔に2本の傷のような縦の線が入っているのが特徴。元は孤児で、星宮エネルギー開発研究所による過酷な人体実験に苦しめられていた。しかし「大破壊」がきっかけで脱出に成功。 それを理由に星宮エイジを熱烈に慕っているが、共感能力に欠ける極端な思考を持つことから、エイジとは噛み合わないことが多い。

アブラアン・ルイ・フラン (あぶらあんるいふらん)

太宰府政庁に所属する男性。階級は中尉で、「時間停止」の能力を持つ。オールバックにした髪型と額の傷、ゴーグルが特徴。十人衆には参加していないが、太宰府政庁では久能マリに次ぐ腹心の位置にいる。しかし、内心には色々な思惑がある。大破壊後、フランスで起きた内戦で妻と子ども2人を亡くし、それがきっかけで能力者となった。 家族の蘇生という悲願のため、やがてある人物に協力するようになる。

平 景清 (たいらの かげきよ)

国連暫定統治機構に所属し、山口県を統治する少女。「石化」の力を持つ能力者で、武器は槌。青味がかった灰色の、太ももまで伸ばした長い髪をリボンでまとめてポニーテールヘアにしている。褐色肌とまろ眉が特徴。一人称は「僕」で男性のような口調で話す。山口県が危機に瀕していると知り、その元凶である星宮エイジを共に倒そうと紅鈴にもちかける。 元々は墓守で、使役する石神は「大破壊」で亡くなり、エイジを恨む人間の墓石から作られている。性的嗜好はレズビアンで、鈴を非常に気に入っている。

葉鳥 半蔵 (はとり はんぞう)

国連暫定統治機構公安部に所属する若い男性。右目を眼帯で覆っているのと、鮫歯が特徴。生粋のサディストであり、同時にマゾヒストでもあるという特殊な性癖を持つ。サディストとして「大破壊」は素晴らしいイベントであったと捉えており、星宮エイジに憧れていた。一方でマゾヒストとして優秀なサディストに強く惹かれる側面があり、やがてある人物に従って動くようになる。

DAISY (でいじー)

10年前、突如星宮エイジのもとに現れた少女。人の「願い」を元に、ひとつだけ「能力」を与える力を持つ存在。ある人物によって生み出され、さまざまな人間を「能力者」にしている。腰まで伸ばした白い髪と、瞳の中にダイヤ形のハイライトが入っているのが特徴。人間ではないため、常に宙に浮いている。一人称は「余」で、古めかしい口調で話す。

足玉 ヒカリ (たるたま ひかり)

広島県に住む女子児童。「核無効化」の力を持つ能力者。外にはねるくせのある前髪に、量の多い髪の毛をツインテールにしている。広島弁で話し、白拍子黒子とは電話友達の関係。その高い能力から要人とされ、ある組織に誘拐されてしまう。実家は広島県にある極道「咬竜組」で、家の者たちは誘拐犯が対立組織「白獅子組」であると睨んでいる。

白拍子 黒子 (しらびょうし くろこ)

島根県出雲に住む高齢の女性。「生命力」を与える「神魂命(かみむすび)」の力を持つ能力者。太もものあたりまで伸ばした長い髪を、左側で輪っかを作ってサイドテールにしている。外見は若い女性そのもので、高齢には見えないが、「神魂命」の力で人間の肉体的限界を超えた超人的存在となっている。猪目洞窟にて「神護り(かみはかり)」を行っていたが、訪れた星宮エイジたちに「ゲーム」を持ちかける。

松平 不昧 (まつだいら ふまい)

国連暫定統治機構公安部第6課に所属し、島根県出雲を統治する男性。「水」を支配する力を持つ能力者。筋肉質な身体にゴーグル、ダイビングスーツ姿をしている。白拍子黒子の命を奪うため、猪目洞窟に現れる。一人称は「小生」で、武士のような口調で話す。

星宮 源内 (ほしみや げんない)

亡くなった星宮エイジの父親。日本政府直属の非公開組織である星宮エネルギー開発研究所の所長を務めていた。穏やかで優秀な人物で、柊義経をはじめとする周囲の尊敬を集めていたが、ある日突然人格が激変。異様な方向へ研究を方向転換し、あるものを作り上げた。エイジの記憶の中では盆栽いじりが趣味の普通の父親であり、大破壊により亡くなっているが、DAISYはその混乱を「記憶違いをしている」と語っている。

百鬼 桃太郎 (ひゃっき ももたろう)

国連暫定統治機構公安部第6課に所属する男性。ストレートロングヘアを腰まで伸ばしてひとつに結び、前髪を切り揃えている。鼻の頭のそばかすと、いつも笑っているように見える細い目が特徴。父親は警察官で、本来は正義感の強い性格だった。しかし、「大破壊」により価値観が崩壊。弱者を排斥する残虐な思考の持ち主になってしまった。葉鳥半蔵の命令で「五芒星計画」の遂行に向け、星宮瀬奈をさらおうとしたり、星宮エイジを捕縛しようとする。

磯部 (いそべ)

日本の首相を務める中年の男性。小柄な身体にバーコード頭をしており、長い下まつげが特徴。ボンクラで有名と評されており、自身も頭が良くないと語っている。しかし、極端に残酷で狡猾な一面を持っており、イカサマを駆使した賭け事にはめっぽう強い。一人称は「僕ちん」。

集団・組織

太宰府政庁 (だざいふせいちょう)

国連暫定統治機構において、九州地方の支配を担当している組織のこと。星宮エイジを首謀者としてクーデターを起こした。世界を支配し、能力者のための新世界を作ることを目的としている。本拠地は太宰府で、12世紀まで実在した建造物を復元して利用している。

国連暫定統治機構 (こくれんざんちとうちきこう)

現在日本を支配している組織のこと。10年前に起きた大破壊で、国としての機能を失った日本を管理している。各地域に能力者を配置し統治させており、また、それとは別に公安部員を派遣し、任務を行わせている。

星宮エネルギー開発研究所 (ほしみやえねるぎーかいはつけんきゅうじょ)

星宮源内が率いていた、日本政府直属の非公開組織のこと。11年前、柊義経ら多数の太宰府政庁の人間が所属していた場所でもある。「人の意思を無限のエネルギーに変換する」というプロジェクトの実現を目的に活動していた。結果、大破壊の要因となる恐ろしいものを生み出した。

その他キーワード

能力者 (おーだー)

自らの「願い」を「能力」に変える力を持つ人間のこと。10年前、星宮エイジが引き起こした大破壊と同時期に現れた。数は全世界に2000人程度ともいわれているが、現在も増え続けている。能力は原則DAISYによって付与されており、行使時は手のひらに共通の紋章が浮かぶ。

拘束する支配者 (ばいんどどみねーたー)

星宮エイジの持つ能力のこと。「世界支配」の願いにより付与され、エイジの「言葉」により命令が行われる。自らが歩いた跡を支配領土とし、領土内であれば、人・物・現象を問わず自由に支配することができる。浮かせるなど、物理法則を無視した支配もでき、アンカーを領土内のものに打ち込み、ワイヤーで拘束することで支配の証とする。しかし、一度アンカーを打ち込み命令すると、対象が領土から出るまでは解除することができない。 また、対人の際は命令を対象の耳に届けなければ行使できないため、部屋の外にいるなど、エイジの声が聞こえなかった相手には使用できない。さらに、どのようなオーダーを行った場合も、対象の精神を支配することはできない。エイジがダイアクジャーに憧れていたことに起因するのか、ダイアクジャーの能力と共通点が多い。

再生の炎 (りばーすふぁいあ)

紅鈴の持つ能力のこと。「再生」の願いにより付与された。強力な再生能力により、持ち主の肉体の不死化と、対象を問わない再生の能力を持つ。鈴の存在そのものにかけられた自動能力であるため、頭部の破壊や心臓の停止など、極めて重篤な状態からでも再生を可能とする。意識的にオーダーを行うことで、自身の再生スピードを上げたり、他者に再生を施すことができる。 しかし、再生の可否は損傷時期に依存するため、古い傷や病気を治すことはできない。さらに石化等の、状態変化にも対応できない。

満天の星読み人 (すたーしーかー)

壱与の持つ能力のこと。「霊験を得たい」という願いにより付与された。的中率100%の占いをする能力で、これを用いた高い危機回避を行うことができる。しかし「占いを「しなかった」場合、的中率100%の事象」を予知するものであるため、占いを行った時点で100%とはいえなくなってしまうのが弱点。直近の占いほど強固で外れる可能性が低く、遠い未来になるほど的中率が下がっていく。 しかし、その場合でも92%以上の的中率を誇っている。また、この能力は彼女のリボンカチューシャ、神宝(かんだから)「蜂比礼(はちのひれ)」にダウジングやセンシングの力も与えていると推測できる。

密室の殺人教唆 (まーだーずるーむ)

寸断殺人の持つ能力のこと。「密室でとある人間を殺したい」という願いにより付与された。空間を移動する力を持つが、発動には負荷が高い。そのため、殺人は鎮痛薬で痛みを和らげることによって行使している。本来の用途は殺人だったが、それを知る人間は少ない。

絶対時計 (くろのぐらふきゃりばー)

アラブラン・ルイ・フランの持つ能力のこと。「時を止めてでも、あるものを守りたい」という願いにより付与された。時間停止の力があるが無制限ではなく、同時に3点までしか止めることができない。大破壊による混乱が続いていた頃、フランがフランスでの内戦鎮圧に参加した際にDAISYと出会い、与えられた。

鷽替え神事 (ふぁくととぅふぃくしょん)

柊義経の持つ能力のこと。「この世界の否定」という願いから付与された。「アクティブ」と「パッシブ」の2種類の嘘を用いて現象を否定し、現実を書き変える力を持つ。まず、言葉で仔細に嘘の内容を指定し、指定と同時に書き換えを行うのが「アクティブ」。あらかじめ嘘の条件を指定しておき、条件を満たした瞬間嘘にする予約を行う書き換えが「パッシブ」となる。 ただし「アクティブ」と「パッシブ」の嘘を同時に使うことはできず、嘘の効果範囲は10メートル圏内に限られる。また、発生後一定時間を超過した事象は嘘にすることができない。太宰府天満宮で行われている実在の神事を名の由来にしている。

荒御霊 (ばとる-おん)

鳴神弁慶の持つ能力のこと。「自身が最強であること」という願いから付与された。対象を必ず原子レベルに破壊するという、物理戦で圧倒的な力を持つ能力。柊義経の矛として戦うことを目的に生まれた。

歪曲する怪光線 (かーぶれい)

久能マリの持つ能力のこと。「光がみたい」という願いから付与された。あらゆる光学的操作を可能にする力を持っている。例えば、光を集めてレーザー光線を生み出したり、自らの身体を光学的に隠すことができる。能力の神髄は「離れた位置にあるものを見る」力にあり、200メートル先にいる敵を索敵することができる。

百鬼夜行 (おーがどらいぶ)

百鬼桃太郎の持つ能力のこと。「悪を倒す」という願いから付与された。体内に百体の鬼を宿す能力で、鬼を使役したり、鬼並みの生命力・耐久力・腕力を有することができる。そのため、身体を分解して幾体もの鬼に分裂させたり、不死身といえるほどの生命活動ができる。

ダイアクジャー

星宮エイジが好きなヒーロー番組のこと。また、同名の主人公キャラクターのことを指す。顔と腹部に大きな「×」印、ベルトのバックルに「悪」の文字が入ったスーツを着ている。世界征服を目的に活動しており、周囲には非難されている。しかしダイアクジャー自身は世界を征服することで平和にしたいと考えており、エイジの憧れの存在だった。

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