概要・あらすじ
幼い頃、日本人の祖父母に預けられ東京で育ったクルド人の血を引く少年、真名部次郎(ジロー)の元に、10年間行方不明になっていたクルド人の母・サリーから手紙が届いた。母との再会を夢見てイスタンブールへ赴いたジローだったが、彼を待ち受けていたのは「クルドの星」と呼ばれるゲリラ組織の戦士・カシムだった。
登場人物・キャラクター
真名部 次郎 (まなべ じろう)
『クルドの星』の主人公の少年。父は古代オリエント研究家・真名部敏郎、母はフゥラート・クルドの族長の娘という、日本人とクルド人のハーフ。真名部次郎(ジロー)は幼い頃に、母から東京に住む日本人の祖父母に預けられ、日本で育った。その後、トルコに戻った両親は行方不明になっていたが、十数年ぶりに母から、会いたいという手紙が届く。 母との再会を夢見てイスタンブールへ赴いたジローは、彼を待ち受けていた「クルドの星」と呼ばれるゲリラ組織の戦士カシムと出会い、ゲリラの戦いに巻き込まれていく。母譲りの気の強さと逞しさがあり、苛酷な状況でも決して諦めない不屈の精神を持つ。
カシム
「クルドの星」と呼ばれているゲリラ組織のメンバーで、組織ではデミレル(鉄の腕)と呼ばれている一流の戦士。フゥラート・クルドの族長ウルマークの命令で、真名部次郎(ジロー)の母サリーの名を騙って手紙を出し、ジローをイスタンブールに呼び寄せた。トルコ治安軍にもマークされている歴戦の猛者で、高い戦闘能力を持っている。 粗野なふるまいもするが、根は仲間思いで情のある男性。
リラ
イスタンブールの街で、治安軍に追われていた主人公・真名部次郎(ジロー)を助けた、バイク乗りの少女。ジローを助けた際に、「クルドの星」と呼ばれるゲリラ組織の戦士カシムに連行され、ジローと行動を共にする。強気で男勝りな性格をしているが、オシャレな洋服を見てはしゃぐなど女の子らしい面もある。
ルーク
『クルドの星』の登場人物で、クルディスタンの山岳地帯に住むフゥラート・クルドの一員。族長ウルマークが呼び寄せた真名部次郎(ジロー)の存在が気に入らず、初対面から喧嘩をふっかけるなど、目の仇にする。力で相手を屈服させることしか知らない乱暴者で、徒党を組んでジローに私刑を加えようとした卑怯者。 ヘビのような執念深さもあり、自分の妻・ウルマがジローの後を追って出奔したことを知り、2人を殺すためジローを付け狙う。
ウルマーク
トルコ山岳地帯に住むフゥラート・クルドの族長で、真名部次郎(ジロー)の母方の祖父にあたる老人。娘のサリーが、日本人の真名部敏郎(マナベ)にかどわかされるようにして連れ出されたことに立腹し、行方を追っていた。サリーがマナベの子を産み、一時イスタンブールで暮らしていたことを突き止め、日本に帰されたジローを探していた。 住み処にしている石窟寺院に、ジローと同姓同名の子供を匿っている。
マナベ ジロー
真名部次郎(ジロー)とまったく同じ名前を持つ、子供。クルディスタンの山岳地帯に住むフゥラート・クルドの族長ウルマークの元に匿われており、そこでジローと出会う。普通の子供と違い、ただ者ではない雰囲気を漂わせている。
サリー
真名部次郎(ジロー)の実母であり、クルディスタンの山岳地帯に住むフゥラート・クルドの族長ウルマークの娘。日本人の真名部敏郎と共に一族を抜け、イスタンブールでジローを産んだ。その後、夫の仕事を手伝うと言い残し、まだ幼かったジローを日本の義父母に預け、再びトルコに戻った後、失踪してしまう。
ウルマ
クルディスタンの山岳地帯に住むフゥラート・クルドの一員で、同じ一族の男性ルークの妻。真名部次郎(ジロー)の実母サリーに容姿がとてもよく似ている。リラを守るため、使えもしないナイフでルークと戦ったジローに惚れ込み、後を追ってきた。クルドの女として、好きな男がもたらすものを運命と受け入れ、己のすべてを賭けて尽くす一途さがあり、夫ルークに殺される覚悟で、ジローに付いていく。
真名部 敏郎 (まなべ としろう)
真名部次郎(ジロー)の実父で、古代オリエントの研究家。十数年前にトルコで失踪し、行方が分からなくなっていた。伝説の「ノアの方舟」が漂着した名残があるとされる、トルコのアララト山にいるという噂がある。
ミヤタ
フリーランスの日本人ジャーナリスト。人口50万人の内、ほとんどがクルド人というイラクの都市エルビルで、フゥラート・クルドの一員ルーク一味に襲われた真名部次郎(ジロー)とリラを助けた。ジローが探している父は、伝説の「ノアの方舟」が漂着した名残があるとされる、トルコのアララト山にいる可能性が高いと推測し、スクープを求めてジローと行動を共にする。 スクープをものにするためなら、多少の危険を冒す程度の度胸がある。
ヴェーラ
『クルドの星』の登場人物で、アララト山にある旧ソビエト連邦の研究機関ルイシコフ研究所の研究者。かつて、真名部次郎(ジロー)の実父真名部敏郎と実母サリーと共に研究を行っていた女性。研究者として真実を追究する熱心さがある一方、訳が分からないまま巻き込まれたジローをなんとか助けようとする優しさがある。
集団・組織
ルイシコフ研究所 (るいしこふけんきゅうじょ)
『クルドの星』に登場する、旧ソビエト連邦の研究機関。研究所自体はアララト山の山頂にあるが、本部はグルジアのトビリシに置かれ、遺伝学と古生物学の研究を行っているとされている。だが、活動の実態は不明で、その存在もあまり世に知られていない。真名部次郎(ジロー)は、フリーランスの日本人ジャーナリスト・ミヤタから、失踪したジローの父真名部 敏郎が、研究所に関わっていたという情報を得て、研究所を探し求めてアララト山へと向かう。
場所
クルディスタン
『クルドの星』の舞台であり、トルコとイラン、イラク、シリアにまたがる山岳地帯。国を持たぬ最大の民族クルド人が住んでいる。真名部次郎(ジロー)の実母で、フゥラート・クルドの族長ウルマークの娘サリーの故郷でもある。
アララト山 (あららとさん)
『クルドの星』の舞台で、伝説の「ノアの方舟」が漂着した名残があるとされている、トルコに実在している標高5137メートルの山。真名部次郎(ジロー)の父真名部敏郎は、アララト山で発見した何かのため、取り憑かれたように研究にのめり込んだ。
その他キーワード
ノアの方舟 (のあのはこぶね)
『クルドの星』に登場する、伝説の舟。約5000年前、アダムとイブの子孫・ノアが、地球規模で起きた大洪水を逃れるため、神のお告げによって製造した巨大船で、ノアの家族とすべての動物のつがいが乗っていたとされる。お告げに従ったノアは無事洪水の難を乗り越え、アララト山の山頂に漂着したという伝説通り、その名残が発見されている。
アダム
『クルドの星』に登場する古代人の標本。アルメニアの古い伝承を調べていたロシア人の学者が、アララト山で偶然発見した氷漬けの遺体。本物はモスクワに移されており、アララト山にある旧ソビエト連邦の研究機関ルイシコフ研究所には、保存状態が良好な細胞片のみが、数グラムほどが保管されているだけである。