マルドゥック・スクランブル

マルドゥック・スクランブル

一度殺されかけた少女、バロットが、委任事件担当官のドクター・イースターと、自分の体を自由に変えられるネズミのウフコックに救われ、自分はなぜ生きているのか、殺す側なのか殺される側なのか、という問題に責めさいなまれながら、追手達と戦うことになる。作者、大今良時の連載デビュー作。原作は冲方丁の第24回日本SF大賞受賞作品。講談社「別冊少年マガジン」2009年11月号より連載。

正式名称
マルドゥック・スクランブル
ふりがな
まるどぅっく すくらんぶる
原作者
冲方 丁
漫画
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
アクション
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あらすじ

第1巻

ある夜、シェル・セプティノスに拾われた元少女娼婦のルーン=バロットは、車の中でそのシェルによって喉を切り裂かれ、車ごと爆破されてしまう。だがルーンは、マルドゥック・スクランブル-09に基づいて委任事件担当官をしているドクター・イースターウフコック・ペンティーノにすんでのところで救われ、金属繊維の人工皮膚を移植されて、生き延びると同時に、機械を操作する「スナーク」の能力を手に入れた。それを説明されたルーンは、車をあやつって壁を破ってシェルのもとへ向かい、シェルを問い詰める。だがシェルは記憶操作によって自分の行った殺人の事を忘れていた。その場から今度はウフコックが、「万能道具存在(ユニバーサルアイテム)」と呼ばれる変身能力を使ってルーンを救い出す。次々と押し寄せる目まぐるしい状況に困惑するルーンだったが、結局、シェルを逮捕するための捜査に協力するため、イースターやウフコックと手を組む事にする。こうしてルーンは捜査官として活動するための訓練を始めたものの、そこにディムズデイル・ボイルドが急襲して来る。 

第2巻

ディムズデイル・ボイルドの圧倒的な戦力を知るウフコック・ペンティーノは、死力を尽くしてルーン=バロットをディムズデイルのもとから逃走させる事に成功する。ルーンの抹殺をシェル・セプティノスから依頼されているディムズデイルは、ウェルダン・ザ・プッシーハンド、ミディアム・ザ・フィンガーネイル、レア・ザ・ヘア、フレッシュ・ザ・パイク、ミンチ・ザ・ウィンクら「誘拐犬(バンダースナッチ)」と呼ばれる五人組の改造人間達を雇う。五人はドクター・イースターのアジトに侵入したが、まずミディアムがルーンによって両手の指を吹き飛ばされ、無力化される。 

第3巻

訓練によって超人的な射撃能力や身体能力を手に入れていたルーン=バロットは、襲撃して来た「誘拐犬(バンダースナッチ)」の面々を次々に無力化していく。ミンチ・ザ・ウィンクは、ルーンの「スナーク」の干渉によって幻を見せられたレア・ザ・ヘアによって斬殺され、レアはルーンの能力によって壁に磔にされ、ウェルダン・ザ・プッシーハンドは覚醒した自分に酔って余裕ぶった態度を取るルーンになぶりものにされる。一方、ディムズデイル・ボイルドは、いっしょにいたフレッシュ・ザ・パイクを、もう用済みだと射殺。ルーンは結局ウェルダンにとどめを刺したが、過去のトラウマから殺戮に酔うルーンの態度に嫌悪感を感じたウフコック・ペンティーノは、体調に異変を生じて嘔血するのだった。そこにディムズデイルが姿を現す。ディムズデイルはレアをも射殺し、ルーンとの対決に臨む。だがルーンはドクター・イースターが用意した飛行機械「ハンプティ=ダンプティ」によって、からくも逃走に成功するのだった。 

第4巻

誘拐犬(バンダースナッチ)のメンバーの中で唯一生還を果たしたミディアム・ザ・フィンガーネイルは、ディムズデイル・ボイルドに「もう用済みだ」と言われるものの、勝手にそのあとについていく事になる。一方ディムズデイルとの戦いで深手を負ったルーン=バロットと、心の傷から異変を生じたウフコック・ペンティーノが運び込まれた先は、「楽園」と呼ばれる巨大研究施設であった。プロフェッサー・フェイスマン、トゥイードルディらと出会ったあと、ミディアムの襲撃を受けるルーンであるが、ウフコックの不在のために苦戦を強いられる。そこで割って入ったのが、空中を飛ぶ大きな鮫をあやつる能力を持ったトゥイードルディである。トゥイードルディに殺害されたミディアムの亡骸から記憶チップが回収され、そこからミディアムが過去にシェル・セプティノスの依頼を受けていた事、そしてシェルが自らの記憶を記憶チップに封じ込めている事実が明らかになる。3度に及ぶディムズデイルの襲撃からまたも逃れたルーンとウフコック、そしてドクター・イースターは、シェルの記憶チップが隠されているカジノへと向かう。 

第5巻

ギャンブルが趣味であるドクター・イースターは、仕事で記憶チップを求めてカジノ「エッグノッグ・ブルー」にやって来たものの、明らかに仕事そっちのけで楽しんでいた。そんな中、ルーン=バロットは「スナーク」でギャンブルマシンを操作する事はやめるようウフコック・ペンティーノに止められていたが、それでも超人的な知覚能力を活かし、スロットマシンで大量のコインを手に入れる事に成功。続いて、客とディーラーが組んでイカサマをしているポーカー卓に目をつけたルーンは、イカサマの裏をかいてロイヤルストレートフラッシュで大勝を収める。ここに至ってルーンはカジノ側からも目をつけられるが、目的の記憶チップは100万ドルチップの中に隠されているため、その金額まではまだまだ届かない。その後、ルーンはベル・ウィングという凄腕とルーレットで対決し、ここでも完勝を収める。こうして資金を稼いだイースターとルーンは、掛け金が青天井のブラックジャックに挑み、まずはマーロウ・ジョン・フィーバーという、若いが才能あるディーラーとの勝負に臨む。 

第6巻

マーロウ・ジョン・フィーバーはイカサマの名手であり、ディーラーにとっては不利な10のカードを一か所に寄せ集めるというテクニックを使う事ができる。だがルーン=バロットはそれを逆用し、必ず10が出てくる場面を作り出し、それを利用する事で大勝利を収め、まずは1枚目の100万ドルチップを入手。「スナーク」の能力でシェル・セプティノスの記憶チップが隠された100万ドルチップを探り当て、さらにウフコック・ペンティーノの能力を利用して中身を抜き取る事に成功する。だが、カジノ側も用心棒的な最強のディーラーであるアシュレイ・ハーヴェストを繰り出して来る。そしてアシュレイは、人間離れした勘だけでウフコックの存在にまで気づいてしまう。だが証拠を見つけるには至らず、イカサマを暴露される事はなかった。そんなアシュレイとの死闘の末、ルーンは奇策を放ってついに400万ドルを獲得し、シェルの記憶のすべてを入手する。 

第7巻

ディムズデイル・ボイルドから4度逃れる羽目になったルーン=バロットは、ルーンの事を気に入ったベル・ウィングが、気前よくもただでくれた車に乗って逃走に成功する。それからルーンは手に入れたシェル・セプティノスの記憶を覗き見る事になるが、それは母親からの性的虐待、その母親の殺害、それから母親との記憶に苛まれながら殺人鬼になっていくという悲惨な内容のものであった。ルーンを呼び出して罠にかけようとしたオクトーバー社の重役であるクリーンウィル・ジョン・オクトーバーを返り討ちにして、警察の手に引き渡したあと、ルーンはディムズデイルとの最後の勝負に臨む。ディムズデイルの「フロート」の能力の発生源となっている体内の機関を次々に破壊していき、そしてディムズデイルの愛銃をも真っ二つに断ち割るルーンだったが、ディムズデイルは最後の秘策として、ルーンの手からウフコック・ペンティーノが変身している銃を奪い取ろうとする。だが、ウフコックはそこにおらず、間一髪でルーンの手元に逃げ出していた。そしてウフコックは引き金のない巨大な銃に変身し、自らの意思でかつての相棒を射殺するのだった。 

登場人物・キャラクター

ルーン=バロット

元少女娼婦。居場所を与えてくれたシェル・セプティノスを信頼していたが、突如裏切られて、命を落としかける。生命の保護などに限って、禁止された科学技術使用を許可する「マルドゥック・スクランブル-09法」で、ドクター・イースターによって全身に金属繊維の人工皮膚を移植、一命を食い止める。 電子機器の操作能力、ずば抜けた身体能力と感覚機能強化などの能力を得る。喉はシェルにかききられたため、機械を通じて音声を出している。全身を自由に変えられるウフコックと共に、襲ってくる犯罪者たちから逃れながら戦っていく。ところがウフコックとなら自在に戦える自らの能力に気づいてからは、戦闘を楽しむようになる。 ウフコックはそれを拒絶。結果彼の下半身は失われてしまう。以降、自分がどう生きていけばいいのか知りたいと望むようになる。ドクター・イースターがオクトーバー社を暴くと彼女に話した時、カジノにヒントがあると発見した彼女は、イースター、ウフコックとカジノに直接乗り込む。 その後オクトーバー社を暴露しても執拗に追ってくるボイルドと対峙。ウフコックと共に戦うことになる。

シェル・セプティノス

マルドゥック市のオクトーバー社でカジノを取り仕切り、同時に資金洗浄を行っている。少女娼婦だったルーン・バロットを拾い、彼女に居場所を与えていた。バロットがシェルを慕うようになった所、彼女を資金洗浄のために殺害しようとする。数多くの人物を殺してきているが、A10手術の脳障害で、殺すたびに記憶が消えてしまい、「汚いものは無かったこと」になる後遺症を持っている。 バロットが生きていたことを知り、捜査官でありウフコックと因縁のあるボイルドを雇い、バロット抹殺を狙う。

ウフコック・ペンティーノ

委任事件担当捜査官。人間の言葉がわかるネズミ型の万能兵器で、自由に身体の形をかえ、武器や道具にすることができる。元はボイルドのパートナー。シェルのような悪党のはびこる街を認めたくなくて、バロットの道具になるべく、白兵戦用兵器・万能道具存在(ユニバーサルアイテム)となる。 自分を道具として使え、とバロットに言い続けるものの、バロットはウフコックのパートナーでありたいと願い、彼もそれを受け入れることになる。ところが誘拐屋との戦いで戦闘を楽しみはじめる彼女を見て、楽しむ殺人を激しく拒絶。反動で下半身を失ってしまう。ドクター・イースターによって「楽園」で修復後、和解。 オクトーバー社を叩くために、共にカジノに乗り込む。シェルを追い詰めた後も追ってくる、元パートナーのボイルドに対し、バロットと共に戦うことになる。

ドクター・イースター

ウフコックと共に「マルドゥック・スクランブル-09法」に基づいたプログラムに従事する委任事件担当官。死にかけていたルーン・バロットの命を救う。バロットの人工皮膚能力は彼が研究所で作り上げた。バロットとウフコックの戦闘をバックアップする形で動いているが、彼の一番の目的は、マルドゥック市を牛耳る巨大企業、オクトーバー社の実態を暴くこと。 シェルのカジノの資金洗浄を追い、シェルともどもオクトーバー社を叩こうと考えている。

ディムズデイル・ボイルド

人を殺すのが好きな元軍人で、ウフコックの元パートナー。かつて寝ていたウフコックを使って、大勢の人間を殺害したことで、決裂した。拳にはバロットと同じ特殊金属繊維を移植、脳と四肢を改造し、一生眠らず過ごし、自由に重力を操ることができる。今はオクトーバー社の元、シェルに雇われてバロットを殺害するために追い続けている。 ボイルドの使っている銃は、かつてウフコックが変形してパートナーだった時期のものと同じ形状。バロットが「楽園」内に入ってから、彼は乗り込んできてあらゆるものを破壊。カジノに乗り込んでオクトーバー社を暴こうとした3人をも追いかけ、オクトーバー社が潰えた後もバロットとウフコックの命を狙う。

クリーンウィル・ジョン・オクトーバー

カジノにも出入りするオクトーバー社の社長。醜悪な姿をしており、普段は大量の多幸剤で少年少女たちを自分の周りにはべらせている。

オクタヴィア

カジノにも出入りしていたオクトーバー社の令嬢の幼い少女。父親に犯されていた過去がある。シェルがオクトーバー社とつながりを持つために結婚を宣言。ところが彼女がシェルが服用していた多幸剤を捨てたのを見て、シェルに溺死させられる。

ミンチ・ザ・ウィンク

フェティシスト集団、誘拐犬(バンダースナッチ)の一人。殺した相手の目を全身に移植し、それぞれを人間として扱っている。

フレッシュ・ザ・バイク

フェティシスト集団、誘拐犬(バンダースナッチ)の一人。殺した相手の乳房を身体全体に移植している異形の人物。ハッキング能力でバロットとウフコックを追う。

レア・ザ・ヘア

フェティシスト集団、誘拐犬(バンダースナッチ)の一人。殺した相手の肌や髪の毛を移植している。片手で全身を切り刻む能力を持つ。バロットとウフコックを追っている時、バロットの戦闘能力で返り討ちにあう。

ミディアム・ザ・フィンガーネイル

フェティシスト集団、誘拐犬(バンダースナッチ)の一人。殺した相手の指を、自分に移植している。バロットとウフコックの返り討ちにあう。その後機械の指を移植し、「楽園」に乗り込んで虐殺行為を働いて指を集めていたところ、トゥイードルディに出会い、彼の身体をバラバラにする。 「楽園」に住むサメにバラバラに食い殺される。その時彼の持っていたデータをバロットが拾い、シェルを追うヒントが見つけられる。

ウェルダン・ザ・プッシーハンド

フェティシスト集団、誘拐犬(バンダースナッチ)の一人。殺した相手(女性)の性器を手に移植している。バロットと一対一の戦闘を挑む。

プロフェッサー・フェイスマン

「楽園」の住人でボス。顔だけで生きており、ロボットに運ばせている。戦争によって肥大化したウフコックやボイルドのような力が不要とされた今の社会で、「楽園」の中に技術と共に完全閉鎖して生きるように提案した。

トゥイードルディ

「楽園」に住み、テレパシーで話す少年。食事を必要としない完全な身体の人間として作られた。頭に角があり、泣くことができず、痛覚がない。

ベル・ウィング

ルーレットのスピナー。完璧に玉を狙った場所に落とすことが出来る。カジノでバロットと勝負を続け、当たるはずのない勝負の中でバロットが自分の運命を変えに来たことを知る。バロットの勝利後はカジノからクビにされるが、彼女とお互いに心を通じ合わせる仲間になり、バロットが逃走する手伝いをするようになる。

マーロウ・ジョン・フィーバー

ブラックジャックのディーラー。演技と会話で相手の心理を誘導する技術に長けている。しかしあっさりとバロットに飲み込まれてしまう。

アシュレイ・ハーヴェスト

最強のディーラーにして用心棒。カジノで大勝ちし続けているバロットを倒すために駆り出された。人間技ではないカード配置をつくることができ、彼女に潜んでいたウフコックにも一瞬で気づくほどの人物。

その他キーワード

マルドゥック・スクランブル-09

『マルドゥック・スクランブル』の用語。人命保護のため、通常は事件担当捜査官や証人に禁じられた科学技術の使用を認める法律のこと。一度死にかけたルーン・バロットも、この法のおかげで全身が金属繊維による人工皮膚で覆われ、命を取り留めることになる。

クレジット

原作

ベース

マルドゥック・スクランブル

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