クロス

クロス

ハリウッドでスターになる事を夢見る青年が、悪辣なプロデューサーに恋人と父親を殺害され、その復讐のために戦いを挑む物語。物語前半は、夢を追う若者が自身の困難な境遇に立ち向かうサクセスストーリーが描かれるが、後半は数々の強敵と戦うアクションへと変化する。「週刊ヤングジャンプ」1996年3・4合併号から1997年39号にかけて連載された作品。

正式名称
クロス
ふりがな
くろす
原作者
梶 研吾
作者
ジャンル
裏社会・アングラ
関連商品
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あらすじ

第1巻

映画の本場ハリウッドでスターになる事を夢見る日本人の青年・天羽ヒロトは、幼い頃に事故で両親を亡くしていた。そんなヒロトのもう一つの夢は、幼い頃に別れたきりの幼なじみであるルナ・フェニックスと再会する事だった。ある日、ヒロトは偶然ルナと再会するが、彼女はヒロトを含めた幼い頃の記憶をすべてなくしていた。ルナとの絆を取り戻そうとするヒロトにルナは何かを感じるようになるものの、ルナの父親であるブライアン・フェニックスは、彼と会う事を禁じる。ヒロトの養父であるドラル・ダーク・ガッパーナはマフィアのドンであり、司法長官であるブライアンとは敵同士の関係だった。ヒロトの両親が死亡した事故は、ガッパーナがブライアンを殺害するために仕組んだものであり、ガッパーナはその事故に巻き込んでしまった責任を感じ、ヒロトを引き取って育てていたのだ。その事実を知ったヒロトはガッパーナに対して怒りを覚えるが、ブライアンの罠にはまって警察に逮捕され投獄されてしまう。

第2巻

投獄された天羽ヒロトは警備の目を盗んで脱獄し、ルナ・フェニックスのもとへ向かう。一方、ヒロトの養父でありマフィアのドンであるドラル・ダーク・ガッパーナと、ルナの父親でありアメリカ司法長官のブライアン・フェニックスの対立は激化し、新聞は日々彼らの対決を報道していた。そんな騒ぎに、ハリウッドの大物プロデューサーであるジャック・ザインバーグが目をつけ、自らがプロデュースする映画の主役にヒロトを指名する。だがこれは、単にヒロトがガッパーナの養子であるという話題性を求めただけのことであった。それを知ったヒロトはジャックの指名を拒否するが、ルナの身の安全を盾に従う事を強要される。さらにジャックは、ブライアンをあやつってガッパーナを殺害。ヒロトはジャックに激しい怒りの炎を燃やす事となる。

第3巻

ジャック・ザインバーグの策略により、養父のドラル・ダーク・ガッパーナを殺された天羽ヒロトは、同じくジャックの策略で父親を逮捕されてしまったルナ・フェニックスと、互いに支え合って生きる事を約束する。そんな中、ジャックがルナを拉致。あとを追ったヒロトは、海上のボートでジャックと対決しルナを救出する事に成功するが、油断を突かれルナを目の前で殺されてしまう。

それから1年後、ガッパーナの遺志を継ぎマフィアのドンとなったヒロトは、アメリカの暗黒街をほぼ手中におさめていた。しかしそれはジャックへの復讐のためであり、目的を達成するため、ヒロトはマフィアのドンの座を自ら降りる。そしてヒロトは、女性カメラマンのジェニファー・ブロックに、自らのドキュメンタリーを撮ってほしいと持ち掛けるのだった。一方のジャックもまた、自身の拠点であるガルーダアイランドでヒロトが来るのを待ち受けていた。

第4巻

ジャック・ザインバーグの潜むガルーダアイランドを目指す天羽ヒロトは、アメリカ軍の中でもはみ出し者の集まりで構成された特殊部隊「バッド・ブル・ボーイズ」を仲間に引き入れる。だが、ヒロトが来る事を見越していたジャックは次々と刺客を差し向けて来る。そんな中、ヒロト達はかろうじてガルーダアイランドへの上陸に成功するが、途中でジャックの罠にはまり、仲間のトム・スミッツが命を落としてしまう。さらにヒロト達の行く手は有害物質で汚染された沼によって阻まれ、その沼の主であるシュランの襲撃を受ける事となる。

第5巻

ジャック・ザインバーグの配下であるシュランを死闘の末に撃退した天羽ヒロトは、シュランから自分の娘達がジャックに捕らわれている事を知らされる。その娘達は六つ子の姉妹で、ジャックによって洗脳されていた。そこで仲間のイブ・アングラードは、六つ子の一人に変装してジャックの潜む建物に潜入。だが、その正体をジャックに見破られ殺されてしまう。そうとは知らないヒロト達は、捕らわれたイブを救出するためにジャックの建物に突入し、そこでほかにも多くの人達がジャックに捕らわれているという事実を知る。体内に爆弾を埋め込まれ、ジャックに従うしかないと語る彼らを解放したヒロトは、さらに建物内部を進んでいくが、そこで彼らを待ち受けていたのはジェニファー・ブロックの妹で、ジャックによって洗脳されたシャロン・ブロックだった。

第6巻

ジェニファー・ブロックに襲いかかるシャロン・ブロックを止めようとしたリー・タイロンは、天羽ヒロト達の眼前で爆死する。ブルース・ウルフミハエル・ベルドリンガーはリーの敵討ちに燃えるが、それを制してジェニファーがシャロンと対峙。そして、ジャック・ザインバーグに洗脳されたためシャロン本人も忘れていた彼女自身の古傷を攻撃する事で、ジェニファーはシャロンを屈服させ、洗脳を解く事に成功する。そこへジャック本人が現れ、自身を裏切ったシャロンを殺し、ヒロトとの直接対決が始まる。死闘の末にヒロトはジャックを追い詰めるが、ジャックはガルーダアイランドに仕掛けた自爆装置を作動させ、その爆発に乗じて逃走するのだった。

ガルーダアイランドから脱出したヒロト達は、アメリカ大統領ダグラス・マクファーソンから、自身の敵となるであろう人物を抹殺してほしいと依頼される。その敵とはジャックの事であり、ヒロトはジャックがアメリカ大統領選挙に出馬しようとしている事実を知る。

第7巻

高額の報酬と引き換えに協力を持ちかけるダグラス・マクファーソンだったが、ヒロトは金のために協力するつもりはないと言い切る。そんなヒロトの男気を気に入ったダグラスは、彼を正式に自分の仲間に引き入れようと考え始める。その頃、ジャック・ザインバーグは、副大統領のビーティーをはじめとする政府高官を懐柔し、自身への協力を取り付けようとしていた。側近達がジャックに寝返った事にダグラスはショックを受けるが、ただ一人ビーティーだけはダグラスに従い、そんな彼の姿に感銘を受けたヒロト達もダグラスに協力する事を誓う。だが、ダグラスはパレードの最中、ジャックの刺客に襲われ暗殺されてしまう。ダグラスを死なせてしまった事を悔いるヒロトは、ビーティーに依頼し一計を案じる。それはジャックに大統領専用機での公開討論を持ちかけ、公の場におびき寄せるというものだった。策にはまって現れたジャックは再びヒロトと対峙するが、大統領専用機は不運にも雪山に墜落し、極寒の雪山でヒロトはジャックとの命を懸けたサバイバルに臨む事になる。

第8巻

大統領専用機に乗ったまま消息を絶った天羽ヒロトジャック・ザインバーグは、共に奇跡的に生還を果たした。だがここに至り、ダグラス・マクファーソンの殺害をはじめ、ドラル・ダーク・ガッパーナルナ・フェニックスなど多くの人を手にかけてきたジャックの悪行がついに明るみに出る。それでもジャックはヒロトを倒す事を諦めず、ヒロトの仲間のミハエル・ベルドリンガーを銃殺し、再びヒロトに迫る。それを受け、ヒロトはジャックとの最終決戦に臨む。

登場人物・キャラクター

天羽 ヒロト (あもう ひろと)

ハリウッドでスターになる事を夢見る青年。国籍は日本だが幼い頃に事故で両親を亡くし、ドラル・ダーク・ガッパーナの養子となった。幼い頃に別れた幼なじみのルナ・フェニックスと再会し心を通わせるが、ジャック・ザインバーグにガッパーナとルナを殺され、ジャックへの復讐に燃える。何事にも屈しない強い信念と固い意志により、多くの人達の心をつかんでいく。

ジャック・ザインバーグ (じゃっくざいんばーぐ)

ハリウッドの大物映画プロデューサーの男性。ハリウッドのみならずアメリカ政財界に多大な影響を持ち、配下には多くの殺し屋を従えている。映画に必要なものは話題性と言い切り、どんなに演技力やルックスがある俳優であっても話題性のない役者は採用しない。話題作りのために天羽ヒロトの養父であるドラル・ダーク・ガッパーナと、恋人のルナ・フェニックスを殺害した、ヒロトの宿敵。

ジェニファー・ブロック (じぇにふぁーぶろっく)

カメラマンの女性。ジャック・ザインバーグへの復讐に燃える天羽ヒロトに、自身のドキュメンタリー撮影を依頼された。キュートなルックスだがカメラマンとしての腕前は本物で、どんなに困難な状況であってもつねに撮影し続けるプロ根性の持ち主。妹のシャロン・ブロックがジャックに捕らわれいる事を理由に、ヒロトに協力する事となる。 アメリカ大統領ダグラス・マクファーソンの愛人の娘である。

ルナ・フェニックス (るなふぇにっくす)

ブライアン・フェニックスの娘で、天羽ヒロトの幼なじみ。ドレル・ダーク・ガッパーナの引き起こした事故で母親を失い、その時のショックで幼い頃の記憶をなくしていた。自身の通っている大学では男子学生を中心に高い人気があるが、特定の男性と付き合った事はない。突然目の前に現れたヒロトに戸惑いながらも心を通わせ恋人同士となる。 しかし、その直後ジャック・ザインバーグによって殺害される。

ドラル・ダーク・ガッパーナ (どらるだーくがっぱーな)

マフィアのドンで天羽ヒロトの養父。対立していた司法長官のブライアン・フェニックスを抹殺するために事故を引き起こすが、その巻き添えでブライアンの妻とヒロトの両親が死亡してしまい、その事に責任を感じてヒロトの養父となる。血のつながりはないが、ヒロトを本当の息子のように愛しており、将来はマフィアのドンの座を継いでほしいと願っていた。 ジャック・ザインバーグの策略で命を落とす。

ブライアン・フェニックス (ぶらいあんふぇにっくす)

アメリカ司法長官で、ルナ・フェニックスの父親。「アイスバード」(=氷の鳥)と揶揄されるほど犯罪者に対しては冷徹な存在だが、ルナに対しては優しい父親としての素顔を見せる。ジャック・ザインバーグの策略によってドラル・ダーク・ガッパーナを銃撃した事から警察に逮捕される。

スティング

マフィアの幹部の男性。マフィアの中ではドラル・ダーク・ガッパーナに次ぐNo.2的存在であり、ガッパーナの死後も天羽ヒロトを腹心として支える。世界各国の武器に精通しており、銃やナイフの技術も高い。ヒロトを信頼しマフィアのドンとして生きる事を願っていたが、ジャック・ザインバーグへの復讐を決意したヒロトの気持ちを考えマフィアから抜ける事を了承する。

ブルース・ウルフ (ぶるーすうるふ)

特殊部隊「バッド・ブル・ボーイズ」のリーダーを務める男性。銃火器やナイフをはじめとする戦闘のプロであり、戦闘機などの操縦もこなす一流パイロットでもある。どんなに絶望的な状況であっても決してあきらめない不屈の闘志の持ち主。天羽ヒロトとは男同士の友情で結びついており、言葉を交わさなくても互いの意思を感じ取る事ができる。

ミハエル・ベルドリンガー (みはえるべるどりんがー)

特殊部隊「バッド・ブル・ボーイズ」のメンバーである男性。電子機器のプロとしてチーム内での情報処理を担う。つねに丁寧な口調で話すチームのまとめ役であり、リーダーのブルース・ウルフや天羽ヒロトらメンバーからも信頼されている。特殊情報機器から家電製品まで幅広い知識を持ち、多少の電子機器のトラブルならスパナ一つで修理できるほどの腕前を持っている。

トム・スミッツ (とむすみっつ)

特殊部隊「バッド・ブル・ボーイズ」のメンバーである男性。柔和な笑顔を絶やさないチームのムードメーカーで、動物使いのプロ。世界中のあらゆる動物達と心を通わせる事ができる特殊技能を持っており、ガルーダ・アイランドへの潜入時には周辺海域のイルカを味方につける等、トム・スミッツの能力が大いに役立った。

リー・タイロン (りーたいろん)

特殊部隊「バッド・ブル・ボーイズ」のメンバーである男性。爆発物のプロとして、世界中のありとあらゆる銃火器・爆薬に精通する。ありあわせの部品だけで精巧な爆弾を作り出す事ができる技術の持ち主で、ガルーダアイランドでもその爆発物の知識で活躍する。

イブ・アングラード (いぶあんぐらーど)

特殊部隊「バッド・ブル・ボーイズ」のメンバーの男性。長髪の二枚目で変装のプロ。その変装技術のレベルは高く、子供から老人、さらには女性にも化ける事ができるほどで性別・年齢を超えた変装ができる特殊技能の持ち主。戦闘ではおもにナイフを利用して戦う事が多い。

シャロン・ブロック (しゃろんぶろっく)

ジェニファー・ブロックの妹。快活な姉とは異なり引っ込み思案な性格。その美しさに目をつけたジャック・ザインバーグによって連れ去られてしまう。ガルーダアイランドでジャックによって透明のケースに入れられた状態で生活しており、精神はジャックによって洗脳されている。

シュラン

ジャック・ザインバーグの配下の男性で、ガルーダアイランドの一角を守っている。有害物質によって汚染された沼に暮らしており、水中でも長時間潜る事ができるという特殊技能の持ち主。ナオミという妻がおり、ナオミとのあいだに六つ子の姉妹がいるが、その六つ子はジャックによって人質となっている事からやむなくジャックに従っていた。

ダグラス・マクファーソン (だぐらすまくふぁーそん)

アメリカの大統領を務める男性で、ジェニファー・ブロックとシャロン・ブロックの父親。田舎の出身で若い頃から乗馬や農作業で鍛えたガッツある人物で、国民からの支持率も高い。金にものを言わせて多くの側近を従えていたが、ジャック・ザインバーグの策略によって側近達を奪われたあとは、政治には人の心が最も重要だった事に気づく。 しかし、その直後ジャックによって暗殺されてしまう。

ビーティー

アメリカの副大統領を務める男性。清廉潔白な人物で、周囲が報酬につられてジャック・ザインバーグに寝返る中、最後までダグラス・マクファーソンの味方であり続けた。ダグラスの死後は暫定的ながら大統領の座に就き、天羽ヒロトと共にジャックと戦った。

集団・組織

バッド・ブル・ボーイズ (ばっどぶるぼーいず)

ブルース・ウルフが率いる特殊部隊。アメリカ軍の中でも特に際立った能力の持ち主ばかりで構成されている。一方で、組織に属する事をよしとしないアウトローの集まりという事で、軍内部でも持て余されていた。極秘に処理しなければならない超法規的な対応にあたる事が多く、その高い技術に目をつけた天羽ヒロトに請われ、彼に協力する事となった。

場所

ガルーダアイランド

太平洋に浮かぶ孤島で、ジャック・ザインバーグの私有地。周辺の海域には無線コントロールされる戦闘機が哨戒し、島内にはジャングルが広がっている。島内いたるところに監視カメラが配置されており、ジャックはガルーダアイランドの中心部にある建物から、つねに状況を監視している。

クレジット

原作

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