概要・あらすじ
真鍋風子は憧れの美術大学に合格し、資産家であるおばあちゃんの経営するアパート・コクーン荘に住むために上京して来た。同い年のいとこ・真鍋密子も同じ部屋に同居することになるが、久しぶりに再会した密子はすっかり変貌しており、風子は面食らってしまう。女優を目指している密子と同じ劇団に所属する鴨下樹一もまたコクーン荘に住んでおり、風子は次第に樹一の不思議な魅力に惹かれていく。
登場人物・キャラクター
真鍋 風子 (まなべ ふうこ)
凡女子美術大学に入学し、札幌から東京に上京して来たばかりの女子。真鍋密子とともにコクーン荘に住むこととなった。子供の頃から家庭内が冷え切っており、両親が離婚をしたばかり。そんな環境で育ったためか、しっかり者。素直で純朴な性格で、いつも明るく振る舞っている。子供の頃に仲が良く、久々に再会した密子が、あまりに派手で自由奔放なキャラクターになっていたため、面食らっている。 眼鏡をかけているので一見地味だが、負けん気が強く、やると決めたら、自分の夢に向かってまっしぐらに進む激情家。少女漫画家になることを夢見ている。
真鍋 密子 (まなべ みつこ)
真鍋風子の同い年のいとこ。コクーン荘に住んでいる。子供の頃はバレエを習っており、おませで目立ちたがり屋なタイプだったが、風子と同じく素朴な少女だった。いまはすっかり派手で破天荒なキャラクターに変貌している。劇団「パンドラの匣」に所属し、女優を目指している。美人でスタイルが良く、その立ち居振る舞いだけで周囲を圧倒するような魅力を持っている。
鴨下 樹一 (かもした じゅいち)
真鍋密子と同じ劇団「パンドラの匣」に所属する男性。コクーン荘に住んでいる。きれいな顔立ちをしており、役になり切るためなら、私生活で女性の真似事すらするほどに、役者業に情熱を注いでいる。芝居の稽古がない間は、フリーターとしてあらゆる仕事を経験しており、水道修理から電化製品の修理まで、なんでもこなす器用さを持つ。 不思議な魅力を持っており、筋の通った信念がある。
梶山 勝利 (かじやま かつとし)
真鍋風子と眼鏡屋で知り合った男性。これまではアメリカで法律の勉強をしており、日本の司法試験を受けるために帰国した。東京大学の1年生で、将来は農業関係の弁護士として、世界で活躍することを夢見ている。のちにコクーン荘の住人として、鴨下樹一と同じ部屋に住むことになる。几帳面な性格で、物は直角に置かないと落ち着かない。 真鍋密子のことが気になっている。
おばあちゃん
真鍋風子、真鍋密子の祖母。真鍋家の財産を取り仕切る女性。歯に衣着せぬ物言いで、少しきつい印象を与える。自分の持つ財産を誰に贈与するのかは、おばあちゃんの意思一つということもあり、誰も彼女に逆らえない。風子と密子を競わせ、より優秀な方に財産を与えると明言する。
真鍋 冴子 (まなべ さえこ)
真鍋密子の母親。ジャーナリストを生業としている。仕事と家事を両立させながらも、夫とは仲良しのおしどり夫婦。一人娘の密子の言動を、時に厳しく注意することもあるが、基本的には放任主義の子育てをしている。かつておばあちゃんから、姉妹たちの中から一番優秀だと、認められたため、本家の屋敷で暮らしている。
風子の父 (ふうこのちち)
真鍋風子の父親。真鍋美子のかつての夫。美子との間を反対され、啖呵を切って駆け落ち同然で結婚するが、やがて破綻してしまった。風子にとっては優しく理解のある父親だが、仕事ばかりにかまけて、妻である美子に淋しい思いをさせていた。近々他の女性と再婚を予定している。
真鍋 美子 (まなべ よしこ)
真鍋風子の母親。札幌に住んでいる。風子の父と離婚し、風子が上京してしまったので、独りぼっちで暮らしている。寂しい想いから、たびたび風子に電話をして愚痴を聞いてもらっており、すっかり気弱になっている。心労が重なって、とうとう胃潰瘍で倒れてしまう。
中川 (なかがわ)
凡女子美術大学の教授をしている女性。金縁眼鏡をかけて真っ赤な口紅を引き、指導が厳しいので生徒たちからに恐れられている。私生活では離婚を経験し、女手一つで子供を育てている。絵画の展覧会に入選した実績を持つ。仕事のかたわら絵を描いては個展を開いたりと、生徒たちに教えながら、自分自身も夢を追い求めている。
野尻 (のじり)
凡女子美術大学に通っている女子。真鍋風子の友達。漫画が好きで、かつて漫画雑誌に作品を投稿していたことがある。風子にとっては東京での数少ない女友達で、風子の気持ちをわかってくれる貴重な存在。前向きな考え方の持ち主で、風子が落ち込んだ時には明るく慰める。
阿部 (あべ)
英集社で少女漫画雑誌「別ガマ」の編集者をしている男性。真鍋風子の担当になり、風子の漫画の才能を伸ばすために尽力する。作品を読んだだけで、相手の人となりを当ててしまうような、洞察力の鋭いところがある。妻帯者だが、まだ歳は若い。
山田 リカコ (やまだ りかこ)
売れっ子女性漫画家。英集社の少女漫画雑誌に、漫画を連載している。おしゃれで落ち着いた雰囲気を漂わせている美女だが、仕事中はすっぴんで髪の毛はぼさぼさ、着るものにも無頓着。またプレッシャーに弱く、仕事に行き詰まると、トイレやキッチンを磨きまくる。さらに追い込まれると、仕事を辞めて田舎に帰ろうとする癖がある。
金剛 常雄 (こんごう つねお)
山田リカコと同じマンションの、すぐ真上の部屋に住んでいる男性。リカコの部屋の騒音にうんざりしており、嫌がらせにリカコの飼い猫を連れていってしまう。目つきが鋭くガラも悪いが、実は愛猫家で、白い猫を飼っている。
小山 (こやま)
映画会社・大東映画の専務の男性。劇団「パンドラの匣」の舞台を見て、真鍋密子に映画のオーディションに出ないかとスカウトする。伊藤が密子をホテルに連れ込もうとした時に偶然遭遇し、真鍋風子がそれを阻止した場面を、すべて見ていた。後日、伊藤の愚行を諫め、密子と風子を窮地から救う。貫禄のある人物で、社会的地位もある。
伊藤 (いとう)
芝居の世界の第一線で活躍しているプロデューサーの男性。チャラチャラした服装を着ている。女優の卵にうまい話を持ち掛けては、その見返りとして、自分とベッドをともにすることを強要している。真鍋密子にも同じ手を使おうとするが、真鍋風子によって阻止されることとなった。密子をモノにできなかった逆恨みに、「パンドラの匣」の公演を邪魔したり、密子の悪口を言いふらしたりと、嫌がらせをしてくる。
パンドラの匣 (ぱんどらのはこ)
真鍋密子、鴨下樹一が所属している劇団。バラエティ豊かな劇団員たちの多いパワフルな劇団で、業界からも注目されている。事実、密子はあまりセリフはもらえていないものの、雰囲気のある役柄を演じただけで、注目を集めている。
場所
コクーン荘 (こくーんそう)
資産家であるおばあちゃんが経営する二階建てアパート。真鍋家の母屋の隣の敷地に建っている。名前には、これから旅立つ若い人たちのための「繭(コクーン)」でありたい、という意味が込められている。住人には、真鍋風子、真鍋密子、鴨下樹一、梶山勝利らがいる。
凡女子美術大学 (ぼんじょしびじゅつだいがく)
真鍋風子や野尻が通っている美術大学。東京にあり、短期大学も並立している。教授である中川は、学生たちに厳しい指導をすることで有名。デッサンの勉強として、ヌードモデルを依頼することもあり、鴨下樹一がモデルを務めたこともある。
英集社 (えいしゅうしゃ)
真鍋風子が漫画原稿を投稿した出版社。阿部が少女漫画雑誌「別ガマ」の編集部に所属しており、投稿してきた漫画家の卵を育てる仕事も手掛けている。英集社の漫画雑誌に掲載している漫画家には、売れっ子の山田リカコがいる。のちに風子の作品が佳作に入選し、本格的に英集社からのデビューが決定する。