終電ちゃん

終電ちゃん

藤本正二の初連載作品。最終電車の乗客を送り届けることに全力を注ぐ終電ちゃんと、それぞれに大変な毎日を送る乗客たちのドラマを描く、人情味溢れる終電物語。第67回「ちばてつや賞」一般部門にて入選、2015年7月9日発売の講談社「モーニング」32号での受賞作の読み切り掲載が評判となり、同誌2015年40号から2019年41号まで連載。その後、「月刊モーニングtwo」にて2019年12月号から2020年11月号まで連載。

正式名称
終電ちゃん
ふりがな
しゅうでんちゃん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊9巻
関連商品
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概要・あらすじ

中央線の最終電車の屋根に乗る中央線の終電ちゃんは、乗り損ねた人を駅に残すことなく、目的地まで送り届けるために、日々全力を注いでいる。今日も最終電車は、泥酔状態になるまで飲んだくれた客や、深夜に及ぶ仕事で疲れ切った客でごった返していた。そんななか、酔っぱらった京子は、最終電車に乗ったものの、いつもの立川に帰ろうとしなかった。

甘ったれ、悪態をつき、しまいには終電ちゃんの助手になると言い出した京子を見かねた中央線の終電ちゃんは、京子と母親の吉江のことを語りだすのだった。こうして終電ちゃんたちは、最終電車を利用する人たちに、時には優しく、時に厳しく、元気を与える日々を過ごしていく。

登場人物・キャラクター

中央線の終電ちゃん (ちゅうおうせんのしゅうでんちゃん)

中央線、高尾行き最終電車の終電ちゃん。線路の勾配を表す鉄道標識「勾配標」を背負っている。おかっぱヘアで赤いスーツを着用している。口が悪く、乗客に対して厳しく接するが、心根は優しく乗客想い。また、最終電車を利用する乗客の名前はすべて把握しており、大人であっても苗字ではなく必ず名前で呼ぶ。

山手線の終電ちゃん (やまのてせんのしゅうでんちゃん)

山手線、品川行きの最終電車の終電ちゃん。線路が分岐する場所の切り替えに使われる分岐器の一種「普通転轍機(ダルマ)」を、いつも引きずっている。ヘアスタイルは二股に別れたツインテールで、緑色のジャケットと白いフリルのスカートを着用している。終業後は、線路沿いにある屋台の大好物のラーメンを、週に1回パジャマで食べることが唯一のリラックスタイム。 中央線の終電ちゃんとは何かとぶつかることが多く、ライバル視している。

小田急線の終電ちゃん (おだきゅうせんのしゅうでんちゃん)

小田急小田原線、経堂行き最終電車の終電ちゃん。光の色によって信号の役割を果たす「腕木式信号機用カンテラ」を持っている。ヘアスタイルはおだんご頭で、市松模様の着物にピンク色のまえかけを着用している。言葉遣いは丁寧で、のんびり屋さん。乗客に箱根名物「黒たまご」を配ることがある。

大阪環状線の終電ちゃん (おおさかかんじょうせんのしゅうでんちゃん)

大阪環状線、大阪行き最終電車の終電ちゃん。ヘアスタイルはツインテールで、白のVネックセーターに紺のミニスカートを着用。幅の広い道路向けの遮断機「屈折式踏切遮断機」を背負っている。関西弁を使い、強気な態度でいるが、実は泣き虫で小心者。中央線の終電ちゃんを「姉御」と呼び慕っている。いつも手に持っている、時刻表でできたハリセンで乗客の尻を叩いており、乗客とトラブルになることも多い。

東海道新幹線の終電ちゃん (とうかいどうしんかんせんのしゅうでんちゃん)

東海道新幹線、東京行き最終電車の終電ちゃん。ヘアスタイルは腰まで伸びたロングヘアで、大きなリボンの付いた空色のワンピースを着用している。温厚で丁寧な口調で話すお嬢様。背中には、新幹線専用の「低騒音シングルアーム型パンタグラフ」を背負っている。

佐世保線の終電ちゃん (させぼせんのしゅうでんちゃん)

佐世保線、佐世保行き最終電車の終電ちゃん。西九州線の終電ちゃんの姉。妹と同様に車両が勝手に動き出すことを防ぐ「手歯止め」を両手に着けている。ヘアスタイルはポニーテールで、青いエプロンと水玉模様のスカーフを着用している。のんびり屋で、いつも寝不足のため、うっかり居眠りしてしまうこともしばしば。

西九州線の終電ちゃん (にしきゅうしゅうせんのしゅうでんちゃん)

松浦鉄道西九州線、たびら平戸口行き最終電車の終電ちゃん。佐世保線の終電ちゃんの妹。姉と同様に、車両が勝手に動き出すことを防ぐ「手歯止め」を両手に着けている。ヘアスタイルはツインテールで、青いエプロンとストライプのスカーフに眼鏡を着用している。普段はせっかちで厳しく、しっかりした印象だが、お酒に弱い。酔うとテンションが上がり、饒舌になる。

函館本線の終電ちゃん (はこだてほんせんのしゅうでんちゃん)

函館本線、札幌発小樽行き最終電車の終電ちゃん。ヘアスタイルはふんわりしたおかっぱ頭で、深緑色のコートとスノーブーツを着用している。背中には、石炭を投入する「蒸気機関車の火室」の扉を背負っている。北海道弁を使い、手にはいつも石炭を運ぶ時に使う「十能」を持っている。「モーニング」で「終電ちゃんを描いてほしい鉄道路線」を募集し、公募によって採用されたキャラクター。

京子 (きょうこ)

立川に住む女性。中央線の最終電車を利用したが、彼と喧嘩し別れたため、荒れている。元彼と一緒に住んでいた家に帰ることもできず、中央線の終電ちゃんの助手になると息巻いて、終電ちゃんを困らせる。

吉江 (よしえ)

京子の母親。京子がヤンチャだった高校生の頃、警察に補導された娘を引き取り、帰宅するために中央線の最終電車を利用したことがある。人に迷惑をかける娘をたしなめつつも、娘を置いて逃げた娘の彼氏に憤慨。京子はそれでも自慢の娘であると感じている。

飯田 謙介 (いいだ けんすけ)

八王子に住む男性。酔いつぶれて、部下の山口進太郎に介抱されながら中央線の最終電車を利用した。何においても後ろ向きな進太郎に、八王子の良さと、中央線の終電ちゃんの存在の大きさを語り、彼女の仕事に対する姿勢に敬意を払う。

山口 進太郎 (やまぐち しんたろう)

八王子に引っ越したばかりの男性。上司の飯田謙介が酔いつぶれてしまったため、彼を介抱しつつ中央線の最終電車を初めて利用する。もともと住んでいた板橋から八王子に引っ越したことを後悔しており、何に対しても悪く考えすぎるところを謙介から諭される。中央線の終電ちゃんの素晴らしさを、身をもって知ることになる。

小池 和歌子 (こいけ わかこ)

寿退社した女性。送別会の後、泥酔状態で中央線の最終電車を利用したが、市ヶ谷駅で降りた際、座席にダイヤモンドの婚約指輪を忘れていった。山手線の最終電車に乗り換えた彼女に、中央線の終電ちゃんと山手線の終電ちゃんの連携により指輪が届けられる。

吉本 よしこ (よしもと よしこ)

運転士見習いの女性職員。中央線の駅員、車掌を経て運転士を目指している。教導運転士である安川宗介(師匠)とともに、中央線の最終電車を運転する。駅員や車掌だった頃の感覚が抜けず、何かと車外を気にしてしまい、師匠からは叱られてばかりいる。

安川 宗介 (やすかわ そうすけ)

教導運転士として吉本よしこの運転指導をしている男性職員。乗客のことを第一に考え、運転士としてダイヤを守ろうと奮闘する。同じように乗客のことを第一に考えるがゆえに、ダイヤが乱れがちになる中央線の終電ちゃんとぶつかることも多い。

可奈子 (かなこ)

クリスマスイブに、中央線の最終電車を利用した女性。中央線の終電ちゃんを慕い、クリスマスプレゼントとして電車柄の手編みのマフラーをプレゼントした。自分用にも同じ電車柄のマフラーを編んだため、おそろいのマフラーを着用している。

俊介 (しゅんすけ)

中央線の新宿駅の駅長を務める男性職員。雪のせいでダイヤに遅れが生じ、待たされた怒りをぶつけてくる乗客の対応にあたっている。まだ駅員になったばかりの頃に、中央線の終電ちゃんとともに、苦い想いを経験したことがある。

横山 雪奈 (よこやま ゆきな)

中央線の最終電車を利用した女性。山下圭一と同じ会社の総務を務めている。計算が苦手なため、思うように仕事を進められない日々を送っている。偶然最終電車に乗り合わせた山下を、始めは煙たがるが、彼の人柄の良さを見るにつけ、次第に惹かれていく。

山下 圭一 (やました けいいち)

中央線の最終電車を利用した男性。横山雪奈と同じ会社の営業一課に勤めている。人が良いため、いつも厄介ごとを押し付けられ、面倒な仕事ばかりをさせられており、最終電車を利用する頻度が高い。人のために頑張る中央線の終電ちゃんを尊敬している。

(たかし)

いつも中央線の6号車3番目の扉から乗車している男性。毎日真面目に仕事をこなし、会社と自宅を往復していた。あることがきっかけで、すべてのしがらみを放り出し、遠くへ行きたいという欲求に駆り立てられる。いつも利用する中央線の最終電車に乗らず、小田急線の最終電車に乗車。小田急線の終電ちゃんと出会う。

(まさる)

1960年頃、秋田の田舎から集団就職で上京した少年。厳しい労働条件のもと、工場で遅くまで働かされていた。貧困から、窃盗やキセルを働いたが、中央線の終電ちゃんに何度となく助けられた。その後、半世紀の時を経て、中央線の終電ちゃんと再会を果たす。

山中 (やまなか)

東海道新幹線の最終電車を利用した男性。大阪に妻と4歳の息子を残し、東京で単身赴任中。買収先の会社に1人で出向させられている。厄介者扱いされ、気苦労が絶えない毎日を送っているので、週末に大阪で家族と過ごすひとときだけが、心の支えとなっている。

寺岡 和也 (てらおか かずや)

雑誌「週刊ゲンザイ」のライターを務める男性。中央線の終電ちゃんに取材を申し込むが、断られてしまったため、山手線の終電ちゃんに密着取材を行うことになる。学生の頃、泥酔していたところを中央線の終電ちゃんに助けてもらったことがあり、いつか実現したいと考えていた企画だったため、力が入っている。

オヤジ

屋台のラーメン店の男性主人。普段は大崎や品川で最終電車に乗ることを諦めたサラリーマンをターゲットに、商売を行っている。週に1回ある定休日には、仕事を終えた山手線の終電ちゃんだけのために、品川駅近くの人通りのない場所で、ひっそり店を出している。名物は大きなうずまきの特大なるとを真ん中に乗せた「山手線ラーメン」。 これを山手線の終電ちゃんに振る舞えることに誇りを感じている。

真紀 (まき)

花火大会の帰り、中央線の最終電車を利用した浴衣の女性。就職活動がうまくいかないばかりか、携帯電話を失くしたり、何もないところで転んだりと、何かとツイていない日々を送っている。花火を見たことがない中央線の終電ちゃんのために、線香花火を用意する。

その他キーワード

終電ちゃん (しゅうでんちゃん)

最終電車を具現化した妖精のような存在。小さな少女の姿をしている。各路線ごとの最終電車の先頭車両の屋根の上で、仕事や飲み会など、さまざまな理由で最終電車を利用する乗客を確実に送り届けるために、水分を取らせたり、乗り遅れがないようにと、さまざまな配慮をしている。基本的には最終電車の利用を好ましくないことと考えており、頻繁に最終電車を利用する乗客を叱りつけることもある。 どの路線の終電ちゃんも、根本的に人の好い愛すべき存在だが、時には他人の幸せのため、同僚である駅員や他線の終電ちゃん、乗客らを相手に戦い、憎まれ役を買って出ることもある。他線の終電ちゃんとは、各々が持っているスマートフォンで連絡を取り合うことができるようになっている。

書誌情報

終電ちゃん 9巻 講談社〈モーニング KC〉

第6巻

(2019-01-23発行、 978-4065142905)

第7巻

(2019-06-21発行、 978-4065160190)

第8巻

(2020-03-23発行、 978-4065181539)

第9巻

(2020-11-20発行、 978-4065201688)

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