あらすじ
第1巻
平凡な中学3年生の馳翔は、夏休みのある日、突如現れた藤邑綾乃と名乗る謎の少女に助けを求められる。「グリーンハウス」という施設から逃げ出して来た綾乃とその仲間たちは追っ手により危機的状況にあり、「幽体離脱」の超能力を持つ綾乃だけが単身逃げ出し、翔のもとへやって来たのだという。翔は驚きつつもこれを引き受け、綾乃とその仲間である小龍と当真条威を救出し、自宅に保護する。三人は詳しい事情こそ話せないながら、翔を非常に頼りにしており、翔は三人に協力する事を決意する。次の目標として、三人の仲間である火室海人との合流を目指す事になった。意識の戻らない当真条威を信頼できる校務員の灯山に預け、翔たちは海人のいる横浜へ向かう事になる。しかし、翔らを待ち受けていたのは「グリーンハウス」からの刺客である麻耶と将であった。
第2巻
馳翔の機転で麻耶と将に勝利した翔らは、火室海人との合流に成功し、その直後に当真条威も灯山が守る翔の中学校の校務員室で無事に目を覚ました。当真条威から「グリーンハウス」の恐ろしい実態と、さらに今後起こる世界の危機について知らされた翔と灯山は怒りを燃やし、改めて彼らへの協力を決意する。同時に、翔は未来予知の力を持つ当真条威から「今日が終わるまで、階段を登る時はすべて左足から登り始めてほしい」と頼まれる。しかし、翔が不意の事故によりそれを破ってしまった直後「グリーンハウス」からの新たな刺客である飛鷹猛丸が中学校に現われ、偶然遊びに来ていた生徒達を襲い始める。さらに翔は猛丸に狙われた藤邑綾乃をかばい、大怪我を負ってしまう。小龍の治療により一命をとりとめた翔と生徒達だったが、さらにそこに麻耶と将がやって来る。絶体絶命の中、翔は猛丸と一対一で戦う事になる。
第3巻
飛鷹猛丸との戦いに勝利し、馳翔は彼の孤独に触れる。翔は猛丸に友人になろうと誘うが、猛丸はそのまま姿を消してしまう。そして夏休みが終わり、藤邑綾乃や小龍、 当真条威、火室海人の四人は翔の中学校に転校生として加わる事になった。しかし、転校して来たのは綾乃達だけではなく、校内にはほかに八人もの生徒が転校して来ていた。それを知った翔たちは、転校生の一部が「グリーンハウス」の手の者ではないかと考える。そんな中、中学校の生徒が次々失踪するという事件が発生し、小龍が誘拐されてしまう。翔たちは当真条威の能力を頼りに「グリーンハウス」へ向かう。
第4巻
馳翔のサポートにより霊を浄化する能力を得た小龍は、霊をあやつる「グリーンハウス」の刺客・一色冬子に勝利をおさめる。一方で翔は、自分の持つ能力が何なのかいまだにわからず、当真条威のアドバイスで、ひとまず自分の身体能力を磨く事になる。そんな中、「グリーンハウス」の手先であった転校生の真翠さやかこと麻耶とその仲間の霧生正人が、翔と藤邑綾乃に襲い掛かる。そこに姿を消していた飛鷹猛丸が助けに入るが、正人の攻撃により、綾乃と麻耶は致命傷を負ってしまう。怒りに燃え、自分の能力を無意識に発動した翔は、「刻界(こっかい)」と呼ばれる時間の狭間へ飛ばされてしまう。翔はそこで出会った謎の少女・生島智恵から、自身の能力が時間を自由にあやつる「次元結界生成」である事を知らされ、ついに能力を解放。正人を撃退し、綾乃と麻耶が傷を負う前まで時間を戻すのだった。一方その頃、灯山の所属する「クライマーズ」が「グリーンハウス」を襲撃していた。だが「グリーンハウス」の幹部はすでに生島条威とその配下である百々路樹潤により皆殺しにされており、「クライマーズ」の隊員たちもまた、灯山を残して全滅させられてしまう。そして生島条威は、そのまま「グリーンハウス」の実権を握るのであった。
第5巻
霧生正人との戦いから、藤邑綾乃は馳翔への思いを自覚し、味方となった麻耶とは恋のライバル関係になっていた。翔たちには平穏が訪れたかのように思われたが、その直後、すべてのサイキックを滅ぼす事を目論む「クライマーズ」の襲撃を受ける。先日「グリーンハウス」の襲撃に失敗した「クライマーズ」は、「グリーンハウス」と深いかかわりがあり、かつ重要な力を持つサイキックである翔を殺す事で、事態を収束させようとしていたのである。しかし、そこに助けに入ったのは、「クライマーズ」の一員であるはずの灯山であった。「クライマーズ」と離れ、翔を守る事を決めた灯山と翔の絆は一層深まり、翔たちは、生島条威ら「グリーンハウス」の生き残りと「クライマーズ」という、二つの強大な敵に立ち向かう事になる。そんなある日、翔と綾乃は初めてのデートに出かける。しかしデート中、街中に突如一色冬子の仲間である怨霊が現れ、街を襲う。さらにそこへ百々路樹潤も現れ、現場に駆け付けた翔の仲間たちと「グリーンハウス」のサイキックたちの戦いが始まる。冬子の説得には成功したものの、翔は潤になすすべもなく敗北。綾乃は潤に連れ去られてしまう。
第6巻
馳翔が百々路樹潤に完敗した理由は、潤が翔とまったく同じ「次元結界生成」の能力を持っている事にあった。潤にさらわれた藤邑綾乃を救うため、これまでとは違う能力の使い方を習得しようと考えた翔は、再び「刻界(こっかい)」へ行き、生島智恵から手ほどきを受ける。さらに翔は、その過程で智恵が実在の人間で、生島条威の実の娘であり、翔ともかつて面識があったらしい事を知る。智恵から父親を止めて欲しいと頼まれた翔は勝利を誓い、潤との再戦に勝利。しかし、生島条威の真の目的は「カテゴリ0」と呼ばれるほどに強力なサイキックである翔と潤を戦わせ、二人の力がぶつかり合って生じる反動エネルギーで、世界を崩壊させる事にあった。その目論見は一見成功したかに思われたが、そこに智恵が介入し、翔たちは「刻界」へと逃げ込む。さらに、智恵は二人に対し、「刻界」の中心部の「刻の塔」にある「アカシックレコード」を使えば、崩壊はなかった事にできると語る。
第7巻
「刻の塔」へ向かった馳翔、藤邑綾乃、小龍、火室海人、麻耶、将、飛鷹猛丸、一色冬子は、時に各自の心の傷をえぐるような辛い試練を受けながらも、順調に「アカシックレコード」のある最上階へ向かっていた。上層階で待ち受けていた百々路樹潤との最後の戦いにも勝利し、ついに最上階にたどり着いた翔たちだったが、そこへ当真条威が現れる。そして当真条威は「アカシックレコード」はすでに自分が破壊しており、自分は翔たちをずっと昔から裏切っていた敵であると言い出す。しかしそれは、自分を殺せば、自分と同一の存在である生島条威も死ぬため、わざと翔たちに自分を殺させるためについた噓だった。当真条威の噓を見抜いた翔だったが、「アカシックレコード」起動まであと一歩のところで今度は生島条威が現れる。さらに生島条威から、翔たちは衝撃の事実を知らされる。現在「刻の塔」にいる当真条威、生島条威以外の全員は10年前に起きたバス事故の被害者であり、翔が事故当時無意識に能力を発揮した事で命を取り留めたが、生島智恵だけは助からず亡くなったのだという。そのため生島条威は翔を逆恨みし命を狙うようになり、さらに、翔が能力を使った事で、助かった綾乃達も影響を受けてサイキックになってしまったのだという。すべてを知った翔は、自分の命と引き換えに事故当日まで時間を巻き戻し、事故そのものを消す決意をする。
登場人物・キャラクター
馳 翔 (はせ かける)
中学3年生の男子で、「カケル」と呼ばれている。前髪を目が隠れそうなほど長く伸ばした、赤紫色のショートカットヘアにしている。目立たないが、穏やかで自分よりも他人を優先する献身的な性格。夏休み、家族が旅行で不在中、突如自宅に現れた藤邑綾乃に助けを求められる。そして、共に小龍と当真条威を救出したのがきっかけで、自身が「世界を救う可能性を持つサイキック」である事を知り、綾乃達に協力する事になる。 そして、綾乃たちを狙う「グリーンハウス」との戦いの過程で、綾乃に思いを寄せるようになっていく。実は時間をあやつる「次元結界生成」の能力を持つが、あまりにも強力であるがゆえに当真条威からも能力を教えられていなかった。そのため能力を自覚するまでは、自分が時間を戻して危機を回避していた事も知らず「極端に自分は運がいいだけ」と思い込んでいた。 綾乃たちに出会うまではいじめられっ子で、友人は校務員の灯山しかいなかった。そのため灯山を深く信頼している。ゲーム作りが趣味で、いつか自分もゲームの主人公のようなヒーロー的存在になりたいが、それは難しいと感じていた。 しかし、綾乃と出会ったのを機に、綾乃たちを助けるヒーロー的存在に生まれ変わっていく。
藤邑 綾乃 (ふじむら あやの)
馳翔の仲間で、サイキックの少女。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、幼い頃に自力で能力を開花させた「野生種」。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばした赤茶色のストレートロングヘアをツーサイドアップにしている。明るく元気で心優しい性格。意図的に幽体離脱を行い、幽体で移動・会話ができる能力と、テレパシー能力、そして人の心を読み取る能力の、三つの力を持つ。 さらに幽体時は他人に憑依し、身体をコントロールする事もできるが、幽体化しているあいだは裸になってしまう。夏休みのある日、仲間の小龍、当真条威と共に「グリーンハウス」から逃げ出し、「グリーンハウス」の職員であるファーマーたちに追われていた。その際、当真条威の指示で幽体化して、近隣に住む翔に単身助けを求めた事で翔と知り合う。 本来であれば翔と同じ中学3年生だが、学校には通っていない。そのため、学校生活に強い憧れがある。家は母子家庭で、6歳の頃母親から「人の心が読める娘が恐ろしい」と判断され「グリーンハウス」に送られた。料理は苦手で、朝が弱い。
小龍 (しゃおろん)
馳翔の仲間で、サイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、幼い頃に自力で能力を開花させた「野生種」。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした黒髪のストレートショートカットヘアにしている。小柄でかわいらしい、中性的な容姿をしているが男性。クールで落ち着いた性格。気功術の達人で、直接対象に触れずに攻撃をしたり、気功を用いて怪我を治療する事ができる。 子供の頃は両親と仲よく暮らしており、自身の能力も軽い怪我を治せる程度だった。しかし能力が強まり、本格的な治療も可能になるにつれ、小龍の力がお金になると考えた両親が争うようになり、あげく2人とも喧嘩の果てに事故に遭って亡くなってしまった過去を持つ。 そのためほかの仲間達に比べ戦う事を快く思っておらず、できれば平穏に暮らしたいと考えていた。しかし、翔に自分の能力を肯定された事で考えを改め「世界を救う可能性」を持つ翔のために戦う事を決意する。その結果、翔のサポートのもと、霊などを浄化する新しい能力を得た。将来の夢は医者で、趣味は料理。
当真 条威 (とうま じょうい)
馳翔の仲間で、サイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、幼い頃に自力で能力を開花させた「野生種」。本名は「生島条威」であるが、正体を隠すため、母方の姓の「当真」を名乗っている。未来を百発百中で予測する予知能力を持つ。穏やかで冷静な頼りがいある性格で、共に「グリーンハウス」を脱走した藤邑綾乃と小龍にとってはリーダー的存在である。 翔と出会った当初は、能力の酷使により「サイキック・スリープ」と呼ばれる冬眠状態にあり、回復まで灯山のもとで保護されていた。目覚めてからは予知能力を活かし「グリーンハウス」との過酷な戦いで活躍するようになる。実は「グリーンハウス」の主任である生島条威とは同一人物で、10年前に発生したバス事故で、翔が無意識に「次元結界生成」の力を使った反動で二つに分離した存在。 そのため自分たちがサイキックになった理由も、生島条威のたくらみもすべて理解している。生島条威とは一見完全に切り離された別の存在に思えるが命は一つのままで、たとえば当真条威が死んだ場合は生島条威も同時に死んでしまい、その逆も同じである。 実は予知能力のほかに、生島智恵と同じ、触れたものすべての時間を進め、老化させる力も持っているが、その力は隠している。
火室 海人 (ひむろ かいと)
馳翔の仲間で、サイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、幼い頃に自力で能力を開花させた「野生種」。前髪を上げて額を見せ、紺色の髪全体をツンツンに立てた髪型をし、耳には大量のピアスを付けている。発火能力を持ち、能力を応用し火の玉を飛ばして戦う事もできる。一見ぶっきらぼうだが、仲間想いで親切な性格。 幼い頃から横浜中華街の近くにある治安の悪い地域「無国籍街」で仲間と共に暮らしていたが、火室海人単身では危険であると判断した当真条威の判断により、合流する。子供の頃妹の咲貴を自分の不注意と慢心により死なせてしまった過去があり、それ以来無謀な戦闘は避けるようにしている。趣味は将棋。
麻耶 (まや)
「グリーンハウス」で暮らすサイキックの少女。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、薬物により能力が開花した「栽培種」。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、腰まで伸ばした黒髪ストレートロングヘアをカチューシャでまとめている。対象に幻覚を見せる能力を持ち、たとえば対象の身体に虫が這っているように見せたり、存在しないゾンビに襲わせる事で精神的な攻撃を行う。 また、幻覚を用いて自分をまったくの別人に見せる、実質の変装もできる。変装時は「真翠さやか」と名乗っており、幻覚を用いて前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、腰まで伸ばしたロングヘアを高い位置でツインテールにした別人となる。クールで落ち着いた雰囲気だが非常に好戦的な性格で、命を賭けた危険な戦いに憧れている。 馳翔とは、翔たちが火室海人と合流するために「無国籍街」に出向いた際に出会い、その後も「グリーンハウス」の刺客として何度も翔たちと戦う事になる。そして中学3年生の2学期からは幻覚能力を用いた変装で「真翠さやか」として翔たちの学校へ潜入。翔たちの人間関係を壊すため翔に近づくが、その過程で翔に思いを寄せるようになる。 さらにその直後、共に潜入した霧生正人に裏切られ命の危機に陥った際、翔に命を救われてからは味方となる。ゴシックロリータファッションと、ロリポップキャンディーが好き。
将 (しょう)
「グリーンハウス」で暮らすサイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、薬物により能力が開花した「栽培種」。薬によって瞬間移動の能力を手に入れた。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、腰まで伸ばしたストレートロングヘアを首の付け根の位置で二つに結んでいる。「オーディエンス」や「ジエンド」といった英語交じりの口調で話す。 弱った人間をいたぶるのが好きな残忍な性格。火室海人とは旧知の仲。瞬間移動の力は将が物理的に触れているものに有効だが、重量制限があり、たとえば制限以上の重さのものが身体に触れたままでは瞬間移動を実行できない。馳翔とは、翔たちが海人と合流するために「無国籍街」に出向いた際に出会い、その後も「グリーンハウス」の刺客として何度も戦う事になる。 さらに、中学3年生の2学期からは翔たちの学校へ潜入する。しかし、何度も戦う過程で心を開き、最終的には翔たちの味方となる。趣味でバンド活動をしている。
飛鷹 猛丸 (ひだか たけまる)
「グリーンハウス」で暮らすサイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは最上位の「カテゴリ1」であり、薬物により能力が開花した「栽培種」。髪型は前髪を左寄りの位置で分けた暗い黄緑色のショートカットヘアで、右目には眼帯をしている。直接触れずに物体を動かす、念動力の能力を持つ。さらに、念動力を持つサイキックの中でも高い実力を持ち、車程度なら簡単に持ち上げる事ができ、鉛筆1本であっても高速で動かす事で十分な凶器に変えられる。 性格は残虐非道で好戦的。「グリーンハウス」のファーマーに保護された時にも能力を使って激しい暴力を振るっていた。また、能力が目覚める前まではいじめに遭っており、眼帯を外すと、右目の下にいじめによってできたやけどの痕がある。 その過去から他人に見下される事を極端に嫌い、特に「かわいそう」という言葉に強く反応する。初めて自分の存在を認めた「グリーンハウス」に強い恩を感じており、利用されている事も知らずに尽くしていた。そのため刺客として馳翔の通う中学校を訪れ、翔たちや一般生徒を襲う。しかし、翔との戦いの過程で翔と親しくなり、以後も翔とは別行動であるものの、翔の危機には現れて助けるようになる。
生島 条威 (いくしま じょうい)
「グリーンハウス」で主任を務める若い男性で、生島智恵の父親。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたストレートロングヘアに眼鏡をかけている。10年前に発生したバス事故で智恵を喪っており、同乗していた馳翔が、「次元結界生成」の能力を用いたにもかかわらず、智恵の命を救えなかった事に強い怒りを感じ、恨んでいる。 智恵のいない世界に絶望しており「世界の崩壊」を目論んでいる。そのため、まずは「グリーンハウス」の幹部を皆殺しにすることで牛耳り、次に「次元結界生成」の能力を持つ者同士である翔と百々路樹潤を戦わせる事で、反動によって生まれるエネルギーで世界を滅ぼそうとしている。10年前のバス事故の際に、翔が無意識のうちに「次元結界生成」の能力を使った影響を受けており、当真条威はその際に生まれた同一人物。 そのため当真条威は、生島条威のたくらみを理解している。当真条威とは一見完全に切り離された別の存在に思えるが命は一つのままで、たとえば当真条威が亡くなった場合は生島条威も同時に死んでしまい、その逆も同じである。
灯山 (ひやま)
馳翔の友人で、翔の通う中学校で校務員を務める若い女性。正体は警視庁の非公式組織である危機管理特務部隊「クライマーズ」の一員で、コードネームは「イザナミ」。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアに眼鏡をかけている。一人称は「オレ」で男性のような口調で話す。冷静で頼りがいのある性格。 翔からの信頼も厚く、藤邑綾乃、小龍、当真条威とは、火室海人に会いに横浜へ行く際、まだ意識の戻らない条威を校務室で一時的に保護した事で知り合った。その後、海人も遅れて紹介される形で知り合った。翔とは「クライマーズ」の任務で、翔の監視を命じられた事で知り合ったが、その過程で翔の心優しい人柄に触れ、年の離れた友人として付き合うようになる。 そのため長らく翔に正体を明かす事ができないまま、騙すような形で付き合ってきた事に悩んでいた。しかし「クライマーズ」が「グリーンハウス」の襲撃に失敗し、翔を殺す方針に変更したのを機に「クライマーズ」を離れ、翔たちの味方となる。その際「たとえ灯山の正体が何であろうと、これまで自分を騙していたとしても、自分たちが友人である事に変わりはない」という翔の言葉に救われ、翔を守る事を改めて誓う。 愛煙家で、いつも煙草を吸っている。
一色 冬子 (いっしき ふゆこ)
「グリーンハウス」で暮らすサイキックの少女。「グリーンハウス」におけるランクは「カテゴリ3」で、薬物により能力が開花した「栽培種」。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、癖のある前下がりのボブヘアにしている。つねに無表情で、感情を表に出さないクールな性格。怨霊などの思念を具現化する強力な能力を持つ。しかし能力は強力な怨霊が住まう、たとえば墓地や霊的な場所でしか真価を発揮できないために「グリーンハウス」でも浮いた存在であった。 そのため孤独な日々を送っていたが、その頃に初めてできた友人である、小柄な一つ目の鬼の霊「ギガンテス」を「ギーくん」と呼び非常に大切に想っている。中学3年生の2学期からは馳翔たちの中学校に転校生として潜入していた。 しかしその直後の翔たちとの戦いでギガンテスを喪い、翔たちに強い憎しみを抱くようになる。その後百々路樹潤と共に、秋葉原の街を襲撃するが、そこに駆けつけた飛鷹猛丸らに説得され、攻撃をやめ、翔たちの仲間となる。
霧生 正人 (きりゅう まさと)
「グリーンハウス」で暮らすサイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは「カテゴリ1」で「栽培種」と「野生種」のどちらであるかは不明。飛鷹猛丸と同様、直接触れずに物体を動かす念動力の能力を持つが、実力派猛丸より数段劣る。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、腰まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。 中学3年生の2学期になった際、麻耶と共に翔たちの学校へ潜入。「真翠さやか」と素性を偽った麻耶と共に馳翔と藤邑綾乃の仲を裂き、連携を断ったうえで殺そうとする。しかし、そこへ駆けつけた猛丸と、綾乃を傷つけられて怒りに燃えた翔により倒された。
百々路樹 潤 (とどろき じゅん)
「グリーンハウス」で暮らすサイキックの少年。「グリーンハウス」におけるランクは不明で、さらに「栽培種」でも「野生種」でもない特別な存在。正体は馳翔のクローンで、つねにかぶっている帽子を脱ぐと翔とうり二つになる。ある日突然翔のクローンのうち1体として目覚め、その中でも能力が低い事から、職員である「ファーマー」たちには「ジャンク」呼ばわりされていた。 しかし、その中で唯一自分の存在を認めた生島条威の事を、実の父親のように慕い、生島条威から送られた帽子を宝物にしている。そのため、生島条威の命令であればどんなに危険な事でも行い、のちに道具として利用されている事を知っても生島条威に尽くそうとする。オリジナルである翔を強く憎んでおり、翔さえ殺せば自分がオリジナルに成り代われると考えている。
生島 智恵 (いくしま ともえ)
「次元結界生成」の能力を持つもののみが立ち入る事のできる世界「刻界(こっかい)」に住む少女。正体は生島条威の娘で故人。前髪を眉の高さで切りそろえ、腰まで伸ばしたストレートロングヘアを、顔の両脇の髪だけ髪飾りでまとめた幼い少女の姿で現れる。サイキックでもあり、触れたものすべての時間を進め、老化させる力を持つ。男性のような口調で話し、厳しくも親身な性格。 馳翔とは、10年前に発生したバス事故の被害者として同乗した事で知り合った。しかし、翔の記憶からはそれは消えてしまっており、さらにそのまま事故で智恵は亡くなってしまった事で、現実世界での面識はないと翔は思い込んでいる。その後、翔が霧生正人との戦いで能力を目覚めさせたのをきっかけに再会する。 翔が能力を自在にコントロールできるようになるためのサポートをすると同時に、生島条威の凶行を止めてほしいと強く願っている。
集団・組織
グリーンハウス
サイキックを人為的に育成する機関。表向きは農業試験場となっている。職員達は「超能力者を栽培する」という意味から「ファーマー」と呼ばれている。毎日サイキックの素質のある身寄りのない子供が「グリーンハウス」へ送られ、非人道的な方法で能力を開花させられている。その最中で命を落とすものも多く、実験室に送られたまま戻ってこなかったもの、薬漬けにされて廃人になったものもいる。 その中で運よく生き残った者のうち、薬によって能力が開花したものは「栽培種」、生まれつき能力を持って「グリーンハウス」へやってきたものが「野生種」と呼ばれる。将は栽培種で、藤邑綾乃、小龍、当真条威、火室海人は「野生種」に該当する。ファーマーはサイキックに各人の能力を生かしたあらゆる攻撃法を教え込んでおり、その力の度合いによりサイキック達は「カテゴリ1」から「カテゴリ4」までの4つの種類に分類される。 しかし、例外的に「カテゴリ1」よりも上位の「カテゴリ0」に相当する馳翔のような存在もいる。現在の「グリーンハウス」は「フロンティア委員会」と呼ばれる八人の幹部が私的に牛耳っており、子供たちを富と権力を肥やすために道具として利用する状態にある。 その事態に怒りを感じた当真条威たちは脱走を決意し、翔と出会った。
クライマーズ
警視庁の非公式組織である危機管理特務部隊。灯山もその一員。中世より将軍を護る影の組織として存在し、現在でも国家の安寧を最優先して敵となるものを速やかに排除する活動を行っている。馳翔たちサイキックの事は国家に服従しない敵と考えており、存在してはならないものと捉えている。そのため灯山はサイキックの中でも規格外の存在である翔の監視を命じられていた。