逃げる妻と、追いかける夫
本作における恋愛を端的に表現するなら「追いかけっこ」だ。ある事件をきっかけに、妃教育に嫌気がさして逃げ出したレティシアは、それ以降、何事においてもすぐに逃げ出すクセがついてしまう。ただでさえ恋愛経験が希薄なレティシアが、クラークの積極的なアプローチに戸惑って逃げ出し、クラークが彼女を追いかけて確保するというのが定番の流れとなっている。
二人の出会いは木の上からのダイブ
レティシアは覚えていないが、7歳の時、レティシアが木の上で昼寝していた際に転落したことがきっかけでクラークと出会った。レティシアが木の上から落ちてきたことに驚いたクラークだったが、その際にレティシアが見せた無邪気な笑顔に一目惚(ぼ)れし、婚約者に指名したという経緯がある。しかし妃教育が始まってから、レティシアは婚約者としての堅苦しい立場や妃教育の厳しさから笑顔を忘れていき、クラークの顔すらまともに見ることもできないストレスを感じながら生活を送っていた。
恋の障害はないが、主人公カップル以外にも進展が
本作の恋愛模様はレティシアとクラークのみに留まらず、クラークがレティシアに嫉妬してほしくてパーティーに同伴させた男爵令嬢のブリアナと、レティシアの兄、ナディルの恋愛模様も見どころとなっている。孤児院育ちで男爵家に引き取られたものの、この数年で莫大な借金を抱えた男爵家を救うため、金持ちな男を捕まえようと奮闘するブリアナと、かつて孤児院で出会った初恋の少女を探すナディルの、大胆不敵に見えて繊細な恋の駆け引きも並行し、レティシアとクラークとはまた一味違った恋愛物語が魅力的に描かれている。
登場人物・キャラクター
レティシア
クラークの婚約者として幼い頃から、厳しい妃教育を受けてきた公爵令嬢。年齢は17歳。7歳の頃クラークの婚約者となって以来、ずっと妃教育を苦痛に感じていた。1日10時間ものあいだ城に缶詰で、勉強やダンス、茶会では貴族の嫌がらせに耐える苦行を味わっていた。宮廷では淑女を演じていたが、実際はアウトドアをこよなく愛するお転婆娘。クラークにもまったく関心がなかったため、彼に婚約破棄されたと思い込んで田舎(いなか)に逃げ出すまで、クラークの顔すらまともに見たことがなかった。王宮に連れ戻されてからは、クラークがいかに自分の人となりを愛しているかを思い知り、その器の大きさに戸惑いを見せた。次女のマリアと髪色や背格好が似ており、入れ替わろうとしたこともあり、マリアと間違われて誘拐されたこともある。しかし10年間の妃教育が幸いし、気品や知識も兼ね備えているため、窮地に陥っても自分一人でなんとか打開する力を持つ。恥ずかしさや危機感を感じた際に、その場から現実逃避をしてしまう悪癖を持つ。親密な関係の者からは「レティ」と呼ばれている。
クラーク
アスタール王国の第一王子。レティシアの婚約者で、年齢は17歳。幼少時、木登りしていたレティシアが木から落ちてきた際に一目惚れし、婚約を申し込んだ。しかし、妃教育の過酷さに疲弊したレティシアが、あまりにもクラークに興味を示さないため、嫉妬して欲しさにブリアナを伴って舞踏会に現れる。ところがレティシアは、その様子を見て婚約破棄と思い込み、田舎に逃げ出したため、慌てて連れ戻すことになってしまう。その後、レティシアへの愛を伝えるため王宮内に小川や牧場を作り、妃教育もやめさせるなど、レティシアの意向を最大限に取り入れている。また、レティシアの行動をつねに把握しており、王宮から逃げ出すたびにどこからともなく現れて捕獲する特技を持つ。
クレジット
- 原作
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沢野 いずみ
- キャラクター原案
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夢咲 ミル
書誌情報
妃教育から逃げたい私 6巻 主婦と生活社〈PASH!コミックス〉
第1巻
(2020-11-27発行、 978-4391155327)
第4巻
(2023-05-02発行、 978-4391159554)
第5巻
(2023-11-02発行、 978-4391161083)
第6巻
(2024-12-06発行、 978-4391163995)