あらすじ
第1巻
東京で就職活動をしていた木春由乃は、いくつもの会社の面接を受けてもまったく内定が決まらず、仕送りや貯金も尽きかけていた。そんな由乃に、以前登録していた派遣会社から、「田舎町の町おこしのために国王をやってほしい」という謎の依頼が舞い込む。就職に悩む由乃は、よくわからないままその依頼を受け、依頼どおり田舎町の間野山市に向かった。由乃は間野山市で門田丑松と出会い、彼からミニ独立国「チュパカブラ王国」の国王を引き継ぐ事になった。かつてのバブル期、間野山市はチュパカブラ王国の人気から観光でにぎわっていたものの、ブームが去って現在はすっかり寂れてしまっていた。表向きは「国王」と告げられた由乃の正式な仕事は、間野山市の観光大使であった。さらに、その仕事の契約期間は1日だけではなく、1年である事が判明。当初は混乱していた由乃だったが、観光協会で出会った四ノ宮しおりをはじめとする仲間達と協力しながら、町おこしのために奮闘する事となる。
第2巻
木春由乃は慣れない仕事に戸惑いながらも、間野山市の観光大使として、チュパカブラ王国の国王としての仕事を続けていた。そんな由乃は間野山市を少しでも盛り上げるために、「チュパカブラ饅頭」の販売など、さまざまな活動に取り組んでいた。結果は決して成功とは言えず、チュパカブラ饅頭も売れ残ってしまうが、由乃は観光協会で出会った四人の仲間と共に、1年の任期を終えるまで国王を続けると決意。その後、由乃は地元テレビ局のインタビューを受けるが、自分が間野山市についてまだよく知らない事を自覚する。由乃は住民の話を聞きながら、住民全員が必ずしも町の変革を望んでいない事を悟る。それでも由乃は、伝統工芸の彫刻を活かした町おこしや「ヌルキャラ選手権」への出場、間野山市がロケ地となった映画撮影の手伝いなど、間野山市を盛り上げるための活動を仲間と共に続けるのだった。
第3巻
町おこしに挑む木春由乃達の次の取り組みは、「C級グルメプレミアム発表会」による、間野山市のご当地グルメの開発に決定した。しかし、試食会を繰り返すものの、由乃達は発表会に出すメニューを決められない。そんな中、四ノ宮しおりは家族と向かったレストランで熊野克己と知り合い、間野山市の食材について学び、これらをヒントに発表会のメニューを模索する。だが発表会の日程が、商店会の納涼会の日程と被っていたため、織部千登勢が不満を漏らし、門田丑松は千登勢とケンカをしてしまう。由乃は仕方なく発表会の取りやめを提案しようとするが、見かねたしおりは国王代理を名乗り出て、今回の件は自分が取り仕切ると宣言。その後、しおり達は「第一回間野山大そうめん博」を企画し、千登勢の了解も得る。そして迎えたそうめん博の当日、会場は大盛況となり、しおりが発案したメニューの出品や、体感ゲーム機「流されそうめん5DX」の実演も行われた。イベント終了後、由乃はしおりの仕事ぶりを高く評価し、今まで役職を持たなかった彼女を「とりもち大臣」に任命するのだった。
第4巻
木春由乃達が間野山市の町おこしを始めてから、約半年が経っていた。そんな中、これまでの活動の集大成とも呼べる、「チュパカブラ王国建国20周年祭」の時期が迫っていた。準備を進める中で由乃達は、地元テレビ局から「町おこしガールズ」として取材を受ける。由乃はディレクターの雨宮から「ふつう」と言われて一時は落ち込むものの、テレビ局の企画と予算で人気ロックバンド「Ptolemaios」が建国祭のステージイベントに参加する事が判明。Ptolemaiosの参加で来場者の増加に期待が高まる中、由乃達は建国祭に向けた予算捻出と観光客増加のために、商店会や青年会など間野山市の人々に協力を呼びかける。商店会、青年会の協力を得ながら、由乃達は建国祭の成功を強く祈るのだった。そして迎えた建国祭当日、間野山市には観光客があふれ、商店会の屋台もにぎわっていた。イベントは順調と思われたが、Ptolemaiosのライブ開始が、機材の故障で遅れるトラブルが発生する。
第5巻
間野山市伝統の「みずち祭り」を復活させるため、木春由乃達は間野山市の住民に協力を求めつつ、祭事に必要な三つの祭具を探し始める。祭りの復活準備を進める一方で、由乃のチュパカブラ王国国王としての任期も終わりが近づいていた。その後、「みずち祭り実行委員会」が仮結成され、由乃達と観光協会の面々はみずち祭り復活に向けて祭具探しを続けていた。そんな中、緑川真希は祭具探しの途中で父親と再会し、久しぶりに実家に帰省する事となる。真希の実家には後輩の澤野萌といっしょに応募していた、オーディションの通知が届いていたが、真希はオーディションをあきらめてみずち祭りの準備を優先しようとしていた。緑川浩介からオーディションの話を聞いた由乃と香月早苗は、女優の夢をあきらめようとしている真希を説得し、東京へ送り出すのだった。
登場人物・キャラクター
木春 由乃 (こはる よしの)
就職活動に失敗し、間野山市観光協会より依頼を受けた女子大学生。契約の詳細を確認しないまま間野山市に向かい、なりゆきでチュパカブラ王国の国王(観光大使)に就任した。国王としての任期は1年で、戸惑いながらも観光協会で出会った仲間達や間野山市民の助けを受けながら、寂れてしまった間野山市を盛り上げるために奮闘している。 元は海辺の町、安住ヶ浦出身だが田舎嫌いで、都会の生活にあこがれを抱きつつ、「特別ななにかになりたい」と願いながら上京していた。モデルのアルバイトをしていた事があるなど整った容姿だが、性格は後先を考えないタイプで、時には暴走してしまう事もある。また、八方美人ではあるが根はまじめで、ふつうの女子である事が少々コンプレックスになっている。 無自覚だが常識離れした独特の感性を持っているため、四ノ宮しおりからは「ふつうじゃない感性」と言われている。一方で感受性が強く決断力があるなど、人を惹きつける魅力の持ち主。
四ノ宮 しおり (しのみや しおり)
間野山市観光協会の職員をしている女性。愛称は「しーちゃん」。生まれながらの間野山市民で、地元愛が強い。安定志向でおっとりした明るく前向きな性格で、面倒見もよく家庭的。チュパカブラ王国の国王になった木春由乃の補佐役となり、由乃の国王としての仕事をサポートしている。織部凜々子とは、小学校からの幼なじみで、凜々子にとっての唯一の友人でもある。 実家は間野山市で農業を営んでおり、祖父母と両親、姉の四ノ宮さゆりとの六人家族。ふだんは裏方として由乃達を支えているが、商店会と観光協会のあいだでトラブルが起きた際は、自ら国王代理となってイベントを成功させた。当初は役職を持っていなかったが、由乃から、あいだを取り持ってトラブルを解決する「とりもち大臣」という役職に任命された。
緑川 真希 (みどりかわ まき)
間野山市出身の女性。クールで姉御肌な性格。小劇団に所属し、女優を志しながら東京で活動していたが、女優の夢に挫折し、故郷の間野山市に戻っていた際に木春由乃と出会う。帰郷後は実家には戻らないまま、間野山市内のログハウスで暮らしている。大学を中退して以降は両親とは疎遠で、父親とは不仲だが、弟の緑川浩介とは気軽に話せる仲。 過去にドラマ「おでん探偵気休め事件簿」に脇役として出演経験があるため、地元では「おでん探偵」としてそこそこ有名。このため周囲から「おでん」と呼ばれる事もあるが、緑川真希本人は快く思っていない。劇団時代からさまざまなアルバイトを経験しており、それらを活かしてテント設営から裁縫まで、さまざまな業務をこなしている。 力仕事も得意な事から、由乃からチュパカブラ王国の「ガテン大臣」に任命され、共に町おこしに取り組むようになる。
織部 凛々子 (おりべ りりこ)
間野山市に住む女性。商店会会長の織部千登勢の孫。愛称は「凛々ちゃん」。UMAなどオカルト情報に詳しい。幼少期に両親が離婚しており、父親が海外赴任したため、祖母の千登勢のもとで育った。人とかかわるのが苦手な性格で、学校などでも孤立しがちだったが、小学生時代に四ノ宮しおりと友人となり、その後もしおりが唯一の友人となっていた。 高校卒業後は自室でネットサーフィンをするなど引きこもりがちだったが、しおりを通して木春由乃達と知り合い、国王業務を手伝ったのをきっかけにチュパカブラ王国の「UMA大臣」に任命される。以降、由乃達の町おこし活動に協力しているが、観光協会と対立しがちな千登勢からは釘をさされている。無口かつ無表情で、いつもなにを考えているのかわからないところがあり、時おり突拍子もない言動や行動に走る事がある。
香月 早苗 (こうづき さなえ)
東京出身のWEBデザイナーの女性。大学卒業後にIT系企業に就職したが、過労をきっかけに会社を辞め、間野山市にIターンで移住した。以降、間野山市の古民家を借りてWEBデザインの仕事をしていたが、田舎暮らしになかなか慣れないと同時に、仕事もうまくくいかずにいた。孤独で荒れた生活を送りながら東京に戻るか悩んでいた頃に木春由乃達と出会い、ホームページ作成を担当したのをきっかけに、町おこし活動に加わるようになる。 のちに由乃からチュパカブラ王国の「IT大臣」に任命され、主に観光宣伝を担当するようになる。ロハスにあこがれを抱く一方で、畑仕事の際に厳重な防護服を用意するほどに虫が苦手。
門田 丑松 (かどた うしまつ)
間野山市観光協会の会長をしている中年男性。かつて、チュパカブラ王国の初代国王を務めていた。手違いで間野山市に派遣された木春由乃を渋々受け入れ、彼女に国王の座を譲り、町おこし活動を始める。頑固な性格で、後先考えずに行動する事があり、トラブルの原因を作ったり、由乃に面倒事を持ち込む事もある。一方で間野山市への地元愛は強く、町おこし活動には真面目に取り組んでいる。 若い頃はドクや織部千登勢とバンド活動を行っていたが、わだかまりがある千登勢とは犬猿の仲で、対立する事が多い。
織部 千登勢 (おりべ ちとせ)
間野山市商店会の会長を務めている、織部凛々子の祖母。間野山市で「おりべ菓子処」を営んでいる。門田丑松とは旧友だが現在は犬猿の仲で、よく口ゲンカをしており、丑松が会長を務める観光協会とも対立しがち。丑松同様、間野山市に対する地元愛は強いものの、変革よりも伝統を重視しているため、丑松達の町おこし活動も快く思っていない。 また、息子(凛々子の父)がよその女性と結婚して離婚した過去からよそ者を嫌い、厳しい態度を取る事がある。このため、よそ者でありながら観光協会と共に町おこしをしている木春由乃達にも、気難しく接する事が多い。ふだんは気が強くて頑固だが、孫娘の凛々子に対しては過保護で甘いところがある。
ドク
間野山市の住人で、毒島製作所を営む、自称発明家の中年男性。門田丑松、織部凛々子とは旧友関係で、若い頃にバンドを組んでいた。パワードスーツや変形自動販売機など、変わった機械を多く発明している。「間野山大そうめん博」の時は、木春由乃に依頼されて「流されそうめん5DX」を開発した。
アンジェリカ
間野山市の住人で、喫茶店「Angelica」を営む女性。占いが趣味で、喫茶店のメニューには軽食のほかに「占いセット」を入れ、客の占いをする事がある。木春由乃達の相談相手になり、時おり町おこしに協力している。少々浮世離れした性格で、娘の鈴木エリカが家出した際も、香月早苗に指摘されるまで気づいていなかった。
鈴木 エリカ
間野山市の住人で、アンジェリカの娘。中学2年生で、無愛想でぶっきらぼうな性格の持ち主。ふだんは母親の喫茶店で接客を手伝っているが、田舎の間野山市を嫌っており、母親とケンカして家出し、東京に行こうとした事もある。緑川浩介に片思いしている。
サンダルさん
間野山市を出入りしている謎の外国人男性。ウクレレなどの楽器をつねに持ち歩いており、木春由乃達からは変人のように思われている。本名は「アレクサンドル・シーナ・デイビス・チェリビダッケ」で、正体は世界のあちこちを歩き回るマルチアーティスト。
山田 (やまだ)
間野山市観光協会の職員をしている男性。門田丑松の行動には手を焼いており、美濃と共に苦労している。
美濃 (みの)
間野山市観光協会の職員をしている男性。メガネをかけている。門田丑松の行動には手を焼いており、山田と共に苦労している。
信楽 (しがらき)
間野山市観光協会の事務局長をしている男性。いつも不機嫌そうなしかめっ面をした、寡黙な老人。趣味は囲碁。
四ノ宮 さゆり (しのみや さゆり)
間野山市の住人で、四ノ宮しおりの姉。隣町にある総合病院小児科の看護師として働いている。一見しっかり者のように見えるが、少々天然でおっちょこちょいな性格。
熊野 克己 (くまの かつみ)
間野山市でフレンチレストラン「ビストロ・ルルス」を営む、シェフの青年。四ノ宮さゆりとは高校生時代の同級生で、彼女に好意を抱いている。高校生時代、家庭科で作った料理をさゆりに褒められたのをきっかけにフレンチシェフを目指すようになり、高校卒業後にフランスに留学。帰国後に父親の蕎麦屋を改装してレストランを開業した。
一志 (かずし)
北海道出身の男性彫刻師。間野山市の伝統工芸彫刻に携わっている。彫刻師としての仕事に強い誇りを持つ、まじめで職人気質タイプ。
辰男 (たつお)
大阪出身の男性。間野山市の伝統工芸彫刻に携わっている。一志と同じく彫刻師だが、職人は稼げなければ意味がないという考えから、木春由乃達には積極的に協力している。「みずち祭り」復活の際は、神輿の飾り彫りの制作を担当する。
緑川 浩介 (みどりかわ こうすけ)
緑川真希の弟の高校3年生。温厚な性格で、間野山市の「ドンドコ倶楽部」に所属し、地元の子供達に太鼓を教えている。木春由乃達の町おこし活動に期待し、応援・協力している。鈴木エリカに好意を抱かれている。実家とは疎遠気味の真希とはふつうに話せる仲で、姉に実家に帰るよう勧めている。
金田一 (きんだいち)
間野山市の交番に勤務する警官の男性。野毛と高見沢とは、幼ななじみ。独身なため、間野山市青年会のお見合いツアー「どんと恋間野山」に、積極的に参加している。
高見沢 (たかみざわ)
間野山市でバスの運転手をしている男性。野毛と金田一とは、幼ななじみ。また、アンジェリカの喫茶店の常連客でもある。昔はチュパカブラ王国の王子役をしていたため、幼少期に間野山市を訪れていた木春由乃とも面識がある。
野毛 (のげ)
間野山市商店会に所属する男性。本屋の店長をしている。高見沢と金田一とは、幼なじみ。幼少期に通っていた本屋の店長から店を譲り受けた。当初は間野山市の変革を望まず、木春由乃達の町おこしにも協力的ではなかったが、彼女達の活動を見るうちに感化されていく。のちに、廃校を活用したブックカフェを提案する。
澤野 萌 (さわの もえ)
緑川真希の後輩の女性。売り出し中の女優で、ホラー映画「ふたたびの森」の主演を務めている。明るい性格の努力家で、その挑戦する姿勢が人気につながり、売れっ子となった。
場所
間野山市 (まのやまし)
就職活動に失敗した木春由乃が、観光協会からの依頼を受けるために向かった田舎町。かつてはチュパカブラ王国を中心とする観光業で盛り上がっていたが、現在は寂れて過疎化や少子高齢化が進み、商店街もシャッター通りになっている。観光協会は町おこしに力を入れているものの、住民の大半は現状維持を希望しており、町おこしにはあまり乗り気ではない。 実在の都市、富山県南砺市(なんとし)がモデル。
チュパカブラ王国 (ちゅぱかぶらおうこく)
間野山市に、バブル期から存在するミニ独立国。現在の国王は木春由乃。8月27日が建国日で、桜井池の前に小さな王宮がある。元は「カブラ王国」という名称で、マスコットキャラはカブをモチーフにした「カブラ君」だったが、門田丑松によって「チュパカブラ王国」に改名された。
イベント・出来事
みずち祭り (みずちまつり)
かつて間野山市で行われていた祭り。筏に神輿を乗せて桜池の水上を渡る祭りだったが、50年前に起こった、神輿が沈む騒動をきっかけに終了となり、現在は行われていない。祭りに必要な祭具(「剣鉾」「吊太鼓」「黄金の龍」)はすべて行方不明となっていたが、のちに民家の蔵と学校の物置から、剣鉾と吊太鼓が発見される。未発見のままだった黄金の龍はシャイニングドラゴンで代用され、木春由乃を中心に、観光協会や住民の協力を得て復活となる。
その他キーワード
シャイニングドラゴン
高見沢、金田一、野毛が小学生時代に、間野山市の裏山で発見した黄金の龍。行方不明になっていたみずち祭りの祭具と思われたが、正体は龍の形をしたおもちゃ。のちに、木春由乃の提案で、復活したみずち祭りの神輿の飾りに活用された。
クレジット
- 原作
-
Alexandre S.D. Celibidache