あらすじ
ダイエットのため、白川桃乃は経理課の町田杏花といっしょに、終業後に一駅分歩いて帰ることが日課になっていた。そんなある日、二人は男子学生の集団が、「デブでブスな女の子に告白された」と大笑いしながら騒いでいる場面に遭遇する。学生時代に男子から「ブス」「デブ」とからかわれていた町田は、他人事ながらにトラウマを刺激されて元気をなくしてしまうが、そこで美人の白川も同じような目に遭ったことがあると聞き、驚いてしまう。周囲からやっかまれたためのこととはいえ、つらい経験だっただろうと町田は同情するが、白川はケロッとした顔で、そんな失礼なことを言う人間の美意識など信用できないから、まったく気にしないと言ってのける。(エピソード「町田さんの学生時代」)
イケメンの営業部社員が、取引先でもらってきたと白川にマカロンをプレゼントした。白川は笑顔で、「みんなで頂く」と礼を言い、さっそく周りにいた女子社員たちに、いっしょに食べようと声をかける。だが、白川を妬む女子社員たちは、あくまで白川がもらったものだからとその申し出を拒否。そこに通りがかった梅本カンナは、喜んで自分の分のマカロンを確保したうえで、ダイエット中だからといって食べたいものを無理して我慢する必要はないと、女子社員たちがマカロンに手を伸ばせるよう、別の理由をつけて言い訳する余地を作ってやるのだった。こうして、白川と女子社員たちは微妙に気まずい思いを残しながらも、明確に対立することなくマカロンを分け合うことに成功。その後、梅本は白川と二人になったところで、件(くだん)の女子社員たちもただ意地を張っているだけで、そこまで悪い子たちではないから理解してあげて欲しいと、白川に告げる。実は梅本が甘い物があまり好きではないことを知っている白川は、そんな彼女の不器用な優しさに心温まるものを覚える。(エピソード「女の園の白川さん」)
先輩のミスをかぶって代わりに上司に怒られたり、奮発して買った美顔スチーマーが不良品だったり、油性スタンプ台が手から滑り落ちてブラウスにべったりついてしまったりと災難が続いていた白川は、自分の心が疲れていることを自覚していた。こんな日は、自炊せずにテイクアウトで美味(おい)しいものを食べて、ゆっくりお風呂につかってから「アレ」をやろうと考えながら、白川は家路を急ぐ。「アレ」とは、自分で作った「安心カード」のことで、前向きな言葉が記された自作のカードをタロットカードのように引きながら、前向きな気持ちをしみじみと思い出して励まされるという、自作自演の楽しみだった。ちなみに安心カード作りにはポイントがあり、一つ目は心身が元気な時に、その時点では「当たり前じゃん!」と思える程度の小さな前向きなメッセージをあらかじめカードを書いておくこと。二つ目はお気に入りのカードを使うこと。三つ目は自分の好きな香りをカードにくぐらせて缶にしまっておくこと。この安心カードで元気を取り戻した白川は、リフレッシュした気持ちで、翌日も元気に出社するのだった。(エピソード「秘密の安心カードと白川さん」)
メディア化
テレビドラマ
2022年4月から、本作『メンタル強め美女白川さん』のテレビドラマ版『メンタル強め美女白川さん』が、テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知ほかで放送された。また、「Paravi」で2022年3月から先行配信されている。監督は池田千尋、菊地健雄、高橋名月、坂梨有剋、脚本は狗飼恭子、下田悠子が務めている。キャストは、白川桃乃を井桁弘恵、町田杏花を野呂佳代、梅本カンナを秋元才加、朝比奈林檎を東野絢香、倉橋和樹を佐藤龍我が演じている。
マンガ動画
2022年1月から、本作『メンタル強め美女白川さん』のマンガ動画版『メンタル強め美女白川さん』が、YoouTubeのコミックエッセイ劇場公式チャンネルで公開された。キャストは、白川桃乃を早見沙織、町田杏花を中上育美、梅本カンナを塚田悠衣、朝比奈林檎を朝比奈丸佳、倉橋和樹を野田てつろうが演じている。
登場人物・キャラクター
白川 桃乃 (しらかわ ももの)
営業事務として働く女性。年齢は25歳。目のぱっちりした美女で、コスメや雑貨、かわいいものが大好き。「私は私、かわいく強く」「楽しく笑顔で過ごすこと」をモットーとしている。さらに裏表のない朗らかな性格で、甘えたようなかわいらしいしゃべり方も相まって、社内の男性陣からの受けがいい。一方で女性陣からは「ぶりっ子」「ひいきされている」と煙たがられており、妬み嫉みの陰口が絶えない状態にある。白川桃乃自身もそのことは理解しているが、これが自分の素であると特に偽ろうともせず、自分のためにならないと判断したことは華麗にスルーするメンタルの強さを持つ。また周囲で落ち込んでいる人がいれば、それが現在自分と気まずくなっている相手であったとしても、前向きになれるようポジティブな考え方を伝えることも厭(いと)わない。そんな姿は、仲のいい先輩の梅本カンナから「ド天然」と評されている。確かに天然気味ではあるものの、白川自身も過去に理不尽にいじめられたりと辛い目に遭っており、極端なまでのポジティブ思考は、無用なストレスやマウントをかわして楽しく人生を送るために生み出した処世術でもある。なお、会社の女性陣からは、かわいさを利用して男に取り入る世渡り上手と見られているが、実際はズルをすることが嫌いで、仕事に対しては非常に誠実でまじめに取り組んでおり、営業部課長の東郷賢吾をはじめ、上司からは純粋にその実力を認められている。また、その前向きでポジティブな考え方から、後輩の教育も実はうまい。パーソナルカラーは1stが「夏」、2ndが「春」だが、イエローベース、ブルーベースにこだわらず、いろいろなコスメを楽しんでいる。
町田 杏花 (まちだ きょうか)
白川桃乃と同じ会社の経理課で働く女性。年齢は33歳。梅本カンナとは同期で仲がいい。眼鏡をかけてぽっちゃりした体型をしており、自分の地味さにコンプレックスを抱いている。一方で町田杏花自身はあまり気にしていないが、艶々の美しい黒髪と、象牙色のモチ肌の持ち主。少々自己評価が低く気が弱いものの、穏やかでおっとりした性格で、後輩の倉橋和樹には、彼の入社時から「モチ肌眼鏡の優しい先輩」と認識され慕われており、心の中で好意を込めて「白玉モチ子さん」と呼ばれていた。体型のことを気にして、日ごろからダイエットに励んでおり、会社帰りにも一駅分歩くようにしている。白川と面識を持ってからは二人でいっしょに歩くようになり、より親しくなっていく。実は20年来のジャ○ーズファンで、オタク活動に造詣が深い。パーソナルカラーは「秋」で、ふだんは少し整える程度のほぼすっぴんメイク。
梅本 カンナ
白川桃乃と同じ会社で営業事務として働く女性。年齢は33歳。白川の先輩にあたる。また、町田杏花とは同期で仲がよく、「梅ちん」と呼ばれている。キツめな顔立ちで言葉遣いも少々荒っぽいが、サバサバした性格の姉御肌。一方で不器用なところがあり、自分でも意地っ張りでかわいげがないことを自覚している。そのため、ぶりっ子の白川のことも、もともとは嫌っていた。これは、梅本カンナが思いを寄せていた同期の松井友之が白川を気に入り、彼女に言い寄っていたことも一つの理由となっている。自分が白川を嫌う理由を、かわい子ぶってすべてを簡単に手に入れているからだと決めつけていたが、実際は単なる嫉妬心であることを把握しており、自分が落ち込んでいたところを、気づかないふりをしてさり気なく力づけてもらったことをきっかけに、白川へのわだかまりを解いて親しく付き合うようになる。過去の自分がそうだったこともあって、ほかの女性が白川を誤解して嫌うことも理解はしており、これに関しては白川をフォローしつつも、無理強いしてまで周囲の意識を変えさせようとは考えていない。松井に失恋して以来ジャ○ーズにハマり、オタク活動に邁進していく。ちなみに自担(推し)のカラーは赤。なお、梅本自身は自分が松井に思いを寄せていたことを黒歴史と考えており、彼が新しい彼女に振られたことを知った際には、失恋のやけ食いに付き合いはしたものの、自らアクションを起こすことはなかった。パーソナルカラーは「冬」で、都会的でシャープなモノトーンのファッションを得意としている。ホットレモンティーが大好物。ゴシップ通で、社内の不倫情報は一通り把握している。
朝比奈 林檎
白川桃乃と同じ会社で営業事務として働く女性。年齢は22歳。今年入社したばかりで、白川の後輩にあたる。高身長に細身な体型で、女性らしくない自分の体型にコンプレックスを抱いているだけでなく、赤ら顔でそばかすが多いことも気にしており、きれいになりたいという思いが強い。特に「林檎」という名前と赤ら顔については、幼い頃から何かとからかわれることが多く嫌な思いをしてきた。そのため、人に何か言われるとついコンプレックスを自虐して、笑いに逃げてしまう癖がある。だが、白川にせっかくのギフトなのだからと、顔の赤みをうまく利用するメイクを教えてもらって以来、コンプレックスを少しずつ解消していくと同時に、白川のことを慕うようになる。仕事に関してはまだまだ自信を持てず、イレギュラーな対応を苦手としているが、仕事ぶりは計画的かつ丁寧で、営業部課長の東郷賢吾に高く評価されると同時に将来に期待もされている。パーソナルカラーは「春」で、イエローベースカラーの中でも明るく澄んだビビッドカラーが好き。
谷口 さくら
白川桃乃と同じ会社で営業事務として働く女性。年齢は25歳。白川とは同期。陰口やマウント、仲間外れや馴れ合いといった面倒な人間関係に順応できない性質で、入社当初、同じように孤立していた白川に親近感を覚えて接触し、親しくなった。白川を「孤高のフランス人形」と評し、そんな彼女のそばにいてわかり合える、唯一の特別な存在であることに自らの存在意義を見出していた。だが、白川と谷口さくらでは釣り合わないという周囲のやっかみの声に傷つき、さらに白川が町田杏花らと親しくなっていったことで、自らにとって理想の存在であったはずの「孤高のフランス人形」に勝手に幻滅し、白川を無視するようになった。その後も、白川から距離を置きながらも彼女から離れられない呪縛にとらわれ、白川の荷物をあさって香水のアトマイザーを盗んだり、白川宛の重要な書類を隠したりと、衝動的に白川への嫌がらせを繰り返す。のちに、もともと志望していた総務部に異動になるが、その際、かつて自分が白川を助けた小さな出来事を彼女がまだ覚えており、同時に今でも感謝していることを知って心の闇を少し振り払い、改めて白川と向き合うようになる。
羽柴 美雪
本社から、白川桃乃と同じ支社に異動してきた女性。年齢は41歳。ゴージャスな美人だが口調は丁寧で、異動してくるなり男性陣はもちろん、多くの女性陣の心もつかんだ。自己研鑽に余念がなく、終業後はジムや投資の勉強会、英会話レッスンとスケジュールがびっしり決まっている。実は学生時代、勉強しか取り柄がなく、ダサくて地味な容姿をしており、周囲からはさまざまな陰口を叩(たた)かれていた過去がある。自分をバカにした相手を見返したいという一念だけを原動力に自己研鑽に励み、現在の美貌と才能を身につけた。それは今もなお変わっておらず、さらなる高みを目指している。そのため、口先で不平不満を述べるばかりで努力しようとしない相手には非常に厳しく、丁寧な言葉でキツい皮肉を述べて、全力でマウントを取りにかかる。そのため本社では、「上から猛毒ヘビ女」の異名で知られていた。実は白川のいる支社に異動してきたのも、これが本社で問題視され、左遷されたというのが本当のところであり、本社に研修会に行った白川と梅本カンナがその情報を耳にしたのと時を同じくして、支社でもその本性を現し始めた。自分磨きに努力している人に対してはある程度好意的だが、それもあくまで自分と同レベルに努力することが前提であるため、基本的に羽柴美雪が敬意を払う人間はほとんどいない。そのため羽柴にあこがれ、彼女に言われるがままに努力を重ねていた朝比奈林檎が最終的に挫折した際にも、キレイになる資格がないとこき下ろした。だが、それを聞いた白川に、女の子はみんなキレイになる資格を持っているが、ただ方法や速度が違うだけであること、さらに美しさや才能はその人の財産ではあるが、人をこき下ろすために使う道具ではないことを説かれ、自らの言動を顧みることとなった。以来、白川や朝比奈、町田杏花など、少しずつではあるが自分なりに努力を重ねている人たちに対しては、わずかに軟化した態度を見せるようになる。
倉橋 和樹
白川桃乃と同じ会社の営業部で働く男性。年齢は22歳。今年入社したばかりで、白川の後輩にあたる。あまりぱっとしない風貌だが、明るく天然な癒し系で、甘いものが大好き。偶然に白川といっしょに食事をすることになった際、コンビニで買ってきたドラ焼きを白川にプレゼントしたことから、彼女には「ドラ橋くん」と呼ばれている。その天然ぶりから思いがけず物事の芯を突いた言葉を口にすることもあり、また純朴で変に気取ったところがないことから、白川や町田杏花たちにかわいがられていると同時に、倉橋和樹自身も彼女たちのことを慕っている。ちなみに甘い物に対する探究心はかなりのもので、その一点においては他人に非常に厳しい羽柴美雪にも認められるほど。
東郷 賢吾
白川桃乃と同じ会社の営業部で課長を務める男性。年齢は40歳。ダンディで男前だが、時に冗談を口にする砕けたところもある、部下のことも、先入観なく分け隔てせずに自らの目で見て評価していることから信頼も厚く、多くの部下にとってのあこがれの存在。一方で仕事には厳しく、お世辞で褒めるようなことはない。コーヒーが大好きで、いかなる時でもコーヒーを携えており、社内では東郷賢吾からコーヒーをもらった者には幸せが訪れるという伝説がある。ちなみに銘柄はブルーマウンテンがお気に入り。なお、女性のファッションなどには疎い。
松井 友之
白川桃乃と同じ会社の営業部で働く男性。年齢は33歳。町田杏花や梅本カンナとは同期にあたり、特に梅本とはざっくばらんな関係で仲がいい。若い女性が大好きなお調子者で、白川にアプローチをかけていたが、彼女に相手されないとなるや別の若い子に手を出して社内恋愛を開始。だが、結局その恋愛もうまくいかなかった。ちなみに、自分からは積極的にアプローチするものの、松井友之自身が女性に思いを寄せられていても気づかなかったりと、割と鈍感なところがある。
花岡 光代
白川桃乃と同じ会社の経理課で働く女性。年齢は29歳。流行(はや)りものに敏感なキラキラ系女子で、「花ちゃん」の名前でSNSを開設している。花岡光代にとって日々の生活はSNSのためにあるといっても過言ではなく、SNSで「いいね」をもらってインフルエンサーを気取ることで、強すぎる承認欲求を満たしている。一方で、リアルでは花ちゃんの幻想を壊さないように、流行りもの情報は惜しみなくシェアし、自らのファッションセンスを磨き、何より人の悪口は絶対に言わないことを心がけている。「上から猛毒ヘビ女」の異名を取る羽柴美雪を相手にしてもそれは変わらず、彼女の毒舌にさらされながらも笑顔で下手に出て情報を得るなど、ある意味で非常に前向き。その人当たりのよさから、会社の後輩にも表面上は慕われている。ただし、SNS依存が強すぎるあまりに仕事をないがしろにして周囲に迷惑をかけることもあり、裏で陰口を叩かれることも少なくない。実は大学生時代に、ファッション雑誌の編集部でアルバイトをしており、仕事に手ごたえを感じて卒業後も当然に編集部に残るつもりでいたが社員登用の声がかからず、今の会社に就職したという過去がある。一方で、当時同じ編集部で働いていた「アズ」はまるで仕事ができなかったが、その美しさからちやほやされて読者モデルに転向し、その雑誌で大成功を収めており、この事実が花岡にとって大きなトラウマとなっている。
集団・組織
フルーツ4人娘
同じ会社で働く白川桃乃、町田杏花、梅本カンナ、朝比奈林檎のなかよし四人組。年齢も入社期もバラバラだが、白川のポジティブ思考を介し、彼女を中心に親しくなった。会社だけの付き合いに留まらず、時に四人で食事に行ったり、飲みに行ったりすることもある。メンバー全員の名前に「桃」「杏」「梅」「林檎」と果物の名前が入っていることから、いつしか自分たちのグループのことを「フルーツ4人娘」と呼ぶようになった。