サトラレ

心で思ったことを、自然に周囲に発信してしまう奇病・サトラレと、サトラレを患う人々を守る組織の奮闘を描く。多く存在するサトラレからひとりにスポットを当てた、オムニバス的構成が特徴。佐藤マコトの代表作品。

概要・あらすじ

心の中で思ったことが、思念波となって周囲の人々に筒抜けになってしまう奇病・サトラレ。この病を患った人は例外なく天賦の才を備えている。だが、心が無防備に晒されることは耐えがたいストレスをもたらし、自分がサトラレであることを知った者は精神崩壊に至ってしまう。それを避けるため、日本では「サトラレの思念波に対して見て見ぬふりをする」という、サトラレ保護法が成立。

また、サトラレの身辺を警護し、事実の漏洩を未然に防ぐサトラレ対策委員会が設置された。数奇な運命を背負ったサトラレたちと、彼らを守るために尽力する人々の活動の記録。

登場人物・キャラクター

西山 幸夫 (にしやま ゆきお)

ビン底眼鏡がトレードマークの、うだつの上がらない風貌をした大学院生だが、IQ200以上という天才的な頭脳をもつサトラレたちのなかでもトップクラスの知能を持つ。後に核融合発電の理論を完成させた。また、幸夫が発する思念波の届く範囲は通常時は62メートル程度だが、強烈なショックを受けると半径30キロメートル以上に及ぶことが確認されている。 同じ大学に通う川上めぐみのことを好いていたが、「サトラレとは付き合えない」という彼女の意思により失恋した。だが、その直後に幸夫の警護担当である小松洋子との交際がスタート。ふたりは数年後に結婚し、長女・光を授かったが、光もまたサトラレであった。 サトラレ同士が接触すると、お互いに自分がサトラレであることを認識してしまうことから、サトラレ対策委員会によって秘密裏に引き離される。なお、のちに幸夫の発明に関する陰謀に巻き込まれ、暗殺されてしまう。

小松 洋子 (こまつ ようこ)

サトラレであることを本人に認識させないように、サトラレたちを陰日向からフォローするサトラレ対策委員会警護班のメンバー。西山幸夫の警護を担当する。小松洋子が「彼の好みのタイプとは合致せず、友情だけを育める」と判断されての人選で三年ほど担当したが、結果的には幸夫に見初められた。 幸夫以外のサトラレにも数多く関わっており、彼らと普通に接することの難しさを十分に理解していたが、幸夫の子供のような純真さや優しさに惹かれ交際を開始。その後結婚し、幸夫との間に光を授かる。光もサトラレであったため、サトラレとして社会で生きて行くことがどれほど残酷かを知っていた洋子は思い悩む。 そして、一時は山田一郎の誘いに乗って、サトラレの能力を消す手術を受けさせようとするが、光の思念波を受けて考えを改め、娘をサトラレのまま育て上げることを決意。夫が暗殺された後も、女手ひとつで西山光を育てた。

西山 光 (にしやま ひかり)

人類屈指の優秀な頭脳をもつサトラレ・西山幸夫と、彼の警護担当である小松洋子の間に出来た一人娘。サトラレの親を持つ子供は高確率でサトラレを遺伝するため、光もサトラレを患って誕生した。その思念波の力は父親を大きく上回る極めて強力なもので、通常時で半径1キロメートルにも及ぶ(一般的なサトラレは50メートル程度)。 互いにサトラレであることを気付かせないため、生まれた直後から父親とは隔離されていた。だが、3歳のときに幸夫と偶然接触してしまい、彼が本当の父親であること、自分がサトラレであることを知る。また、幸夫が暗殺されたときには、幸夫とのサトラレ同士の会話(パーフェクトコミュニケーション)によって、彼が携わっていた核融合発電の研究理論のすべてを継承した。

椎名 由紀 (しいな ゆき)

日本で確認された最初のサトラレ発症患者で、自身の考えが周囲に漏れ伝わっていることを知っている。サトラレ対策委員会委員長の国光ひろみが大学生の頃、一学年先輩として同じ大学に通い、また同じアパートに住んでいた。天文学を志し、将来を嘱望されていたが、住んでいたアパートが火災を起こした際に、子供をかばって焼死。 このとき、本人たっての希望で「自殺」として処理されたことが、サトラレ保護法の成立に大きく影響した。

国光 ひろみ (くにみつ ひろみ)

サトラレ対策委員会での小松洋子の上司で、委員長を務める。声を荒らげることのない物静かな老人で、長年サトラレに関わって来たことから、彼らの様々な悲しみや苦悩を熟知。大学生の頃、同じアパートに住んでいたサトラレ・椎名由紀との悲しい交流を通じて、自分の人生をサトラレの保護に捧げることを決意した。 そうした経験から、感情的になりすぎることなく冷静な決断を下す。

木村 浩 (きむら ひろし)

サトラレの子供を育てるために作られた「サトラレの里」で育った少年。里見健一と接触したことにより、自身がサトラレであることを知ってしまう(このとき里見健一のほうは自分がサトラレであると認識せずに済んだ)。母親をはじめとする周囲の人間が、自分をずっと偽ってきたことを知り、極度の人間不信に陥った彼は自殺を試みるが、親友の光夫による決死の説得で思い止まった。 サトラレであることを自覚した後は、白木重文の住む孤島へ移住。当初は、山田一郎の印象操作や、サトラレ同士の同族嫌悪的な感情から彼を毛嫌いしていたが、後に打ち解け、友人となる。

里見 健一 (さとみ けんいち)

幼少の頃、高熱を出した際に祖母の必死の行動で一命を取り留めたことから、命を助ける臨床医を志すようになる。サトラレであるため非常に優秀で、臨床医としての能力は山田一郎も瞠目するほど天才的だが、思念波ですべてが筒抜けなサトラレは守秘義務を果たせないことから、サトラレ対策委員会によって秘密裏に何度も進路変更を画策された。 だが、里見健一が意思を曲げることがなく、さらに事実を包み隠さず告げてしまう彼の性質が患者にも好評だったことから、臨床医を続けることを認められる。

山田 一郎 (やまだ いちろう)

天才的な技術を持つ脳神経外科医。サトラレ研究の第一人者でもあるが、その研究動機はサトラレを嫌悪し、この世からサトラレを一掃することにある。サトラレを人間として見ておらず、研究のためならどんな非道徳的手段を使っても構わないという考えの持ち主で、死体の解剖を行うために立場を利用して何度もサトラレ殺害を試みた(ただし、いずれも失敗)。 星野勝美が事故でサトラレの能力を失った後は、その原因を追究し、非公式かつ成功率は低いながらサトラレを通常の人間に戻す手術を確立。また、里見健一の臨床医としての能力を高く評価してもいる。その後、彼と同乗したヘリコプターが墜落したときに、里見健一に命を助けられたことから、サトラレに対する嫌悪は緩和され、サトラレと人間の共存の道を探る方向へと考えを改めた。

片桐 りん (かたぎり りん)

サトラレ保護法が成立した後、初めて誕生した女性のサトラレ。プロ棋士を目指しており、将棋の腕前は名人が舌を巻くほどだったが、心中を明かしてしまうサトラレには限界があり、三段で引退する。その後は、環境汚染問題に取り組むことに情熱を注いだ。父親が、かつて同級生だった白木重文の助言に従い「思ったことをすべて口に出す」ように育てたため、歯に衣着せずによく喋る。 だが、これにより周囲の人間が必要以上に気を使わなくて済み、他のサトラレよりも円滑な生活を送ることができている。後に、棋士引退時に交流のあった名人・宮本直己と交際。

白木 重文 (しらき しげふみ)

日本で確認された2番目のサトラレで、自分がサトラレであることを認識している。サトラレがあまり認知されていなかった時代に青春期を過ごし、周囲からの嘲りをまともに浴びせられてきた。そのため、強い心的外傷があり、不特定多数の人間に出会うと発作を起こしてしまう。サトラレ保護法の成立に協力し、その後、政府に与えられた南海の孤島で暮らすように。 自分と同じサトラレに対しては同情や理解を示し、サトラレ対策委員会とも協力して彼らを裏から援助している。

星野 勝美 (ほしの かつみ)

日本で確認された3番目のサトラレで、自分がサトラレであることには気づいていない。サトラレ保護法によって上手く保護された最初の成功例。航空宇宙技術の第一人者として、ロケットの開発などに携わっていたが、あるとき事故で脳にダメージを受け、天才的な知能も含めたサトラレとしての能力を失った。 このときに自分がサトラレだったことを知る。サトラレだったときの体験から「サトラレのまま生きるより、人間に戻ったほうが幸福である」と考え、山田一郎に全面的に協力。これがきっかけとなってサトラレを常人に戻す手術が確立された。

宮本 直己 (みやもと なおき)

プロの棋士。サトラレの片桐りんの引退戦の将棋の相手を務めた。のちに片桐りんと結婚する。

岩田 治郎 (いわた じろう)

日本に住むサトラレ。政治家を目指していたが、守秘義務があるためサトラレ対策委員会からの圧力で断念した。しかし行政にかかわりたいという気持ちが強く、M県知事大場順一に誘われM県土木部都市計画課に配属。のち市議会議員となる当選。サトラレの子はサトラレである懸念があるため、息子の岩田忍は祖父母のもとで育てられる。 父親がサトラレであることを理解し秘密にできる年になってから治郎と再会した。

集団・組織

サトラレ対策委員会 (さとられ たいさくいいんかい)

『サトラレ』に登場する組織。サトラレの日常を守るために編成された組織で、国光ひろみが委員長を務める。サトラレの周囲にそれとなく人員を配置し、露見しそうな事態に先回りして対応するのが任務。サトラレの保護は、国益の保護に直結するため、超法規的な権限を有している。

その他キーワード

サトラレ

『サトラレ』に登場する設定。正式には「先天性R型脳梁変性症」という一種の病気で、患うとあらゆる思考が思念波となって勝手に周囲に放出(悟られる)されてしまう。発症率は一千万人に一人の割合。その代償として、サトラレは例外なく高い知能を持ち、一国の国益を左右するほどの偉大な業績を残す。ただ、サトラレであることを認識してしまうと、あらゆる思考が周囲に漏れてしまうというショッキングな事実から、自我が崩壊してしまう可能性が高い。 そのため、日本ではサトラレ保護法を制定し、サトラレがサトラレであることを認識しないよう、サトラレ対策委員会が中心となって周囲の人間が配慮するという形を取っている。

サトラレノイローゼ

『サトラレ』に登場する用語。サトラレが一般的に認知された後、サトラレではない人物が、自分がサトラレであると錯覚してしまうという、一種の精神疾患。自称サトラレとも言い、潜在的には国内で5万人程度が患っている。

サトラレ保護法 (さとられほごほう)

『サトラレ』に登場する架空の法律。1979年成立。サトラレ本人に故意にサトラレであることを告知した場合の罰則規定などサトラレの保護に関する様々な規定を定める。サトラレ同士を引き合わせると、お互いに能力によってサトラレであることがわかってしまうため、この法律で禁止している。

書誌情報

サトラレ 全8巻 講談社〈モーニングKC〉 完結

第1巻

(2001年2月発行、 978-4063287394)

第2巻

(2002年1月発行、 978-4063520033)

第3巻

(2002年7月発行、 978-4063520118)

第4巻

(2003年3月発行、 978-4063520248)

第5巻

(2003年9月発行、 978-4063520392)

第6巻

(2004年3月発行、 978-4063520590)

第7巻

(2004年8月発行、 978-4063520811)

第8巻

(2005年2月発行、 978-4063520996)

サトラレneo 全2巻 講談社〈イブニングKC〉 完結

第1巻

(2006年4月発行、 978-4063521474)

第2巻

(2006年11月発行、 978-4063521726)

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