至誠館高校での新たな出会いと成長
明治維新以降、廃刀令は施行されず、士族の末裔(まつえい)のみが帯刀を許される時代が続く現代の日本。至誠館高校に通う晴馬は、1年生ながら「最強」と称される剣術の腕前を誇る。しかし、コミュニケーション能力に課題があるため、クラスメイトからは誤解され、まるで腫れ物のように扱われていた。そんな中、同じクラスに転入してきた伊吹は、晴馬の個性的な性格と卓越した剣術に興味を持ち、積極的に彼とかかわろうとする。さらに、クラスメイトとの関係が良好でないことを知った伊吹は、両者の仲を取り持ち、友好関係を築くよう働きかける。師匠の新堂誠士郎の仇討ちだけを心の支えに日々を送っていた晴馬は、伊吹の分け隔てのない態度に触れ、これまで感じたことのない高揚感を覚え、友情を育みながら学園生活に生きがいを見出すようになる。
天才剣士に襲いかかった陰謀と、残された者たちの思い
晴馬の師匠である誠士郎は、天才的な剣の腕前と他者を思いやる心を併せ持つ人格者。「刀と剣術は弱者を守るためにある」と公言し、日本国民による全面的な廃刀を主張する民衆と、それに反発する帯刀過激派とのあいだで調整役として活躍していた。また、妹の紫と共に「新堂道場」を開き、晴馬や斎籐仁といった優れた剣士を育成するなど、指導者としても卓越した才能を発揮していた。しかし、何者かの陰謀に巻き込まれ命を落とし、さらに無実の一般人を殺害したという濡れ衣を着せられ、一転して悪人の烙印を押されてしまう。それでも、晴馬や仁、そしてかつて誠士郎に救われた伊吹からは今でも深く慕われており、晴馬は誠士郎の名誉を回復し、彼を殺害した真犯人を見つけ出して仇を討つために奔走している。
至誠館高校の栄光と忍び寄る影
晴馬が通う至誠館高校は、帯刀資格を持つ男子のみが入学を許可される名門校である。その独自の授業内容や、質実剛健さと自由奔放さを兼ね備えた校風は高く評価され、全国各地から士族の末裔たちが集まっていた。特に誠士郎が在籍していた時期は、彼自身の人気も相まって、世間の注目を集めていた。しかし、誠士郎が一般人殺害の汚名を着せられると、その影響で至誠館高校の評価は一変し、地に落ちてしまう。刀を危険視し、全面的な所持禁止を主張する「廃刀派」や、表向きは日本の安全を訴えつつ裏では刀の利益を独占しようとする「真・帯刀派」の陰謀に巻き込まれるなど、至誠館高校はかつてない危機的状況に直面していた。
登場人物・キャラクター
九重 晴馬 (ここのえ はるま)
至誠館高校に通う1年生の男子。士族の名家である九重家の当主、法雲と後妻の天音のあいだに生まれた。腹違いの兄に雪也がいる。しかし、天音が過激派に殺害されたことで家庭環境は一変し、それ以来、長らく孤独感に悩まされてきた。周囲に心を開くことができず、コミュニケーション能力に課題を抱えているため、口数は極端に少ない。だが、決して人嫌いではなく、見知らぬ人に対しても善意を示すことが多い。幼い頃から剣術の指導を受けていた誠士郎を実の家族以上に慕っていたが、誠士郎が汚名を着せられて殺害されると、その汚名を晴らし、仇を討つために一層の修行と情報収集に励むようになる。誠士郎の仇討ちのためには強硬な手段も辞さず、時には剣士と真剣勝負を行うことから「白夜叉」と呼ばれ、恐れられていた。そんな中、となりの席の伊吹に声をかけられたことをきっかけに親しくなり、次第にクラスメイトたちとも打ち解けていく。伊吹には自身を理解してくれたことに恩義を感じ、誠士郎を敬愛する同志として深く信頼するようになる。
高原 伊吹 (たかはら いぶき)
至誠館高校に通う1年生の男子。実家には年の離れた弟と妹がおり、家族の生活を支えるためにアルバイトに励んでいる。至誠館高校は明治時代に活躍した士族の末裔が多く在籍する学校だが、伊吹自身は珍しく平民出身である。剣術に情熱を注ぎ、先輩の誠士郎にあこがれて滋賀から上京してきた。コミュニケーション能力が高く、周囲の状況を的確に把握する力にも長けている。面倒見がよく、誠実な人柄から、転入してすぐに椎名真樹雄や片倉恋といった友人を得た。剣の腕前も優れており、その日の調子がよければ晴馬に匹敵するほどの実力を発揮する。中学生時代は貧困のために荒れた生活を送り、刀を使った脅迫によって金品を巻き上げるという不法行為に手を染めていた過去がある。その結果、初恋の相手である絵里奈が足に障害を負うという悲劇に見舞われたが、誠士郎の導きによって救われた。この経験から、現在も誠士郎を深く敬愛しており、彼の名誉を回復するために奔走している晴馬を同志と考えている。
書誌情報
サムライドライブ 全8巻 KADOKAWA〈あすかコミックスDX〉
第1巻
(2010-05-26発行、978-4048544924)
第8巻
(2013-08-23発行、978-4041208557)







