概要・あらすじ
時は戦国、群雄割拠の時代。幼い頃、山で行き倒れていた女の子の赤ん坊を拾った一清は、捨て置くべきという勘兵衛の助言を退けて、家族を欲しがっていた吉左に託す。赤ん坊は「菊」という名前を与えられ、吉左から地脈師としての仕事を受け継いだ。時は経ち、菊がすっかり地脈師として一人前になった頃、菊の腕にある不思議なあざによって、彼女が実は既に滅ぼされた榊という一族の最後の末裔であることが安住の殿の耳に入る。
一清は菊を引き渡すよう命令されるが、菊が地脈師として得た重要機密を漏らすわけにはいかないと判断し、加賀の国のために菊を殺す決意をする。しかしそれに納得がいかない千沙は、誰にも内緒で菊を連れ出し、彼女を逃がそうと試みるのだった。
登場人物・キャラクター
千沙 (ちさ)
安住の国から加賀の国の一清のもとへ嫁入りしたお姫さま。思い込みが激しく、考える前に行動してしまう一面を持つ。泣き虫でわがままなところのある、ちゃっかりした性格だが、根は素直で明るい。また情に厚く、困っている人を放っておくことができない。
一清 (いちきよ)
加賀の国の領主で、千沙の夫。温厚で優しい人物で、領内のすべての者たちから好かれている。少々天然気味で表現力に乏しいため何を考えているのかわからない時があるが、千沙と加賀の国のことを何よりも大切に想っており、これらを守るためならばどんなことでもする覚悟がある。
かえこ
千沙に仕えている侍女で、安住の国から嫁ぐ千沙についてきた。きえことは双子で顔がそっくりなので、髪形を変えている。後ろで1つにくくっているのが特徴。怒りっぽく、悲観主義な性格をしている。千沙のわがままを叱ってくれる存在。
きえこ
千沙に仕えている侍女で、安住の国から嫁ぐ千沙についてきた。かえことは双子で顔がそっくりなので、髪形を変えている。前で2つにくくっているのが特徴。のんびり屋で、楽観主義な性格をしている。かえこに叱られた千沙をフォローする役目。
ふえ
加賀家に仕え、間者をしている女性。美人で髪が長いが、性格は男っぽい。間者としてとても優秀で、冷たく見えるが面倒見がいい。千沙の実家である安住の国に対して不満を持っており、千沙のこともちょっぴり目障りに思っている。しっかり者で、弱い者を捨て置けない情の深いところがある。
菊 (きく)
加賀の国の鉱山で、地脈師として働いている女の子。おしゃべり好きで一言多く、相手を不愉快にさせることもある。まだ赤ん坊の頃、鉱山の近くで倒れた母親の隣で泣いているのを、一清と吉左によって発見された。実は榊という一族のお姫さま。一清のことが好き。
大谷 源十郎 (おおや げんじゅうろう)
情報屋の男性。普段は行商人のふりをして各国を渡り歩き、貴重な情報が手に入るとそれを欲しがる人に高い値で売るのが仕事。剣の腕も立つうえに、度胸もある。高貴なものに対する憧れの気持ちが強い。
安住の領主 (あずみのりょうしゅ)
千沙の父親。安住の国の領主。計略に長けていて、残酷なところがあるが、娘には甘い。加賀の国を乗っ取って自分のものにしたいという野心があり、一清にひと泡吹かせたいという意地悪な気持ちもある。
勘兵衛 (かんべえ)
ふえの父親で、すでに故人。鉱山で働く技術者たちの頭をしていた。加賀の国のことを真剣に考えており、慎重で厳しい人物。他国から攻め入られた際、服従を拒否して殺されてしまった。
吉左 (きちざ)
鉱山で地脈師として働いていた初老の男性。妻を早くに亡くし、息子を事故で亡くして天涯孤独な身の上だったが、菊を引き取って育てた。菊を後継者として地脈師の仕事を伝え、その後亡くなってしまう。
その他キーワード
地脈師 (ちみゃくし)
鉱山で働く人たちの安全を守るために欠かせない重要な職種。岩盤の具合を見たり、地形から鉱脈の位置と掘削の方向を判断するなどの役割を担う。これにより知り得た情報は機密事項であり、決して誰にも漏らしてはならない。そのため、普段は里の者たちと交流を持つことはない。