概要・あらすじ
伊賀南部の頭領の曾孫であるうさぎは、15歳になっても未だ忍術皆伝を許されずにいた。うさぎを心配した曾祖父の百地丹波は、伊賀一の男前といわれる服部半蔵(本家)との縁談をもちかけ、うさぎを伊賀の千賀地の半蔵のもとへ送り込む。半蔵に一目惚れしたうさぎだったが、もう1人の花嫁候補であるゆうりという美人くノ一が現れ、うさぎとライバル関係になってしまう。
一念発起したうさぎが忍術皆伝を許されて半蔵に振り向いてもらおうと修行に励む中、半蔵の親戚である服部半三とその恋人である叉羅が千賀地を訪れる。そしてうさぎは、叉羅が半蔵のかつての想い人であったことを知るのだった。
登場人物・キャラクター
うさぎ
伊賀南部の喰代(ほおじろ)の頭領である、百地丹波の曾孫。明るい少女だが忍者としては半人前で、15歳にもなって忍術皆伝を許されていない。幼い頃から身体が弱かったため薬草に詳しく、薬師としては優秀。ドジで空気が読めないところがあるが、その素直さで誰からも愛されている。服部半蔵(本家)に一目惚れしてからは半蔵と祝言を上げることが自身の夢であり、使命だと思っている。
服部 半蔵(本家) (はっとり はんぞう)
伊賀の千賀地にある服部本家を、幼い頃から頭領として支えてきた若い忍者。服部一族の跡取りは「半蔵」と名付けられる者が多く、服部半三の父親と同姓同名。自分にも他人にも厳しい堅物だが、伊賀一の男前といわれている。ドジだが自分の気持ちに素直なうさぎに徐々に心を許していく。生真面目であり、世話好きな一面もある。実在の人物、服部半蔵がモデル。
百地 丹波 (ももち たんば)
うさぎの曾祖父で、伊賀南部の喰代(ほおじろ)の頭領。忍者として半人前のうさぎは忍びには向いていないと、伊賀の千賀地の本家である服部半蔵(本家)に嫁ぐよう半蔵の元に行かせる。忍者としての腕は衰えておらず、美男子の姿に変装することができる。
豆蔵 (まめぞう)
うさぎのお供の役目を担う男の子。赤ん坊の頃、うさぎの飼い犬であるシロが咥えてきたのでうさぎが育てることになる。忍者としては優秀でいつもうさぎを助けている。犬は苦手だが服部半蔵(本家)に託された子犬を忍犬「うさ丸」として育てている。
うり坊 (うりぼう)
子供の猪。服部半蔵(本家)へのおみやげとしてうさぎが捕まえて来たが、豆蔵の良き相棒となる。忍豚になれるといわれるほど賢い。うさぎと半蔵が安土に旅している間に行方不明になってしまうが、のちにワタリの父に襲われて絶体絶命となった豆蔵の危機を救うために姿を現す。
うさ丸 (うさまる)
服部半蔵(本家)の忍犬・黒影の子供の犬。豆蔵が半蔵から忍犬に育てるよう託された。ぼーっとしているように見えるが、子犬でありながら伊賀から岡崎まで豆蔵の後をついて行くなど、知力・体力ともに優れた犬。
ゆうり
上忍である藤林家のくノ一。伊賀一の美少女と評されており、服部半蔵(本家)の子を産むために千賀地にやって来た。意地悪で口が悪いがどこか憎めないところがある。うさぎとは半蔵をめぐってライバル関係にあったが、うさぎとともに石川五右衛門から忍術皆伝を許されるための指南を受けて以降、五右衛門のことを好きになる。
服部 半三 (はっとり はんぞう)
岡崎に住む、服部分家の若い忍者で父親は服部半蔵(分家)。叉羅の恋人だが、父親は徳川家康の直属の配下であり、叉羅との恋仲を反対されている。服部半蔵(本家)に似ていて男前だが、女性に優しく浮気性なところがあり、それが原因で叉羅との仲がこじれることもある。服部家には「ハンゾウ」と読む名が多く、区別するため「上の半三」と呼ばれることがある。
叉羅 (さら)
織田信長の娘で、若いくノ一。美しい長い髪の美人で忍者としても非凡な才能を持ち、服部半蔵(本家)も一時熱を上げていたと噂されている。服部半三と恋仲にあるが、信長の命令で徳川家康の息子と妻の命を奪ったため、半三の父親である服部半蔵(分家)から結婚を反対されている。
石川 五右衛門 (いしかわ ごえもん)
百地丹波の秘蔵っ子で、伊賀で一番の忍者といわれていた若い男性。うさぎの幼なじみで、元許嫁。かつてお役目中に足を負傷しており、その傷の痛みに悩まされている。石川五右衛門にとってはうさぎの笑顔が元気の源だが、服部半蔵(本家)に夢中なうさぎの恋を複雑な想いで応援している。伊賀が滅ぼされた後、伊賀再建のため大泥棒となる。 実在の人物、石川五右衛門がモデル。
徳川 家康 (とくがわ いえやす)
浜松城の城主。薬作りを趣味としており、浜松へ向かう途中のうさぎと山中で出会い、のちに直属の薬師として雇い入れる。うさぎを伊賀に帰した後も、何かと協力を惜しまない懐の深い人物。かつて徳川家康の妻と息子が織田家に対して謀反を企てた際、妻と息子を殺した叉羅のことを許せずにいる。実在の人物、徳川家康がモデル。
服部 半蔵(分家) (はっとり はんぞう)
徳川家康の家臣で、服部半三の父親。服部家の分家で本家の服部半蔵(本家)と同姓同名。主君である家康の息子と妻を殺したことを理由に、叉羅と半三との結婚には断固反対している。ただしそれは表向きで、実際は愛し合っている2人の仲を裂くのが辛く、本音と建て前の狭間で胃を痛めている。
雪丸 (ゆきまる)
徳川家康直属の薬師を務める若い男性で、幼少の頃より南蛮医学を習得している。まるで美少女のような外見だが、女性恐怖症でもある。当初は薬師としてのうさぎにライバル心を燃やして「伊賀の山猿」扱いしていたが、天真爛漫なうさぎに徐々に惹かれていく。
百地 三太夫 (ももち さんだゆう)
伊賀の忍者で、うさぎの祖父。顔が父親の百地丹波とそっくりで、丹波の秘蔵っ子である石川五右衛門ですら見分けがつかないほど。父親からからかわれることが多く、酒を飲むとはしゃぎすぎるなどお茶目な愛すべき人物。
仙人 (せんにん)
伝説の薬師として知られる伊賀の仙人で、年齢は200歳を超えている。「死の山」と呼ばれる山に住んでおり、実は凶悪な人殺しであるという噂がある。徳川家康から不老不死の薬を手に入れるよう命じられ、訪れたうさぎに、自身の母親の面影を見る。身体は小さいが忍者であり、可愛がっている熊のくーちゃんのノミを取るのが趣味。
くーちゃん
仙人が飼っている熊。白い体色のせいで仲間からはじき出されてしまったはぐれ熊。食いしん坊で、魚を獲るのが上手い。相撲好きで、モフモフの身体に抱き着くとそのまま相撲を取り始める愛嬌のある熊。いつも仙人と一緒に過ごしている。
涼音 (すずね)
服部半蔵(本家)の姉。くノ一を引退し嫁いでから音信不通だったが、うさぎと半蔵が浜松から伊賀へ帰って来た際に里帰りして来る。当初はうさぎにつらく当たっていたが、うさぎが豆蔵を思う気持ちの強さに打たれ、人に優しい彼女になら服部家を任せられると確信する。
初音 (はつね)
涼音の幼い娘。うさぎとともに服部半蔵(本家)の屋敷に住んでいた豆蔵と仲良くなるが、「うり坊のように上を向いているお鼻が可愛い」と言われてショックを受け、豆蔵をいじめるようになる。
光 (ひかる)
甲賀の忍者。金髪で青い瞳の若い男性で、甲賀一の美男子と評されている。飼い猿のサスケだけが友達であり、石川五右衛門とは幼い頃から因縁の関係がある。思惑を秘め、曲芸師としてうさぎに近づく。
織田 信長 (おだ のぶなが)
安土城の城主で叉羅の父親でもある。最も勢いのある戦国武将であり、甲賀と通じて伊賀攻めを画策しているという噂がある。気分屋で非情な面もあるが、能力さえあれば身分も素性も関係なく、敵だった者すらも召し抱える度量を持つ。薬師としてのうさぎを気に入って徳川家康から譲り受けた。実在の人物、織田信長がモデル。
森 蘭丸 (もり らんまる)
織田信長の小姓を務める美少年で、信長を新世界の神だと崇拝している。うさぎを気に入っているが、敵か味方かよくわからない行動をたびたび繰り返している。欲しい物のためなら手段を選ばない主義であり、自分の亡き父親が建てた坂本城を取り戻そうと、現城主である明智光秀の失脚を画策している。実在の人物、森蘭丸がモデル。
茂助 (もすけ)
織田信長に「南蛮より来た人間」と認定され、大切に世話されている大きな猿で、オランウータンのような姿をしている。うさぎに懐いており抱き着いて離れないせいで、幾度かうさぎを危機から救うことになる。
明智 光秀 (あけち みつひで)
織田信長の家臣で坂本城の城主。うさぎからもらった薬のおかげで視力が回復したこともあり、その恩に報いるため信長が企てている伊賀攻めを阻止しようとしている。信長から非情な扱いをされても、腹を立てず許す心を持つ器の大きい人間。愛妻家としても知られている。実在の人物、明智光秀がモデル。
ワタリ
甲賀の忍者の幼い子供。都の隠れ家で暮らしている豆蔵と出会い、お互い素性を隠したまま友達になる。うさぎがかつて伊賀の薬師として甲賀に訪れたことを記憶しており、父親の役に立とうと伊賀者を見つけたと報告する。
ワタリの父 (わたりのちち)
甲賀の忍者で、ワタリの父親。伊賀者狩りの仕事を森蘭丸から受け、うさぎたちを探している。豆蔵を殺そうとするなど非情な面もあるが、うさぎに命を助けられたことに恩義を感じ、服部半蔵(本家)の命を助けるなど義理堅い一面もある。
かめ
伊賀のくノ一で、うさぎの幼なじみ。幼い頃は泣き虫でのろまだったが、忍術皆伝となってからは織田家の情報を聞き出すために「さくら」と名乗って森蘭丸と通じるなど、一人前のくノ一として活躍している。空気の読めないうさぎのせいで重傷を負うが、それでも必死でうさぎを守ろうとする優しい女性。
千利休 (せんのりきゅう)
織田信長の茶頭を務める茶人の男性。安土へ向かううさぎや服部半蔵(本家)と、瀬戸黒茶碗をめぐって小競り合いになる。じゃんけんでは後出しをするなど小ズルい老人で、うさぎの入れる茶を邪道だといいつつ、その美味しさをほめたたえる調子のいい面もある。実在の人物、千利休がモデル。