二人の孤独と人生が交差するダンスストーリー
本作は、ダンススポーツを通じて人と人との絆を描いたシンデレラ・ストーリー。対人恐怖症で人に触れることができない冬実が、パートナーを失った競技ダンサーの忍と共に、新たなダンス人生を歩み始める姿を中心に物語が展開される。タイトルの「シャドー」には「影」という意味があると同時に、パートナーを想定しながら一人で踊る社交ダンスの練習法「シャドー」を指しており、本作の重要なテーマの一つとなっている。形は異なっていても、孤独を抱えながら目標に向かう「独り」同士の冬実と忍。そんな運命的な二人の心と影が交錯することで、モノクロだった日常が美しく彩られていく様子が、青春コメディやヒューマンドラマと共に描かれている。
対人恐怖症女子とダンス選手の出会い
幼い頃のトラウマから他人に触れられることに強い恐怖を抱えている冬実は、理解し合い、触れ合える誰かとの出会いを求めて上京し、苦手な接客業に励んでいた。しかし現実は厳しく、上司に叱責され、同僚から陰口を叩かれながらも、自分には向いていないと感じつつ必死に仕事を続けていた。そんな冬実のささやかな楽しみは、毎回おかかおにぎりを買いに来る男性客の来店だった。ある日、屋上に不審者がいるとの報告を受けて様子を見に行った冬実は、そこで気になっていたその男性が一人でダンスの練習をしている姿を目撃する。夕日に照らされながら美しく踊る彼の姿に感動した冬実は、思わず拍手を送り声をかけた。彼がダンススポーツ選手の忍であることを知った冬実は、忍に誘われるまま、そのまま二人で踊ることになる。人との接触が多いことを承知しつつも、これまでにない高揚感に包まれ、忍からダンスの基礎を教わるようになる。
パートナーへの道と新たな試練
ダンススポーツの魅力を教えてくれた忍から指導を受けることになった冬実。理想のパートナーを探していた忍は、素人ながらも才能と情熱を持つ冬実に注目し、新たなパートナーとして迎え入れたいと考えていた。ダンスに欠かせない体づくりをしながら、お互いの理解を深めるため、忍の提案で冬実は彼と同棲生活を始めることになる。春のコンペに向けて特訓に励む日々の中、基礎体力作りや同棲生活にもようやく慣れてきた頃、公園で練習していた冬実の前に、忍にあこがれる少女、黄蜂りんが現れる。事情を察した忍の提案で、冬実とりんは公園で遊ぶ子供たちをギャラリーに、彼のパートナーの座をかけたダンス勝負を繰り広げることになるのだった。
登場人物・キャラクター
赤城 冬実 (せきじょう ふみ)
東京のスーパーで接客業を務める若い女性。青森県出身で、もともとは黒いロングヘアだったが、上京を機に金髪のショートヘアにイメージチェンジし、赤い口紅をさしている。幼い頃に父親を亡くし、母親と二人で暮らしていたが、母親の再婚相手から冷たい態度や暴言を受け、手を振り払われた経験がある。その強いショックがトラウマとなり、大人になった今でも深刻な対人恐怖症を抱えている。特に他人に触れられるとパニックに陥り、大量の鼻血を出してしまうほど重症である。いつかトラウマを乗り越え、大切な人と出会えると信じて、東京での一人暮らしを選んだ。ある日、屋上で練習していた競技ダンサーの忍と出会い、彼からダンススポーツの魅力を教わったことをきっかけに、新たなパートナーとして共に踊るようになる。忍からは、常識にとらわれない素人ならではの視点と才能を高く評価されている。その才能は練習中よりも、人前で忍と踊る時に一層強く発揮される。
長尾 忍 (ながお しのぶ)
冬実が勤めるスーパーの常連客の男性。ラフな服装に黒い長髪を一つに束ねている。いつもおかかおにぎりとお茶だけを購入するため、冬実の印象に強く残り、彼女にとって気になる存在となっていた。実は大会出場経験のある実力派の競技ダンサーで、かつては暮井花蓮という女性とペアを組んでいたが、なんらかの事情でペアを解消し、現在はパートナー不在のままダンススポーツを続けている。ある日、スーパーの屋上で練習していた際に冬実と出会い、彼女が対人恐怖症であることを知りながらもパートナーとして誘い、ダンススポーツの世界へと導いた。その後、二人はダンスのために同棲を始めるが、あくまでパートナーとしてお互いの理解を深め、最適な関係を築くことを目的としている。忍は冬実を異性としては見ていないと明言しており、パートナー同士が恋人関係になることは最悪の事態だと考える、ストイックな一面を持っている。
書誌情報
シャドークロス 5巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2021-03-18発行、978-4088918174)
第2巻
(2021-06-18発行、978-4088920108)
第3巻
(2021-11-19発行、978-4088920467)
第4巻
(2022-09-16発行、978-4088921075)
第5巻
(2022-09-16発行、978-4088924502)







