シルバーマウンテン

シルバーマウンテン

『双亡亭壊すべし』完結から約4年ぶりとなる、藤田和日郎の小学館「週刊少年サンデー」での連載作品。舞台は文政三年(西暦1820年)の江戸と、「螺界(らかい)」と呼ばれる異世界。現代に生きた武術の達人である拝郷銀兵衛と佐伯兵頭が、螺界の中心にそびえる「銀嶺」の頂を目指して冒険を繰り広げる仙境幻想譚。少年の姿に若返った80代の老人コンビを主人公に据えている点が特徴で、彼らが生涯をかけて磨き上げた武術で超常の力を持つ存在に立ち向かう姿が見どころとなっている。小学館「週刊少年サンデー」2025年23号から連載。同号では島本和彦の『ヴァンパイドル滾』もスタートしており、W新連載として話題となった。「次にくるマンガ大賞2025」コミックス部門第15位、「このマンガがすごい!2026」オトコ編第13位、「全国書店員が選んだおすすめコミック2026」第11位を獲得している。

正式名称
シルバーマウンテン
ふりがな
しるばーまうんてん
作者
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
レーベル
少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
既刊2巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

天狗に拐われた少年・寅吉が語る仙境の物語

本作は、天狗にさらわれて仙境を見たという少年・寅吉が、国学者・平田篤胤に自身の不思議な体験を語るという入れ子構造の物語として描かれている。両者は共に江戸時代に実在の人物をモデルとしており、平田が寅吉の話をもとに記した実在の書『仙境異聞(仙童寅吉物語)』が本作の元ネタとなっている。しかし、寅吉の正体や仙境の詳細については換骨奪胎され、独自の設定が加えられている。

異形の天体が煌めき「銀嶺」が聳える仙境「螺界」

拝郷銀兵衛と佐伯兵頭が冒険する仙境は、現地では「螺界(らかい)」と呼ばれている。太陽は胎児の姿をしており、月は老人の顔のような形をしている。螺界は縦長の浮遊島々から成り立ち、それぞれの島の下層には海が広がっている。海の果てからは宙空に向かって水が滝のように流れ落ちている。上層には山があり、大地は螺旋を描くように巻きついている。中央の島には「銀嶺」と呼ばれる最高峰が聳え、その大きさは富士山の十倍以上に及ぶ。上層から登っても天頂までの高さは四万八千メートルあり、その頂には「聖糧(せいりょう)」が存在しない。聖糧は超常の力を持つ「魔行(まぎょう)生物」が呼吸するために必要な魔道成分で、「魔道士」の力の源泉でもある。そのため、銀嶺の天頂は有翼の魔行生物も、有能な魔道士も容易に到達できない、前人未到の地となっている。

精霊をあやつり超常の「魔行」を現出する「魔道士」たち

「螺界(らかい)」の空気中に含まれる魔道成分「聖糧(せいりょう)」を「力」へと変え、精霊を介して「魔行(まぎょう)」と呼ばれる超常現象を引き起こす術者を「魔道士」と呼ぶ。精霊は半透明で雌雄が存在し、番いとなることで魔行が発現する仕組みになっている。精霊の種類によって魔行の効果も変化し、魔道士ごとに得意分野も異なる。たとえば、サイッダは重さの精霊をあやつることに長けており、重力を自在にあやつることができる。なお、精霊には目がないため、魔道士は「空間位置指定言語(ステラジアン)」という呪文を唱え、精霊に標的の位置を知らせる必要がある。

登場人物・キャラクター

拝郷 銀兵衛 (はいごう ぎんべえ)

武道家の男性で、年齢は85歳。総白髪でやや腰が曲がっている。子供はいなく、妻の琴代にも先立たれ、一人暮らしをしている。面倒見はよいが説教癖があり、無愛想なため誤解されやすい。人を殺めたという噂があり、近所では敬遠されている。数々の異名を持つ武術の達人で、琴代を娶るためにヤクザの屋敷に殴り込んだこともある。この事件は、山口道場の同門で武道界の著名人・佐伯兵頭に「正気を疑う嫁取り」と言わしめた。結婚を機にあん摩マッサージ指圧師の資格を取得し生業としたが、武道への情熱は衰えず、仕事の合間を縫って修行に出かけていた。拝郷治療院を廃業した日、喪服姿で電車に乗っていたところを天狗に狙われ、強さに慢心した罰として「螺界(らかい)」へ連れ去られる。この際、年齢を奪われて10歳の姿となり、身体の不調は快癒した。元の世界に帰るため、決闘を望む兵頭をかわしつつ「銀嶺」の頂を目指すようになる。螺界では「ギン」と名乗っている。のちに「寅吉」として国学者・平田篤胤に仙境(螺界)での経験を語ることになる。

佐伯 兵頭 (さえき ひょうどう)

武道家の男性で、年齢は84歳。禿頭に眼鏡をかけ、杖をついている。説教癖があり、「武道の秘密は知っとるが」という口癖をよく口にする。武術専門雑誌『奥技』の表紙を飾るほどの達人で、かつては佐伯武道会を率いていたが、最高師範の座を息子に譲り引退した。自然を愛する穏やかな一面もあり、犬や亀、カブト虫を飼育し、家庭菜園も楽しんでいる。山口道場の同門である拝郷銀兵衛とは犬猿の仲で、彼が娶った琴代に横恋慕しているため、銀兵衛と喧嘩するたびに琴代にたしなめられていた。銀兵衛に対して複雑な思いを抱き、果たし状を送った。意気揚々と決闘に向かう途中、電車で偶然銀兵衛と乗り合わせ、巻き添えを食って「螺界(らかい)」に連れ去られた。この際、天狗に年齢を奪われて少年の姿となり、髪が生え眼鏡も不要になった。天狗からは「銀兵衛を殺し螺界の天頂に来れば元の世界に帰す」と告げられ、決闘の機会をうかがいながら「銀嶺」の頂を目指すようになった。螺界では「ヒョード」と名乗っている。

サイッダ

魔道剣士の女性。前髪で右目を隠し、フード付きの黒衣を身にまとい、曲刀を携えている。右腿には呪文のような刺青が刻まれている。アーケヴ大公国魔道第一部隊隊長・応答大尉の肩書きを持ち、迅速かつ的確な判断力で上官として兵から信頼されている。引き締まった弓のように美しい容姿に加え、通る声を持つため、軍勢を鼓舞することに長けているが、生まじめで融通が利かない一面があるのが玉に瑕。「魔道」の使い手で、攻撃の威力を高めたり、短時間で対象を浮遊させることもできる。その正体はオッドアイが特徴の「トゥアハの民」。彼らは長寿でウソをつけないため、奴隷としての需要が高く、身体と同じサイズの黄金と等価で取引されている。奴隷商人や賞金稼ぎがトゥアハの民を巡って殺し合うこともあり、市井では「血と厄災を招く民」として警戒されている。「螺界(らかい)」に来たばかりの拝郷銀兵衛と佐伯兵頭に出会い、成り行きで共に行動することになった。兵頭は銀兵衛の亡き妻・琴代との共通点を見出しているが、銀兵衛はそれを否定している。

書誌情報

シルバーマウンテン 2巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2025-09-18発行、978-4098542420)

第2巻

(2025-11-18発行、978-4098543267)

SHARE
EC
Amazon
logo