概要・あらすじ
地球連邦軍の少尉であるクロード・C・ケニーは、父親で連邦軍提督のロニキス・J・ケニーとともに、惑星ミロニキアの遺跡調査の任務にあたっていた。1人の人間ではなく、あくまでロニキスの息子としてしか見られないことに苛立ちを感じていたクロードは、調査の終わっていない装置に不用意に近づき、未開惑星である惑星エクスペルへと転移させられてしまう。
そこで魔物に襲われていた少女、レナ・ランフォードを助けるが、父親から護身用に手渡されていたフェイズガンを使用してしまったため、エクスペルに伝わる光の勇者と誤解されることになる。一度は自身が勇者ではなく、ただの人間であることを告白したクロードだったが、正気を失ったレナの幼なじみのアレンによってレナがさらわれ、その救出へと向かう。
魔物と化したアレンに苦戦しつつ、クロードはレナを救出することに成功。そして、アレンを変貌させた謎の鉱石とソーサリーグローブに、何らかの関連性があると考え、調査のため旅立つことを決意。その途中で出会ったセリーヌ・ジュレス、アシュトン・アンカースらの仲間たちとともに、ソーサリーグローブの落下地点であるエル王国を目指すことになる。
登場人物・キャラクター
クロード・C・ケニー
地球連邦に所属する青年。階級は少尉。地球連邦の英雄とされるロニキス・J・ケニーを父親に持ち、常に英雄の息子としてしか見られないことへの反発心から、惑星ミロニキアの調査中に無神経な行動を取る。その結果、単身で未開惑星である惑星エクスペルへと転移させられてしまう。そこで偶然出会ったレナ・ランフォードを、父親から手渡されていたフェイズガンを使って助けた。 そのため、エクスペルの伝承に伝えられる「光の勇者」としての期待を受け、レナとともに旅をすることになる。困っている人を見ると放っておけないお人好しな性格。容姿も端麗で、女性から一目惚れされることも多い。レナとは互いに異性として好意を寄せ合っているが、レナの幼なじみであるディアス・フラックとの関係に嫉妬するなど、子供っぽい一面も持ち併せている。 フェイズガンのエネルギーが切れてからは、剣技と格闘技を混ぜ合わせた我流のスタイルで戦う。一度教わったきりだった気功を、いきなり実戦で使えるほどのセンスの持ち主。当初はまるで歯が立たなかったディアスとも、互角に戦えるほどに成長していく。
レナ・ランフォード (れならんふぉーど)
惑星エクスペルのアーリア村に住む少女。当初は自分を助けてくれたクロード・C・ケニーを光の勇者だと勘違いする。しかし、クロードが勇者ではないと知った後も信頼を寄せ続け、彼の旅に同行する。実はアーリア村の生まれではなく、近くの森に捨てられていたところを、現在の両親に拾われ育てられた。惑星エクスペルに存在しない治癒力を使うことができるなど、その出自には謎が多い。 クロードとは互いに好意を寄せる仲だが、孤立しがちな幼なじみのディアス・フラックを心配するあまり、クロードと衝突してしまうこともしばしば。幼い頃から習っていた格闘技を使って戦い、その実力はクロードたちからも一目置かれている。誰にでも優しく礼儀正しいが、勝気でお転婆な側面もある。
セリーヌ・ジュレス (せりーぬじゅれす)
トレジャーハンターとして各地のお宝を探している女性。抜群のスタイルを持っている。多くの紋章術士の里であるマーズの村の出身で、さまざまな紋章術を自在に使いこなす。お宝が眠る場所とされるクロス洞窟を探索するため、用心棒としてクロード・C・ケニーたちを雇った。クロード一行を気に入り、その後の旅にも同行するようになる。 当初はクロードに一目惚れしており、積極的なアプローチをかけてレナ・ランフォードをやきもきさせることも多かった。しかし、のちにクロードと瓜二つのクロウザー・T・クロスと出会い、互いに惹かれあっていく。虫が大の苦手。
アシュトン・アンカース (あしゅとんあんかーす)
紋章剣士の青年。紋章術と剣技を合わせた技を使いこなす。双頭のドラゴン討伐の最中、不注意からその双頭のドラゴンに取り憑かれてしまい、祓う方法を探し求めてクロード・C・ケニーたちの旅に同行することになる。普段は引っ込み思案で、追い詰められるとすぐに弱音を吐くなど、頼りない場面が多い。だがドラゴンを祓う方法を見つけた際には、その代償としてドラゴンたちが死ぬことになるので、その方法を断念するなど、非常に心優しい性格の持ち主。 アシュトンがピンチに陥ると、ドラゴンたちによって意識を乗っ取られることがある。その際には普段とは比べ物にならないほどの強さを発揮する。旅の途中で出会ったプリシス・F・ノイマンに一目惚れした。武芸大会に出場して自分の強さを披露するなど、彼女にさまざまなアプローチを試みる。 だが当のプリシスはクロードに思いを寄せているため、あまり相手にされることはない。なおアシュトン・アンカースに取り憑いた双頭のドラゴンは、それぞれの外見的特徴から、レナ・ランフォードによってギョロとウルルンと命名されている。
プリシス・F・ノイマン
発明家の少女。惑星エクスペルの学術都市、リンガの村に住んでいる。「天才」を自称するだけあってその才能は本物。自立型の小型ロボットである「無人くん」をはじめ、惑星エクスペルの文明レベルを大きく超えた発明品をいくつも作り上げている。古文書の解読のためリンガにやって来たクロード・C・ケニーと出会い、絵本の中の王子様にそっくりな外見をしていたことから一目惚れする。 明るく活発、加えてお人好しの性格。友人であるエラノールのために、頻繁に部屋の外の世界のことを話してあげていた。またエラノールの病気が悪化した際には、危険も顧みず、1人で魔物が多く出現する山の中まで薬草を探しに向かうという、向こう見ずな一面も持ち合わせている。幼い外見をしているが、実は16歳で子供扱いされることを嫌う。 同居している発明家の父親とは、容姿がまったく似ていない。
ディアス・フラック (でぃあすふらっく)
各地を旅をする青年剣士。惑星エクスペルのアーリア村の出身で、レナ・ランフォードとは幼なじみ同士。剣士の間ではその名を知らない者はいない、とされるほどの高い実力を持つ。かつて野党に村を襲われて家族を全員失っており、大切なものを守れなかった後悔から、強さを追い求めるようになった。クールで他人を寄せ付けない部分があり、当初はクロード・C・ケニーに対しても、足手まといとしか認識していなかった。 だが、レナを守るためにボロボロになりながら何度も立ち上がる姿を目の当たりにし、クロードの強さを認めるようになる。レナとは兄妹のような関係だが、その親密さはクロードから嫉妬されることも少なくない。
ボーマン・ジーン (ぼーまんじーん)
惑星エクスペルの学術都市、リンガの村に住む男性。薬学に強く、リンガでは一番の物知りとして知られ、「先生」と呼ばれて慕われている。かつては、軍事大国であるラクール王国の王室研究室に在籍しており、国家機密であるラクールホープの存在も察知していた。言葉遣いが乱暴でぶっきらぼう。しかし、危なっかしいというだけの理由で、クロード・C・ケニーたちを案内してラクール王国まで同行するなど、非常に面倒見がいい。 戦闘能力はさほど高くないが、携帯している大量の薬物や、魔物に関する豊富な知識を活かして、クロードたちをサポートする。
レオン・D・S・ゲーステ
紋章術を活用した兵器の研究を行っている少年。弱冠12歳ながら、惑星エクスペルの軍事大国ラクール王国の切り札ともいえるラクールホープ開発の最高責任者を任されている天才。クロード・C・ケニーたちとは、ラクールホープを制御するためのエナジーストーンが存在するとされるホフマン遺跡を調査するため、護衛を依頼したことで知り合う。 普段はクールで大人びた性格だが、巨大な魔物を前にした時は恐怖のあまり紋章術が使えなくなるなど、年相応の未熟な一面も持ち併せている。
オペラ・ベクトラ (おぺらべくとら)
額に第3の瞳を持つ謎の女性。クロード・C・ケニーたちが旅先で出会った。その正体は、恋人のエルネスト・レヴィードを探して別の惑星から惑星エクスペルへとやって来た人物。惑星エクスペルには存在しない、圧縮したエネルギー弾を発射する武器「コスモライフル」を使用して戦う。普段は包容力に満ちた大人の女性。しかし、未開惑星保護条約に違反していることをクロードから咎められた際にも感情的に反発するなど、エルネストのことが絡むと、冷静さを失う傾向がある。 そのため、当初は険悪な関係になりかけた。オペラの無茶な行動の原因が、エルネストへの強い愛情によるものだと知ったクロードは、その再会が実現するまでは、条約違反を見逃す約束を交わしている。 のちにクロードたちと再会した時には、クロードがエルネストから託されていたペンダントを手渡された。
エルネスト・レヴィード (えるねすとれゔぃーど)
額に第3の瞳をもつ謎の男性。ホフマン遺跡の最深部で負傷していたところをクロード・C・ケニーたちに助けられ、知り合う。オペラ・ベクトラと同じ惑星の出身で、恋人同士でもある。生粋の考古学者で、常に研究のために宇宙を駆け回っており、オペラがエルネストを探していることを知った後も、自身の研究の旅を優先している。ただしオペラの存在は気にかけており、彼女に無事を伝えるため、自身の持っていたペンダントをオペラに手渡すよう、クロードたちに頼む。
ロニキス・J・ケニー
地球連邦軍の提督で、クロード・C・ケニーの父親。20年前の惑星レゾニアとの戦いでは、艦長として戦艦カルナスを指揮。当時の地球連邦を勝利に導きつつ、未開惑星ロークで起きていた謎のウィルス事件を解決した。レゾニアを背後で操っていた大帝ジ・エ・リヴォースの陰謀を阻止したことで英雄と讃えられ、38歳という若さで提督へと昇進した。 クルーからの信頼も厚く、冷静沈着な軍人だが、息子であるクロードに対してはやや過保護になる節がある。惑星ミロニキアで謎の遺跡を発見した際には、分析が終わるまで遺跡に触れないよう、クロードに強く厳命していた。結果的に、それが「ロニキスの息子」としか見られないこと不満を抱いていたクロードの反感を招き、クロードが惑星エクスペルへ転移するきっかけを作ってしまう。
ギョロ
双頭龍の1頭で、赤いドラゴン。ウルルンとともに、アシュトン・アンカースの背中に取り憑いている。ギョロっとした目つきが特徴だったことから、レナによって名付けられた。惑星エクスペルで起きている異変に対抗するには、人間と魔族が共存する道を探す必要があると考えており、クロード・C・ケニーたちの旅に興味を抱いて協力する。 冷静で慎重な性格で、好戦的で暴走しがちなウルルンを止めるブレーキ役も果たす。アシュトンがピンチに陥ると、その身体を乗っ取ることもあり、その間のアシュトンは人間離れした強さを誇る。
ウルルン
双頭龍の1頭で、青いドラゴン。ギョロとともに、アシュトン・アンカースの背中に取り憑いている。ウルルンという名前は、常に涙ぐんでいる気弱そうな雰囲気から、レナによって付けられたもの。実際のウルルン本人は、頭に血が上りやすい好戦的な性格。ラクール王国で行われた武技大会では、ギョロの反対を押し切ってアシュトンの身体を乗っ取り、強力な紋章術を使用して勝利を収めた。 しかし、反動で場外に吹き飛ばされ、失格負けとなってしまうなど、やや思慮の浅いところがある。
クロウザー・T・クロス
「クリス」と名乗る青年。クロス城下町に住み、クロード・C・ケニーと瓜二つの容姿をしている。かなりの世間知らずで、無銭飲食で捕まりかけていたところを、クロードたちに助けられた。セリーヌ・ジュレスに一目惚れしており、偶然を装ってセリーヌを待ち伏せするなど、強烈なアプローチをかけていく。その正体はクロス王国の王子、クロウザー・T・クロスであり、ラクール王国の姫、ロザリアと婚約を交わした立場にある。 衛兵に連れ戻されたことで、一度はセリーヌへの想いを諦めかけるが、ロザリアとの結婚式に乱入してきたセリーヌに、本当の想いを伝える。
ケティル
惑星エクスペルの港町、クリクに住む少年。裕福な家の生まれながら、町きっての悪ガキとして知られている。旅行者から財布を盗むなどのイタズラで大人たちを困らせている。その行動の真意は、ケティルが密かに抱いていた、船乗りになるという夢に反対する母親に、一人前の男として認めてもらいたいがためのものだった。しかし、周囲を困らせるのは一人前の男のすることではない、とクロード・C・ケニーから諭されたことで反省し、土地勘のないクロードたちに港町クリクの案内役を買って出た。
エラノール
病弱な少女。惑星エクスペルの学術都市、リンガの村に住んでいる。幼い頃から身体が弱く、部屋からほとんど出たことがない寝たきりの生活を続けている。窓から落ちたリボンを届けに来たアシュトン・アンカースと出会い、外の世界の話に興味を持つ。プリシス・F・ノイマンとは親友同士で、良き話し相手でもある。一時様態が急変し、その命すらも危ぶまれたが、プリシスとアシュトンが危険を冒して手に入れた薬草・メトークスによって一命を取り留める。
アレン
惑星エクスペルの鉱山の町、サルバの町長の息子。レナ・ランフォードの幼なじみでもあり、幼い頃から密かに彼女に想いを寄せていた。気弱で温厚な性格だったが、サルバの鉱山から発掘された石の力によって正気を失い、欲望のままにレナを拉致し結婚を迫ろうとする。一時は石の力の影響を受けて魔物へと変貌するが、クロード・C・ケニーによって石が破壊されたため、人間の姿に戻り正気を取り戻す。 その後、旅立つクロードやレナたちを見送り、クロードにレナのことを託した。
シン
魔族の1人。ラクール王国の先発隊の一員としてエル大陸に乗り込もうとしたクロード・C・ケニーたちを迎え撃つべく現れた。非常に高い知性を持ち、人間と同じ言葉を発する。惑星エクスペルには存在しないはずの、地球連邦の航宙艦に使われる防御フィールドを展開。ラクールホープによる攻撃を無傷で防ぎ、瞬く間に先発隊を壊滅させてしまう。 その後は、クロードたちの最終目的地となったエルリアタワーにて彼らを待ち受け、圧倒的な力を見せつける。
集団・組織
地球連邦 (ぎんがれんぽう)
クロード・C・ケニー、ロニキス・J・ケニーらが所属する組織。発足の地である地球を中心に、複数の惑星を統治している。その役割は宇宙開拓と治安維持であり、20年前には惑星ロークで石化ウィルス事件を引き起こした惑星レゾニアと戦争状態に突入したが、ロニキスたちの活躍によって勝利を収めている。
場所
惑星エクスペル (わくせいえくすぺる)
惑星ミロニキアの調査を行っていたクロード・C・ケニーが転移してきた惑星。レナ・ランフォード、セリーヌ・ジュレス、プリシス・F・ノイマン、アシュトン・アンカースらが在住する。地球連邦の手の届いていない未開惑星であり、未開惑星保護条約によって不用意な接触を禁じられている。一方で紋章術に関する技術は発達しており、それを応用したラクールホープなどの強力な兵器も開発されている。
その他キーワード
フェイズガン
クロード・C・ケニーがロニキス・J・ケニーから託された銃。銃弾ではなくエネルギーを発射する武器で、魔物に襲われたレナ・ランフォードを助け出すために使用された。その際、フェイズガンから放たれたエネルギーが「光の剣」のように見えたことから、クロードは光の勇者として誤解されることになった。その威力は魔物を一撃で倒すほど強力だが、さらわれたレナを救出するため、アレンの屋敷の扉を破壊した際にエネルギーが尽き、以降は使用できなくなってしまう。
紋章術 (もんしょうじゅつ)
セリーヌ・ジュレス、レオン・D・S・ゲーステらが使用する魔法の一種。紋章術を使用する者は、「紋章術士」と呼ばれる。銀河中で使われている技術で、惑星エクスペルでも広く普及しており、セリーヌの出身地であるマーズの村は「紋章術士たちの里」とも呼ばれている。ただし身体の傷を癒すことができる治癒の紋章術は、非常に貴重とされており、惑星エクスペルではレナ・ランフォードしか使うことができない。
未開惑星保護条約 (みかいわくせいほごじょうやく)
未開惑星の文明を保護するために地球連邦が定めた、現地人との接触を禁じる条約。ただし、自身の生命の存続に関わるような場合は例外であり、惑星外の人間であることを察知されない範囲での接触は許可されている。作中ではオペラ・ベクトラが、惑星エクスペルには存在しない技術を用いたコスモガンを使用した際、クロード・C・ケニーから条約違反を指摘されている。
光の勇者 (ひかりのゆうしゃ)
惑星エクスペルに古くから伝わる伝承。惑星エクスペルが脅威に襲われた時、異国の服をまとった勇者が現れ、光の剣によって人々を救うとされている。クロード・C・ケニーが、魔物に襲われていたレナ・ランフォードを救出する際、エクスペルの人間には光の剣に見えるフェイズガンを使ったことで、光の勇者と誤解されることになった。
ラクールホープ
軍事大国であるラクール王国が開発した対魔物用兵器。紋章術の威力を大幅に増福させてエネルギーとして撃ち出し、小さな山なら消し飛ばせるほどの破壊力を持つ。もともとは周辺国への牽制を目的として開発が進められていたものを、対魔物用に転用した。クロード・C・ケニーらの協力を得てレオン・D・S・ゲーステが完成させ、ラクール王国に押し寄せた大量の魔物の群れを壊滅させることに成功。 しかしその後のエル大陸への上陸戦では、防御フィールドを展開したシンによって無効化されてしまう。ホフマン遺跡で発見されたエナジーストーンと呼ばれる鉱石を動力源としていたが、のちにエナジーストーンはシンによって奪い去られてしまう。
ソーサリーグローブ
惑星エクスペルのエル大陸にある、エルリアの町に落下した巨大隕石。「魔の石」とも呼ばれている。ソーサリーグローブが落下した地点の周囲からは、大量の魔物達が出現するようになり、エルリアの町は瞬く間に占拠された。そのため現在は、ソーサリーグローブのそのものが、魔物を生み出す母体なのではないかと考えられている。クロード・C・ケニーとレナ・ランフォードは、このソーサリーグローブを調査するため、エル大陸を目指して旅立つことになる。