あらすじ
第1巻
霊感がある以外はふつうの中学生である桶屋風太は、ある日、クラスに転校して来た石神鉱子とその背後霊イーストと出会う。鉱子となかよくなり始めた風太だったが、イーストが見える事に気づかれた瞬間、鉱子は突如武器を手にして風太に襲い掛かる。彼女に襲われて意識を失った風太は、そこでフォンとしての「過去生」を思い出し、鉱子がフォンの因縁の相手ストナの生まれ変わりである事を知る。意識を取り戻した風太は鉱子から自分達は7つの過去生で因縁を持ち、今生で因縁に決着をつけると宣戦布告されるのだった。鉱子の言葉を一人で悶々と考える風太は、そこでかつて見た夢の風景からイーストといっしょにいた少女ルンの名前を思い出す。その名前を風太がつぶやいた瞬間、ルンは鉱子が持っているのと同じ武器「スピリットサークル」を伴って風太の前に出現するのだった。鉱子によりそれが過去生を見る道具である事を教えられた風太は、スピリットサークルを使い第三の過去生であるヴァン=フランティアの人生を追体験するのだった。
第2巻
過去生を見続けた桶屋風太は、自分の周囲にもその縁が息づいている事を知る。そして、石神鉱子とお互いの視点から見た過去生について話し合う。生贄の儀式から恋人を助けるべく戦ったフォンは、志半ばでストナに殺された。しかし、生贄の儀式は村を運営するために必須で、ストナにとっても苦渋の判断だったのだ。フォンの勇気は結果的に彼の死後、別の犠牲を求める「生贄の儀式のやり直し」となって村を襲い、より悲惨な結果につながってしまう。ストナもフォンの死後、事態の収拾に努めたが、最終的には生贄の犠牲となったのだ。その事実を聞かされた風太はあまりの事実に呆然とし、熱を出して倒れてしまう。熱でうなされる中、風太は見舞いに来た鉱子とも少しだけ心を通わせ、次なる過去生に挑む覚悟をする。過去生の中で、垣間見たスパスシフィカという謎の存在に疑問を抱きつつ、風太は第四の過去生フロウを体験する。老人になるまでの長い時間を追体験した風太は、過去生を見終わったあと、老人だったフロウの言動がそのまま移ってしまう。周囲は笑い話と捉えていたが、風太の自我は少しずつ過去生に飲み込まれ始めていくのだった。
第3巻
過去生の自我に少しずつ存在を飲み込まれ始めた桶屋風太は、イーストからこれ以上過去生を見ないように忠告される。しかし、過去生で垣間見たスパスシフィカやフルトゥナの正体、そして石神鉱子を因縁から解放するため、自らの意志で過去生に挑む決心を固める。そして風太は、第五の過去生・梶間方太朗を追体験するのだった。江戸の時代、敵味方に別れ血みどろの戦いを繰り広げながらも、方太朗と鉱子の過去生・岩菜は最後は心を通わせる事に成功する。そして過去生を見終えた風太は、現在の自分の住む場所が方太朗が戦った場所だと気づく。その事実を知らなかった鉱子は、風太に教えられ、彼と共に自分達が死んだあとについて調べ始めるのだった。鉱子と共に過去について語り合いながら、真城鉄馬、海島水乃達と出会う。二人の過去生と方太朗が果たせなかった約束、それが現世で果たされた事に風太は涙し、今、自分がここにいる事に喜びと感謝を抱くのだった。そして風太は過去生でも特別な存在であるレイ(第二)に会うべく、新たな過去生に挑む。しかし、フルトゥナは「レイ(第二)にはもう会えない」と風太に告げるのだった。
第4巻
過去生の狭間で思念となって漂うフルトゥナは、桶屋風太が過去生を見る瞬間に介入し、「レイ(第二)にはもう会えない」と告げる。風太とはまったく別の人格を持ち、彼をいい様に翻弄するフルトゥナは、風太を無理矢理に第六の過去生ラファルへと送り込むのだった。今までの過去生と違い、時は34世紀、未来の人物であるラファルの生を風太は見る。そこにはラファルと共に働く石神鉱子の過去生ラピスの姿もあり、二人は今までの過去生とは違い、同僚として仲を育んでいく。しかしそんなある日、二人の前にスパスシフィカが現れ、彼らに忠告とも取れる言葉を伝えるのを契機として二人の因縁は再び動き出す。ラファルとラピスは、新たな家族カロルを得たのを機に結婚し、幸せな時間を過ごしていた。しかし、スパスシフィカの忠告を忘れられなかったラファルは、最終的にラピスと決別。戦いの果てに、巨大な爆発に巻き込まれて死亡してしまう。目覚めた風太はあまりにスケールの大きな話に戸惑い、もう一度過去生を見ようとするが、心配したルンにスピリットサークルを奪われてしまうのだった。
第5巻
短期間でいくつもの過去生を見続けたせいで、桶屋風太は過去生の影響を大きく受けていた。ラファルの過去生で起きた爆発はテロリストによるブラックホール兵器によるもので、世界を滅ぼすような大爆発でラファル達は死んでしまったのだ。その事実が本当かどうか確かめるべく、風太は石神鉱子に再び過去生に挑む事を宣言し、そしてその勢いのまま風太は鉱子に思いを告白するのだった。一人では過去生に乗り込まれそうになるも、周囲の人の助けがあれば正気でいられる事を実感した風太はルンとも和解し、再び過去生へと挑む。第七の過去生・桶谷風子は、平行世界の現代で性別が逆転した世界だった。巨大空中静止体「不二屋根」を探索に来た風子と、鉱子の過去生・石神井は、そこで宇宙人と出会う。宇宙人と意味不明なやり取りをしたあと、二人は仲間のもとに無事に帰され、平穏無事な人生を送って風子の過去生は終わるのだった。しかし風太と鉱子は風子の過去生で、ラファルの過去生で娘同然に接していたカロルの残滓を見つけ、共に喜び合う。和やかな時間は終わり、鉱子は最後の過去生を見たあと、再び戦うと風太に宣戦布告するのだった。
第6巻
遂に桶屋風太はすべての因縁の始まりである第一の過去生フルトゥナを目にする。そこで風太が目にしたのは、己の好奇心の赴くままに倫理を無視し、道を踏み外した狂学者の姿だった。己の欲望のために人を利用し、その死すら弄ぶフルトゥナはいつしか「死霊王」と呼ばれ、世界の敵となっていた。最終的に石神鉱子の過去生コーコによって滅ぼされたフルトゥナだったが、スピリットサークルで自らの死を予期していたフルトゥナは、自らの死すら利用して新たな生を得る策謀をめぐらしていた。フルトゥナは六つの過去生を見た事で過去生になじみやすくなった風太に、仕上げとして自分の過去生を見せ乗っ取ったのだ。フルトゥナに乗っ取られてなにもできない風太は、遂に鉱子との決戦の日を迎える。鉱子との決戦にすら余裕を見せるフルトゥナだったが、戦いはフルトゥナ、風太、鉱子の思惑を越えた予想外の方向へと向かっていく。
登場人物・キャラクター
桶屋 風太 (おけや ふうた)
中学2年生の男子生徒。霊感があり、幽霊を見る事ができるが、周囲からは中二病や冗談だと思われている。しかし、転校生の石神鉱子の背後霊イーストに声を掛けた事で、鉱子にフルトゥナの生まれ変わりだと知られ、彼女に命を狙われる事となる。フルトゥナから始まり、フォン、ヴァン=フランティア、フロウ、梶間方太朗、ラファル、桶谷風子の七つの過去生で鉱子と因縁があり、現代の風太の頬にある痣はヴァンの時に鉱子の過去生に受けたものが元となっている。鉱子にスピリットサークルで殴られたのをきっかけにして過去生を思い出し始めている。またルンが現れて以降、もう一つのスピリットサークルを手にしており、鉱子と自分の因縁を確かめるべく自らの意志で過去生を確かめるようになった。ただし短時間に過去生を見続けた結果、自我が少しずつ過去生に飲み込まれ始めており、一時期は自分の名前が誰なのかわからなくなったほど。イーストやルンからはその事を心配されたが、鉱子を因縁から解放すべく過去生を見続ける決断をした。
石神 鉱子 (いしがみ こうこ)
中学2年生の女子生徒。長い黒髪の美少女で、額の部分にバツ印の傷がある。霊感があり、霊であるイーストになついており、つねにいっしょにいる。桶屋風太がイーストの存在に気づいて以降は、彼の命をつけ狙っている。風太には冷徹な面を見せるが、基本的に人付き合いはよく、風太以外のクラスメイトとはふつうに接している。フルトゥナとは深い因縁を持つコーコから始まり、ストナ、黒髪の魔女、ロカ、岩菜、ラピス、石神井の七つの過去生で風太と因縁がある。現在の石神鉱子は幼少時の事故の影響でコーコの影響が色濃く出ており、鉱子とコーコの自我が若干混濁している。鉱子は風太の事を知るたびに少しずつ惹かれているが、コーコはフルトゥナへの憎悪が強く、将来の禍根を摘むためにも風太を殺す意志を固めている。スピリットサークルを持ち、最初風太を襲った際に、これで殴ってフォンの過去生を思い出させた。当初はスピリットサークルの火は4つしか灯っていなかったが、風太が過去生を見るのに合わせて自分の過去生を見て残りの火を灯した。
イースト
石神鉱子の背後に漂う幽霊。背が高く穏やかな風貌の青年の姿をしており、鉱子とは違い桶屋風太とも気安く接する。風太は夢でイースト、フルトゥナ、コーコ、ルンがなかよくいっしょにいる姿を見ており、彼の存在自体が鉱子に風太の正体を気づかせたり、風太にルンの存在を思い出させたりと、大きなきっかけとなっている。ただしイースト本人としては不本意な結果で、結果的に風太に迷惑をかけてしまったのは申し訳なく思っている。ルンと仲がよく、よくいっしょに風太と鉱子の仲をからかっている。実はフルトゥナの弟子でもある。何の特技もなく「モテたい」という理由でフルトゥナに弟子入りしたが、これが結果的に孤立していたフルトゥナを退屈から救った。その後、狼に襲われ両親と死別した赤子を拾い、フルトゥナがコーコと名付けたその子を育て、彼女の親代わりの存在となる。周囲が「父」という呼び方を教えなかったため、コーコからも「イースト」と呼び捨てにされている。コーコが子供の頃、不治の病に冒され余命幾ばくもない状態となったが、フルトゥナによって人工的に霊体化させられた。
ルン
桶屋風太の前に突如現れた幽霊。薄い桃色の髪をツインテールにした少女で、快活な性格をしている。フォンの過去生を見た風太が、名前を思い出して呼んだ事で現在に現れた。風太の過去生であるフルトゥナに深くかかわる存在で、フルトゥナからスピリットサークルを預かっており、風太に会った際に渡している。フルトゥナの命に従って行動しているが、細かい部分は知らされておらず、その真意も知らない。行くあてもないため、風太を「マスター」と慕い、彼と行動を共にするようになっている。明るく無邪気な性格からイーストや石神鉱子とも仲がよく、鉱子と風太の仲をイーストとよくいっしょになってからかっている。またコスプレが趣味で、よく気に入った服装を着ては遊んでいる。その正体はフルトゥナが死んだ子供の霊を使って作り出した人工精霊。生み出された当初は子供のような姿をしていたが、コーコ、イースト、フルトゥナと過ごすうちに成長し大人となった。コーコ達と過ごす内にフルトゥナのやる事に疑問を抱き始めたが、最後まで彼と行動を共にした。
高山 大樹 (たかやま だいき)
中学2年生の男子生徒で、いつも穏やかな笑みを浮かべている背の高い少年。歴史部に所属している。桶屋風太のクラスメイトで、友人達からは「ダイキ」と呼ばれている。人当たりのいい性格と優しそうな雰囲気から仲間達から信頼される好人物。テストでは毎回学年3位以内に入っている。過去生はグラス、アルボル、和尚、タリオ、タエで、風太の過去生ともよくかかわっている。
真城 鉄馬 (ましろ てつま)
中学2年生の男子生徒。三白眼が特徴の活発な雰囲気を漂わせた少年。桶屋風太のクラスメイトで、友人達からは「テツ」と呼ばれている。風太と同じく成績は悪いが、運動は得意で陸上部に所属している。海島水乃とは遠い親戚同士で同じ道場に通う仲。付き合いが長いため水乃とは兄妹のような関係になっており、道場帰りなどよくいっしょに帰っている。過去生はスティール、クティノス、刃九狼、アイゼン、テンコで、風太の過去生ともよくかかわっている。真城鉄馬本人は覚えていないが、刃九狼の時交わした約束を現代で風太と果たした。
野々村 雅火 (ののむら みやび)
中学2年生の女子生徒。背が高くおっとりとした少女で、長い髪を日によって違う形にセットしている。桶屋風太のクラスメイトで、友人達からは「ノノ」と呼ばれている。風太と同じく美術部に所属しており、彼の事を強く意識している。傍目からはバレバレだが、風太本人には気づかれていない。海島水乃と仲がいいためよくいっしょに行動している。石神鉱子が転校して来てからは風太と鉱子の仲を疑っており、時に風太に大胆な行動を取っている。過去生はレイ(第三)の友人の少女、ハラーラ、朱里、カロル、野々宮となっている。
海島 水乃 (うらしま みずの)
中学2年生の女子生徒。小柄な体型の眼鏡をかけた少女で、ウェーブのかかった髪形をしている。桶屋風太のクラスメイトで、友人達からは「ウミ」と呼ばれている。強気で面倒見のいい性格をしており、少し内気な部分がある野々村雅火の恋をそれとなく助けている。また真城鉄馬とは、遠い親戚同士で幼い頃から兄妹同然の付き合い。鉄馬とは同じ道場で鍛えているらしく、柔道部に所属し副部長を務めている。好きな人を風太にこっそり教えたが、ばらしたら柔道の技をかけると脅している。過去生はレイ(第三)の友人の少女、リハネラ、璃浜、リフル、桶谷風子の同級生となっている。海島水乃本人は覚えていないが、璃浜の時交わした約束を現代で風太と果たした。
桶屋 桃吉 (おけや とうきち)
桶屋風太の父親。中学二年生の風太が語ること一つ一つを中二病ゆえの行動だと考え、彼に積極的に中二病会話をふってくる。
桶屋 砂和 (おけや さわ)
桶屋風太の母親。おだやかな笑顔を絶やさない女性。現在子供を身ごもっている。
フォン
桶屋風太の第二の過去生。風太に似た雰囲気を持つ褐色肌の少年で、太古の時代を生きていた。靴屋の息子ながら生まれつき精霊を見る魔力を持っていたため、その能力を隠しながら過ごしていた。レイ(第二)にその能力を知られるも、その能力でレイの母親の病気に効く薬草を見つけたため、以降レイと恋仲になる。しかし、レイが8年に一度行われる「生贄の儀式」に選ばれた事でその関係は崩れ去ってしまう。精霊が見えるゆえ、精霊が血を求めていない事を知っており、義憤に駆られて生贄の儀式に乱入するも、レイはすでに死亡し、フォン自身もストナに返り討ちに遭って死んでしまう。志半ばで死んだ事で、その憎悪は過去生の中でも一際強く残っている。また彼の死後、「生贄の儀式」を廃止しようとした勇者として村人達から祀られたが、皮肉にも「勇者フォンに捧げる生贄の儀式」が生まれてしまった。死して尚、憎しみに囚われ続けていたが、その果てに再びレイと巡り合った事で正気を取り戻し、最終決戦では風太に力を貸した。
ストナ
石神鉱子の第二の過去生。鉱子に似た雰囲気を持つ褐色肌の少女で、太古の時代を生きていた。村の有力者である神官の家の生まれで、8年に一度、「生贄の儀式」を執り行っていた。生贄に選ばれたレイ(第二)を殺し、レイ(第二)を助けるため儀式に乱入したフォンを首をはねて殺した。そのため、フォンからは仇として深く憎悪されている。実は「生贄の儀式」は飢饉や天災で村人が暴動を起こさないようガス抜きのために行っており、村の運営にはなくてはならない物だった。ストナ自身、儀式の必要性や村の腐敗に疑問を抱いていたが、犠牲を最小限にすべく動いていた。その後、フォンの行動に後押しされた儀式反対派によって「生贄の儀式」は廃止されたが、「勇者フォンに捧げる生贄の儀式」という新たな儀式の第一の生贄となって死亡した。
レイ(第二) (れい だいに)
フォンの恋人。褐色肌の少女で、精霊が見えるフォンに母親を救ってもらって以降、彼と恋仲となった。明るく屈託のない性格をしており、8年に一度行われる「生贄の儀式」に選ばれた際にも、笑顔でフォンに接した。ストナによって心臓をくり抜かれて死亡した。実はフルトゥナの師匠「レイ(第一)」の転生体で、その魂はレイ(第三)へと転生した。
ヴァン=フランティア (ゔぁんふらんてぃあ)
桶屋風太の第三の過去生。風太に似た雰囲気を持つ騎士の青年で、中世の時代を生きていた。貴族フランティア家の長男で王命により村人を惑わす黒髪の魔女の討伐を行った。しかし黒髪の魔女に、死の間際の抵抗で頬に呪いの焼印を刻まれた事をきっかけに、呪われし者として勘当され、騎士団からも追放された。この焼印は魂に刻まれているために転生後も残り、風太の頬にも痣として現れている。勘当後は放浪の末、とある岬に居を構える。フランティア家の家督を継ぐにあたって、長男の存在を目障りに思った弟から暗殺者を送られつつも、その一人スティールを懐柔し、気の合う仲間であるグラス、シエロと共に騒々しい日々を過ごしていた。月日が経ちグラス、スティールと死別したあとは、家の前に捨てられていた赤子を拾って育て始める。レイ(第二)の生まれ変わりであるその赤子を、ふと思いついた名前としてレイ(第三)と名付けた。以降は彼女の成長が生き甲斐となる。年頃になり、老い先短い自分の代わりにレイ(第三)を守ってくれる存在として、彼女の婿を探す旅をしていたが、その途中に事故で足を滑らせ、レイ(第三)に看取られながら息を引き取る。
黒髪の魔女 (くろかみのまじょ)
石神鉱子の第三の過去生。本名は不明の中年の女性で、中世の時代の森の中に居を構え住んでいた。教会から王に討伐依頼が出ており、王命を受けた騎士ヴァン=フランティアによって討伐される。死の間際にヴァンの存在を恨み、暖炉の中で焼けた石を使って彼の魂に呪いを刻み込んだ。実は魔女ではなく、森に住んでいたただの薬草師で、村を襲っていた流行病を治療する薬を作っている真っ最中だった。周囲の村では教会以上に慕われていたため、目障りに思った教会から人心を惑わす存在というレッテルを貼られ討たれた。村を救う薬は完成間近だったらしく、自分の死後は村がどうなったのか気にかけていた。
スティール
真城鉄馬の過去生。鉄馬に似た雰囲気を持つ無精ひげが生えた青年で、暗殺を生業としている。ヴァン=フランティアがフランティア家から勘当されたあと、彼を殺す依頼を引き受けて彼の前に姿を現した。依頼は彼の存在を疎んだ弟から受けた物で、ヴァンにより大きな金額で雇われた際に、洗いざらいすべてヴァンに伝えている。ヴァンの用心棒として彼と共に暗殺者と戦いながら、ヴァンやグラスを悪友として酒びたりの生活を過ごしていたが、月日が経ったある日、町で酔ってケンカをした際にそのまま死んでしまった。
グラス
高山大樹の過去生。大樹に似た雰囲気を持つ中年の男性で、非公認の遍歴説教師として旅をしている。破戒僧とも例えられる性格で、酒と肉を好む乱暴者。説法もほとんどが教会批判で、民衆からもうさんくさい存在と思われている。子供のシエロを手なずけており、彼といっしょに行動している。持っている聖書も教会から盗んだ物で、ヴァン=フランティアの住処が追っ手から隠れるのに丁度いいと居座った。ヴァンやスティールと悪友として過ごしていたが、月日が経ったある日、酔って井戸に落ちてそのまま死亡。彼の亡骸は荼毘に付され、シエロが彼の骨壷を持って故郷に帰った。
フロウ
桶屋風太の第四の過去生。風太に似た雰囲気を持つ石工職人の青年で、町の工房では一番の腕前を持つ職人だった。スフィンクスを作るというアルボルの依頼で、遠い異国の地で仕事をする事となる。「誰にも似ていない顔」のスフィンクスを作るように依頼され、砂漠で見た猫をモデルにスフィンクスを作ったが、出来栄えは納得できる物ではなく秘かな心残りとなっていた。また仕事中、雇い主の娘であるロカと出会い、彼女に自分達の過去生の因縁を聞かされた。今生では直接ロカと敵対する事はなく、お互いを認める節もあったが、彼女の話に付き合ったせいで仕事が長引き、工房の親方の死に目に会えなかったため彼女の事を少し恨んだ。またスフィンクスの仕事をやり遂げた事で名声を得て「スフィンクスさん」と呼ばれるようになったが、フロウ本人は肝心の作品の出来に満足が行かず、やり直しもできないためずっとそれを苦痛に感じていた。老人となったあと、唯一自分を名前で呼んでくれた妻とも死別し、誰も名前を呼んでくれない事に未練を抱きながら死亡した。
ロカ
石神鉱子の第四の過去生。鉱子に似た雰囲気を持つ褐色肌の少女で、異国の占い師。アルボルの娘でもあり、雇い主の娘という立場を利用してフロウを呼びつけた。占いによって限定的な過去生の記憶を持ち、フロウと自分の因縁を何とかしたいと考えていた。ただし、具体的な方策は思いつかずに、結局直接的な争いは起きず、そのまま別れる事となった。フロウの事は嫌っていたが、その石工としての腕は認めていた。実はフロウと別れたあと、民に教育を施そうとしていたアルボルをうとましく思った王に、フロウが作ったスフィンクスを口実にされ、アルボルや領民もろとも斬首の刑に処され殺された。
梶間 方太朗 (かじま ほうたろう)
桶屋風太の第五の過去生。江戸の世を生きる風太に似た雰囲気を持つ研師の青年。実は大名である富蘭家の当主と研師の娘のあいだに生まれた子で、正妻の子である璃浜と火次朗の異母兄。妾の子であるため後継ぎになれず、研師の祖父に引き取られて育てられた。璃浜からは兄として慕われているものの、火次朗からは自分を脅かす存在として危険視され、命を狙われている。璃浜の計らいで刃九狼を護衛につけられ、富蘭家の家臣である大林雷太に剣を習い、自分の命を狙う刺客から身を守る生活を続けていた。しかし、幕府と富蘭家が争う事となり、璃浜を助けるため戦う事を決意。璃浜を刃九狼に託し、追っ手として差し向けられた岩菜と死闘を繰り広げた。その後、右目と左手と右足を失う大ケガを負ったものの、和尚に拾われ岩菜共々九死に一生を得る。和尚に諭され、岩菜とも和解するが、璃浜と刃九狼の無事を確かめるべく無理をしたせいでケガが悪化し死亡した。死後、和尚に礼をしたいと心残りを抱えて霊になったが、和尚と酒を飲み交わし成仏する。璃浜や刃九狼と交わした再会の約束は、遥かな未来で風太と真城鉄馬、海島水乃が果たした。
岩菜 (いわな)
石神鉱子の第五の過去生。江戸の世を生きる鉱子に似た雰囲気を持つ女性。江戸幕府の使者として富蘭家を訪れ、素行の悪い火次朗は後継ぎとして不適格だと告げ挑発し、幕府と富蘭家の戦いを誘発した。璃浜を捕らえるため追っ手として梶間方太朗と死闘を繰り広げた。その後、左目と右手と左足を失う大ケガを負うものの、方太朗と共に和尚に拾われ九死に一生を得る。和尚に諭され、方太朗とも和解するが、仲間の生死を心配する方太朗といっしょに約束の場所に向かったせいでケガが悪化し方太朗と共に死亡した。元は西の有力者の娘で、家が取り潰された際に忍の頭目に情けをかけられて生き残った。侍は戦を広げる存在として嫌悪しており、彼等の存在を放逐し、平和な世を作る目的で幕府に力を貸していた。死後は心残りを残して霊となって現世に留まっていた方太朗を心配しており、彼が心残りがなくなり成仏する際には迎えに来た。
刃九狼 (じんくろう)
真城鉄馬の過去生。鉄馬に似た雰囲気を持つ黒髪の忍で、璃浜の命で梶間方太朗の護衛を任された。方太朗とは初対面から気が合い、戦闘でも息の合った連携を見せた事から無二の親友となっていく。璃浜とは身分の差があるが、お互いに気の置けない仲となっている。幕府と富蘭家の戦いが始まった際、口では富蘭家を見捨てて逃げるつもりだったが、璃浜だけは助けようと考えていた。そのため方太朗の璃浜を助けるという求めにも快く応じ、彼と共に璃浜を助けるため駆けつけた。のちに追っ手に見つかった際に、方太朗に璃浜を託され、彼女を連れて逃げ延びた。方太朗と別れる際に落ち合う場所を決めて、再会の約束を交わしており、この約束は時代を超えて桶屋風太と鉄馬が果たしている。
璃浜 (りはま)
海島水乃の過去生。水乃に似た雰囲気を持つ黒髪の少女で、富蘭家の当主の娘。火次朗は実の兄で、妾の子である梶間方太朗は異母兄の関係となっている。父親と火次朗の事を嫌っており、方太朗を実の兄として慕っている。根無し草の刃九狼を方太朗の護衛として雇ったり、大林雷太を丸め込んで方太朗の剣の師匠にしたり、年齢の割りに意外と強かな面を持っている。刃九狼とは身分の差があるが、お互いに気の置けない仲となっている。幕府と富蘭家の戦いが始まった際、方太朗と刃九狼に助け出され、無事逃げ延びた。道中、追っ手を倒すため殿に残った方太朗と離れ離れになり、これが今生の別れとなる。しかし時代を超えて、桶屋風太と水乃が再会を果たしている。
ラファル
桶屋風太の第六の過去生。34世紀の未来の世界を生きる風太に似た雰囲気を持つ「亜生者幽眠管理センター」で働く青年。幼い頃にアリオンのテロに遭って、両親と仲のよかった親戚のアイゼンとリフルに死別。ラファル自身も左手と右足を失った。そのため、現在のラファルの左手と右足は高性能な義肢となっている。ラピスは1か月先輩で、自分と同じように義肢を使っていたためすぐに打ち解け、彼女から仕事について色々教わった。のちにラピスと共にスパスシフィカを目撃した事で、所長のタリオに次の所長だと任命される。その際に世界の真実と亜生者幽眠管理センターの真の姿を教えられた。タリオの死後、ラピスと共に正式に所長に就任。さらに前々所長のクラーロが残し、タリオが治療していたカロルの存在を知らされる。そしてカロルのためラピスと偽装結婚し、カロルを娘として引き取った。家族三人で幸せな時間を過ごしていたが、スパスシフィカの残した警告と、アッシュから伝えられた情報で考え方を変容させ、最終的にラピスと銃を突きつけ合って戦った。最後はブラックホール兵器の暴発でラピスと共に消滅した。
ラピス
石神鉱子の第六の過去生。34世紀の未来の世界を生きる鉱子に似た雰囲気を持つ「亜生者幽眠管理センター」で働く女性。幼い頃に父親に人体実験紛いの虐待を受けており、その時に右手と左足を勝手に義肢に取り替えられた。仕事場ではラファルの1か月先輩で、彼の教育係を任された。自分と同じように義肢を使っているためラファルともすぐに打ち解け、いっしょに行動するようになった。のちにラファルと共にスパスシフィカを目撃した事で、所長のタリオに次の所長だと任命される。その際に、世界の真実と亜生者幽眠管理センターの真の姿を教えられた。タリオの死後、ラファルと共に正式に所長に就任。さらに前々所長のクラーロが残し、タリオが治療していたカロルの存在を知らされる。ラピス自身が父親に受けたトラウマからカロルの力を呪いと考えており、彼女にその力を使わず幸せになってほしいと祈っている。豹変したラファルを止めるため、最終的にラファルと銃を突きつけ合って戦った。最後はブラックホール兵器の暴発でラファルと共に消滅してしまう。
桶谷 風子 (おけや ふうこ)
桶屋風太の第七の過去生。平行世界の異なる歴史を歩んだ日本に生きる風太に似た雰囲気を持つ少女。好奇心旺盛な性格で、勉強が得意。同級生の野々宮に告白されていたが、関係が壊れるのを恐れて踏み出せずにいた。夏休みを利用して巨大空中静止体「不二屋根(ふじやね)」の正体を確かめるべく同級生達と霊峰不二を訪れる。その際、石神井と共に仲間達とはぐれてしまうが、そこでネコロボと二人の宇宙人と遭遇する。宇宙人達のやり取りは意味不明で、最後は虫取り網をお土産に持たされて帰された。その後は地質学者になって平凡な人生を送ったため、フルトゥナからもその人生は平坦で見所がないと思われていたが、実は渡された虫取り網の正体は「ソウルキャッチャー」と呼ばれる重要なアイテムで、風太がのちに桶谷風子から受け取りフルトゥナに対抗するため使った。
石神井 (しゃくじい)
石神鉱子の第七の過去生。平行世界の異なる歴史を歩んだ日本に生きる鉱子に似た雰囲気を持つ少年。鉱子と同じく額の部分にバツ印の傷がある。面倒見のいい性格をしており、あくまでキャンプをしたいと言いつつも、桶谷風子の巨大空中静止体「不二屋根(ふじやね)」の正体を確かめるという目的に付き合っている。山で風子と共に仲間達とはぐれてしまうが、そこでネコロボと二人の宇宙人と遭遇する。宇宙人達のやり取りは意味不明で、最後は額のバツ印の傷を消してもらい、送り出された。
フルトゥナ
桶屋風太の第一の過去生。異界に生きる風太に似た雰囲気を持つ水色の髪の少年。若年ながら独自の式を作り出す霊学の天才だが、そのあまりの天才ぶりのために孤立していた。師であるレイ(第一)のみが彼の唯一の理解者だったが、禁忌を犯してルンを作った際に、その感性を危険視され破門された。その後ルンを育てつつ、イーストを弟子に取ったが、レイの死で初めての挫折を味わう。失意の時間を過ごしていたがイーストがコーコを拾い、四人で家族の時間を過ごした事で少しずつ癒やされた。しかしイーストがレイと同じ不治の病に冒された事で、たがが外れたように研究に没頭するようになり、スピリットサークルを生み出す。イーストを助けるために町ひとつを滅ぼしながら少しも罪悪感を感じず、その姿を見たコーコから決別され、イーストもコーコについて行った。その後は所業がばれ、ルンと共に逃亡生活を送っていたが死霊をあやつる術を作り、西都を制圧。「死霊王」と呼ばれるようになり、成長したコーコと対決した。自らが新たな宇宙になる野望を秘めており、コーコとの対決、未来生の桶屋風太の存在を利用する謀略を張り巡らしている。
コーコ
石神鉱子の第一の過去生。異界に生きる鉱子に似た雰囲気を持つ水色の髪の少女。赤子の時に両親が狼に襲われ死亡し、イーストに助け出されそのまま拾われた。両親からは「レイ」と名付けられていたが、フルトゥナが神話に登場する雪の賢者から名前を取り「コーコ」と名付けた。霊感があり、頭脳明晰なためフルトゥナより霊学を教えられ、才能を開花させていく。そのため幼い年齢の少女にもかかわらずスピリットサークルの構造式を見て、フルトゥナの企みにも気づいた。イーストの危機を救おうと考えつつも、そのために罪のない人間を犠牲するフルトゥナの異常性を嫌悪し、彼と決別した。その後、霊学者に育てられ、イーストがフルトゥナより渡されたスピリットサークルを手に戦うようになる。コーコ自身がフルトゥナを止めれなかった事で、フルトゥナが罪を重ね人類の敵になってしまった事を悔やんでおり、彼を自らの手で殺すため戦った。最終的にフルトゥナと相打ちになったが、その際にフルトゥナに呪われ未来生で何度も出会う事となった。現在の鉱子の意識にも色濃く影響をもたらしており、桶屋風太の存在を危険視している。
フランベ
レイ(第一)の弟子で、フルトゥナの兄弟子。鋭い目つきに髪の毛が逆立ったツンツン頭をした青年で、強気な性格をしている。フランベの兄弟子だが、異様な天才性を見せつけるフルトゥナに劣等感を抱いており、次第に彼を避けるようになった。フルトゥナが破門されて以降もレイ(第一)を師として付き従った。彼女が死んだ以降もその教えを忠実に守っていたが、フルトゥナが全世界に宣戦布告した際には、その禁を破って獣型の人工精霊を作り、イーストに託している。その後、教えを破った罰として自死した。彼がフルトゥナに抱く劣等感は彼の未来生にも大きな影響を与えている。ヴァン=フランティアの弟、火次朗、アッシュへと転生している。
大林 雷太 (おおばやし らいた)
富蘭家に仕える中年男性。刀を携えている。よくも悪くもまっすぐな性格で、火次朗に梶間方太朗が謀反人だと吹き込まれ、彼を殺すため現れた。その後、逆に璃浜に丸め込まれ、方太朗に身を守るための剣を教えた。富蘭家と幕府が戦う事になった際、勝ち目がないのを承知で残った。その後、璃浜の逃げる時間を稼ぐため、方太朗と共に殿として追っ手と戦った。気合で馬をひるませるほどの猛者で、多数の追っ手と戦い続けたのち死亡した。実は死後もその執念によって現世をさまよっており、現代の桶屋風太が住む団地でも「落ち武者の幽霊」と目撃されていた。スピリット・サークルを手に入れたばかりの風太によって消滅させられてしまう。のちに風太は、落ち武者の幽霊の正体に気づいた際に動揺したが、スピリット・サークルで魂が在るべき場所に還ったと知り、安堵した。
レイ(第一)
フルトゥナの師匠で、理知的な女性。名前は神話に出て来る戦いの女神「レイ」が由来となっている。町唯一の霊学者で、フランベとフルトゥナを弟子に取り、彼等を育てた。当時、異質さから孤立していたフルトゥナにとって唯一尊敬された人物だが、フルトゥナが禁忌を犯してルンを生み出した事をきっかけとして彼を危険視し、破門する。その後、フルトゥナとは顔を合わせる事はなかったが、不治の病に冒された際に一度だけ彼と顔を合わせた。間もなくして病死したが、彼女の死はフルトゥナに初めての挫折として大きな影響を与えた。彼女の魂はレイ(第二)やレイ(第三)へと転生し、フルトゥナの未来生であるフォンやヴァン=フランティアとも深くかかわった。
ネコロボ
カロルが作った二頭身の猫型のロボット。フロウの作った猫顔のスフィンクスに似た姿をしている。カロルはアニメのキャラクターをモデルにして作ったらしく、ラピスをはじめ亜生者幽眠管理センターの職員に好評だった。実はかなり高性能なAIを積んでおり、自らの判断で行動して会話するだけではなく、カロルによって秘かに亜生者幽眠管理センターの所長権限すら与えられている。そのため、ラファルが亜生者幽眠管理センターのロボットの動きを止めても自力で稼動し、ラファルとラピスの殺し合いを止めるべく行動した。二人をお互いの銃弾からかばって被弾する。その後、ラファル達と共にブラックホール兵器の暴発に巻き込まれて破壊されたと思われていたが、桶屋風太は桶谷風子の過去生で修理されたネコロボの姿を確認している。
レイ(第三)
ヴァン=フランティアの家の前に捨てられていた女児の赤子。レイ(第二)の転生体で、ヴァンは無意識の内に彼女の名前をつぶやき、赤子にレイ(第三)と名付けて引き取った。ヴァンと共に町外れの農家の世話になって育ち、明るく快活な少女へと成長した。母親の事は、駆け落ちした末に病気で死んだと、ヴァンより噓を教えられている。また噓が噓を呼び、ヴァンは若い頃はスティールやグラスと大冒険したと聞かされている。レイ(第一)、レイ(第二)の過去生の記憶をうっすらと持っており、スティールやグラスが死んで一人ぼっちのヴァンを見た際に、神様に送り出されたと語っている。年頃の乙女へと成長した際に、年老いたヴァンがあとを託せる婿を探すべく、二人でいっしょに旅に出た。しかし道中でヴァンが足を滑らせ頭を打って死亡したため、彼の死を看取る事となる。ヴァンの死後は近くの村で暮らし、村の少女達とも友人となった。
アッシュ
フランベの未来生。フランベに似た雰囲気を持つ青年で、アリオンに所属しテロリスト活動をしていた。ラファルと同じ施設で育ったため、彼とは顔見知り。彼に並々ならぬ対抗心を抱いているが、自身の直情的な性格を自制する意志を持っている。アリオンの理念には共感しているが、組織が暴走を始めている事を危惧しており、ラファルが組織に命を狙われている事を伝えた。その後は利害の一致からラファルと手を組み、彼から旧時代の文明の武器を受け取る見返りに、アリオンの組織内情を彼に教えた。アリオンで開発されているブラックホール兵器を危険視しており、ラファルの決起に足並みを揃えてアリオンでクーデターを起こした。しかしクーデターは、ブラックホール兵器の暴発という最悪の結果を迎えて失敗した。
スパスシフィカ
桶屋風太がフルトゥナの過去生で見た謎の人物。全身を厚手のローブで覆い、顔部分も隠しているため、性別も年齢も不明。スピリット・サークルの存在を危険視し、フルトゥナから取り上げるため姿を現しており、風太は断片的ながらそのシーンを偶然目にし、重要な情報だと認識した。その正体は星霊で、魂の管理者とも言うべき上位存在。基本的に現世に大きな干渉はせず、大きな力を持つ者や間違った方向に向かう者の前に現れて忠告をしている。亜生者幽眠管理センターの歴代所長の前にも姿を現し、彼等に忠告をした。スピリット・サークルを生み出したフルトゥナの前にも姿を現して忠告したが、聞き入られなかった。その後、フルトゥナがスピリット・サークルで地球を飲み込もうとした際には、巨大化しスピリット・サークルの力を無効化した。
カロル
野々村雅火の過去生。雅火に似た雰囲気を持つ幼い少女。亜生者幽眠管理センターの地下で冷凍睡眠していた。クラーロ所長の娘で、政府によって禁止された技術で遺伝子を改変された「デザイナーベイビー」。強く生きていけるように「超人」として肉体改造されているが、その副作用として回復力が暴走している状態だったため冷凍睡眠されていた。その後、治療方法を確立していた最中にクラーロが死亡。後任のタリオが引き継いで治療法の確立までこぎ着けていたが、彼も不慮の事故に遭って死亡してしまった。そのため、新たな所長となったラファルとラピスに娘として引き取られた。頭脳明晰で、自力でネコロボを作るほど機械に強い。またタイムマシンの研究をしており、時空点を観測する探査機を自力で完成させていた。亜生者幽眠管理センターの職員であるエリヤと付き合っており、ラファルは決起前に彼女達が騒動に巻き込まれないように旅行に送り出している。その後、ラファル達と共にブラックホール兵器の暴発に巻き込まれて死亡したと思われていたが、実は生き延びており、彼女が修理したネコロボが桶谷風子の過去生で確認されている。
集団・組織
アリオン
34世紀の地球で活動している反社会組織。技術の発展によって人が死にづらく、新しく生まれづらい時代となっており、技術を封印する事で人類を存続させる事を理念としている。そのために最先端技術が集まった場所を中心に破壊活動を行っており、ラファルも、彼等が起動エレベーターで起こしたテロ活動に巻き込まれて、両親や親戚と死別している。実は行き過ぎた技術を封印するという目的自体は政府と一致しており、政府の一部から支援を受けている。ただし政府もアリオンも一枚岩ではなく、内部にいくつもの派閥が存在し、意見を対立させている。アッシュはアリオンの理念に賛成しているものの、そのために研究しているブラックホール兵器を危険視しており、これを封印すべきだと考えている。のちにアッシュが仲間達と共にクーデターを起こしたが失敗。敵も味方もすべてブラックホール兵器の暴発で消滅した。本来の名前は「アリオーン」で、組織内ではこちらの名前で呼ばれている。些細な違いだが当人達にとっては重要な部分らしく、フルトゥナはこの合言葉を解読して、暗黒盆地に眠るアリオンの遺産を手にした。
場所
亜生者幽眠管理センター (あせいしゃゆうみんかんりせんたー)
34世紀の未来の世界で、ケガや病気で体を失った人間の脳を保管する施設。保管された脳は「亜生者」と呼ばれ、専用の設備で大切に保護され、電気信号で幸せな夢を見続ける。そのためこの施設は「寝台」の通称で呼ばれる。最も古い亜生者は300年以上ずっと幸せな夢を見続けており、亜生者になった者の死亡者数は0となっている。亜生者幽眠管理センターは世界中に存在し、ラファルが務めている亜生者幽眠管理センターだけでも1億人の亜生者が眠っている。実は亜生者幽眠管理センターの所長には、現在伝えられている歴史が噓で、世界の真実が知らされており、政府に封印された技術を使って人類が生き残る手段を模索するのも役目とされている。アリオンにとっても行き過ぎた技術の象徴で破壊の対象となっており、同組織では「墓」と呼ばれている。
その他キーワード
ソウルキャッチャー
第六の過去生で、桶谷風子がタコ型宇宙人からお土産としてもらった虫取り網。フルトゥナですら知らなかったが、その正体はフルトゥナを倒すために外星系観測者が用意したアイテム。魂に触れ、干渉する事が可能なアイテムで、転生して魂だけの状態になっていても、風子は手にしていた。桶屋風太がフルトゥナに体を乗っ取られた際に精神世界で風子より受け取り、その本来の機能を発揮してフルトゥナを封じ込めた。
過去生 (かこせい)
魂が持つ、生まれる前世の記憶。本来は無意識以下の記憶に封じ込められており、表に出て来る事はないが、何らかのきっかけで既視感を感じたり、占いや夢で断片的に思い出したりする。桶屋風太と石神鉱子はスピリット・サークルによって高いレベルで過去生を追体験し、その知識や記憶を自らに統合している。ただし、高いレベルの過去生との同調は大きな負担も与えており、風太は複数の自我に飲み込まれて自身が誰かわからなくなったり、鉱子はコーコの強い憎悪と使命感に影響を受けていたりしている。また「過去」生と言われているが、魂は物質世界の時間に囚われないため、未来や平行世界などあらゆる時代や場所から転生する。同時代に同一人物の魂が複数存在する事もあり、魂の転生運動は壮大なものとなっている。
スピリット・サークル
石神鉱子が持つフラフープのような形をした環状のアイテム。鉱子に襲われたあと、ルンの出現と同時に桶屋風太も手にした。魂に干渉する力を持ち、過去生を一つ思い出す事に数字の記された火の玉が灯る。風太はスピリットサークルを過去生を思い出すのに使っている。その正体は風太の過去生であるフルトゥナが作り出した「次元干渉環」。完全無属性の万能霊素で構成されており、霊素を取り込む事でさまざまな現象を引き起こす事が可能な道具となっている。灯される炎は属性を表す「霊火」で霊素を充分に吸収する事で灯る。不治の病に冒されたイーストを救うべく研究を開始したフルトゥナが完成させ、その後、イーストからコーコへと手渡された。その後、フルトゥナも自分用の新たなスピリット・サークルを作り、自らの未来生を覗いたり、死霊兵を生み出すのに使った。コーコとフルトゥナが相打ちとなったあと、フルトゥナの企みで風太と鉱子に手渡される段取りが整えられた。使い方によっては宇宙そのものをエネルギーとして吸収し、自らが新たな宇宙となる事も可能なため、スパスシフィカからその存在を危険視されている。