あらすじ
第1巻
これまで何度も異世界召喚を経験してきた高山亜流人は、経験値を積み重ねて、知力以外は最強のステータスを持つ「勇者」に成長した。そんなある日、亜流人は再び異世界、セレスティア王国に召喚されてしまう。しかし今回は一人ではなくクラスメイトもいっしょで、亜流人は面倒を回避するために勇者になることを拒否。そして亜流人は自らのランクを最底辺の「F」に偽装して、異世界生活を楽しむことにする。そんな亜流人だったが、ランク「D」の石川由菜、香川みう、長野ひとみの美少女三人と、クラス内で最弱のパーティーを組むことになってしまう。とりあえず自分たちのランクを上げたい三人は、ギルドをとりまとめているマキシと、その娘のリリィに会いにいく。そこで、亜流人が自分のランクを偽装していることを見抜いたリリィは、本当の力を知りたいと戦いを挑む。一方、以前ひとみを襲おうとして亜流人に返り討ちに遭った隅田京馬は、彼を憎むあまり、心のバランスを崩していた。そんな隅田の様子を見たアウラは、魔王のエリザベス討伐のために彼を捨てゴマとして利用しようと画策する。
第2巻
アウラによって闇の力を与えられた隅田京馬は暴走し、クラスメイトに危害を加えていく。しかし、高山亜流人が本来の力を発揮したことと、成長した石川由菜、香川みう、長野ひとみが力を合わせたことにより、隅田は倒される。こうして再び魔王のエリザベス討伐に向け、由菜たちは自分たちのランクをさらに上げようと、リリィによる厳しい訓練を受けることになる。一方の亜流人はヒマを持て余し、街でアルバイトすることにする。そこで亜流人は商人のロココと出会い、彼女のもとでアルバイトを開始する。大量の魚を仕入れるために人手が欲しいというロココのため、亜流人は由菜、みう、ひとみにも協力を依頼し、海辺の街へと急ぐ。そこは魚を生で食す文化のない街で、マグロに似た魚が廃棄されていた。そこで亜流人たちは「マグロの刺身」を住民に提供して、大儲けすることに成功する。こうして亜流人たちはさらに絆を深めていくが、その中で亜流人とひとみの距離が急接近する。一方、以前から亜流人に思いを寄せていた由菜の心に、焦りと嫉妬心が芽生えていく。
第3巻
海辺の街で「マグロの刺身」の商売を始めた高山亜流人の前に、巨大な力を持つ亜流人の存在に気づいた魔王のエリザベスが現れる。しかしエリザベスも、知力以外は最強のステータスを持った亜流人には勝てず、あっけなく敗北する。このままエリザベスにとどめを刺せば日本に帰れることになるが、エリザベスの部下たちは、すべての黒幕はアウラだと暴露する。エリザベスが部下のモンスターを守りたい一心で暴れていたと知った亜流人は、エリザベスの罪を許し、彼女を討伐する以外の方法で日本に戻ることを決意する。そんな中、海ではモンスターのリヴァイアサンがたびたび船を襲うため、漁師たちは思うように仕事ができずに困っていた。それを聞いた亜流人とエリザベスは、リヴァイアサンの暴走を止めるため、船に乗り込む。
関連作品
小説
本作『クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。』は、かわち乃梵天丸の小説『クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。』を原作としている。原作小説版は、かわち乃梵天丸が「小説家になろう」に投稿していたもので、双葉社Mノベルスから刊行された。イラストはヨシモトが担当している。
登場人物・キャラクター
高山 亜流人 (たかやま あると)
高校生の男子。人と積極的にかかわろうとしない冷めた性格の持ち主。そのためクラス内で浮いており、一部の男子生徒からは軽いからかいやいじめを受けることもある。これまで何度も異世界召喚を体験しており、獲得してきた経験値から、知力以外は最強のステータスを持つ。このため、魔王と呼ばれ恐れられているエリザベスも、道具をいっさい使わず一撃で倒すことができる。これまでは一人で異世界召喚を繰り返していたが、今回はクラスごと「セレスティア王国」に転移されてしまう。勇者になってクラスを統率するのも面倒だと考え、高山亜流人自身の職業を「商人」、ランクでいうところの「F」に所属する最弱ステータスだと偽装する。同じく低いランクのために価値がないと判断された石川由菜、香川みう、長野ひとみの三人とクラスで最弱パーティーを組み、異世界生活を楽しむことにする。しかし、亜流人の最弱ステータスはあくまで偽装であり、実際は最強のステータスを自由に使うことができる。荒川幸太郎と隅田京馬からは「バカ山」と呼ばれ、異世界でも見下されている。
石川 由菜 (いしかわ ゆな)
高校生の女子。高山亜流人のクラスメイト。学校では生徒会長を務める優等生で、いじめを受けている亜流人を強い正義感から助けていた。明るく素直な性格の美少女で、物事を深く考えることが苦手。異世界、セレスティア王国に召喚されてからは、職業が「僧侶」になる。割り振られた能力が低いことから、ランクは「D」に属している。そのため、クラスメイトから価値がない存在だとして仲間から排除されたが、攻撃力のステータスだけは高く、亜流人からは「ゴリラ並みのパワー」と評されている。セレスティア王国では亜流人、香川みう、長野ひとみの三人とパーティーを組み、行動を共にする。亜流人が最弱ステータスに偽装していることは気づいていないが、一度敵に襲われたところを助けられており、強いことは知っている。また、救われたことをきっかけに、亜流人に対して密かに好意を抱くようになる。
香川 みう (かがわ みう)
高校生の女子。高山亜流人のクラスメイト。実年齢よりも幼く見えるかわいらしい容姿をしているが、毒舌家で言いたいことははっきりと口にするタイプ。異世界、セレスティア王国に召喚されると、割り振られた能力が低いことから、ランクは「D」に属している。そのため、クラスメイトから価値がない存在だとして仲間から排除された。セレスティア王国では亜流人、石川由菜、長野ひとみの三人とパーティーを組み、行動を共にする。
長野 ひとみ (ながの ひとみ)
高校生の女子。高山亜流人のクラスメイト。胸が大きく、露出度の高いコスチュームを身につけている美少女。おっとりとした優しい性格ながら、いざという時には芯の強さを発揮する。異世界、セレスティア王国に召喚され、割り振られたランクは「D」に属している。そのため、クラスメイトから価値がない存在だとして仲間から排除された。ランクは低いものの、氷系の特殊スキルを使用できる。セレスティア王国では亜流人、石川由菜、香川みうの三人とパーティーを組み、行動を共にする。
荒川 幸太郎 (あらかわ こうたろう)
高校生の男子。高山亜流人のクラスメイト。学校では周囲とかかわろうとしない亜流人を隅田京馬といっしょにからかい、いじめて楽しんでいた。異世界、セレスティア王国に召喚されてからも、自分よりランクの低い亜流人を見下している。職業は「戦士」で、ランクは「B」に属している。しかし、戦闘で使える特殊スキルを割り振られておらず、亜流人からは「D」以下だと酷評されているが、荒川幸太郎自身は強いと勘違いしている。
隅田 京馬 (すみだ きょうま)
高校生の男子。高山亜流人のクラスメイト。学校では周囲とかかわろうとしない亜流人を荒川幸太郎といっしょにからかい、いじめて楽しんでいた。異世界、セレスティア王国に召喚されてからも、自分よりステータスの低い亜流人を見下している。職業は「ソードダンサー」で、ランクは「B」に属している。使用できる特殊スキルがないため、戦闘ではそれほど強くない。露出度の高いコスチュームを身につけている長野ひとみに欲情して襲おうとしたが、その際に亜流人によって力でねじ伏せられたことから、亜流人に対して強い恨みを抱いている。
委員長 (いいんちょう)
高校生の女子。高山亜流人のクラスメイト。まじめな性格の優等生で、クラスでは委員長を務めている。異世界、セレスティア王国に召喚されてからも、魔王のエリザベスを討伐して日本に帰るために、クラスメイトたちを統率している。クラス内ではランクが低いために排除されている亜流人、石川由菜、香川みう、長野ひとみにも友好的に接し、有益な情報を伝えている。セレスティア王国では田中といっしょに行動しており、ランクは「A」に属している。
田中 (たなか)
高校生の男子。高山亜流人のクラスメイト。心優しい性格で、面倒見が非常にいい。異世界、セレスティア王国に召喚されてからのランクは「A」に属している。セレスティア王国では同じくランクが「A」の委員長といっしょに行動しており、彼女のフォロー役を担っている。異世界でも委員長に対して、密かに恋心を抱いている。
アウラ
異世界、セレスティア王国の若き王女。表向きはにこやかで大らかな性格の持ち主だが、自分の国で暴れ回っている魔王のエリザベスを討伐するためには手段を選ばず、時には残酷な判断を下すことも厭わない。自分たちの住む世界とは異なる場所に勇者の反応を見つけ、高山亜流人を異世界召喚しようと試みる。あくまで亜流人一人だけを召喚するつもりだったが、誤って亜流人と共にクラスメイトごと転移させてしまう。亜流人が最弱のステータスの「商人」に偽装しているため、勇者だと気づいていない。
マキシ
異世界、セレスティア王国でギルド(冒険者たちのパーティー)の長を務める中年の男性。各ギルドを取りまとめる役割も担うリーダー的な存在で、リリィの父親でもある。自分を訪ねてきたパーティーに対して、モンスターの討伐など、冒険者たちのレベルに適したミッションを与えている。高山亜流人、石川由菜、香川みう、長野ひとみの四人が訪れた際は、あまりのレベルの低さに驚愕。魔王のエリザベスの討伐ではなく、どこかで静かに暮らした方がいいとアドバイスをした。のちに亜流人が作った日本食をヒントに商売を始めて大富豪となり、ギルドの長を廃業して金銭面で亜流人たちを支援するようになる。
リリィ
異世界、セレスティア王国で暮らす冒険者の少女。マキシの娘。ランクは「A」に属しており、自らの腕に自信を持つ。レベルの低さゆえに、マキシからミッションに参加することを拒否された高山亜流人たちを、テストしてやろうと名乗り出たことでかかわりを持つようになる。気が強く負けず嫌いな性格ながら、情に厚く面倒見のいい一面がある。亜流人が最弱ステータスの「F」ランクに偽装していることに気づいており、いつか本気の勝負をしたいと願っている。また、正義感が強い石川由菜のことを気に入っており、何かと世話を焼いている。
ロココ
異世界、セレスティア王国で暮らす少女。商人として自分の店を開業している。石川由菜たちがリリィに鍛えられているあいだ、ヒマを持て余した高山亜流人がアルバイトを始めたことで知り合う。見た目は幼いが達観した考えを持ち、亜流人たちが迷った時には的確なアドバイスを送る。
キャプテンGG (きゃぷてんじーじー)
異世界、セレスティア王国で海賊を生業にしている青年。海賊団を率いるキャプテンで、高山亜流人たちがリヴァイアサンを討伐するため、航海している際に出会う。長髪でワイルドな雰囲気を漂わせた美青年だが、少々天然気味なところがある。さらに、無駄にキャプテンGG自身の力を過信し過ぎて失敗することが多い三枚目でもある。しかし、情に厚いことから、海賊団のメンバーからは非常に慕われている。
エリザベス
異世界、セレスティア王国で「魔王」と呼ばれている悪魔の少女。討伐のために異世界から召喚された高山亜流人と敵対している。王国内で暴れまわるモンスターを統率しているリーダーで、見た目は幼い少女のように見えるが、絶大な力を持つ。亜流人と和解してからは、エリザベス自身を見逃してくれた優しさに感激し、彼に熱烈な恋心を寄せるようになる。
リヴァイアサン
異世界、セレスティア王国の海で暴れ回っているモンスター。若い女性の容姿をしている。エリザベスの支配下にありながら言うことをまったく聞かず、海に出た人間を襲い続けている。そのため、高山亜流人とエリザベスによって倒され、以降はエリザベスにいいように扱われている。本来は泳ぎが非常に達者だが、エリザべスによって泳ぐ特殊スキルを奪われてしまったため、たびたび海で溺れている。
亜流人の母 (あるとのはは)
高山亜流人の母親。夫とは死別している。女手一つで亜流人を育てており、出張が多い会社に勤めている。長期間家を空けることも珍しくなく、亜流人が異世界召喚をされてしばらく家にいなくても気づかずにいる。
場所
セレスティア王国 (せれすてぃあおうこく)
高山亜流人とクラスメイトが召喚された異世界の国。魔法や特殊能力を持つことが珍しくない冒険ファンタジーの世界で、現在は魔王のエリザベスと彼女が率いるモンスターが暴れ、国の秩序を乱している。そこで王女であるアウラが、エリザベスを討伐する力を持った勇者らしき存在の亜流人たちを召喚した。セレスティア王国に召喚された者は職業や能力が自動的に割り振られ、「ランク」と呼ばれる格付けが行われる。
その他キーワード
ランク
異世界、セレスティア王国において、個人に割り振られた能力やスキルを総合的に判断し、格付けされたもの。最強の「S」から最弱の「F」まである。ちなみにこれまでの歴史で「F」ランクになったのは、高山亜流人が初めて。亜流人が現れるまでは「D」が最弱ランクだとされていた。ただし、亜流人は本来は「S」ランクであるが、偽装しているため「F」ランクに見えているだけである。あくまで異世界召喚をされた際に与えられたランクであり、亜流人たちがこれまで暮らしていた日本で持っていた、個人の能力とは異なっている。また、亜流人は過去の異世界召喚によって得た経験値が、ランクに反映されている。なお、ランクはアウラから与えられた特殊な道具によって、誰のものでも勝手にチェックすることができる。
クレジット
- 原作
-
かわち乃 梵天丸
- キャラクター原案
-
ヨシモト
書誌情報
クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。 10巻 双葉社〈モンスターコミックス〉
第9巻
(2022-11-15発行、 978-4575415346)
第10巻
(2023-05-15発行、 978-4575416497)