概要・あらすじ
2016年2月10日、テロの脅威に対抗するため、ミリオポリスの全宗教教団のトップを集めた全宗教合同儀式が行われた。神学生である冬真・ヨハン・メンデルは、会合の結果を見届けようと居合わせたその場で、1人の女の子と出会う。だがその子と言葉を交わしているさなか、会場はテロリストの襲撃を受け、地獄絵図と化してしまう。
テロの一報を受け、会場を護衛していたMSSは、MSS要撃小隊「焱の妖精」に所属するコードネーム「紫火」の出撃を要請。その正体は冬真が出会ったばかりの女の子・鳳・エウリディーチェ・アウストだった。
登場人物・キャラクター
冬真・ヨハン・メンデル (とうまよはんめんでる)
金髪碧眼で、黒い学童服をいつも身に着けている少年。過去に事故で両親を亡くし、バロウ神父に引き取られている。宗教は争いを生むものではなく、争いをなくすものだと信じてやまない無垢な性格。大人しく穏やかで、やや臆病な性格。戦争やそれに使われる兵器を極端に嫌っており、話題にあがると語気を荒げることもある。全宗教合同儀式がテロリストに襲撃された際に鳳・エウリディーチェ・アウストに助けられ、またその後バロウがMSSの外部顧問に就任したことを受け、MSSに深く関わっていく。
鳳・エウリディーチェ・アウスト (あげはえうりでぃーちぇあうすと)
MSS要撃小隊「焱の妖精」に所属する女の子。緩やかにウェーブのかかった紫色の髪に紫色の瞳を持ち、左目を縦断する傷跡が特徴。性格は優しく穏やかで、語尾に「~ですわ」などの付くお嬢様言葉を使う。特甲児童の1人。特甲を身にまとった際は、紫色に輝くアゲハチョウのような羽と、身の丈を超えるほど長身の銃を用いて戦闘を行う。 小隊の任務がある場合には、参加する人物に3択のクイズを出し、バンソウコウを渡すという特殊な癖がある。口癖は「ご奉仕させていただきますわーっ」。
乙・アリステル・シュナイダー (つばめありすてるしゅないだー)
MSS要撃小隊「焱の妖精」に所属する女の子。青いショートカットの髪型から2本だけ細く長く伸ばした2つ結びの髪型で、青い瞳を持つ。一人称は「オレ」で、非常に乱暴かつ好戦的な性格をしている。特甲児童の1人で。特甲を身にまとった際は、青く輝くトンボの羽と、肘から先にヒートブレイドを有する装甲をまとう。 演習用のケンタウロスが暴走した際、本部からの許可もなく特甲を転送。羽もなく、両腕の特甲も性能を発揮できず、窮地に陥るなど、少々思慮の浅いところがある。
雛・イングリッド・アデナウアー (ひびないんぐりっどあでなうあー)
MSS要撃小隊「焱の妖精」に所属する女の子。前髪をきれいに切りそろえた金髪のミディアムヘアと琥珀色の瞳を持ち、常に大きなヘッドフォンを着けている。見るからに女性だが、自分のことを「男の子」と強く主張。危険を感じた際は、「黄色い」「ブンブン鳴る」という表現を使うなど、支離滅裂な言動をする。特甲児童の1人。 特甲を身にまとった際は、黄色に輝くスズメバチの羽と火炎放射器、自らが調合した爆薬を使用して戦う。
バロウ
冬真・ヨハン・メンデルの育ての親。オールバックの髪型に、穏やかだが鋭い眼光を備えた壮年の男性。教会の神父として全宗教合同儀式に参加した際にテロリストの襲撃に遭い、初出撃したMSS要撃小隊「焱の妖精」の活躍によって救われる。実は兵器開発局の元顧問を務めており、特甲の開発に携わった人物の1人。「焱の妖精」が実動し始めたことで要請を受け、MSSの外部顧問に就任する。
ヘルガ
MSS長官を務める妖艶な女性。額を見せるように大きく分けた前髪と、長く美しい黒髪をしている。MSS要撃小隊「焱の妖精」が特甲を身にまとうためのマスターサーバは、彼女が使用権を握り管理している。
ニナ
MSSの副官を務める若い女性。青いショートカットの髪に、少し吊り目がちな淡い緑色の瞳をしている。非常に真面目で機転も利く常識人。クセのある鳳・エウリディーチェ・アウストら特甲児童の性格には頭を悩ませている。
エゴン
逆三角形のメガネをかけ、髪を後ろになでつけた痩身の男性。全宗教合同儀式でのテロの発生を受けて、MSSからの出撃要請を受諾した。しかし後日、テロの手口があまりに鮮やかであり、初出撃にも関わらずそれを撃退したMSSの活躍がめざましかったことを受け、MSSに情報漏えいの嫌疑をかける。
シェネル・シェン (しぇねるしぇん)
全宗教合同儀式に出席したイスラム系宗教の導師。丸いメガネをかけて頭にターバンを巻き、ひげを豊かに蓄えている。実はテロリストであり、全宗教合同儀式襲撃事件の首謀者。会場内で銃を抜いたのをきっかけにニナから頭を撃ち抜かれた。しかし、その体はすでに犠脳体であり、意識を保ったままだった。自らの脳を移植した戦術ヘリで会場を強襲するが、鳳・エウリディーチェ・アウストによって撃退される。
ラシード
シェネル・シェンが組織するテロリスト集団の一員。全宗教合同儀式の警備を行う特殊憲兵部隊になりすまして会場に侵入し、テロ行動を開始した。その際、何らかの理由で冬真・ヨハン・メンデルの身柄を拘束しようとしたが、鳳・エウリディーチェ・アウストによって阻まれる。その後、一度は逃げ延び、自走式爆弾を用いた作戦で、またも冬真を狙うが失敗、捕縛される。
サイード
シェネル・シェンが組織するテロリスト集団の一員。主にラシードと共に行動し、全宗教合同儀式のテロに参加。この時は、半ば暴走するラシードを諌めてうまく逃げ延びたが、その後の自走式爆弾を用いた作戦で雛・イングリッド・アデナウアーが作成したトラップにかかり、爆発に巻き込まれて死亡する。
ケマル・グルダー (けまるぐるだー)
シェネル・シェンが死亡した後を継ぎ、テロリスト集団を指揮していた男性。犠脳体となって、仮想現実空間からテロリストたちに指示を送っていた。その後、ついに居場所を突き止められ、自走式爆弾を用いてMSSに抵抗したが、冬真・ヨハン・メンデルらに作戦を見破られ、MSS要撃小隊「焱の妖精」の活躍で撃退された。
集団・組織
MSS
ミリオポリスの特殊治安部隊。MSS要撃小隊「焱の妖精」を擁する。全宗教合同儀式のテロリスト襲撃事件で初めて公式作戦に参加し、以降、凶悪犯罪やテロリストの捜査・対策を主任務とする。
焱の妖精 (ふぉいえるすぷらいと)
MSSに所属する要撃小隊。鳳・エウリディーチェ・アウスト、乙・アリステル・シュナイダー、雛・イングリッド・アデナウアーら3人の特甲児童で構成されている。所属する特甲児童には、装着する特甲やその見た目などから、それぞれ「~火」のコードネームが与えられている。
特殊憲兵部隊 (こぶらゆにっと)
内務大臣直下の特殊部隊。ミリオポリスを含む国内の主要都市、施設の警備を行う。全宗教合同儀式の警備を務めた際には、「公安の出る幕ではない」と絶対の自信を誇っていたが、犠脳体であるシェネル・シェンら率いるテロリストから儀式を守ることができなかった。
BVT
ミリオポリスを含む国内の治安組織を束ねる政府直属機関。エゴンが局長を務める。MSSの上位機関にあたるが、特甲児童を所有するMSSに対しては懐疑的で、何かと難癖をつけてくる。
場所
ミリオポリス
かつてウィーンと呼ばれたオーストリアの首都。国内の主要機関が集まる都市で、必然的にテロリストの標的となることが多い。
イベント・出来事
全宗教合同儀式 (ぜんしゅうきょうごうどうぎしき)
2016年2月10日、ミリオポリスで行われた会合。ミリオポリスに存在する全宗教教団の主要メンバーを集めて、ミリオポリスを脅かすテロへの対策を話しあう平和的対話の場として開催された。しかし、集まったメンバーのうちの1人・シェネル・シェンがテロリストの中心人物だったため、逆にテロの攻撃標的として利用されてしまう。
その他キーワード
特甲児童 (とっこうじどう)
何らかの理由で身体の一部に障害を負い、特甲を与えられた児童のこと。失った身体を機械化してもらうためには、市に養育権を委ねる必要があり、またその中でも優れた素質を持つ者にしか特甲は与えられない。そして、特甲を与えられたものは、「労働の権利を得る」という建前で戦場に立たされることになる。
特甲 (とっこう)
特殊な義肢。何らかの理由で身体の一部に障害を負った児童の中でも、特に資質を認められた児童にのみ与えられる。平時は普通の人間の身体と変わらないように見えるが、マスターサーバを介して情報を転送することで、さまざまな兵器に変化する。
羽 (ふぇでーる)
特殊な特甲。特甲児童のなかでもさらに限られた者にのみ与えられる。転送した際は背中に展開され、昆虫の羽をモチーフにした光り輝く薄い板状のユニットが出現、空中飛行などを可能にする。
犠脳体 (ぎのうたい)
人体から脳を摘出し、代わりに電子機器を接続した者のこと。肉体が滅んでも脳が生きている限り、入れ物を変えて生き続ける不死に近い存在とされている。狂信的なテロリストは、この技術を用いて、脳を兵器に移植して自立思考が可能な兵器を作り出す。脳を移植された兵器は「犠脳体兵器」と呼ばれる。
クイズ
ギリシャ神話に関する3択のクイズ問題。鳳・エウリディーチェ・アウストが、任務に出撃するMSS要撃小隊「焱の妖精」の面々や、それに巻き込まれた人物に出題する。任務開始前に出題し、任務が無事終了すると、その答えを教える。
マスターサーバ
特甲児童の特甲を転送することのできる高機能演算装置。その他、特甲児童の位置や状況などを把握することも可能。MSSが所有し、MSS要撃小隊「焱の妖精」の特甲を管理するものの他、ミリオポリスには複数の都市マスターサーバがある。特甲を使用するためには、それら都市マスターサーバ間の議論で決議されるか、またはヘルガら管理者の許可が必要となる。
観測用端末気球 (かんそくようたんまつききゅう)
乙・アリステル・シュナイダーの演習を観測するために飛ばされた気球。演習は、ミリオポリス第35区にあるオーストリア国防軍司令部直下総合演習場で行われた。犠脳体を持つテロリストによってハックされ、ケンタウロスや戦車の暴走を引き起こした。
ケンタウロス
対地対空装備を持つ4脚式の巨大な歩行戦車。乙・アリステル・シュナイダーの演習に合わせて、BVTによって事前許可なく投入された。その後、犠脳体を持つテロリストによってハッキングされ、無人のまま暴走。特甲がまともに機能しない状態の乙に致命傷を与えたが、すんでのところで鳳・エウリディーチェ・アウストが破壊した。
自走式爆弾 (じそうしきばくだん)
ケマル・グルダーが操った昆虫型の爆弾。ダンゴ虫のような見た目をしており、通信用電波に反応して接近、自爆する機能を持つ。また爆発力を減衰させないため、電波傍受用個体、ほかの個体に追随する機能を持つ個体、最大限の威力を持つよう爆発の連鎖を管理する個体に分かれている。
バンソウコウ
鳳・エウリディーチェ・アウストが渡すバンソウコウ。任務に出撃するMSS要撃小隊「焱の妖精」の面々や、それに巻き込まれた人物に渡すもの。雛・イングリッド・アデナウアーによれば、「死なないためのおまじない」として渡されているという。
クレジット
- 原作
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オイレンシュピーゲル
近未来の北欧を舞台に、四肢を機械に改造された少女たちがテロリストと対決していく姿を描いたバトルアクション。「月刊少年シリウス」2010年2月号から2013年2月号にかけて連載された作品。 関連ページ:オイレンシュピーゲル