あらすじ
第1巻
高校生の大滝洋樹は、1980年代の歌やアイドル文化が好きだったが、それを理解してくれる者が周囲におらず、高校生活に物足りなさを感じていた。そんなある日、洋樹は担任教師から、となりの席の薬師丸知世が忘れた定期券を家まで届けるように頼まれる。クラスでも目立たない存在の知世の事は、洋樹もまったく意識していなかったが、彼女の家に行ってみると、そこから聞こえてきたのは1980年代のアイドルの歌だった。なんと知世の部屋は、洋樹があこがれていた1980年代のレコードやポスターがあふれる空間だった。その部屋でアイドルの歌を歌っていたのが知世だと知った洋樹は、初めて自分と同じ趣味を持った相手を見つけて喜ぶのだった。以降、二人は少しずつ距離を縮め、いつしか洋樹は知世といっしょにいる時間が増えていく。
第2巻
共に1980年代の文化が好きな事で、薬師丸知世と仲よくなった大滝洋樹は、体育の授業で足をケガした知世を助けた際、彼女が気になる存在になっている事に気づく。そんな中、洋樹は知世と共に1980年代の文化を紹介するイベントに参加しようとしていたが、当日に体調を崩してしまう。知世は、そんな洋樹を看病するために彼の家を訪れるのだった。洋樹はここに至り、はっきりと知世への恋心を自覚する事となる。後日、洋樹はついに知世に告白しようと決意し、夏休みに知世を花火大会に誘う。多くの人出がある中、知世といっしょに花火を見たあと、洋樹はついに意を決して気持ちを伝えるが、知世の答えは「付き合えない」というものだった。
第3巻
大滝洋樹は、薬師丸知世にふられながらも、知世ともう一度「友達」から関係を再スタートさせる事となった。そんなある日、洋樹と知世の前に仲井戸と名乗る男が現れ、強引に知世を連れ去る。かつて知世の家の近所に住んでいたという仲井戸は、幼い頃から知世の事が好きで、その気持ちを伝えるために彼女を連れて行ったのだという。知世と仲井戸のあとを追った洋樹は、自分も知世が好きな事、そして自分にとって知世こそが運命の人だという事を仲井戸に告げる。その言葉を聞いた知世は、洋樹と共に仲井戸のもとから離れるのだった。この一件以来、洋樹は知世の心境に変化が出てきた事に気づくが、その矢先、洋樹の母親、大滝ゆう子が仕事中に腰を痛めて入院してしまう。幸い軽症で済んだものの、母親の入院に、洋樹はもっと自立しなければと思い始める。
第4巻
大滝洋樹は、母親の大滝ゆう子が腰を痛めてしばらく仕事ができなくなった事から、家計を助けるためにアルバイトをする事にした。喫茶店でウェイターとして働く事になった洋樹は、その店で洋樹と同じくアルバイトとして働く小泉典子と出会う。大学で美術を専攻している典子は、洋樹に対して接客をはじめとした仕事を教えてくれるよき先輩だったが、偶然にもその様子を見た薬師丸知世の胸中は穏やかではない。さらに典子は、ゆう子の経営するスナックで助っ人として働き始める事になり、洋樹との接点がさらに増えていくのだった。やがて順調に回復したゆう子は、自身の快気祝いとしてスナックでのイベントを開催する。そのイベントに招待された知世は、そこでデュエットをする洋樹と典子の姿を目撃する。しかもその曲は、洋樹と知世の思い出の曲であり、怒った知世は思わず洋樹の事を叩いてしまう。
第5巻
大滝洋樹とふとした事からケンカしてしまった薬師丸知世は、浮かない表情で日々を過ごしていた。そして、知世に叩かれた洋樹もまた、これまでにないほど落ち込んでいた。そんな洋樹と知世の姿を見かねて、彼らの理解者である宇崎は、孫の宇崎その子と共に仲直りをするためのきっかけ作りを提案する。宇崎のおかげでなんとか彼女に謝る事ができた洋樹だったが、それでも知世はまだ洋樹に対してぎこちない気持ちをぬぐえないでいた。そんな中、洋樹達の高校では文化祭の時期を迎えた。洋樹は友人の松本、そして知世とも偶然にも同じ班になり、クラスの方針でお化け屋敷の展示をする事になる。松本の方針で知世と二人羽織をする事になった洋樹は、知世との距離を縮めるチャンスと張り切るが、知世は逆に洋樹との距離をとろうとしていた。
第6巻
松本は文化祭の打ち合わせを大滝洋樹の家でやろうと言い出し、薬師丸知世と共に洋樹の家を訪れる。洋樹は、アルバイト先の先輩であり、母親の経営するスナックで働く小泉典子からアドバイスを受け、知世に振り向いてもらうためには、知世の事ばかり考えていてはいけない事に気づく。文化祭の準備を進める洋樹は、かつてのように知世だけを気にかける事をしなくなり、そんな洋樹の姿に知世は寂しい気持ちになる。そして文化祭当日、洋樹達の展示は大好評のうちに終了し、知世は洋樹を誰もいなくなった体育館へと呼び出す。やって来た洋樹を前にして、知世は自分の思いを伝え、洋樹と知世は付き合う事となった。そんな中、知世の母親が、1980年代の文化が詰まった知世の部屋を取り壊す事を知世に告げる。
登場人物・キャラクター
大滝 洋樹 (おおたき ひろき)
1980年代のアイドルや歌などの文化が大好きな男子高校生。小学生の頃に、自身の1980年代が好きだという嗜好を友人に伝えたところ、まったく理解してもらえず、それからは自身の趣味を他人に隠し続けている。運動神経もよく、ルックスも整っている事から高校では目立つ存在であり、つねに人の中心にいる。薬師丸知世が自分と同じく1980年代の文化が好きだという事を知り、共通の趣味を持つ事から少しずつ彼女となかよくなっていく。 家族は母親の大滝ゆう子と二人暮らしの母子家庭で、家計を助けるために、普段は喫茶店でアルバイトをしている。
薬師丸 知世 (やくしまる ともよ)
大滝洋樹と同じ高校に通う女子高校生。洋樹と同じく1980年代の文化が大好きで、クラスでは地味な存在ながら、洋樹といっしょにいる時には、1980年代当時のアイドルのコスチュームで踊ったりするなど、根は明るい性格の持ち主。しかし、父親が失踪しており、今ある幸せもいつかは壊れてしまうという考えを持っている。そのため他人と必要以上に交流を持つ事を恐れており、洋樹の気持ちを知りながらも敢えて距離を取っている。 それでも洋樹に対しては特別な感情を抱いており、文化祭でのイベントを経て洋樹に告白して恋人同士となる。手先が器用で1980年代のアイドルの衣装なども自分で作るなど手芸が得意な反面、料理などの炊事は苦手。
大滝 ゆう子 (おおたき ゆうこ)
大滝洋樹の母親。スナックを経営している。母子家庭で生活が苦しかったために、息子の洋樹には古い玩具しか与える事ができず、それが洋樹が1980年代の文化が好きになる要因となった。前向きな性格である事からスナックの常連客からの人気も高い。薬師丸知世の事を気に入り、彼女と洋樹との仲を応援している。
宇崎 (うざき)
雑貨屋を経営する男性。宇崎の経営する店では1980年代当時のグッズを数多く扱っている事もあり、薬師丸知世が常連客としてよく訪れており、彼女にとってのよき理解者でもある。のちに大滝洋樹もこの店に通うようになり、洋樹にとってもよき相談相手となる。孫の宇崎その子と共に洋樹と知世の仲を取り持ったりする事も多く、洋樹と知世が付き合うようになった際には、二人を祝福した。
松本 (まつもと)
大滝洋樹の友人の男子高校生。洋樹とは高校に入学してから知り合い、休日にはいっしょに遊ぶ事も多い。流行に敏感で、社交的な性格から洋樹以外にも友人が多く、文化祭の展示で同じ班になった薬師丸知世に対しても気さくに話し掛けている。その関係から、クラスでは友人の少ない地味な存在だった知世も、松本に対しては多少打ち解けている。
仲井戸 (なかいど)
薬師丸知世の幼なじみの男性。幼い頃は知世の家の近所に住んでおり、知世の父親からは1980年代の文化を中心にさまざまな事を教わっていた事から、その縁で知世に対して恋心を抱いてきた。現在は関西在住のため関西弁で喋る。RCサクセションのファンで、特技はギター。大滝洋樹とは、共に知世の事が好きであるため衝突を繰り返すライバル同士。
宇崎 その子 (うざき そのこ)
宇崎の孫の女子中学生。よく宇崎の経営する店に遊びに来ており、薬師丸知世や大滝洋樹と知り合う。宇崎の店では1980年代当時のグッズを多数取り扱っている事から、宇崎その子自身もその影響を受けており、1980年代当時のアイドルに興味を抱いている。当初は洋樹や知世にも心を開かずに、険悪な雰囲気を漂わせていたが、やがて打ち解けていき、二人の恋を応援するようになる。
小泉 典子 (こいずみ のりこ)
大滝洋樹がアルバイト先の喫茶店で出会った女子大学生。洋樹よりも早く喫茶店でアルバイトを始めており、仕事ぶりも優秀で、マスターの信頼も厚い。大学では美術を専攻しており、時間を見つけては公園などでスケッチをするのが趣味。のちに洋樹の母親である大滝ゆう子の経営するスナックで短期アルバイトをするようになり、洋樹ともさらに交流を深めていく。