概要・あらすじ
第二次大戦で敗色が濃厚になった日本が、戦局を好転させる為に作りだした秘密兵器を中国で戦う陸軍に渡す任務を受けた関建男中佐は、輸送中に敵の攻撃を受けながらも無事白狐嶺にある陸軍基地へ届ける事に成功する。しかし、その真の目的は、あまりに恐ろしく残忍な兵器が実戦で使用される事により多くの被害が出るのを危惧し、自らの手で海の底へと沈めてしまおうとしたのだった。
そんな中で関建男中佐は、基地の近くを根城にし、陸軍との取引によりゲリラ狩りの報酬で暮らしていた海軍陸戦隊所属の長門慎吾と、その部下の牧師、海賊、チャボ、スーパーマンと出会う。彼らタイガー陸戦隊の軍人らしからぬ態度は不快に感じたものの、ゲリラ相手の戦いに優れていた為、軍艦生活しか知らない自分だけでは大陸の横断は不可能と感じた関建男中佐は、嫌がる彼らを海軍に連れ戻すという名目で半ば強引に護衛として利用する。
周りを敵に囲まれ、行く先々で秘密兵器を狙うゲリラや政府軍の攻撃に遭う。やがて日本でも、消えた秘密兵器の在処を巡り関建男に疑いの目を向け始めた為に、一行は誰も頼れない中を進んでいく事になる。
登場人物・キャラクター
長門 慎吾 (ながと しんご)
海軍陸戦隊のタイガー別動隊で荒くれ者達を指揮する隊長。部隊は一年程前に陸軍の白狐嶺陣地に不時着した敵機から降りてきてそのまま住みついた。ゲリラ退治に優れた実力を発揮し、陸軍との取引でゲリラを捕まえる代わりに報酬をもらって暮らしていた。正義感が強く、例えゲリラでも青九山の様に日本軍のみと戦う相手の事は、国や立場の違いで争っているものの勇者であると讃えている。 一方、善良な村人から軍資金という名目で金品を奪う盗賊まがいの相手には容赦をしない。関建男中佐に連れられてトラックでの大陸横断に同行する。当初は不信感を抱き秘密兵器を売りさばくつもりではないかと疑いの目を向けるが、戦いの中で真の目的とその決意を聞かされると、自らも犯罪者の汚名を着せられる覚悟で秘密兵器をこの世から葬り去る事を決める。 仲間思いで、敵の戦車に見つかって追われる牧師とスーパーマンを救う為に、関建男中佐が止めるのも聞かず、勝つ見込みのない中を単身飛び出していった。
関 建男 (せき たてお)
海軍中佐。戦局を一転させるほどの威力を誇る秘密兵器を、中国での戦いに苦戦する陸軍に届ける任務を受けるが、そのあまりの残虐で非人道的な破壊力に脅威を感じ、密かに自らの手で誰にも渡らぬように海の底に沈めて処分しようと計画する。祖国からも裏切り者の犯罪者扱いを受ける覚悟を決め、実行の為には冷酷な態度も辞さない忍耐の男。 自分が軍艦での戦い方しか知らない為、たまたま出会った長門慎吾を隊長とするタイガー陸戦隊の面々を海軍に連れて帰るという名目で、半ば騙すような形で陸軍の白狐嶺陣地から連れ出して護衛として利用しようと考える。全てを明かさない秘密めいた態度と、作戦の遂行の為に非情にも戦車に追われる牧師やスーパーマンを見殺しにした事で長門慎吾に反発され、一時は秘密兵器の横流しを疑われたが、命を懸けて積荷を守ろうとする熱い想いが伝わり、やがて同じ思いを持つ強力な仲間を手に入れる事になる。
中丸 (なかまる)
海軍陸戦隊のタイガー別動隊の隊員。階級は一等水兵。大きな体とドラム缶を両腕に一つずつ抱えて運ぶ怪力が自慢。身体が重い為、馬賊を馬ごと押し潰して倒す事もあるが、敵に追われたトラックがぬかるみにはまった時には仲間からの無言の眼差しを受けて車から降ろされてしまう。ゲリラと間違われて上空の味方機から銃撃を受けた際に、スーパーマンと2人でトラックから振り落とされてしまい、そこを後から追ってきた政府軍の戦車に発見され轢き殺されそうになる。
海賊 (かいぞく)
海軍陸戦隊のタイガー別動隊の隊員。アイパッチをした男。長門慎吾とのコンビネーションで、ピンを抜いた手榴弾を布に包み遠心力を利用して遠くの敵を倒す。救出した兵の部隊を尋ねて返答に困る様子に不信感を抱いたり、奇相海の裏切りを不安視するなど切れ者ながら慎重で心配性な部分もある。
チャボ
海軍陸戦隊のタイガー別動隊の隊員。戦友の褌を盗んで予科練をクビになり仲間からも坊やとからかわれている。口下手な長門慎吾に代わり達者な口答えをする理屈屋。恐怖部隊の少尉から拷問を受け、仲間達の目的を白状するように迫られるが、友を裏切らない思いが強く必死に耐え続け、絶対に口を割らなかった。
スーパーマン
海軍陸戦隊のタイガー別動隊の隊員。飄々とした性格で、青九山から逃げる時にからかうような言葉を掛けたり、複数の敵機に襲われながら戦う輸送機の空中戦を仲間と一緒に見ていた時でも、一人木にぶら下がりながら逆さになって眺めていた。ゲリラと間違われ上空の味方機から銃撃を受けた際に、牧師と2人でトラックから振り落とされてしまい、そこを後から追ってきた政府軍の戦車に発見され轢き殺されそうになる。 仲間達が奇相海との取引で出払いチャボと2人きりだった時に恐怖部隊が現れてチャボを連行されてしまう。
中尉 (ちゅうい)
海軍所属で関建男中佐と共に中国で戦う陸軍の元へ秘密兵器を届けに行く。その後も関建男が秘密兵器を処分する為にトラックでの大陸横断に同行する。軍艦乗りの為、慣れない空中戦では取り乱し、関建男から落ち着くように諭される。その際に敵機の攻撃を受けても微動だにしない関建男を見て心臓に毛が生えているようだと驚いた。 初めてタイガー陸戦隊を見かけた時は、だらしない格好が名誉ある軍人の取るべき態度ではないと追い回すが、結局逃げられてしまう。陸での戦いに慣れていない為、自分よりも階級の低いタイガー陸戦隊からケチをつけられて怒りを露わにした。野宿で不用意に火を焚き、政府軍に居場所を知らせてしまう。
山辺 (やまべ)
日本陸軍大佐。中国の白狐嶺陣地の守備隊長として本国から秘密兵器を運んできた関建男中佐を迎えた。周囲で暴れ回るゲリラに新兵器を試して倒してやると意気込む。関建男中佐にタイガー陸戦隊についての説明をした。部下ではない長門慎吾とは取引として、ゲリラを捕まえてきてもらう代わりに報酬を与えたり、ゲリラの疑いで拘留していた村の娘ユーミンを釈放したりしている。 ゲリラの不意打ちに遭い届いた秘密兵器を奪われてしまう。関建男中佐が立ち去った後にトラックの積み荷のトウモロコシが秘密兵器と形状が似ている事から、奪われたはずの兵器だったのではないかと疑いを持つ。
青九山 (せいきゅうざん)
日本軍を相手に戦うゲリラのボス。村人を襲う盗賊まがいのゲリラとは異なり、堂々とした敵だと長門慎吾からは敬意を表され、長年の好敵手と呼ばれる。長門慎吾の手の内を読み、戦い慣れしている男なので政府軍を避けて通るだろうと見越して予想外のルートに地雷を仕掛け、まんまと仕留めた。日本から届けられた秘密兵器の存在を知り、奪おうと目論む。
古羽 (こば)
日本陸軍大佐。303工兵大隊、別名恐怖部隊の指揮官。兵の士気を高める為に週に一度ゲリラ狩りと称して無関係な村人の家にまで火を付けるなど、数々の悪辣な行為を兵に強いている。厳しい規律で隊を縛り、敵を倒せず自分だけが傷つくような兵には切腹を命じている。占領地で周囲をゲリラに囲まれている為、食事の時も部下に毒見をさせるほど慎重な男。 憲兵隊で大鬼と恐れられている知念大佐から関建男中佐を隊に留まらせるようにという連絡を受け、大物の犯罪者である事を疑い証拠を掴む手立てを少尉に相談する。
少尉 (しょうい)
日本陸軍304工兵大隊、別名恐怖部隊の少尉で居合の達人。追っていた脱走兵を見つけては問答無用で斬りつけその場に放置する非情な男。隊規を犯して切腹となった兵の介錯人も務める。古羽大佐からタイガー陸戦隊が犯罪に加担してると持ちかけられ、一人きりになる取調室にチャボを連行し、白状を迫って拷問にかける。
団 (だん)
日本陸軍305工兵大隊、別名恐怖部隊所属。階級は軍曹。少尉の命令によりタイガー陸戦隊を食事に案内。野外レストランと称した村人の家で銃を発砲して脅し、料理を作らせる。村人が断った場合は容赦なく殺害する。ここで食べていく為のやり方だと説明し、従わない部下でも1週間も食事を取らなければ野獣となり、より強い兵を作る為の特訓なのだと言い放つ。
奇相海 (きそうかい)
長門慎吾が追っていたゲリラが逃げ込んだ屋敷の主人で商人。日本軍には協力的で古羽大佐からも好意を持たれている。恐怖部隊で足止めを食らい積荷を運び出すルートを尋ねてきた長門慎吾達に、自分達の荷物と一緒に運んでやるので手数料の代わりに護衛をするように持ちかけた。顔が広く国民党軍相手にも取引をしている。