概要・あらすじ
古代、ゼテギネアの時代。ヴァレリア島は、統一者である覇王ドルガルアが後継者不在のまま没したことで、「バクラム」「ガルガスタン」「ウォルスタ」の3民族が覇権を争う紛争状態に陥る。しかし、島の人口の大多数を占めるガルガスタンや、暗黒騎士団ロスローリアンの後ろ盾を得ているバクラムに対し、アドバンテージを持たないウォルスタは苦戦を強いられていた。
この現状を打破すべく、ウォルスタ解放軍の1部隊を率いるデニム・パウエルは、姉のカチュア・パウエル、親友のヴァイス・ボゼッグ、そしてゼノビアの有翼種であるカノープス・ウォルフらと共に、ガルガスタンに虐げられていた捕虜救出と彼らの武装蜂起を促す命を受ける。作戦を成功に導いたデニムたちだったが、捕虜たちは現状に甘んじることを選択する。
この事態を受けて新たにデニムたちに下された命令は、ウォルスタの結束を促すため、ガルガスタン軍を装って捕虜を皆殺しにするという非情なものであった。
登場人物・キャラクター
デニム・パウエル (でにむぱうえる)
港町ゴリアテ出身のウォルスタ人の青年。大局を見据える知性と前線に立ち続ける勇気、そして優しい心を併せ持つ。アルモリカ城の奪還とジュダ・ロンウェーの救出を成し遂げた功績により「ゴリアテの英雄」の二つ名で呼ばれることとなり、16歳という若さでありながらウォルスタ解放軍の1部隊である神竜騎士団のリーダーという大役を任せられる。 優しすぎるために戦場に立つには不向きとする声もあるが、指揮官という立場上、自らの行動が良くも悪くも戦局を大きく左右するため、私心を押し殺して非情に徹することも多い。
カチュア・パウエル (かちゅあぱうえる)
デニム・パウエルの姉。港町ゴリアテ出身のウォルスタ人の女性。父親であるプランシー神父から司祭としての手ほどきを受けており、神聖魔法による治癒を得意としている。両親を失ってしまった経緯から、孤独になることを何より恐れており、それゆえに弟であるデニムに対する依存心を心の内に抱えている。常に最前線に立ち続けるデニムを心配するあまり、自分勝手ともいえる行動を取ることもある。 しかしその慈愛は、度重なる戦闘によって疲弊したデニムの心の支えとなっている。
ヴァイス・ボゼッグ (ゔぁいすぼぜっぐ)
デニム・パウエルの親友。港町ゴリアテ出身のウォルスタ人の青年。血気盛んな性格でデニムとも息の合った連携を見せるが、その一方、周囲から頼られがちなデニムに対してコンプレックスを抱いている。バルマムッサにおける捕虜の処遇を巡ってデニムと対立、決別してしまい、後にアロセール・ダーニャらと共にネオ・ウォルスタ解放同盟を結成。 デニムと敵対することになる。
ランスロット・ハミルトン (らんすろっとはみるとん)
大国ゼノビアから渡ってきた、聖騎士の肩書を持つ男性。かつて神聖ゼテギネア帝国と争い、これを打ち破っている。ゼノビアからは追放された身の上で、港町ゴリアテでデニム・パウエルと出会い、彼に雇われる形でウォルスタ解放軍の傭兵となった。デニムとは同行せず、アルモリカ城の守備を担っている。比類なき剣の腕を持ち、デニムからも大いに頼られているが、彼に対しては、「自分も戦場が怖いと思うことがある」という本心と共に、戦争のない時代を望む旨を打ち明けている。 暗黒騎士団ロスローリアンを率いるランスロット・タルタロスと同名であるため、区別のために「聖騎士ランスロット」と呼ばれることが多い。
カノープス・ウォルフ (かのーぷすうぉるふ)
大国ゼノビアから渡ってきた有翼種(バルタン)の青年。種族の特徴として若々しく見えるが、実は40代である。豪放磊落な性格で、前線で戦うことを好む。デニム・パウエルのことを大いに気に入っており、そのためランスロット・ハミルトンとは異なり、神竜騎士団と常に行動を共にする。飛行が可能であるという身体的特徴を生かしたトリッキーな戦術を得意としており、デニムの危機を幾度となく救っている。
ジュダ・ロンウェー (じゅだろんうぇー)
ウォルスタ解放軍の指導者を務める男性。軍のメンバーには専ら「公爵」と呼ばれている。ガルガスタン軍に捕らわれていたが、ランスロット・ハミルトンの助力を得たデニム・パウエルによって助け出される。以降はデニムを「ゴリアテの英雄」と呼び、解放軍へと迎え入れる。ウォルスタを憂える気持ちは本物ではあるが、自らが覇権を握るという野心が強く、それ故に物事を性急に進めすぎる傾向にある。 そうした性格により結果として失態を繰り返し、部下たちの失望を招いた。
レオナール・レシ・リモン (れおなーるれしりもん)
ウォルスタ解放軍の指揮官を務める男性。ジュダ・ロンウェー同様、デニム・パウエルを若き英雄として高く評価している。ウォルスタのためにすべてを投げ打つ強い意志を持っており、目的のためなら自分自身を含めた犠牲をいとわない。一方で優れた戦略眼も持ち合わせており、性急に事を進めようとするロンウェーに対しては苦言を呈することも多い。
ドナルト・プレザンス (どなるとぷれざんす)
ウォルスタ解放軍に所属するレオナール・レシ・リモン配下の神父、かつて孤児院を営んでいたが、関係者をガルガスタン軍によって皆殺しにされ、復讐のために解放軍に身を置いていた。窮地をデニム・パウエルたちに救われて以来、神竜騎士団に身を置くことになる。治癒術や敵対者を眠らせる魔法などに精通しており、人生経験も豊富。 デニムにとっても頼れる人物の1人である。
ヴォルテール・モントローズ (ゔぉるてーるもんとろーず)
ウォルスタ解放軍に所属する、レオナール・レシ・リモン配下の青年騎士。ドナルト・プレザンスと共にデニム・パウエルに救われ、それ以来行動を共にしている。デニムを強く信頼しており、彼あってこそのウォルスタ解放軍であると強く認識している。そのため、彼のためになら囮役など危険な役割も率先して請け負う気概を持つ。
サラ・オストヴァルド (さらおすとゔぁるど)
ウォルスタ解放軍に所属する、レオナール・レシ・リモン配下の弓使いの女性。仲間と共にデニム・パウエルに救われ、現在は神竜騎士団に身を置いている。レオナールと共に部隊長的な立場にあり、本人の弓の腕前もさることながら、飛行部隊への備えとして森にボーガン部隊を秘密裏に配置したり、的確な指示で敵軍を大いにかく乱したりと、指揮官としての資質も備えており、カノープス・ウォルフにも一目置かれている。
ティティス
治癒能力を持つフェアリー。バルマムッサでガルガスタン兵に襲われていたところを、デニム・パウエルに助けられる。当初はデニムに対し、助けられた恩を感じながらも虐殺に関与した1人として危険視していたが、共に行動しているうちに、デニムが自らの心すら削って戦っていることを悟る。加えて、世界の変革に対する彼の展望と、命を背負う覚悟を見て、改めて力になりたいと願うようになった。
アロセール・ダーニャ (あろせーるだーにゃ)
ネオ・ウォルスタ解放同盟に所属する弓使いの女性。バルマムッサの虐殺によって兄を失っており、首謀者であるジュダ・ロンウェーや、解放軍の中核を成して実際に虐殺に加担したデニム・パウエルに対して並みならぬ恨みを抱いている。弓の腕はもちろん、剣技にも精通しており、神竜騎士団を幾度となく追い詰める。ネオ・ウォルスタ解放同盟に属しているのも兄の敵討ちのためであり、リーダーであるヴァイス・ボゼッグの意に反した行動をとることも多い。
ランスロット・タルタロス (らんすろっとたるたろす)
ローディス教国より派遣された暗黒騎士団ロスローリアンの団長。漆黒の甲冑に身を包んだ隻眼の男性。かつて世界規模の偉業を成し遂げており、ローディスのトップである教皇からも多大な信頼を得ている。国の中でもトップレベルの剣の腕を持ち、騎士道精神を重んじているが、苛烈で非情な面も併せ持つ。ゼノビアの聖騎士であるランスロット・ハミルトンと同じ名前を持つため、区別のために「暗黒騎士ランスロット」と呼ばれることがある。 また、その聖騎士ランスロットに、かつて片目を奪われている。
ザパン・イリューダス (ざぱんいりゅーだす)
ウォルスタ解放軍に雇われた傭兵の男。スウォンジーの森における敗戦によって逃亡していたところを海賊に襲われていたが、デニム・パウエルたち神竜騎士団によって救われる。その後、さらなる報酬を求めてジュダ・ロンウェーに接触した結果、デニムとの同行を依頼され、そのまま神竜騎士団の一員となった。行動理念はほぼ金のためであり、そのためならどんな汚いことでも、自分の命が危険に晒されることでも行うと公言してはばからない。 しかし、そのシンプルな理念は、大きな流れに翻弄され続けていたデニムにとっては、逆に救いとなっている。