概要・あらすじ
宮沢静虎は、古武道・灘神影流(なだしんかげりゅう)の達人である。無益な争いごとを好まぬモラリストではあるが、時には武人としての名声のために勝負を挑まれ、時にはその技量のために依頼を受け、また時には、見過ごせぬ悪を討つために拳を振るう。そんな中、以前から勝負の約束をしていた友人・永井仁清との果し合いの日が、ついにやってくる。
仁清の鍛え抜かれた拳を見て、静虎は言葉では表現することのできない共感のような感情を胸に抱くのだった。
登場人物・キャラクター
宮沢 静虎 (みやざわ せいこ)
古武道・灘神影流(なだしんかげりゅう)の十四代当主である中年の男性格闘家。妻とは死別しているが、憙一(きいち)という息子がおり、彼には「親父(おとん)」と呼ばれている。普段は銀行マンとして働いており、大柄ではあるものの、はた目には気弱そうなサラリーマンにしか見えない。そのため親父狩りに遭ったりもするが、実際には武術の達人である。 格闘技の世界では、「静かなる虎」の異名で知られている。モラリストで正義感が強い。
永井 仁清 (ながい じんせい)
実戦格闘術・永拳会(えいけんかい)主宰を務める中年の男性格闘家。身長190センチ、体重130キロの巨体を誇る。宮沢静虎とは友人にして、格闘技を通じたライバル関係にもある。10年に一度、静虎と真剣勝負を行っているが、現在は二連敗中。猿渡哲也の別作品『傷だらけの仁清』の主人公でもある。
八巻 樹馬 (やまき きうま)
八巻流体術の使い手である若い男性格闘家。八巻流に伝わる奥義「徹貫掌(てっかんしょう)」の威力を試すため、また八巻流の創始者であった亡き父親を超えたいとの願いのため、父親の親友であった宮沢静虎に他流試合を挑む。戦いには敗れるものの、その後に対戦を受けてくれた静虎に対して感謝を述べるなど、礼儀正しい性格。
左 十五郎 (ひだり じゅうごろう)
天獄流(てんごくりゅう)剣術の使い手である剣客の老人。残虐な性格の持ち主であり、モラリストである宮沢静虎とは、思想が相容れないために仲が悪い。杖の形をした仕込み刀を持ち歩いていて、それを用いて戦う。静虎に命がけの戦いを挑むが、敗北を喫する。
草薙 龍一 (くさなぎ りゅういち)
草薙流という武術の達人である47歳の男性で、秘蹴・鎌鼬(ひしゅうかまいたち)と呼ばれる足技の使い手。身長190センチ、体重100キロ。かつて喧嘩で人を殺したことで獄中にあったが脱獄。とある山中に潜伏していたところで、宮沢静虎と遭遇し、戦いを挑むも敗れる。
霍 書文 (かく しょぶん)
中国拳法・龍空真拳(りゅうくうしんけん)の最高師範代の地位にある、中国人の男性格闘家。年齢は不詳。師匠から龍空真拳の後継者たることを許されなかったため、それを恨んで師匠を毒殺しようと図る。その師匠と知己であった宮沢静虎と他流試合をした際に敗れて訓戒され、また一命を取り留めた師匠と対面し、感動して心を入れ替える。
山田 一郎 (やまだ いちろう)
見た目は凡庸な老人だが、実は45年のキャリアを誇る凄腕のスナイパー。山田一郎という名は偽名であるが、その名で殺し屋として広く知れ渡っている。ある時、偶然仕事中に出会った宮沢静虎に自分の殺気を察知されたことで、静虎に興味を抱くようになる。のちに静虎を勝負の場に引きずり出すものの、一郎の狙撃は静虎に通用しなかった。 このことを恥じ、自ら頭を撃ち抜いて死亡する。